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AIIB問題(その7) [外交]

アジアインフラ投資銀行(AIIB)については、このブログで3月25日、26日、4月1日、7日、16日、18日と取上げてきた。しかし、最近の論調は、AIIBの抱える問題点からすれば設立メンバーとしての参加を見送った政府の判断は正しかったとの見方が圧倒的である。これは、時間が経ってよくよく冷静に考えた末の見方という面もあるだろうが、政府筋の裏面での工作による面も否定できないと思われる(個人的には「陰謀論」は余り好きではないが)。

まずは、経済産業省出身で慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸博幸氏が、5月1日付けダイヤモンド・オンラインに「AIIBへの対応でブレた日経と経済界のダメ具合」を紹介したい。そのポイントは以下の通り。
・日本がAIIBに焦って参加する必要性はまったくない
・AIIBの格付は日米が参加しないのでAーになるとの説も。その場合、調達金利は格付AAAのADB(アジア開発銀行)より+1%
・不況に喘ぐ中国の建設会社の救済策との見方も
・中国政府の下部組織のようなAIIBが他国の信用を使って採算性の低いプロジェクトを実施することになりかねない
・今更のAIIB参加論は「認知的不協和」の典型例。これは、自分の考えや前提としていた条件が間違っていたと分かったときに感じる心理的葛藤。いくつかのアジアの国が参加を表明したときは、それらが参加しても大したことはないと高を括っていたのに、参加するはずがないと信じていたG7加盟国が参加を表明し、かつ57ヵ国と多数に感じる数の国が参加したことで、「参加する必要ない」と考える前提が崩れてしまった
http://diamond.jp/articles/-/70893?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor

次に、コロンビア大学教授の伊藤隆敏氏が4月30日の日経経済教室に寄稿した「アジア投資銀の行方(上)拙速な参加見送りは妥当」である。そのポイントは以下の通り。
・組織制度設計を巡っては3つの問題。出資比率で中国が断トツになること。融資案件・条件に対する懸念。既存の国際金融機関との関係。国際金融機関同士の融資条件の緩和競争というのは避けるべき
・世銀やADBは、開発金融には環境への影響の配慮、少数民族や低所得層への配慮など世界のスタンダードがあるとしているが、中国は「何が『ベスト』かは分からない。『グッド』があるだけだ」といっている
・ノウハウ吸収に数年かかるとして、その後は次第に世銀やADBとは異なる独自路線をとる可能性も
・改革案次第で参加の選択肢も持ち続けよ

他方で、参加を促すものは、上記と同じ日経経済教室で、東京大学特任教授、前アジア開発銀行研究所長の河合正弘氏が、「アジア投資銀AIIBの行方(下)国際秩序に中国取り込め」を寄稿。そのポイントは以下の通り。
・出資比率を推計すると、中国が約1/3と圧倒的に大きく、対抗できる国はない。だが日本が参加すれば出資のバランスは大きく変わる。日本の出資比率は12%となり中国は28%にまで下がる。日本単独では中国と対抗できないが、欧州と組めば33%になり中国を上回る。日欧連携を通じ中国の行動をチェックできることに。より公正なガバナンスを可能にするには日本の参加が欠かせない
・また、世銀やADBは融資案件を本部常設の理事会で決めるが、AIIBは理事会を置いても本部に常設とせず、総裁の権限を強める方向だ。融資案件や基準が中国の意向に左右される懸念が残る。意思決定の透明性を高め、業務や経営陣を効果的に監視するには、やはり常設の理事会を本部に設けることが重要。日本の参加によりガバナンスが強化され、多くの懸念が解消

私自身の立場は上記の河合氏に近い。様々な問題点を挙げつらうよりも、参加した上で、欧州と連携して中国の暴走を抑制するべきと考える。格付が仮にA-になった場合の問題は、AIIBの貸出金利が高り、それに見合うインフラ計画が少なく可能性はあるとしても、それはAIIB、中国が負うべき問題で、日本が負うべき問題ではない筈。それを、安部首相に至っては、20日のテレビ番組で、中国が主導するAIIBを「悪い高利貸からお金を借りた企業は、その場しのぎとしても未来を失ってしまう」と、「悪い高利貸」呼ばわりで牽制したようだ。日本の選択肢を狭めるだけで、「大人気ない」態度という他ない。
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