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TPP問題(2) [外交]

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)問題については、本ブログ4月21日「TPPと日米協議問題」で取上げた後は、交渉進展の鍵を握る大統領貿易促進権限(TPA)法案の行方を見守ってきた。TPAとは、議会への事前通告等の条件を課す代わりに、議会は、大統領と外国政府との通商合意の個別内容の修正を求めずに一括承認するか不承認とするもので、まさに、交渉進展の鍵を握るものである。16日の「日経新聞によれば、上院が15日にTPAの審議入りに必要な動議を賛成多数で可決、与野党が週明けから本格的な法案修正の協議に入ることとなった。米政府内では上院の最終投票について可決を楽観する見通しが多いが、反対派や態度未定が多い下院は厳しい情勢。日米などが年内妥結を目指すTPPの日程から逆算すると、TPAを成立させる実質的な期限は今夏。今後の下院審議は不透明だが、取り敢えず、1つの区切りとして、TPP問題のその後の状況をまとめておきたい。

まず第一に、5月4日の日刊ゲンダイ「安倍政権は米国と合意済み「TPP妥結」で日本の産業は崩壊へ」と題する記事のポイントを紹介しよう。
・恐ろしいのはISD条項。損害を受けたアメリカ企業は、アメリカが支配する“国際投資紛争解決センター”に提訴できるようになる。アメリカが支配する機関に訴えるのだから、認められるのは確実。米韓FTAを結んだ韓国も、このISD条項に苦しめられている。しかも、一度決定したら、アメリカに不利になる改定はできないラチェット規定まで盛り込まれている。TPP妥結は、日本の富をアメリカに差し出すようなもの」(筑波大名誉教授・小林弥六氏=経済学)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/159525

第二に、TPAに関連した記事で、5月14日の東洋経済オンライン「TPPテキスト開示問題、裏で何があったのか 不可解な西村康稔内閣府副大臣の一連の発言」のポイントを紹介しよう。
・米国では3月に、連邦議員全員にテキストを公開。ただしセキュリティ部屋での閲覧のみで、記録やコピーなどをとることはできず、携帯電話やカメラなどの持ち込みも禁じられたうえでの公開だ。セキュリティクリアランスを得たスタッフ以外との情報共有することも禁止。違反した場合は刑事罰に課せられ、議員資格はく奪もありうるという厳しいもの
・米国を訪問した西村氏は5月4日に「来週以降、テキストへのアクセスを国会議員に認める方向で少し調整をしたい」と発表。ところが7日にこの発言を全面撤回したことで、永田町は大騒ぎになった
http://toyokeizai.net/articles/-/69762?utm_source=morning-mail&utm_medium=email&utm_campaign=2015-05-15
これは、それほど大したことはないとはいえ、TPP参加国に課せられた交渉経緯の守秘義務と、国会議員への情報公開とのバランスの難しさを改めて示したものといえよう。

第三には、吉崎達彦氏による5月15日付けの東洋経済オンライン記事「TPP交渉が失敗したら、どうなるのか 悪いのは、オバマ大統領と共和党?」のポイントを紹介したい(P3まで)。
・ぶっちゃけ、コメは大きな問題ではない
・交渉参加国は、このTPA法案が通るかどうかを注視。TPAがなかったら、一切譲歩はしたくない。逆にTPAさえ通れば、実質合意が現実味を帯びてくる
・民主党内は自由貿易アレルギーが強い。ヒラリー・クリントン候補が、大統領選挙を意識してこの問題について沈黙しているほど
・お願い下手なオバマ大統領と票読みできない共和党
・TPAが成立せず、TPP交渉自体が失速した場合、交渉に参加している他の11か国は、うわべ上は「継続審議」という言い方をするだろうが、「オバマ政権の間はもうダメだよね」という見方が支配的になるだろう。仮にTPP交渉を再開するにしても、それは2017年1月以降ということに
・TPPが不成立となれば、中国は「えっ、ワシの不戦勝でっか?」とばかりに笑いが止まらないだろう
http://toyokeizai.net/articles/-/69762?utm_source=morning-mail&utm_medium=email&utm_campaign=2015-05-15

TPP問題(2)と題したものの、第二、第三はその前提となるTPAが中心になってしまった。ISD条項については、日経などには何故か取上げられてない重大な問題である。TPPではこれ以外にも、医療保険制度なども問題になる筈だが、これらを論じた記事が見つかり次第、今後も取上げてゆきたい。
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