孫崎亨、マーティン・ファクラー著「崖っぷち国家日本の決断~安倍政権の暴走と自主独立への提言」(日本文芸社、2015.2)の紹介(3) [外交]
一昨日、昨日に続いて、「崖っぷち国家日本の決断~安倍政権の暴走と自主独立への提言」(日本文芸社、2015.2)を紹介したい。
第4章「日本を崩壊させる安倍外交の行方」で私が注目したポイントは、概ね以下の通り。
・「カジノ法案」がなぜ成長戦略なのか。2020までに国内3カ所でカジノ開設を認める方向だが、公明党の反対で先送り。「カジノ法」施行で喜ぶのは、安倍首相と親しいフジTVの日枝会長、大手不動産、ゼネコンなど。アメリカと同様に一握りの既得権集団が政治を動かすように
・原発再稼働の裏に潜むアメリカの関与。2012.8.15に発表された「第三次アーミテージ・ナイ・レポート」には、「日本は一流国に留まるか、二流国になるのか、原発廃止は容認しない」と恫喝的。「原発の慎重な再開が日本にとって正しくかつ責任ある第一歩。原発の再稼働は、温室効果ガスを2020までに25%削減するという日本の国際公約を実現する唯一の策であり、円高傾向の最中での燃料費高騰によって、エネルギーに依存している企業の国外流出を防ぐ賢明な方策。福島の教訓をもとに、東京は安全な原子炉の設計や健全な規制を促進するうえでリーダー的役割を果たすべき」
・政権党のおかしさを隠す「特定秘密保護法」。「9.11同時テロ」のあと「愛国法」というプライバシーを完全に無視する法律がつくられた。スノーデン事件で、NSCなどの巨大組織がインターネットからメールを読んだり、電話を盗聴していたことが判明。アメリカ政府は2012に9500万件もの秘密をつくった。日本はアメリカの「テロとの戦い」への過剰反応をマネしないほうがいい。やたらに秘密を守りたがる国をつくると、民主主義が正当に機能しなくなる
・コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、ハフィントン・ポスト紙にTPPに反対する理由を5つ。①TPPは貿易協定ではなく、投資家保護の協定。②TPPは持続可能な発展、環境、不平等の拡散を無視。③ISD条項は、国家との関係で正常ではなく、企業側に一方的な力を与えている。④TPP交渉の全過程が透明でない。これだけでもこの協定を排する理由がある。⑤オバマ政権は雇用、所得配分、経済成長と貿易等に関する分析を提示してない
・総括して、「私はグローバリズムや外国への投資には賛成だが、現在のTPP合意には反対。グローバリズムの推進といっても、勝利者だけでなく、敗者に対する配慮があるものでなければならない。今のグローバリズムの延長であるTPPは、パイを大きくするが貧しい者への負担を増大させ、不平等の拡大と金融危機と環境破壊を伴うものである。TPPはこの路線の延長を加速させるものである」
・「ISD条項」で多国籍企業の立場は国家と対等になった。この条項が適用され裁判になったとき、「特定の国の法律、裁判、行政により経済的利益が侵されたら、それを補償しなければならない」。メキシコの環境問題やカナダの医療問題にまで拡大し、そこでの賠償金の要求も1億$とかケタが違ってしまった。ヨーロッパとアメリカの自由貿易協定にこの条項が入ったことで、ヨーロッパの多国籍企業はアメリカを訴えることも辞さないようになった。今まではアメリカが外の国に押付けるものだったのに、場合によってはアメリカ国内に逆流しかねないリスクを内在。アメリカの民間団体が最近、この条項の危険性を指摘し始めた
・日本はすでにアメリカを追う貧困国になった。所得が国民の平均値の半分に満たない人の割合である貧困率は、日本16%、アメリカ17%、ドイツ9%
第5章「沖縄の独立から始まる日本政治の胎動」で私が注目したポイントは、概ね以下の通り。
・沖縄基地問題がこじれると沖縄は独立国になる。日本政府は1874に台湾出兵、中国の注意が台湾にそれている間に、琉球を日本に組込んだ。それ以来、沖縄は日本の最初の植民地に近い扱いに。オスプレイ配備で岩国市長が少し文句を言うと、日本政府は「はいはい」と気を使うが、沖縄の人が文句を言っても無視
・「琉球独立論」は歴史的に正当な議論。沖縄出身の松島泰勝・龍谷大学教授が書いた「琉球独立論」(バジリコ刊)によれば、「1879の琉球処分によって沖縄県が誕生し、そのときに琉球は日本の植民地になった」
これ以降の章は省略。沖縄を本土に都合のいいように扱ってきたツケが「独立」の動きにつながりかねないとの指摘は、歴史からみてもうなずけるところである。沖縄の基地負担軽減に本気で取り組むべきなのだろう。
なお、明日の5日から9日までは都合により休むつもりである。再開する10日に期待を。
第4章「日本を崩壊させる安倍外交の行方」で私が注目したポイントは、概ね以下の通り。
・「カジノ法案」がなぜ成長戦略なのか。2020までに国内3カ所でカジノ開設を認める方向だが、公明党の反対で先送り。「カジノ法」施行で喜ぶのは、安倍首相と親しいフジTVの日枝会長、大手不動産、ゼネコンなど。アメリカと同様に一握りの既得権集団が政治を動かすように
