乱立する官民ファンド [経済政策]
昨日、予告した通り、今日は乱立する官民ファンドを取り上げよう。
まず、遅まきながら予備知識として、PEファンドを改めて定義しておこう。プライベート・エクイティ・ファンド（Private Equity Fund）とは、投資家から集めた資金を非公開企業の株式に投資し、経営権を取得、役員派遣などで経営に深く関与して企業価値を高めた後に売却することで、高い投資収益率を獲得することを目的とした投資ファンド。公開企業株式を取得し、非公開にしたり、金融機関から不良債権化した債務を取得する場合もある。一般的には、出資金だけでなく借入でレバレッジをかけることで投資収益率をさらに高める。種類としては、MBO（マネジメント・バイアウト）などの買収ファンド、企業再生ファンド、ベンチャーキャピタルなどが該当。資金運用を金融派生商品などを活用した様々な手法で行うヘッジファンドとは全く異なる。
官民ファンドについては、2014年11月の関係閣僚会議にかけられた「官民ファンドの運営に係るガイドラインによる検証報告（第2回）」によれば、2014年9月末現在で、官民ファンド11本（うち安倍内閣が新設したのが9本）。これへの政府からの投融資額は約6276億円、民間からの出資額は約498億円。2014年度の政府保証は3兆2615億円。官民ファンドがこれまでに支援決定した出資案件は370件、支援決定額約1兆2515億円、実投融資額は約8297億円、官民ファンドの投融資が呼び水となって民間から投資された額は約1兆3196億円。支援決定額が特に大きいのは、産業革新機構7783億円、中小企業基盤整備機構1707億円、競争力強化ファンド1190億円である。
評価面では、各ファンドごとに重要業績評価指標（KPI）と目標値が設定され、それに基づいて評価したところ、評価データがあるものでは目標値達成が多いする。また、民間投資の「呼び水効果」はあったと報告。運営が放漫に流れない最小限の歯止めは一応あるようだが、こうした評価が、各ファンドや所管官庁で行われる以上、「お手盛り」になる懸念が強い。本来は、中立的な第三者が評価するようにすべきだろう。驚いたのは、上記の実投融資額の大きさである。日本全体でのファンド総額を金融庁のファンドモニタリング調査で見ると、2014年3月末でバイアウト、ベンチャー、事業再生の3種類のファンド総額で1兆5106億円なので、官民ファンドの実投融資額8297億円は実に55%を占めることになる（調査時点に6ヶ月のズレはあるが）。民間がだらしないのか、官が肥大化し過ぎなのかは一概には決めつけられないとはいえ、少なくとも、「呼び水」というより、「官が民をクラウドアウト」している構図と捉えられなくもない。
なお、報告の詳細を見てみたい方は下記リンクを。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kanmin_fund/pdf/kenshohoukoku_dai2.pdf
官民ファンドに関連して、池田信夫氏がJBpressの1月13日付けで「岸信介から安倍首相に受け継がれる「国家資本主義」の遺伝子 資本主義の嫌いな経産省が日本経済をだめにする」で痛烈に批判している。
以下リンクの特に3頁目では、おおむね以下のように論述。
・資本市場が機能しない最大の原因が、経済産業省の国家資本主義。かつて日本経済を指導してきた彼らの産業政策の役割は終わり、資本市場で企業の再編成をしなければならないが、彼らは主役の座を降りたくないため、企業買収を妨害。資本主義は、経産省の敵。
・元同省次官の北畑隆生氏は「株主はバカで無責任」。「日の丸検索エンジン」など時代錯誤のターゲティング政策を進めて、すべて失敗。ダイエー騒動のときは官邸や財務省の方針に抵抗し、経産省が「再建」すると称して霞が関を3カ月間も混乱。ルネサス エレクトロニクスの再建でも、世界最大の企業再生ファンドKKRが1000億円出資する意向を示したのに、産業革新機構が横取り
・日銀の「異次元緩和」が失敗して、安倍首相は祖父、岸信介元首相の国家資本主義に回帰しているように見える
以下のリンクは2頁目以降は会員登録が必要だが、無料会員登録も可能
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42647
池田氏の論文の1頁目の産業再生機構についての評価は異論があるところで、これに関しては、後日、別途、取上げるつもり。最後の、「安倍首相が岸信介元首相の国家資本主義に回帰しているように見える」は、このブログの4月4日「安倍首相の賃上げ要請」でも「革新官僚」として取上げたが、自らの権益拡大のチャンスを最大限に活かそうとする「霞ヶ関」の利害とも一致しているだけに、始末が悪そうだ。
