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原発再稼働(その3)川内原発、再稼働全般 [経済政策]

原発再稼働については、本欄の7月8日、23日に取上げたが、今日は(その3)である。

再稼働1番手となった川内原発については、日経新聞8月11日夕刊が「川内原発、地震のリスク低く 再稼働1番手に」と伝えた。記事では、「想定する最大の地震の揺れを申請当初の540ガルから620ガルに引き上げたが、九電にとってそれは許容範囲。大幅な耐震補強などは特に必要なく、規制委の要求を受け入れることができた。全国の原発では、たとえば南海トラフ巨大地震の想定震源域にある中部電力の浜岡原発のように、最大2000ガルの揺れを想定しているケースも。これと比べると川内は地震のリスクが相対的に低い立地」としている。
桜島から52Kmの距離にありながら、620ガルが妥当なのかは私には判断しかねるが、7月23日に紹介した広瀬隆氏の2つの記事では、その危険性を指摘している。

桜島は噴火警戒レベルが4に引き上げられたが、本日付けの日刊ゲンダイ「噴火警戒レベル4 再稼働「川内原発」を桜島の火砕流が襲う日」のポイントを紹介したい。
・桜島からはわずか52キロしか離れていない。九州電力は「現時点で、影響があるとは考えていない」とした上で、「特別な態勢も取っていない」とノンビリと構えているが、果たして大丈夫なのか
・川内原発については、以前からその“危険性”は指摘。2013年に毎日新聞が火山学者に行ったアンケートでは、「巨大噴火の被害を受けるリスクがある原発」として、50人中29人が「川内」を挙げている
・武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏は言う。「世界の火山の中で、噴火前に規模を予測して当たった例はほとんどありません。とんでもない大きな規模の噴火であれば、川内原発に影響を与えることは十分に考えられます。九電は実にいい加減なことを言っています。仮に大規模な火砕流が起これば、原発内のすべての施設がやられる可能性もある。福島原発のように『電源喪失』という事態に陥るかもしれないのです」
・桜島は1914年に大噴火を起こしている。予兆があったにもかかわらず、当時の気象台は「噴火はしない」と答え、結果的に死者を出す大惨事に
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162812

