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新安保法制(その1) [外交]

今日は新安保法制を取上げたい。国会での参考人の意見陳述で、自民党推薦の憲法学者の参考人までが「違憲」発言をした、「自民党のオウンゴール」ともいえる大失態については、後日取上げるとして、今日は基本的なことを「その1」として取上げたい。

紹介したいのは、元防衛官僚で国際地政学研究所理事長の柳澤協二氏が、6月1日と2日のダイヤモンド・オンラインに寄稿した「安保法制と日米ガイドラインは日本の抑止力を高めない」である。上巻のポイントは概ね以下の通り。
・アメリカとの公約が先行。自衛隊・米軍の平時からの一体化が進む。既に運用面ではほぼ完全にアメリカ軍との一体化はできているが、今回は、平時からの調整メカニズム=政策面での一体化が明記
・実は大きなカギとなる自衛隊法95条の改正。95条の武器等防護の規定は平時の権限で、かつ部隊の現場の判断。重要影響事態や存立危機事態でも、武器等防護が適用
・今までとは全く違う世界に踏み込む、自衛隊の活動が質的に違ってくる。自衛隊法95条の改正によって、
シームレスに米中の紛争に自衛隊が入っていく法制
・政府が重要影響事態と認定すれば、いつでも米軍と一緒に作戦ができる
・相手が恐れないと抑止にはならない、逆に巻き込まれるリスクが高まる
・もし中国が一戦交えてもいいと覚悟を決めていれば、抑止できない。現場の誤った判断で戦闘が始まるというリスクもある。新安保法制で抑止力が高まって、戦争に巻き込まれないというのは、むしろ逆。巻き込まれるリスクがものすごく高まる
・自衛隊のリスクははるかに高くなる、否応なしに「戦闘」の世界に。非戦闘地域は、一応、敵が出てこないことが前提だった。しかし、新法が定めているように、現に戦闘が行われていない地域に広げれば、敵は残存している可能性があり、敵にまず狙われるのは兵站部隊なので、非常に危険
・総理の説明では戦闘が起こりそうになれば活動を中断すると言っているが、中断は前線部隊を見殺しにするので、中断なんかできない。やはり自分も応戦して、その場に留まらなくてはいけなくなる
・PKOで自衛隊は、要員を防護するための武器使用、通常Aタイプと言われる「自己保存のための武器使用」しかできなかった。今度は自衛隊がある目的地に行こうとして、そこに立ちふさがるやつがいれば、武器を持って追い散らすような、「任務遂行のための武器使用」、通常Bタイプと言われる武器使用ができる。これは戦闘。相手も殺すし、こちらも死ぬということで、これまでとは質的に違う
http://diamond.jp/articles/-/72398

下巻のポイントは概ね以下の通り。
・武力行使の基準を書かないのは欠陥法案。国会承認を得るから書かなくていいと言っても、国会承認は事後承認でもいいので、やはりどういう基準で武力行使するのかというところを明確にすべき
・安倍政権のやり方は民主主義の存立危機事態。本来なら、憲法も、日米安保条約も変えなくてはいけない
・安倍政権の論理は、国民の生命を守るときに、民主主義など守っていられるかということでしょう。しかし、国民が民主主義が破壊された国家を望んでいるかが、まず問われなければいけない
・攻撃を受けるリスクも覚悟で考えるのが抑止力。抑止力と言うが、いざとなればアメリカが出てきてくれないと困ると言っているにすぎない
・アメリカは自分の望まぬ戦争には巻き込まれない
・中国に対して日本から事を荒立てるべきではない。中国にはあくまで“ルールを守ろう”と言い続ければいいことであって、南シナ海にまで自衛隊が出て行って、アメリカと一緒に中国をけん制するというのは、中国から見れば敵対行為になる。日中間ではテンションを下げて、これ以上関係が悪くならないようにするのが一番大事
・アメリカは今度のガイドラインでも、日本を守るのは日本が主体となってやる仕事だと明記。アメリカ軍は自衛隊を支援し補完はすると書いてあるけれども、何をするか具体的には全然書いていない
・これさえやればアメリカが必ず助けてくれるなんて考えるのは、ナイーブに過ぎる。日本の防衛は日米安保条約上のアメリカの義務として書いてあるので、ちゃんと義務を守れ、守らないのであれば基地は使わせないというぐらいの気構えで
http://diamond.jp/articles/-/72480

このように新安保法制は、戦争に巻き込まれるリスクを内在しているなど多くの問題点を抱えているにも拘らず、安部政権はそれらを殆ど説明しない。野党の追及やマスコミ報道も全く不十分。国会の会期は延長されそうだが、天木直人氏のブログの9日付けでは、「安倍首相に塩を送る」と題して、「私が安倍首相なら、安保法案成立に向けた引き延ばしはしない。なぜならば、引き延ばせば引き延ばすほど議論が高まり、議論が高まれば高まるほど安保法制の違憲性が国民に知れ渡るからだ。ましてや引き延ばしたあげく、それでも今国会で成立させることが出来なければ、その時こそアウト」と指摘。安部首相、さあ、どうする?
明日の金曜日はいつも通り休むつもり。13日にご期待を。
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