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日銀の異次元緩和政策(その1) [経済政策]

今日は日本銀行の異次元緩和政策を取上げよう。この量的・質的金融緩和ともいわれる政策は、黒田日銀総裁により2013.年4月3日に、消費者物価の上昇率を「2年で2%」にすることを目標に、国債や上場投資信託(ETF)の大量買い上げを通じて、金融市場に多額の資金供給する政策として始まった。1年半後には市場の意表を突く追加緩和も行われた。しかし、現実の物価上昇率が消費増税の影響を除けばほぼゼロと目標未達になっていることもあり、当初の歓迎ムードは冷めつつある。
特に、最近は黒田総裁と彼を指名した安倍首相の間に溝が広がりつつあるようだ。英エコノミスト誌4月11日号では「日本の経済政策:蜜月の終わり」と題して、凡そ以下のように指摘(JBPress4月13日)。
・アベノミクスの当初の強みは、安倍首相と自らが選んだ黒田日銀総裁との緊密な絆にあったが、ここへ来て、両氏の関係は悪化。
・主な対立点は財政政策。黒田氏は、赤字削減に関する安倍首相の取り組みが十分とは思えないと明言。政府は、金融政策以外の事柄について、黒田氏がコメントを控えることを望んでいるはずだ
・第2の対立点として、金融緩和そのものを巡る意見の違いも。黒田氏は日本をデフレから脱却させるために、あらゆる手段を使ってインフレ率を2%まで押し上げると約束。だが、この目標達成に向けて、日銀が講じている施策は十分ではないのかもしれない。物価は足踏み状態。にもかかわらず、安倍政権はこれ以上の新たな国債買い入れはやりすぎだというサインを出しているようだ。インフレ目標を定めておきながら、安倍首相は今、この目標を達成する黒田氏の能力を弱めようとしているかに見える。
・第1段階の消費税引き上げの影響もあり、日本経済は景気後退へ押し戻された。黒田氏は2014年秋に量的緩和をさらに拡大。大幅な金融緩和拡大は、力ずくで首相を増税へと踏み切らせようとする動きかのように見えた。安倍首相は結局、2段階目の消費税引き上げを先送り。政府が、財政状況の改善に向けた明確な展望が立たず、成長を促進するはずの構造改革の多くがまだ実現していないことから、今では金融緩和のリスクに懸念。
・日銀は国債の最大の買い手となり、他の参加者を市場から追い出した。そのため、今後は国債の発行が難しくなる恐れ。首相周辺には、2%というインフレ目標を変更し、もう少し控えめな数字、例えば1%程度に引き下げてはどうかという声さえある。黒田氏はいつになく率直に懸念を示し、早急に財政規律を導入する必要性を訴えている
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43514

異次元緩和賛成論の経済評論家の山崎元氏は、ダイヤモンド・オンライン4月8日「異次元緩和の「2年で2%」未達をどう考えるか」で、以下のように指摘。
・2%目標は維持すべき
・「円安」は総合的にはプラスの「効果」の方が今のところ大(「ほどよくてかつ十分な円安」)
・インフレ率が目標を達成した後の長期金利変動と、それが金融システムに与えるかもしれないショックには気を配る必要があるが、日銀による長期国債購入は、ETFによる株式購入よりも弊害が小
・消費税率引き上げが不適切だった。17年の消費税再増税という「不景気の予約」も懸念材料
http://diamond.jp/articles/-/69682

他方、当初から異次元緩和に批判的だった大蔵省出身で早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏は、ダイヤモンド・オンライン4月2日「目標の2年が経過した異次元金融緩和を総括する」で、現実のデータに基づいて概ね以下のように批判。
・この政策は円安をもたらして株価を上昇させたが、実体経済には影響を与えることができなかった。
・日銀の高値購入で国債市場が歪み、そのコストは将来、日銀納付金の減少という形で国民が負担
・おカネがじゃぶじゃぶ供給されている」という誤解があるが、銀行等の日銀当座預金と日銀券からなるマネタリーベースが増加しているだけで、景気に影響する非金融部門の流動性であるマネーストックはほとんど増えていない
・企業利益の増加も、円安進行による面が大きく、実体的裏付けがない
http://diamond.jp/articles/-/69454

明日は、さらに強烈な異次元緩和批判論2つを紹介したい。

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