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日本企業のコーポレート・ガバナンス問題 [企業経営]

昨日は、東芝の不正会計問題を取上げたが、今日は日本企業のコーポレート・ガバナンス問題を取上げたい。
まず、5月22日付け日経ビジネスオンラインの「英エコノミスト誌から見たシャープと東芝 日本の企業改革は依然道半ば」を紹介しよう。そのポイントは以下の通り。
・日本のコーポレートガバナンスがついに夜明けを迎えるとの高揚感や、日本企業の収益性が改善するとの期待が高まっていた。だが5月半ば、シャープと東芝の2社から残念なニュースが飛び出し、日本企業の体質改善はまだ道半ばであることを思い出させた
・シャープは、この3年間で2度目となる経営再建・金融支援計画で大幅な減資に踏み切り、全世界の従業員約5万人の1割を削減したが、同社は、苦戦が続くすべての事業について、売却を拒んでいる
・取引銀行は、融資額があまりに巨額でシャープが倒産すれば自らの利益が深刻な打撃を受けることが避けられないため、支援を打ち切れないでいる
・だが市場は、シャープがいずれ債務不履行に陥る確率は極めて高いと判断。事業の一部がまだ価値を有しているうちに、なぜ政府が韓国のサムスンなど強力な海外企業に支援を要請しなかったのかとの疑問を呼び起こす
・東芝は4人もの社外取締役を設置。だが取締役会に近い筋が認めているように、今回の事態は同社が企業文化やガバナンス全体において依然として問題を抱えている可能性を浮き彫りに
・東芝は2010年に携帯電話事業を売却したものの、狭量な経営トップは総合電機の看板を維持すべく、採算の悪いテレビやパソコン事業から撤退しようとしない
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150520/281391/?P=1&prvArw

次に、金融庁と東京証券取引所を共同事務局とする「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」の座長として、今年3月に「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方コーポレートガバナンス・コード原案」を取りまとめた池尾和人・慶應義塾大学経済学部教授が、ダイヤモンド・オンラインで5月27日と6月4日の2回にわたって解説した記事を紹介しよう。
5月27日付けの(上)「有識者会議の座長が明かす コーポレートガバナンス・コードに込めた理念」のポイントは以下の通り。
・日本企業のROE(株主資本利益率)は国際的に低いだけでなく、高度成長期以降、下降トレンド
・日本企業の資本効率改善には、さまざまな対策が考えられるが、コーポレートガバナンスの整備は、その重要な柱の1つ
・今回のコーポレートガバナンス・コード策定の主目的は、不祥事の防止ではない。経営者が、しっかりした経営を行うための基盤として、モニタリングなどの体制を整えることに主眼
・経営者の評価は、適正なプロセスを踏んで、最善を尽くした意思決定をした結果であれば、結果責任は問われるべきではないというビジネス・ジャッジメント・ルールに従ってされるべき
・社内出身者で固められた取締役会のメンバーが、「彼は最善を尽くした」と主張しても、社外の株主らに対して説得力はない。中立性の高い複数の独立社外取締役の証言があってこそ、最善を尽くした意思決定であることが立証可能
・そうした体制に支えられた経営者は、過度に結果に拘束されて保守的になる必要がなくなる。後顧の憂いなく、健全な企業家精神、アニマルスピリットを発揮しやすくなるだろう
・日本的な考えを反映したコードの特徴は二点。一点目は、あくまで会社の持続的発展と中長期的観点からの企業価値最大化を目指す、というフィロソフィー。本来、企業経営は中長期的観点から行うべきもの
・二点目は、ステークホルダーとの適切な協働。ここでいうステークホルダーには、株主だけでなく、従業員や顧客・取引先、地域社会などが含まれる。ステークホルダー全体との協働を重視する考えは、ジョンソン・エンド・ジョンソンも採用しており世界に通じている
・コーポレートガバナンスのあり方は、会社の規模、業種・業態、従業員やステークホルダーの構成などによって違うので、経営者自身が考えるべきこと。プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)に基づくコード(指針)になっているのはそのため
・こうした多様性を踏まえて、コードは「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)という手法を採用
http://diamond.jp/articles/-/71925

6月4日付けの(下)「北風政策ではなく「太陽政策」 経営者を守るコーポレートガバナンスの意義」のポイントは以下の通り。
・優れた経営者ほどガバナンスへの関心は高い
・いくら優れたガバナンス体制でも、有能な経営者に恵まれるとは限らないし、逆にガバナンス体制が貧困でも、立派な経営者が優れた経営を行うこともあり得る。ただし、一般に高いコーポレートガバナンス機能を有するとされる委員会設置会社では、指名委員会が優秀な経営陣を見つけて指名し、能力不足であれば更迭することで、有能な経営者に恵まれる可能性を高められる
・コーポレートガバナンスを向上させるには、周辺の制度全体を総合的に見直す必要
・経営者が自分のコントロールできないことに起因する部分まで含めて、過度の結果責任を問われないような状況を用意するという「太陽政策」として、コーポレートガバナンスを推進しようというのが、今回のコードの狙い
http://diamond.jp/articles/-/71926

「今回のコーポレートガバナンス・コード策定の主目的は、不祥事の防止ではない。経営者が、しっかりした経営を行うための基盤として、モニタリングなどの体制を整えることに主眼」とのことではあるが、コンプライアンスも「モニタリングなどの体制」に含まれる筈なので、コードが定着してゆく将来的には、東芝の不正会計のような問題の防止にもつながってほしいものだ。
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コメント 1

佐藤

少し難しいけど、参考になっていいね。
by 佐藤 (2015-07-03 13:51) 

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