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巨大さが覆い隠す日本郵政グループの株式上場の問題点 [経済政策]

AIIB問題では迷っていた韓国が参加に踏み切ったらしいが、このブログではたまたま政治・外交問題ばかり取り上げてきたので、今日は、この問題と似た側面がある日本郵政グループの株式上場問題を取り上げたい。
日本郵政は、昨年12月26日、株式上場計画を発表。これによれば、日本郵政は、傘下の金融2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)を含めた3社で9月頃をメドに同時上場。売却は市場の消化能力に配慮し段階的に行う。金融2社の株式は、郵政民営化法では全株売却(親の日本郵政株の売却は3分の2まで)を定めているが、先ずは日本郵政の保有割合が50%程度になるまで段階的に売却。2社の売却収入は、復興財源だけでなく、日本郵政が政府から自己株式購入にも当てる、というもの。
この前後の日経新聞によれば、3社合計の初回の売却規模は1兆~2兆円になる見込みだが、最終的には、上場時の時価総額が7兆円を超えた1998年のNTTドコモに匹敵する規模になる可能性。上場の主幹事証券会社は既に選定してあった国内大手5社、中堅2社、外資系4社の合計11社という異例の多さ。金融2社株の日本郵政の保有割合のメドを50%程度としたのは、新規事業に乗り出す際の認可をにらんだものだが、完全売却までの道筋までは示さず。

この上場スキームは、以下のような大きな問題点を孕んでいる。
①親会社である日本郵政と、グループの利益の9割を稼ぐ子会社の金融2社を同時に上場するというのは、極めて異例。金融2社の完全売却時期が明示されてないこともあり、企業価値の算定は困難を極め、主幹事証券会社や投資家はさぞや悩むことになろう。また、ガバナンス(企業統治)の面からも、親子上場は、親子間に利益相反が生じ易いため、子会社の少数株主の保護を如何に図ってゆくか、主幹事の上場審査段階から難問に直面。
②機関投資家を中心に投資スタイルが株価指数に連動するようなインデックス運用の比重が大きくなったことから、今回の上場には問題があると仮に考えたとしても、大規模な上場には応募せざるを得ないという側面も。
③主幹事証券会社が11社という異例の多さになったのも、上場に問題はあっても巨額上場案件に伴う膨大な手数料の魅力には抗し難い。
④そもそも郵政の民営化では、国鉄やNTTのように民間との競争条件を確保するため地域分割するべきとの議論もあったが、政治決着で日本郵政や傘下の金融2社が一体のまま株式会社化した。2015.9月末の郵便局数2.4万、グループ従業員22.3万人、連結純資産13.8兆円という巨大さである。この巨大さに伴う「蜜」が上場時に証券会社や一部投資家を惹きつけるだけでなく、既に民間の銀行、保険会社(これらは建前上では郵政の横暴を批判)、一般企業も日本郵政の巨大なネットワークというチャネルを自らのビジネスにつなげるべく個別に日参しているという。昨年、がん保険の提携先を日本生命から米保険会社アフラックに乗り換えたことで、長年にわたり米国が問題視してきた国営企業のあり方をめぐる懸案が解消されるとの見方まで浮上。
⑤日本郵政の金融2社株保有割合が50%程度、さらに0になったことで、「民間企業」として自由に振る舞い出せば、その巨大さはまさに「池の中のたクジラ」で、金融市場を攪乱させることは必至であろう。
⑥日本郵政グループの巨額の広告宣伝費を前にしては、マスコミも「習い性」として正面からの批判は控えがちになる。

この巨大さに伴う魅力と問題点は、25,26日と紹介したアジアインフラ投資銀行(AIIB)とまさに通じるものがありそうだ。
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