次に、広瀬隆氏が8月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「原発ゼロで、なぜ電気が足りているのか? 」のポイントを紹介しよう。
・「再稼働反対57%」なのに、なぜ再稼働するのか?。そもそも安倍晋三が原発を再稼働すると決断したのは、昨年、2014年2月25日に、政府がエネルギー基本計画を決定し、そこに「原発を重要なベースロード電源と位置づける」とし、この時点で運転ゼロとなっている原発の「再稼働」を推進すると明記したことから始まった
・日本は世界最大の地震国である。左の世界地図に見られる通り、アメリカ・ヨーロッパ・ロシアにも「赤点」で示される原発は多数あるが、「黒点」で示される中規模以上の地震発生地点には、アメリカ西海岸を除いて、原発がまったくない
・つまり発電用の原子炉を開発した人間たちは、「地震のない国」だった。したがって、それを欧米から輸入した日本と台湾は、黒点の上に、赤点を乗せた、トテツモナイ危険な国家になったわけである
・東日本大震災では、津波だけがメルトダウン事故の原因になったのではない。放射能が大量に放出されたのは、配管の至るところが破壊されたからである
・そこで、日本の原子力発電所では、大地震でなくとも、中規模の地震で運転を停止するようになっている。普通の地震が起こると、原発が運転を停止するのだから、ベースロード電源がなくなってしまうわけだ。日本全土どこでも、原発に頼っていた地域では、たちまち電力不足に陥ることになる。それを教えたのが、東日本大震災である!
・その頼りない原発に日本人の生活を賭けるほど愚かな政策はない。この馬鹿げたエネルギー基本計画を安倍晋三の頭に吹き込んだのは、経済産業省の官僚たちである
・多くの人命が奪われた東日本大震災の教訓の第一は、原子力発電所のように巨大な電源は、同時にいっせいに失われる、ということであった
・そこで、電源は、小規模のものを分散して配置しておくほうが、臨機応変に対処でき、はるかに安全であることを学んだのである。 だからこそ、現在まで「原発ゼロ」をほぼ二年間続けてきて、春夏秋冬、すべての季節で電力不足が起こらなかった
・この二年、「天然ガス+石炭火力」で78.5%供給の事実。2014年度の「電力会社の電力」は、この表の通り、ほとんどが天然ガスと石炭火力の合計で8割近い、78.5%が供給。 「石油」火力は、東日本大震災後にピンチヒッターとして使われただけなので、2014年度はその分の多くをさらにガスが代替して9.3%に下がり、ガスの比率がますます高まっている。 「新エネルギー3.2%」がいわゆる自然エネルギーであり、「原子力0%」は、「必要もないのに運転されていた」福井県の大飯原発が2013年9月15日に運転を停止してから、この通り「原発ゼロ」の静かな時代を迎えたのだ
・主力のガス火力は、大都市の台所で使われている安全なメタンガスを、きわめて効率よく(原発の二倍のエネルギー効率で)燃焼する「ガスコンバインドサイクル発電法」を柱にして、安価に生み出している
・太陽光パネルは、地元では景観を破壊してひどく不評である。自然エネルギーの普及は、長期的に少しずつ、自然界を破壊しない範囲でゆっくり進めなければならない。金が入るからといって、あわててはいけない
・主力となった天然ガスは、世界的な見込み埋蔵量が、年々増加して、当面ほぼ無尽蔵だというのが、ガス業界の予測である
・イランからのガス輸入もますます有望になってきた。石油とガスを世界中に売りたいイランにとって、ホルムズ海峡を封鎖することなど、あり得ないのだ
・日本全土の4分の1で「自家発電」が!。さきほど示したガス・石炭など電源別のシェア分布の数字は、電力会社の分だけである。2013年度の資源エネルギー庁電力調査統計によると、「自家発電」の発電量は、すでに全発電量のうち24.5%を占めている
・東日本大震災後、主に一流の大企業が電力会社から電気を買わずに、自社で発電して、工場などでの大量消費電力をまかなうようになっているのだ。それがすでに日本全土の4分の1を占めるまでになっている。その主力電源も、ほとんどがガスと石炭
・自動車メーカーのトヨタ、ホンダをはじめ、通信業界のNTT、ガス大手の東京ガス・大阪ガス・東邦ガス──これらの優秀なエネルギー企業が、来年4月からの電力完全自由化でいっせいに動き出す。そして電力会社よりはるかに安い値段で、われわれ一般家庭に電気を売ってくれる時代に突入
・北海道を除けば、夏の一日の電力の消費者の分布は、昼過ぎ2~4時あたりに電力消費のピークに達するが、オフィスなどの業務用ではそのピーク電力の40%を冷房に使ってきた。それを動かすのが、電動エアコンであった
・ところが、ガスヒートポンプエアコンを使うと、このピーク電力の90%をカットできるのだ。そこで2013年度には注文が殺到して、震災後に売り上げがほぼ倍増の急伸中である。安価なガスを使うことによって、まったく節電などせずに、今まで通りエアコンを動かして、ますます電力の消費量が減ったのである。 ガス火力であれば、運転を停止しても、すぐに運転を再開できるが、原発は地震で運転を停止すれば、当分動かせない不細工な発電所である。ちょっとした地震で、その電力不足を起こすのだから、日本の産業機能と社会生活を破壊する発電所だ
・電気は、昔から使われてきた貴重なテクノロジーである。決して、「電気を使うこと」に問題があるのではない。 その発電法を、核分裂に頼るところから、まったく別の深刻な問題が生まれるのだ。したがって、これは、電気の問題ではない。発電法の選択の問題にすぎない
・安倍晋三を党首にかつぎだす自民党の腐敗と堕落は、もはや国民の忍耐の限度を超えている。連立を組む公明党も同罪だ。電力会社も電力会社だ。自分がつくった物を売るのに、ほとんどの消費者が「いやだ!」と言っている原発をわざわざ選んで使うとは、消費者の存在を無視している独善的企業だ。顧客の意思を考えずに物を売るとは、企業人として、完全失格だ。 一般の企業であれば、「お客様は神様」だから、ユーザーを怒らせるこのような非常識は、まったく通用しない。なぜ電力会社だけが、いつまで、「社会悪」のラベルを貼られ、「誰からも嫌われる企業」から脱却しようとしないのか。人間としての常識を、どこで欠いたのか
http://diamond.jp/articles/-/75646

広瀬隆氏の指摘は、いつも通り、鋭く参考になる。ベースロード電源の問題については、本欄8月4日付けの「原発問題」でも取上げたが、確かに大規模電源のリスクや電源としての「真の安定性」を考慮すると、既に破綻した論理を無理に再び取上げた経済産業省の厚顔無恥ぶりにも恐れ入るほかない。
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