天津爆発事故問題 [世界経済]
今日は天津爆発事故問題を取上げよう。
先ずは、19日付け日経ビジネスオンライン「プロの消防士がいない中国 天津化学薬品倉庫爆発事故、悲劇の必然」のポイントを紹介したい。
・100人単位の死者を出す人災事故・事件は中国では非常にまれなことではなく、例えば今年、長江クルーズ船の沈没事故も430人以上の死者・不明者を出している
・ただ、今回の件で特徴的だったのは犠牲者・不明者の約半数が消防士であったことだ。建国以来、一度にこれほど多くの消防士が殉職する火災は初めてである。そして、この爆発自体、消火にあたった消防士の放水が引き起こしたという
・8月12日午後10時55分ごろ、保税区の瑞海国際物流有限公司の危険薬品倉庫前のコンテナヤードに集積されていた化学薬品コンテナで火災が起きた。港湾警察の連絡を受けて、まず23の消防中隊および93輛の消防車両、総勢600人が出動し消火作業にあたったという。10分ぐらいの放水のあと、ぱちぱちと音がして、燃えていたコンテナが発光し、危険を感じた消防隊は撤退を指示。だがその直後に大爆発が起き、逃げ遅れた消防士たちが多数巻き込まれた
・爆発の原因は、おそらく消火用放水の水が、コンテナ内の化学物質に反応したことだといわれている。爆発後の現場には水をかけると発火する白い粉があちこちに散らばっていることが確認
・最初の爆発はトリニトロトルエン(TNT)換算で3トン分の爆発に相当し、その30秒後に起きた爆発はTNT21トン分に相当するほどの威力。爆発は2分の間に4回起きたという。日本の気象衛星ひまわりからも確認できるほどの威力
・最悪なことに、倉庫内に保管されていた危険薬品の中には水に反応すると青酸ガスが発生するシアン化ナトリウム700トンが含まれ、それらが大気や地下水に流出。 爆発後も天津消防総隊から1000人以上の消防士が投入されたが、彼らの多くが、その毒ガスの存在を知らされていなかった。爆発現場の倉庫に保管されていた7種の化学薬品にシアン化ナトリウムなどが含まれている可能性が正式に発表されたのは爆発後59時間経ってから
・実は中国の消防士は素人同然。 中国には独立した消防署が存在しない。中国で一般に消防隊と呼ばれるのは、公安(警察)所属する消防隊、石油化学企業などが独自に雇用する臨時消防員、そして居民や企業職員が自主的に組織する消防組織の三つくらいだ。一部省では地元政府が公務員として消防官を募集し公安消防隊と協力する「合同制」が導入されているが、主力の公安消防隊は、解放軍傘下の武警消防隊を通じて徴用される「消防新兵」と呼ばれる兵士たちである
・彼らは2年の任期でほとんど義務兵役のような形で配属。このため、ベテラン消防士というのはほとんど存在せず、その多くが20~28歳で、その経験不足から死傷率が高い。例えば2011年、米国の消防士は10万回の出動の中での殉職率は2.51人。同じ年の中国公安当局の資料では、消防隊の殉職率は4.8人でおよそ倍だという
・2006年から2012年までの中国の殉職消防隊員の平均年齢は24歳で、最年少は18歳という。 学歴も低く、たとえば2010年、上海市で消防新兵になった1213人のうち高卒水準が32.31%、高専水準が40.49%、中卒水準が15.41%(香港フェニックステレビ調べ)という。専門の消防技術を教える教育機関は南京士官学院など中国に三つしかない
・彼らはわずか3か月の研修の後、現場に入る。2015年、消防新兵の月給は1700元(研修期間中は1500元)、危険手当300元。広東省の工場労働者よりも待遇が悪い。危険できつく、待遇も悪いために誰もなりたがらない。一般に先進国では人口1万人に対し消防士10人が水準だと言われているが、中国は1万人に対して2人に満たず、慢性的な消防士不足
・もともとは、非戦時下の兵士訓練の一環として民間の消防活動に従事させられる解放軍の伝統から始まった。しかし、現代の火災の現場は高層ビルや石油化学コンビナート、はては原発火災なども想定しなければならず、もはや3か月研修を受けた消防新兵たちの手に負えるようなものではない。未熟な消防活動が被害を拡大したり、二次災害を引き起こすことはこれまでもあった
・今年1月2日の黒竜江省ハルビン市で起きた倉庫火災で18歳から22歳までの5人の若い消防兵士が焼け崩れる建物に巻き込まれ殉職。この事件後、メディアが消防隊の実態をこぞって取材したが、消防新兵たちは、バックドラフトなど基本的な火災動力学も知らずに無知な勇気だけで現場に突っ込み、同僚を危険に陥れることも多々あることを紹介
