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新規上場(IPO)ブームの裏面(その2) [経済政策]

新規上場(IPO)ブームの裏面については、4月13日に取上げたが、今日はその続報版である。
まず、5月11日付け日経ビジネスオンライン「「gumiショック」で迎えたIPO市場の正念場 ベンチャー上場の活況続くか」を紹介しよう。そのポイントは概ね以下の通り。
・「gumiショックを機に、主幹事証券会社が弱気になっている
・足元のIPO相場は堅調に推移しているように見える。4月以降に新規上場した企業12社のうち9社で上場時の初値が公開価格を上回っており、直近に新規上場した企業の値動きを示すQUICK IPOインデックス(単純平均)も4月に入り上昇
・ただgumiショックの影響はじわりと広がっている。弱気になった証券会社が、これまでよりも慎重に企業の上場時の株価を見積もるようになっている
・東証は3年ほど前から新規上場の審査基準を緩和し、審査を簡略化。06年のライブドア事件以降、低迷していたIPO市場をテコ入れするためだ。基本的に「上場企業の成長性の有無は証券会社の判断に任せる」(東証関係者)方針を打ち出した結果、上場企業数は増加し、15年度は9年ぶりに100社を超える企業が上場する見通し
・だがIPO市場が活況を取り戻す一方で、その副作用も出始めていた。例えば14年に上場した液晶大手のジャパンディスプレイは上場後に複数回、業績の下方修正を発表。13年上場のエナリスは翌年に不適切な会計処理が発覚するなど、IPO市場の規律の緩みが目立つように
・審査基準の緩和を機に、多くの企業が「今がチャンス」とばかりに上場準備に乗り出し、証券会社や監査法人の間でも顧客企業の獲得競争が激化したことがその背景。上場する段階にない企業にも証券会社が営業をかけるなど、上場予備軍の「青田買い」が繰り広げられた
・gumiにしても、業績修正発表後に韓国子会社で従業員の横領が発覚するなど、上場までにどの程度コーポレート・ガバナンスの仕組みを整えていたのか、証券会社や監査法人がきっちりと審査、指導していたのかといった疑問が残る
・今回、東証が証券会社や監査法人に対してIPOの質向上を訴えたことについて、「IPO企業の不祥事の責任を(東証は)証券会社や監査法人に押し付けようとしている」(IT企業幹部)と批判する声も
・一方で、東証側には「成長性の有無を審査するのはあくまで証券会社で、極端に言えば東証は書類に不備がなければ上場させるようにしてIPO市場の活況を保ちたい」(東証関係者)という狙い
・ベンチャー企業には、想定外の経営環境の悪化で上場直後に業績の下方修正を迫られるリスクは常にある。重要なのは、リスクを排除することよりも、上場直後の業績修正に対して企業や主幹事証券会社、監査法人などが市場の不信を招かないよう、きちんと説明責任を果たせるかどうか
・gumiについて言えば、なぜ「ショック」が起きたのか、証券会社や監査法人からの説明はなく、gumi側も「主力ゲームの課金収入が想定を下回った」としか説明していない。さらに業績修正の直後に海外子会社の不祥事が発覚し、早期退職の募集を発表するなどしたため、市場の不信に歯止めがかからなくなってしまった
・米国では大手企業が積極的にベンチャーを買収する傾向があるので、IPO市場が低迷してもベンチャーが育つ土壌がある。一方、大手企業が買収に慎重な日本においては、IPOがベンチャーにとって事業成長に弾みをつける数少ない機会

次に、5月11日付け日経新聞では「新規上場「質より量」で緩み 業績下方修正や経営者の不正相次ぐ 東証など、規制の均衡点探る」として、概ね以下のように伝えた。
・規律の緩みは、IPOの質よりも量を優先する官民挙げた市場活性化策が招いた面も大
・gumiにとどまらない。13年上場の電力調達支援のエナリスは不適切な会計処理が発覚。11年上場のアイセイ薬局は経営者が架空の出店計画で資金を流用。新日本監査法人は不透明な出店に引当金を積むよう求めたが、不正は見抜けなかった
・金融危機後の新規上場の低迷が日本の国力低下の象徴とみなされ、その打開が金融庁や東証を含めた証券界の大目標に
・証券各社も相場回復で陣容を拡大し、主幹事争いも激化。何より「数の回復は国策」という関係者たちの共通認識がチェックを甘くした。「大手の証券会社や監査法人がかかわっており深刻だ」(東証幹部)
・東証は3月に急きょ証券会社や監査法人に異例の通達。業績予想の前提となる根拠の開示や経営者の審査の強化を促したが、ハードルを下げたのは東証や金融庁でもある
・東証は12年に直近赤字や減益でも1、2部に上場しやすくした。金融庁は今月末、不正防止の社内体制を記した「内部統制報告書」の提出義務を軽くする新興企業向けの規制緩和に踏み切った。「規制強化でまともな新興企業を締め出したくない」。東証幹部は本音を明かす
・だが実際はそう簡単ではない。上場準備中の企業からは「主幹事が慎重で上場を考え直すほど想定公開価格が下がってきた」(ネット系企業)との声も

さらに、選択2015年6月号は「野村證券「株式上場詐欺」の重罪 投資家裏切る悪行で「ぼろ儲け」」と題する記事を掲載、そのポイントは以下の通り。
・「野村は粉飾まがいの業績予想の片棒を積極的に担いだ」。怪しい銘柄がゾロゾロとして、一覧表には、日本エマージェンシーアシスタンス、ありがとうサービス、UMNファーマ、メドレックス、夢展望、エナリス、ジャパンディスプレイ、みんなのウェディング、ヤマシンフィルタ、gumiを例示
・野村の新規上場引受けを含む投資銀行部門は、僅か700人(全体2.6万人)だが、売上は7800億円と営業部門4700億円を上回る。人気のない銘柄には営業部隊に「はめ込み」のノルマが課せられ、社内に軋轢も

こうみてくると、野村などの主幹事証券会社や監査法人などの行き過ぎた競争だけでなく、審査基準緩和でそれを煽った金融庁や東証の責任も重大。金融審議会といえどもそのお先棒を担いだ以上、本来は中立的な第三者機関を設立して、問題を徹底的に解明し、今後の在り方を真剣に検討すべき段階に来ているのではなかろうか。
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