・原発再稼働の裏に潜むアメリカの関与。2012.8.15に発表された「第三次アーミテージ・ナイ・レポート」には、「日本は一流国に留まるか、二流国になるのか、原発廃止は容認しない」と恫喝的。「原発の慎重な再開が日本にとって正しくかつ責任ある第一歩。原発の再稼働は、温室効果ガスを2020までに25%削減するという日本の国際公約を実現する唯一の策であり、円高傾向の最中での燃料費高騰によって、エネルギーに依存している企業の国外流出を防ぐ賢明な方策。福島の教訓をもとに、東京は安全な原子炉の設計や健全な規制を促進するうえでリーダー的役割を果たすべき」
・政権党のおかしさを隠す「特定秘密保護法」。「9.11同時テロ」のあと「愛国法」というプライバシーを完全に無視する法律がつくられた。スノーデン事件で、NSCなどの巨大組織がインターネットからメールを読んだり、電話を盗聴していたことが判明。アメリカ政府は2012に9500万件もの秘密をつくった。日本はアメリカの「テロとの戦い」への過剰反応をマネしないほうがいい。やたらに秘密を守りたがる国をつくると、民主主義が正当に機能しなくなる
・コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、ハフィントン・ポスト紙にTPPに反対する理由を5つ。①TPPは貿易協定ではなく、投資家保護の協定。②TPPは持続可能な発展、環境、不平等の拡散を無視。③ISD条項は、国家との関係で正常ではなく、企業側に一方的な力を与えている。④TPP交渉の全過程が透明でない。これだけでもこの協定を排する理由がある。⑤オバマ政権は雇用、所得配分、経済成長と貿易等に関する分析を提示してない
・総括して、「私はグローバリズムや外国への投資には賛成だが、現在のTPP合意には反対。グローバリズムの推進といっても、勝利者だけでなく、敗者に対する配慮があるものでなければならない。今のグローバリズムの延長であるTPPは、パイを大きくするが貧しい者への負担を増大させ、不平等の拡大と金融危機と環境破壊を伴うものである。TPPはこの路線の延長を加速させるものである」
・「ISD条項」で多国籍企業の立場は国家と対等になった。この条項が適用され裁判になったとき、「特定の国の法律、裁判、行政により経済的利益が侵されたら、それを補償しなければならない」。メキシコの環境問題やカナダの医療問題にまで拡大し、そこでの賠償金の要求も1億$とかケタが違ってしまった。ヨーロッパとアメリカの自由貿易協定にこの条項が入ったことで、ヨーロッパの多国籍企業はアメリカを訴えることも辞さないようになった。今まではアメリカが外の国に押付けるものだったのに、場合によってはアメリカ国内に逆流しかねないリスクを内在。アメリカの民間団体が最近、この条項の危険性を指摘し始めた
・日本はすでにアメリカを追う貧困国になった。所得が国民の平均値の半分に満たない人の割合である貧困率は、日本16%、アメリカ17%、ドイツ9%
第5章「沖縄の独立から始まる日本政治の胎動」で私が注目したポイントは、概ね以下の通り。
・沖縄基地問題がこじれると沖縄は独立国になる。日本政府は1874に台湾出兵、中国の注意が台湾にそれている間に、琉球を日本に組込んだ。それ以来、沖縄は日本の最初の植民地に近い扱いに。オスプレイ配備で岩国市長が少し文句を言うと、日本政府は「はいはい」と気を使うが、沖縄の人が文句を言っても無視
・「琉球独立論」は歴史的に正当な議論。沖縄出身の松島泰勝・龍谷大学教授が書いた「琉球独立論」(バジリコ刊)によれば、「1879の琉球処分によって沖縄県が誕生し、そのときに琉球は日本の植民地になった」
これ以降の章は省略。沖縄を本土に都合のいいように扱ってきたツケが「独立」の動きにつながりかねないとの指摘は、歴史からみてもうなずけるところである。沖縄の基地負担軽減に本気で取り組むべきなのだろう。
なお、明日の5日から9日までは都合により休むつもりである。再開する10日に期待を。
タグ:崖っぷち国家日本の決断~安倍政権の暴走と自主独立への提言 日本はすでにアメリカを追う貧困国になった 環境破壊 金融危機 不平等の拡大 敗者に対する配慮 現在のTPP合意には反対 オバマ政権は雇用、所得配分、経済成長と貿易等に関する分析を提示してない 交渉の全過程が透明でない 歴史的に正当な議論 特定秘密保護法 愛国法 沖縄の独立から始まる日本政治の胎動 持続可能な発展、環境、不平等の拡散を無視 スノーデン事件 琉球独立論 貿易協定ではなく、投資家保護の協定 TPPに反対する理由を5つ ISD条項は、国家との関係で正常ではなく、企業側に一方的な力を与えている 第三次アーミテージ・ナイ・レポート 9.11同時テロ アメリカの関与 沖縄は日本の最初の植民地に近い扱いに ジェフリー・サックス 民主主義が正当に機能しなくなる テロとの戦い 電話を盗聴 琉球を日本に組込んだ 台湾出兵 沖縄は独立国に 沖縄基地問題 原発再稼働 一握りの既得権集団 カジノ法案 日本を崩壊させる安倍外交の行方
2015-06-04 14:25
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いい本の紹介、ありがとうございます。
by 佐藤 (2015-06-12 14:14)