日銀の異次元緩和政策(その4) [経済政策]
これまでこのブログでは、日銀の異次元緩和政策について、4月28日、29日、30日と取上げてきた。今日はその4である。
まず、5月2日付けの日経新聞は、「日銀、分析リポート「異次元緩和で物価0.6%上昇」 押し上げ効果を強調」として、前日に日銀が発表した分析リポートの内容を、概ね以下のように紹介。
・2013年4月に導入した異次元緩和で消費者物価指数(CPI)が0.6%上昇
・13年1~3月と14年10~12月の経済情勢を比較すると、長期金利は0.7%から0.4%へと低下した一方、予想物価上昇率は0.5%程度上昇したため、実質金利は0.8%程度低下したと推計
・実質金利が0.8%低下すると、CPIを0.6%押し上げるほか、実質GDPを6兆円高める効果が期待
・ただCPIの上昇率は今年に入って0%にまで鈍化したほか、GDPの伸びは昨年10~12月の実績で1兆円しか増えていない。民間エコノミストの間では「金融緩和がどのように物価上昇や景気回復に波及しているのか判然としない」(みずほ証券の上野泰也氏)との指摘
なお、参考までに分析リポートのリンク
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j08.htm/
他方、異次元緩和に批判的なBNPパリバ証券の河野龍太郎氏は、5月15日付けのロイターのコラムで「金融抑圧が招く「バブル」への道」と題して、概ね以下のように指摘。
・アベノミクスの最終的な帰結は、1)インフレが上昇するだけで、ゼロ近傍まで低下した潜在成長率はほとんど改善しないままに終わり、2)膨張する公的債務に歯止めをかけることもできないため、財政への配慮から、インフレ上昇後も、日銀はゼロ金利政策や大量の長期国債購入政策を停止することができなくなる
・中長期の日本経済に悲観的な筆者が、日本株に強気な理由は、金融抑圧が継続されるからである
・日本では、民間純貯蓄が政府赤字によってほとんど食い潰され、2008年度以降、国民純貯蓄はゼロ近くまで低下。成長の継続には民間投資(資本蓄積)が不可欠だが、その投資を賄う国民純貯蓄がすでに枯渇
・政府赤字の原因は社会保障費の増大にある。このため、社会保障費を削減することで、政府赤字を減らさなければならない
・増税もせず、歳出削減もせず、それでも公的債務のGDP比の引き下げを可能とする方法が金融抑圧。犠牲になるのは預金者
・公的債務の対GDP比の安定的な低下には、理論的にも歴史的にも財政調整(増税、歳出削減)とインフレタックスの2つの方法しか存在しない。財政調整が選択されなければ、意図するかしないかにかかわらず、残る選択肢はインフレタックスとなる
・名目成長率を下回る水準に長期金利を抑制すると、潜在成長率が劇的に改善しなくても、株価や不動産価格が上昇を続け、ユーフォリアが広がる。つまり、バブルが膨らむ
・最終的にバブルが弾けた時、周り中がバブルの残骸だらけということが明らかになるだろう
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0O00KJ20150515?pageNumber=1&virtualBrandChannel=14311
次には、既に生じている不動産バブルへの警鐘の記事である。みずほ証券の上野泰也氏は、5月19日付けの日経ビジネスオンラインで、「データで見る「田んぼにアパート」の建設バブル 不動産活況でも「バブル警戒」緩める日銀」として、日銀が4月に発表した「金融システムレポート」を中心に概ね以下のように警告。
・相続税対策の貸家建設で資金需要が活況
・金融活動指標のうち不動産業実物投資について、「注意していく必要」は認めたものの、「過去の不動産ブーム期にみられた過熱感」は否定するスタンス
・黒田総裁は「前回とは違う」としているが、バブルは毎回「違った顔」で登場するというのが、歴史の教えるところ
・株価「過熱」判断は、今回、計測方法の見直しが行われた結果、過熱感を示す「赤」の警戒表示が出たケースは1987~1989年頃だけになり、1999~2000年のITバブル期、米国で住宅バブルが発生して株価が世界的に高騰した2007年頃、そして「アベノミクス」相場で株価が急上昇した2013年以降について、「赤」の警戒信号はすっかり消し去られた
・残念なことに、こうした日銀の「お手盛り」を指摘して批判的に報じたメディアは見当たらない
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150515/281147/?n_cid=nbpnbo_mlp
上野 泰也氏が最後に指摘したメディアの姿勢は、まさに体制翼賛的姿勢そのものである。異次元緩和政策については、今後も取上げてゆきたい。
まず、5月2日付けの日経新聞は、「日銀、分析リポート「異次元緩和で物価0.6%上昇」 押し上げ効果を強調」として、前日に日銀が発表した分析リポートの内容を、概ね以下のように紹介。
・2013年4月に導入した異次元緩和で消費者物価指数(CPI)が0.6%上昇
・13年1~3月と14年10~12月の経済情勢を比較すると、長期金利は0.7%から0.4%へと低下した一方、予想物価上昇率は0.5%程度上昇したため、実質金利は0.8%程度低下したと推計