まず、遅まきながら予備知識として、PEファンドを改めて定義しておこう。プライベート・エクイティ・ファンド（Private Equity Fund）とは、投資家から集めた資金を非公開企業の株式に投資し、経営権を取得、役員派遣などで経営に深く関与して企業価値を高めた後に売却することで、高い投資収益率を獲得することを目的とした投資ファンド。公開企業株式を取得し、非公開にしたり、金融機関から不良債権化した債務を取得する場合もある。一般的には、出資金だけでなく借入でレバレッジをかけることで投資収益率をさらに高める。種類としては、MBO（マネジメント・バイアウト）などの買収ファンド、企業再生ファンド、ベンチャーキャピタルなどが該当。資金運用を金融派生商品などを活用した様々な手法で行うヘッジファンドとは全く異なる。
官民ファンドについては、2014年11月の関係閣僚会議にかけられた「官民ファンドの運営に係るガイドラインによる検証報告（第2回）」によれば、2014年9月末現在で、官民ファンド11本（うち安倍内閣が新設したのが9本）。これへの政府からの投融資額は約6276億円、民間からの出資額は約498億円。2014年度の政府保証は3兆2615億円。官民ファンドがこれまでに支援決定した出資案件は370件、支援決定額約1兆2515億円、実投融資額は約8297億円、官民ファンドの投融資が呼び水となって民間から投資された額は約1兆3196億円。支援決定額が特に大きいのは、産業革新機構7783億円、中小企業基盤整備機構1707億円、競争力強化ファンド1190億円である。
評価面では、各ファンドごとに重要業績評価指標（KPI）と目標値が設定され、それに基づいて評価したところ、評価データがあるものでは目標値達成が多いする。また、民間投資の「呼び水効果」はあったと報告。運営が放漫に流れない最小限の歯止めは一応あるようだが、こうした評価が、各ファンドや所管官庁で行われる以上、「お手盛り」になる懸念が強い。本来は、中立的な第三者が評価するようにすべきだろう。驚いたのは、上記の実投融資額の大きさである。日本全体でのファンド総額を金融庁のファンドモニタリング調査で見ると、2014年3月末でバイアウト、ベンチャー、事業再生の3種類のファンド総額で1兆5106億円なので、官民ファンドの実投融資額8297億円は実に55%を占めることになる（調査時点に6ヶ月のズレはあるが）。民間がだらしないのか、官が肥大化し過ぎなのかは一概には決めつけられないとはいえ、少なくとも、「呼び水」というより、「官が民をクラウドアウト」している構図と捉えられなくもない。
なお、報告の詳細を見てみたい方は下記リンクを。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kanmin_fund/pdf/kenshohoukoku_dai2.pdf
官民ファンドに関連して、池田信夫氏がJBpressの1月13日付けで「岸信介から安倍首相に受け継がれる「国家資本主義」の遺伝子 資本主義の嫌いな経産省が日本経済をだめにする」で痛烈に批判している。
以下リンクの特に3頁目では、おおむね以下のように論述。
・資本市場が機能しない最大の原因が、経済産業省の国家資本主義。かつて日本経済を指導してきた彼らの産業政策の役割は終わり、資本市場で企業の再編成をしなければならないが、彼らは主役の座を降りたくないため、企業買収を妨害。資本主義は、経産省の敵。
・元同省次官の北畑隆生氏は「株主はバカで無責任」。「日の丸検索エンジン」など時代錯誤のターゲティング政策を進めて、すべて失敗。ダイエー騒動のときは官邸や財務省の方針に抵抗し、経産省が「再建」すると称して霞が関を3カ月間も混乱。ルネサス エレクトロニクスの再建でも、世界最大の企業再生ファンドKKRが1000億円出資する意向を示したのに、産業革新機構が横取り
・日銀の「異次元緩和」が失敗して、安倍首相は祖父、岸信介元首相の国家資本主義に回帰しているように見える
以下のリンクは2頁目以降は会員登録が必要だが、無料会員登録も可能
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42647
池田氏の論文の1頁目の産業再生機構についての評価は異論があるところで、これに関しては、後日、別途、取上げるつもり。最後の、「安倍首相が岸信介元首相の国家資本主義に回帰しているように見える」は、このブログの4月4日「安倍首相の賃上げ要請」でも「革新官僚」として取上げたが、自らの権益拡大のチャンスを最大限に活かそうとする「霞ヶ関」の利害とも一致しているだけに、始末が悪そうだ。
2015-04-12 17:31
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