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五輪エンブレム問題 [社会]

今日は、真相がよく分からない五輪エンブレム問題を取上げよう。

先ずは、8月7日付け日経ビジネスオンライン「腰の引けた五輪エンブレム会見」のポイントを紹介しよう。
・8月5日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下組織委員会)と、デザイナーの佐野研二郎氏が、7月24日に発表された東京オリンピックのエンブレムに関して記者会見
・会見で、佐野氏は盗用ではないかと指摘を受けたことについて「全くの事実無根だ」と述べ、エンブレムがデザイン的にどのように構成されているかを説明、「似ているという声が挙がっているがどう思うか」との質問に「全く似ていない」と答えました
・組織委員会は商標としての問題はクリアされており、後はオリジナリティを説明していくことになるという見解。デザインと法的な正当性の主張などの内容については日経ビジネスオンラインに掲載されたこちらに詳しくまとめられています(本文にリンクあり)
・問題は、多くの人が漠然と感じる「なんとなくの印象」を一切認めなかったところです。「似ているから問題になっているのに、似ていないという答えだけではおかしい」という点です
・会見の質疑では「似ているという声がある」のに対して「似ているとは思わない」「これで似ていると言われると、全てが似ているという話になる」などという、かみ合わないやりとりが目立ちました
・組織委員会が自信を持って選んだ作品にケチを付けられ、これから日本全体で盛り上げていこうというタイミングのはずなのに、デザイナー個人を矢面に立たせて、「似ている」と言われる声に「似ていない」という当人の弁だけで終わりにした
・見方を変えれば、デザイナー本人が自分の言葉でデザイン意図などを説明すれば、自分たちがコンペの時に納得したように、世間も納得してくれるだろう、と安易に考えたのではないかという印象が拭いきれない
・しかし、それは無理がある。責任範囲や役割分担を考えれば、「盗用の疑惑」に答えるのはデザイナーだとしても、「似ている・似ていない」の評価を伝えるのは、デザインを採択した組織委員会であって、デザイナーの役割ではない
・「似ていない」と言うならば、組織委員会として、どこをどのように見てデザイン評価として「似ていない」のかを伝えないと、聞いている側は理解が難しい。なんとなく「似ている」と多くの人が思っているわけですから。 にもかかわらず、商標的には問題なし、スポンサーなどからも問題の声は上がらず、後はIOCと連携して対応に当たる、などと説明をするような「問題がないこと」を伝えるのみだったのが組織委員会。その姿勢は、積極的に世間の理解や支持を得るという雰囲気ではなかった
・招致活動をしていた頃、東京は地元の支持率が低いことが弱点。だからこそ、広く世の中の支持を集めるためにとても積極的にアピールをしていた。 ところが今はどうでしょう。新国立競技場に加えて、エンブレムまで問題にされて、これ以上事を荒立てたくない、できるだけ穏便に済ませたい、早く収束してほしいという消極的なムードが漂っています
・なんとなくを「分かる」ようにする(省略)
・なんとなくの感覚を圧倒する厳密さを伝えるべき。記者会見は、専門知識を持たない世間の人たちの持つ「なんとなくの印象」を相手に説明をする場。 疑いを晴らすには、この「なんとなく」をひっくり返さねばなりません
・そのために世間の「似ている」「似てない」という感覚的な表現に対して、同じように感覚的な表現で説明しても印象はひっくり返りません。 「全く似てない」という言葉では空回りなのです
・では、どうするか。 「なんとなく」の感覚を生み出すために、今回のエンブレムがどれだけ厳密に考え意図をもち計算されて設計されているかを、圧倒的な細かさをもって証明する。これが1つです
・専門家の仕事が専門として認められる所以は、それでなければならないところまで全てが厳密に詰められていることです。それがオリジナリティの証明にもなります。 なぜこのエンブレムが9分割で構成され、なぜこのフォントをベースに、なぜ他の組み合わせではなくこの配色の必要があるのか、仮に何かに似ていると言われれば、似ていると言われるもののデザインでは決定的に問題があることを伝える必要があります。 一般には「なんとなく」としか感じられない所まで厳密に計算をして形にできるから専門家たり得る。会見では、その細かさで圧倒するほかはありません
・もう1つ気を付けておかねばならないのは、デザイナーの主張するように、盗用が本当に事実無根で完全な濡れ衣だとするならば、逆に、盗用と言われることに対する怒りが見られても当然ではないか、という点です。 本当に盗用ではないなら、「問題にするのは相手の売名行為なのではないか」くらいのことを言っても良いくらい腹立たしいものではないかと思われるのですが、佐野氏は随分冷静な印象でした
・日本国内だけなら、特に問題は感じないかもしれません。 しかしこれを国際的なコミュニケーションとして見ると、奥ゆかしすぎるというか、相手に付け入る隙を与えないか心配になります
・会見でNHKの記者が、「(書簡を)黙殺することも可能だと思いますが、対応するのですか」と質問したのに対し、組織委員会マーケティング局長の槙英俊氏は、「正式なコンペティションを経て、参加した104人の代表として佐野さんがいる。黙殺はせず、返答します」。 新国立競技場の問題がなければ、これで良かったのかもしれません
・しかし今、五輪全体に対して、もう一度みんなで盛り上げようという機運を高める必要があるタイミングではないかと思うのです。 そんな時に、相手はエンブレムの使用差し止めを求めているわけです。日本の正式な選考システムにケチを付けられているということです
・対応が甘いと、この先、海外から第二第三の言いがかりのような訴えが出てくる懸念もある。しかも一度ケチが付いたものをみんなで盛り上げるのは簡単ではない。 そう考えると、組織委員会ももっと積極的かつエネルギッシュに世間の理解や支持を得る姿勢を見せてもいいのではないか、という気がします(最終頁は省略)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/245872/080600003/?P=1

