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日銀の異次元緩和政策(その2) [経済政策]

昨日に続いて、日本銀行の異次元緩和政策を取上げたい。
まずは、24日付けのロイターによる池尾和人慶応義塾大学教授へのインタビュー記事、「リフレ派理論実現せず、日銀の自縄自縛に」という理論面からの痛烈な批判である。そのポイントは以下の通り。
・黒田総裁などのリフレ派理論で実現していない点が2つ。①岩田規久男副総裁が提唱していたロジックでは、原油安というのはあくまで相対価格であり、一般物価水準は貨幣数量で決まるという主張だったはず。現在、物価上昇が鈍化している背景について原油安を言い出すのであれば、総括が必要だ。
・②消費税率引き上げによる景気低迷も、追加緩和によりキャンセルできると言っていたはずだが、これも打ち消せたとは言えない。論理を一貫させるのであれば、緩和が足りないということになる。
・(物価目標達成への)強いコミットメントと、それを裏付けるためのベースマネーの大量供給の2つにより期待インフレ率を引き上げ、実質金利を低下させるというのが、日銀の理論だ。しかしゼロ金利で貨幣乗数メカニズムが働かない状況下で、ベースマネーを増やすとなぜ期待インフレ率が上がるのか、コミットさえすれば期待インフレ率が上がるのか、その論理は私には理解できない。
・期待インフレ率自体のロジックが崩れると、量的緩和政策全体が成り立たなくなってしまうため、黒田総裁が2%の物価目標に自信たっぷりに振る舞うことには理解できる。しかし、それが中央銀行に対する過度な期待を持たせることになるなら、このコミュニケーション戦略はかえって日銀を自縄自縛に陥らせることになりかねず、ジレンマがある。
・量的緩和政策継続の副作用として市場機能の劣化がはっきりと出てきており、財政政策への影響も大きい。黒田総裁自らが「デフレを脱却した際には金利も上がる」と警告しているように、「公的債務が余りに巨額なために、わずかな金利上昇でも債務残高GDP比率に与える影響は非常に大きくなる。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0NF04H20150424/

次に、本日付けの東洋経済オンラインで、財務省出身で慶応ビジネススクール准教授の小幡績氏が、「日銀金融政策決定会合で追加緩和はあるのか 30日の会合で緩和がなければ相場は暴落?」を紹介しよう。 そのポイントは以下の通り。
・明日の決定会合で追加緩和はないだろう。理由は3つ。①追加緩和の必要性はない。黒田氏は、期待インフレ率の維持を最重視。原油安による一時的な現実のインフレ率低下であれば、将来の予想インフレ率は変わらないため、追加緩和は必要ない。
・②追加緩和の必要があったとしても手段がない。現実のインフレ率がマイナスになったり、世界経済が変調するなどした場合には、追加緩和の可能性が出てくるかもしれないが、とる手段がない。国債は新規発行国債を買い尽くす勢いであり、これ以上の増加は難しい。景気は良いので国債の発行額は多少減る傾向。だから、現在の買い入れ水準の維持も難しい。買う国債がないので手段に窮する。株もREITもあるが、どちらも、マーケットは過熱しており、これ以上は買いにくいだろう。
・③「手段をひねり出すことはできるが、市場へのプラスがない。長期金利はプラスなので、これをさらに引き下げる「長期金利ターゲット」が考え得る。しかし、その理論的な問題点は、第一に日銀が政策手段とするべきものは、自身でコントロールできるものであるべきだが、長期金利はそうではないこと。第二に、長期国債市場は、経済全体の将来へのリスク見通し、リスク許容度の値付けを行っている市場であり、経済においてもっとも重要な市場。この市場の機能を失わせるような、長期金利コミットメント政策は、理論的に行うべきではない。
・「長期金利ターゲット」が望ましくないことを日銀のスタッフは分かっているはずだが、黒田氏は、その問題点をそれほど重く考えない可能性があり、日銀が「窮地スパイラル」(池尾氏の「自縄自縛」に近い)に追い込まれる可能性がある。
http://toyokeizai.net/articles/-/68198

小幡績氏がみるように日銀は、相当追い込まれた状況にあるようだ。明日の金融政策決定会合では、これまでの政策維持するとして、黒田総裁は強気の会見をするのだろうが、内実は「窮地」にあるのだろう。
今日のブログも長目になったので、より強烈な批判の紹介は明日に回したい。
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