・無知な勇気と無茶な命令。この倉庫火災では、出火後9時間も経って、消火活動が意味をなさない状況であったにもかかわらず、市当局幹部たちが、建物の中からの消火活動を望んだために、突入させられたという背景もあった。つまり官僚たちは末端の新兵の命などよりも、倉庫や中身の損害を少しでも食い止める方が大事だったのだ。そして公安消防隊は、毎年補充できる新兵の命よりも、市政府から予算を得て最新装備をそろえることの方が重要であり、市政府の無茶な命令にも従う。もし、彼らが消防新兵でなく、十分に研修費用をかけて育てあげた一騎当千のプロフェッショナルな消防士であれば、市政府もいたずらに彼らを危険な現場に突入させるような「浪費」はしないはずである
・こうした中国の消防隊が抱える問題が、今回の天津の最悪の大爆発をもたらしたといえる
・天津の事件後、メディアや世論は再び、中国の消防士のプロ化を求める声を上げている。だが、一言で消防士のプロ化といっても、簡単ではないようだ。天津の倉庫で初期消火にあたっていた消防士の中には、天津港が雇用している「専業消防士」も含まれていたが、彼らがプロかというと、そうではなく、公安消防隊よりもさらに技術の低い「バイト消防士」である。この場合、プロと呼ばれるべきは、それなりの専門知識と技術、経験の蓄積をもつ人材であり、なおかつプロ組織として機能する体制が必要なのだ。つまり目下、最低賃金に近い徴兵式で集めている全国16万人の消防士に関して、公務員並みの給与と職位、育成機関などをともなう一つの独立したシステムを構築しなければならなくなる
・消防士のプロ化は、深?市でテストケースとして1984年から取り組まれてきた。そして25年後の2009年、この試みは失敗であったと宣言された。深?では地方財政から年間1億元の予算をつけ、消防士を公務員として採用。これは財政的に大きな負担に。また、徴兵式の消防士と違って、彼らは公務員の地位に安住してしまい、時間が経つにつれ消防士の老齢化・官僚化問題が深刻に。その矛盾がはっきりしたのが、2008年2月の南山区の大火の時で、現場に派遣された消防隊はわずか6人、隊長1人、班長3人、実際に消防活動にあたる消防士は2人。この年、深?市消防局が出した報告書によれば、現役消防官および公安消防士はあわせて1123人だが、実際に消防救援活動に従事できるのは600人あまりで、消防士プロ化計画は断念せざるを得ないという結論に達した
・プロ化の最大のネックはまず経費。そして、何よりも、年齢が上がり給与が上がっても、第一線の現場に立ちたいというプロ意識を本人が持てるか、という問題があるのだ。 これには職業に対する矜持、あるいは社会全体のその職業に対する尊敬の念が重要なのだが、中国においては権力と金にまさる名誉も矜持も存在しない。ましてや命を危険にさらしてまで現場で働く人間となるより、そういう現場に他人を赴かせる権力を持つことの方が、中国人にとっては出世であり、魅力なのである
・これは別に消防士に限ったことではなく様々な職業について私が日々感じていることだが、例えば日本人の新聞記者は40歳になっても50歳になっても最前線の現場に出たがる人が多いが、中国人記者は30歳になれば、デスク業務やコラムニスト、解説員になりたがる。日本の中小企業や工場では社長になってもラインに降りてきて、製品の出来不出来を一目で見分ける人が少なくない。中国で企業や工場の管理職は、経営管理を専門に学んだエリートが多く、いわゆる生産現場にはほとんど関心がない。現場で技術や知識をもって働く人間に対する敬意というのが日本人は比較的強い。それは職人気質、プロフェッショナルという言葉に賞賛の意味が含まれることが示している
・消防士プロ化論争の中には、「消防局が、公安などから独立して一つの省庁となれば、汚職と利権の温床が一つ増えるだけ」と皮肉る声もあった。今の体制の中国には、プロ意識そのものが育つ土壌・環境がないのだ。末端の現場で働く人間は、権力を持つ官僚に利用され搾取され、使い捨てられ、死んだ後で「烈士」「英雄」と祭られるだけ。中国では権力を持たない人間の命はあまりに軽いのだ。命を軽視するから、金と時間をかけて人材を育成することができない。プロやプロ意識を育てる手間暇費用をかけるよりも、安い命を使い捨てるのだ
・命の軽視、悲劇は止められない。天津の爆発事故の背景には、消防隊の問題のほか、大物政治家・官僚の庇護を受けた企業(爆発を起こした倉庫の企業・瑞海国際は李瑞環の甥が株主という噂も)が、公共インフラ施設や居民区の1キロ以内に危険物倉庫などを設置してはいけないという法規を無視できることや、シアン化ナトリウムなどの猛毒をコンテナヤードに放置する危険物管理のずさんさなどが指摘
・すべての問題が、法が権力を持つ者を平等に裁くことができず、民衆・メディアが権力を監視する機能を持たない共産党独裁体制下での、権力を持たぬ者の命の軽視という一言に集約される気がする。このままでは、こうした大惨事はまた繰り返されるはずである
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/081700010/?P=1