次に、法律的視点からみたものとして、8月5日付けビジネス・ジャーナルに山岸純弁護士が寄稿した「東京五輪エンブレム、海外劇場ロゴの著作権侵害に該当せず」のポイントを紹介したい。
・「国際的な商標登録の手続きを経てエンブレムを発表しているから問題はない」というわけにはいかない。商標とは、自身の商品やサービスを他人のものと区別する、他人に勝手に使用させないためのものなので、パクリかどうか、すなわち「著作権」の問題とはまったく異なるからです
・問題は、リエージュ劇場のロゴの著作権を持っている人の権利を侵害しているかどうかです
・「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」によって、その国(フランス)と、条約同盟国(日本)において、その国(フランス)が与えている権利と同じ内容の保護が与えられることになります。 フランスのデザイン会社は、この条約と日本の著作権法に基づき、使用の差し止め請求や損害賠償請求ができることになります。また、このデザイン会社が望めば(親告すれば)刑事告訴も可能
・あくまで他人の著作物を「利用して作品を創作する(依拠する)」場合に、著作権侵害が問題となるわけですが、過去の判例が、「既存の著作物に接する機会がなく、従って、その存在、内容を知らなかった」場合は、著作権侵害の可能性は極めて低いとしているように、もともとの著作物に接するチャンスがあったかどうかを「依拠している」かどうかのメルクマール(基準)としています
・「確かに、ちょっと参考にした(依拠した)けど、もともとの著作物の本質的な点が変更されているから、まったく別の著作物になっている」場合は、侵害ではないということです
・実際に過去の判例をみても、デザインの著作権侵害はなかなか認められにくいようです。 今回の東京五輪のエンブレムとリエージュ劇場のロゴは、「正方形を彷彿させる図形の中に、直径が同じ円のシルエットと、長辺が同じ長方形を配置している」ところまではほぼ同一ですが、カラー、右上の赤丸の有無、さらなる外枠の円の有無などが異なるので、「まったく別の著作物になっている」といえるのではないでしょうか
http://biz-journal.jp/2015/08/post_10980.html

しかし、その後、佐野氏を巡る各種のコピー疑惑が広がっている。8月15日付け日刊ゲンダイ「Tシャツも“コピペ”? 佐野研二郎氏を襲った「新たな疑惑」」のポイントを紹介しよう。
・東京五輪のエンブレムがベルギーの劇場のロゴに似ていると「盗作」を疑われ、その後、サントリーのトートバッグのデザインについても同様の声が上がった。13日、サントリーはバッグのデザイン30種類のうち8種類を撤回。佐野氏はトートバッグの盗作を認めただけに立場は苦しい
・その佐野氏にまた、新たな疑惑が浮上。同氏が手掛けたTシャツのデザインに、あるアーティストの写真が使われたのではないかというのだ。 Tシャツは英国のロックグループ「ローリング・ストーンズ」の意匠をあしらったもので、キャンペーン名は「ザ・ローリング・ストーンズ OFFICIAL T―SHIRTS」。佐野氏は数種類のデザインを手掛けたが、そのひとつにフランスのギタリスト、ビレリ・ラグレーンに似た写真が使われているのだ。ラグレーンはジプシージャズの第一人者。 写真①はラグレーンが34年前にリリースしたアルバム「Bireli Swing ’81」の裏ジャケットの写真。写真②はTシャツの裏側のうなじ部分。写真の周囲に文字を配置
・ 「音楽関係者の間で“似ている”と話題になってます。Tシャツの写真は裏ジャケ写真の左右を反転させた“逆版”に見える。もしラグレーンの写真だったら、ストーンズのTシャツになぜジプシージャズの奏者を使ったのか理解に苦しみます」(音楽ディレクター)
・問題のTシャツはいまもネット上で販売され、「業界で知らない人はいないであろう超有名アートディレクターの佐野研二郎氏がデザインした」と紹介されている
・著作権法に詳しい弁護士の北村行夫氏が言う。  「法律的にいえば、他人の著作物を使い、周囲に文字などを施すことを『複製』と呼び、著作者の許可が必要。勝手に逆版にする場合は同一性保持権を侵害する恐れもある。もちろん佐野氏がラグレーン氏の許可を得て写真を使ったのなら問題ありません」  事務所に電話したが、深夜になってHPを見るよう連絡。HPでは「過去の作品については、制作過程に、法的・道徳的問題は確認されていない」という主張
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162771/1

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(JOC)やIOCは、商標登録をチェックしたから問題ないとしているが、肝心の著作権上の問題についてはいまだ正確なコメントがないのは不可解。「なんとなくの印象」を拭い去る明確な説明が欲しいところだ。著作権は狭く解釈されるようなので、延々と国際裁判を続ければ最終的には勝てるのかも知れないが、対象はほかでもないエンブレムというシンボルマークである。水面下での和解金支払いで「お茶を濁そう」としているのであれば、さらに問題である。また、「ケチ」がついたエンブレムを使うことにスポンサーも消極的になる懸念もある。JOCの責任ある明確なコメントを期待したい。
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