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トヨタの新型種類株発行 [企業経営]

今日は、やや専門的な話題ではあるが、市場で関心を集めたトヨタの新型種類株発行を取上げよう。

具体的な商品性などは、7月6日付けJBPress「新種類株を発行したトヨタの「機を見るに敏」 取締役会も改革、日本型ガバナンスの最適解となるのか?」が詳しいので、そのポイントを紹介したい。
・:6月16日に開催された株主総会において「AA種類株式」という名称の新しい種類株式の発行を決定
・AA種類株式は非公開株であり、5年間は譲渡や換金ができないという制限。5年を過ぎた段階で、普通株への転換、トヨタへの買い取り請求、継続保有のいずれかを選択することができる
・もし5年後にトヨタ株が値上がりしていれば、キャピタルゲインを得ることができるし、値下がりしていた場合でも、発行価格と同額でトヨタが買い取ってくれる
・5年後にトヨタが経営危機となり買い取りに応じられないという可能性はゼロに近いので、実質的に元本保証された商品と考えてよいだろう(もっとも、発行価格は普通株の価格よりも3割高く設定されるので、普通株ほどのキャピタルゲインは得られない可能性が高い
・一定の制限はあるが配当も付く。初年度は0.5%と低く抑えられているが、翌年度以降、5年目まで0.5%ずつ段階的に増加していき、5年目以降は2.5%となる。現在、トヨタの普通株における配当利回りは2%程度なので、5年後の配当性向次第では、インカムゲインという点でも有利な商品になっている可能性
・5年間は流動性がないという欠点はあるものの、安定収益を望む投資家にとっては、非常に魅力的な商品であることは間違いないだろう。高齢者などを中心にかなりの人気商品となることが予想
・AA種類株発行と同時に、ほぼ同数の自己株式の取得を行う。あらたに種類株を発行して資金を調達するものの、その資金は自己株式の取得に回ることになるので、結果的に株主の入れ替えを行っているだけということになる。グループ企業間の持ち合い解消の受け皿である可能性
・トヨタなりのガバナンス論に対する「解」。トヨタは今回の株主総会に合わせて取締役会の改革も行っている。種類株の発行と取締役会の改革はセットであり、一連のプランはトヨタとしての、ガバナンスのあり方に対する1つの「解」。代表権を持った人物に取締役を限定することで、各取締役がより対等な立場で、客観的に経営判断を下すことを狙った仕組み
・なぜ、わざわざ株式会社を上場させるのか?。株主資本主義の権化と思われている米国だが、実は株式会社以外の形態を採用し、外部からの資本参加を拒絶している会社は無数にある。また株式会社の形態を採用する巨大企業でも、米カーギルや独ボッシュ・グループのように株式を外部に公開しない方針を貫いているところも少なくない
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44199

次に、トヨタの発行に対する考え方を解説したものに、6月22日付け日経ビジネスオンライン「トヨタ「元本保証」株で目論む資本主義のカイゼン 豊田社長が本誌に語った理想とは」があるので、そのポイントを紹介しよう。
・「理想に一番近いのは公益資本主義」(トヨタ自動車の豊田章男社長は1年前の本誌のインタビュー)。これは、株主価値の最大化だけを目指すのではなく、従業員や地域、取引先など幅広いステークホルダーを重視し、雇用や納税を通じて報いるという考え方
・「株主こそがステークホルダーという原理資本主義の考え方が、米国でも変わってきた。ハーバード・ビジネススクールでも、コンシャス・キャピタリズム(意識の高い資本主義)といった考え方が出てきている。リーマンショック以降、中長期的な目線を持たない限り、短期の結果も出ないということに気が付き始めたのではないか」
・主に国内の個人株主の獲得を想定したものだ。こうした普通株式とは違う「種類株」を発行するケースは日本でも数えるほど。再建企業が資本増強のために発行する、配当が優先的に支払われる「優先株」などに限定。トヨタは長期保有を前提とする株主を確保し、これまで踏み切れなかったことを実行に移そうとしている
・狙いの1つは、未来技術の研究開発の強化だ。自動運転技術に必要なセンサーやソフトウェア、人工知能(AI)など、これまで自動車メーカーとして研究開発のメインテーマに入らなかった領域を手がける必要性が日増しに高まっている。次世代技術の開発競争は激化。先行開発にどう取り組むか。持続的成長には極めて重要だが、トヨタには過去のトラウマ。「リーマンショック後、研究開発費の削減を迫られる中で真っ先に対象になったのが、いつ成果が出るかが見えにくい先行開発分野だった」(トヨタ関係者)
・愛知万博で、トランペットなどさまざまな楽器を演奏して主役となった二足歩行の「トヨタ・パートナーロボット」。今年3月、電子部品の入手が困難になったとして、最後の一体が引退。これからロボット市場が立ち上がろうとしているにもかかわらず、せっかくの開発成果をうまく活用できていない
・現在、トヨタは株主優待を実施していない。2014年3月時点の株主数が61万。個人から機関投資家まで、その実態と国籍はバラバラで、株主優待を平等に実施することは難しい。新型株式は譲渡制限が付けられており、長期保有しているホルダーを特定することが可能。長期保有のインセンティブをさらに高めるために、株主優待の新設も検討
・トヨタは将来的な数値目標を示さないため、「成長戦略が見えにくい」との声がついて回る。長期的な戦略や経営の考え方をより分かりやすく説明し、この新型株式のホルダーを多様化するための投資家向け広報(IR)にもカイゼンが求められる
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/061800006/061900001/?P=1

