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新規上場(IPO)ブームの裏面 [経済]

本日の日経新聞夕刊は、トップ記事で「新規上場 世界で復調 14年度、3年ぶり1000社超 中国3倍 日本も6割増」と報じた。主要国での超低金利と超金融緩和の下では当然の流れではある。ただ、本日の東洋経済オンラインは、「続出する"お粗末IPO"、問題の本質はどこに「上場ゴール銘柄」(注)はgumiだけではない」(下記リンク)として、日本市場での歪みを指摘。確かに、2014年12月に東証1部に華々しく直接上場したgumiが、わずか2カ月半で業績予想を黒字から赤字へ下方修正。投資家の失望で株価が急落した例は最近の典型例だ。他にもお粗末なIPOの類似例を挙げている。東京証券取引所(東証)はあわてて、3月31日に「最近の新規公開を巡る問題と対応について」を発表し、引受証券会社や監査法人にも上場審査の強化を要請した。
(注)上場ゴール銘柄とは、経営者が上場自体を目的と誤解して、肝心なその後の企業成長をなおざりにする姿勢の意味で使ったと思われる
http://toyokeizai.net/articles/-/66052?mm=2015-04-13

gumiのケースは、記事で指摘している「予想の粉飾」であるとしても、決算実績まで粉飾したのが、2009年11月に東証マザーズに上場した半導体製造装置メーカーのFOI。上場後、僅か半年で2009年3月期の売上高118億円のうち、100億円が虚偽であったと判明、上場廃止、破産。NEC出身の社長、野村證券出身の専務が有罪判決を受けたほか、株主がこの2名、監査証明を出した公認会計士、引受証券、さらには東証に対し、損害賠償を求め訴訟中である。特に、東証が上場審査を巡って訴訟で責任を問われるのは初めて。
上場審査の甘さという点では、2007年4月に東証マザーズに中国系企業の第一号として上場したアジア・メディアが、CEOの子会社資金私的流用で、2008年9月に上場廃止になったケース。さらに遡れば、1999年12月に東証マザーズ開設時の上場第一号となったリキッドオーディオ・ジャパンは、後日、裏社会との関係が判明、業績低迷、不透明な増資を繰り返すという漂流の末、2009年3月に上場廃止。

上記で触れた「甘い上場審査」は「氷山の一角」にすぎず、実際には極めて多いのが実情。甘い上場審査が頻発する背景には、1999年以降、相次いで新興企業向けの新興市場が設立され、6取引所の間の「市場間競争」を通じ新興企業の上場促進を図ろうとした政策がある。日本での開業率の低さは確かに問題であるとしても、安易な政策で打開しようとしたことの弊害は甚大である。最近でこそ、新興市場は活況を取り戻したが、長期間にわたって投資家から不信の目で見られ、低迷を続けていたことを忘れてはなるまい。その意味では、責任を問われるのは、会計監査人、引受証券会社だけでなく、特に監督当局、東証の責任は重大である。東証としても、前述の声明発表や引受証券会社・監査法人への上場審査の強化などを要請する前に、徹底的な総括(自己批判)が必要なのではあるまいか。
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