・実質金利が0.8%低下すると、CPIを0.6%押し上げるほか、実質GDPを6兆円高める効果が期待
・ただCPIの上昇率は今年に入って0%にまで鈍化したほか、GDPの伸びは昨年10~12月の実績で1兆円しか増えていない。民間エコノミストの間では「金融緩和がどのように物価上昇や景気回復に波及しているのか判然としない」(みずほ証券の上野泰也氏)との指摘
なお、参考までに分析リポートのリンク
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j08.htm/
他方、異次元緩和に批判的なBNPパリバ証券の河野龍太郎氏は、5月15日付けのロイターのコラムで「金融抑圧が招く「バブル」への道」と題して、概ね以下のように指摘。
・アベノミクスの最終的な帰結は、1)インフレが上昇するだけで、ゼロ近傍まで低下した潜在成長率はほとんど改善しないままに終わり、2)膨張する公的債務に歯止めをかけることもできないため、財政への配慮から、インフレ上昇後も、日銀はゼロ金利政策や大量の長期国債購入政策を停止することができなくなる
・中長期の日本経済に悲観的な筆者が、日本株に強気な理由は、金融抑圧が継続されるからである
・日本では、民間純貯蓄が政府赤字によってほとんど食い潰され、2008年度以降、国民純貯蓄はゼロ近くまで低下。成長の継続には民間投資(資本蓄積)が不可欠だが、その投資を賄う国民純貯蓄がすでに枯渇
・政府赤字の原因は社会保障費の増大にある。このため、社会保障費を削減することで、政府赤字を減らさなければならない
・増税もせず、歳出削減もせず、それでも公的債務のGDP比の引き下げを可能とする方法が金融抑圧。犠牲になるのは預金者
・公的債務の対GDP比の安定的な低下には、理論的にも歴史的にも財政調整(増税、歳出削減)とインフレタックスの2つの方法しか存在しない。財政調整が選択されなければ、意図するかしないかにかかわらず、残る選択肢はインフレタックスとなる
・名目成長率を下回る水準に長期金利を抑制すると、潜在成長率が劇的に改善しなくても、株価や不動産価格が上昇を続け、ユーフォリアが広がる。つまり、バブルが膨らむ
・最終的にバブルが弾けた時、周り中がバブルの残骸だらけということが明らかになるだろう
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0O00KJ20150515?pageNumber=1&virtualBrandChannel=14311
次には、既に生じている不動産バブルへの警鐘の記事である。みずほ証券の上野泰也氏は、5月19日付けの日経ビジネスオンラインで、「データで見る「田んぼにアパート」の建設バブル 不動産活況でも「バブル警戒」緩める日銀」として、日銀が4月に発表した「金融システムレポート」を中心に概ね以下のように警告。
・相続税対策の貸家建設で資金需要が活況
・金融活動指標のうち不動産業実物投資について、「注意していく必要」は認めたものの、「過去の不動産ブーム期にみられた過熱感」は否定するスタンス
・黒田総裁は「前回とは違う」としているが、バブルは毎回「違った顔」で登場するというのが、歴史の教えるところ
・株価「過熱」判断は、今回、計測方法の見直しが行われた結果、過熱感を示す「赤」の警戒表示が出たケースは1987~1989年頃だけになり、1999~2000年のITバブル期、米国で住宅バブルが発生して株価が世界的に高騰した2007年頃、そして「アベノミクス」相場で株価が急上昇した2013年以降について、「赤」の警戒信号はすっかり消し去られた
・残念なことに、こうした日銀の「お手盛り」を指摘して批判的に報じたメディアは見当たらない
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150515/281147/?n_cid=nbpnbo_mlp
上野 泰也氏が最後に指摘したメディアの姿勢は、まさに体制翼賛的姿勢そのものである。異次元緩和政策については、今後も取上げてゆきたい。
タグ:長期金利 実質金利 日銀、分析リポート「異次元緩和で物価0.6%上昇」 押し上げ効果を強調 異次元緩和政策 消費者物価指数(CPI) 予想物価上昇率 河野龍太郎 金融抑圧が招く「バブル」への道 アベノミクスの最終的な帰結 インフレが上昇するだけ 潜在成長率はほとんど改善しないままに終わり 公的債務に歯止めをかけることもできない インフレ上昇後 ゼロ金利政策や大量の長期国債購入政策を停止することができなくなる 民間純貯蓄が政府赤字によってほとんど食い潰され 国民純貯蓄はゼロ近くまで低下 政府赤字 社会保障費の増大 金融抑圧 犠牲になるのは預金者 財政調整(増税、歳出削減) インフレタックス ユーフォリア バブル 上野泰也 データで見る「田んぼにアパート」の建設バブル 不動産活況でも「バブル警戒」緩める日銀 金融システムレポート 相続税対策の貸家建設 金融活動指標 不動産業実物投資 、「過去の不動産ブーム期にみられた過熱感」は否定 黒田総裁 前回とは違う バブルは毎回「違った顔」で登場 株価「過熱」判断 計測方法の見直し 「赤」の警戒表示 1987~1989年頃だけ お手盛り 批判的に報じたメディア
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