新型種類株への現実の応募状況等については、24日付け産経新聞が「トヨタ新型株が発売、申し込み殺到 元本保証で高利回り」と伝えた。そのポイントは以下の通り。
・3~22日の申込期間に証券会社には問い合わせが殺到するほど人気が集まり、約4700万株(総額約5千億円)の発行に対して申し込みは4~5倍に
・24日発行され、発行価格は1株当たり1万598円で、東証1部に上場しているトヨタ普通株に比べて約3割高く設定

海外投資家を中心に批判も出たが、総じて順調に発行されたようだ。「株主原理資本主義」に対する「公益資本主義」のあり方の1つを示した画期的な試みといえそうだ。ただ、トヨタだからこそ発行できたとも考えられ、今後、追随する企業が出るかは慎重にみてゆく必要があると思われる。
タグ:トヨタ 新型種類株発行 JBPRESS 新種類株を発行したトヨタの「機を見るに敏」 取締役会も改革、日本型ガバナンスの最適解となるのか? 「AA種類株式 株主総会 非公開株 5年間は譲渡や換金ができないという制限 5年を過ぎた段階 普通株への転換 トヨタへの買い取り請求 継続保有 選択 実質的に元本保証 発行価格は普通株の価格よりも3割高く設定 配当 初年度は0.5% 翌年度以降、5年目まで0.5%ずつ段階的に増加 5年目以降は2.5% 普通株における配当利回りは2%程度 インカムゲインという点でも有利な商品 安定収益を望む投資家にとっては、非常に魅力的な商品 ほぼ同数の自己株式の取得 結果的に株主の入れ替えを行っているだけということに グループ企業間の持ち合い解消の受け皿である可能性 トヨタなりのガバナンス論に対する「解」 取締役会の改革 代表権を持った人物に取締役を限定 株主資本主義の権化 米国 実は株式会社以外の形態を採用 、外部からの資本参加を拒絶している会社は無数にある 株式を外部に公開しない方針を貫いているところも少なくない 日経ビジネスオンライン トヨタ「元本保証」株で目論む資本主義のカイゼン 豊田社長が本誌に語った理想とは 理想に一番近いのは公益資本主義 豊田章男 従業員や地域、取引先など幅広いステークホルダーを重視 雇用や納税を通じて報いるという考え方 株主こそがステークホルダーという原理資本主義 米国でも変わってきた コンシャス・キャピタリズム(意識の高い資本主義) 長期保有を前提とする株主を確保 未来技術の研究開発の強化 トヨタには過去のトラウマ リーマンショック後 研究開発費の削減 先行開発分野 トヨタ・パートナーロボット 最後の一体が引退 株主優待を実施していない 株主数が61万 株主優待を平等に実施することは難しい 長期保有しているホルダーを特定することが可能 株主優待の新設も検討 将来的な数値目標を示さないため 「成長戦略が見えにくい」との声 長期的な戦略や経営の考え方 より分かりやすく説明 投資家向け広報(IR) カイゼンが求められる 産経新聞 トヨタ新型株が発売、申し込み殺到 元本保証で高利回り
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