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失敗を繰り返す中小企業政策(3)新銀行東京編 [経済政策]

今日は、一昨日に続き、失敗を繰り返す中小企業政策として、新銀行東京を取上げよう。
同行は、石原慎太郎東京都知事が、当時の「貸し渋り」の風潮に棹差して、中小企業を支援するとして、2004年4月にBNPパリバ信託銀行を買収、2005年4月に新銀行東京として開業(日本振興銀行の1年後)。東京都の出資は1000億円。スコアリング融資のモデルを開発したCRD社のシステムを使って、大々的にスコアリング融資を展開した。しかし、貸出実績は目標を大きく下回っただけでなく、不良債権が多発、2007年6月には中期経営経計画を見直し、慎重な貸出姿勢や店舗などのリストラに転じた。2008年3月期には債務不履行が285億円発生、累積赤字は毎期の赤字や減損処理により1016億円となった。東京都は買い手を探したがかなわず、4月には400億円追加出資に追い込まれた。

この間、代表執行役(社長)は、トヨタ財務畑出身の仁司泰正氏が2007年6月に退任、代わりに就任したりそな銀行出身の森田徹氏もわずか5か月で健康上の理由から退任、東京都で設立に関わった津島隆一氏が就任。開業3年で辞任した役員は17人、経営見直しの訴えが聞き入れられず辞任した者も多かった。
2009年6月には代表執行役に三和銀行出身の寺井宏隆氏が就任、過去に積んだ貸倒引当金が不要になったことにる戻し益や、開業当初に高金利で集めた定期預金の満期到来もあって、収益は小幅黒字を続け、不良債権比率も2014年3月末には6.7%と2010年3月末の19.8%から大きく6.7%に低下。貸出残高1582億円のうち、中小企業向けは64%。ところが、2012年度からの中期経営計画が2014年度で終了したにも拘らず、新計画は未だ発表されていない。新たな買い手を探しているとしても、既に新年度が始まっているのに、計画が未発表というのは異例中の異例である。舛添知事が扱いを苦慮中なのかも知れない。

この新銀行東京をめぐる問題点を列挙すれば以下の通り。
・石原知事に新銀行設立構想を提案したのは、コンサルタントの大前研一氏。提案したのは、決済業務だけを行う無店舗のバーチャル銀行だったが、石原知事は中小企業やベンチャー支援の銀行としたため、反対した大前氏は身を引いた
・石原知事は責任をトヨタ出身の仁司泰正氏らに押し付けたが、東京都や石原知事の責任の方が重大
・都議会で設立に反対したのは共産党だけで、あとは両手をあげて賛成
・同行の融資先から都議会議員11人に政治献金、うち5人が「口利き」を認めた。国会議員に渡った分を含め、3年間で総額376万円(金額は僅かだが、発覚したのは「氷山の一角」だった可能性も)
・スコアリング融資の返済状況などの監視を、システム会社は委託するよう勧めたが、自分でやると断り、実際には当初は殆ど何もしなかった
・大手行は、業況不振先の企業の貸出を肩代わりさせ、不良債権の負担を結果的に同行に押し付けた
・金融庁は実態を把握していたにも拘らず静観

なんともお粗末極まりない出来事だったが、明日は、石原知事の中小企業政策をめぐるもう1つの失敗、「東京都証券化」について取り上げよう。
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