次に、作家・ジャーナリストの莫 邦富氏が21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「天津市の没落を象徴する、爆発事故での呆れた対応」のポイントを紹介しよう。
・天津はかつて上海に次ぐ屈指の商工業都市だった。重慶が直轄市になる1997年まで、中国には直轄市が3つしかなかった。北京、天津と上海だ。天津は中国北部を代表する最大の港湾都市として、近代に入ると最も早く諸外国に開かれ、中国北部の開放の最前列となり、中国の富国強兵、近代化を目指した洋務運動の中心地となった。 天津の推し進めた、鉄道、電信、電話、郵便、採鉱、近代教育、司法などの近代化的整備は全国の先駆けとなり、上海に次ぐ第2の商工業都市となり、北方最大の金融・商業・貿易の中心にまで上り詰めた。たとえば、往時は100を超える国内外の銀行が参入し、全国総資本の15%を占めるほど、北方最大の金融都市としてその存在を誇った
・天津は今や中国で最も地盤沈下の激しい都市に。1978年から始まった改革・開放は中国の都市勢力図を大きく塗りかえた。80年代の後半から、天津はだんだん改革・開放の波に乗れなくなり、いつの間にか「つかみどころのない都市」となってしまった
・1990年代に入ってから、中国で地盤沈下がもっとも激しい大都市といえば、多くの中国人がまず天津を思い浮かべる。 改革・開放が始まって間もなかった1980年代初期、珠江デルタの経済的実力は京津唐地域(北京、天津、唐山)のそれに遥かに及ばなかったが、90年に入ると、両者は互角となった。京津唐地域はいまや話にならないほど後れをとってしまった。なかでも、天津の地位低下には目を覆いたくなるほどのものがあった
・いまの中国では、北京、天津、上海という3つの直轄市の実力を誇示する「京津滬」という熟語はもう聞かれなくなって久しい。変わって登場したのは「京上広」だ。つまり北京、上海、広州という3つの都市を指す。広州はただの省都だ。直轄市のランクまでは行っていない
・都市間の競争は、南の都市が勝ち、保守的な北方が大きく後れを取っている。天津市がその代表として消えて久しい。 「京上広」という新しい順位もいまやまた変わろうとしている。これからは「京上深」つまり北京、上海、深センになるかもしれない。深センの成長と飛躍に比べて、天津はすでに取り返しがつかないほどの後れをとってしまった。今度の爆発事故から見れば、天津の後れは端的に幹部の人材、意識に集中していると言えよう
・事故対応での市政府関係者の堕落した態度は象徴的。今回の事故でもすでに数回も記者会見を行ったあとでも、事故現場で指揮を取っている市政府の責任トップが誰なのかという簡単な事実も説明できないでいた。事故に直接責任を負う倉庫の運営会社についての情報も開示しようとしなかったその傲慢な態度に、天津に対する絶望感を覚えた
・2001年に、中国のネットにアップされた「絶望的な天津」と題する文章が当時、広く読まれた。再読すると、14年前に書かれたものとは思えないほどの鮮度が保たれている。 後れを取り戻そうとやけになった天津側は、天津を発展させるには北京との合併以外に道がないと思うほどに追いつめられた。しかし、天津が持ち出した合併案に対して、北京側は、「北京の火葬場を天津に移す程度なら考えてもいい」と一蹴
・ここまで侮辱されていいのか、私は判官贔屓で天津の肩を持っていたが、今度の爆発事故後の天津市政府関係者の対応を見ると、意外と核心を突いた発言だったかもしれない、という心境になってきた。 新生天津のために、腐りきった天津市政府関係者をしっかりと抉り出す外科的手術が必要だ
http://diamond.jp/articles/-/77032
第三には、橘玲氏の[橘玲の日々刻々]の20日付け「中国・天津の爆発事故。少ない死傷者、鬼城化した街…。報道では伝わらない実態とは?」のポイントを紹介したい(この記事は写真も多いので、ご一読をお勧めしたい)。
・爆発があった天津の浜海新区は、浜海新区は渤海湾に面した天津港を中心とした総面積2270平方キロの広大な開発区で、敷地面積は東京23区より大きい。今回の事故が起きたのは天津港に近い中心部。天津市の中心部から浜海新区は40キロほど離れており、東京と横浜の位置関係だから、これを「天津」爆発というのは若干の語弊がある。天津市と浜海新区は高架鉄道・津浜軽軌で結ばれている
・天津新都心の開発は1986年から〓小平が領導し国家と共産党の威信をかけた一大事業だ。2006年、天津市は600億元(約1兆円)を投じ、「東洋のマンハッタン」を生み出すべくビジネス特区の建設に着手
・しかし、驚くべきことに現在ではその全体がほぼ“鬼城(ゴーストタウン)”化。そのなかの数少ない例外が、事故現場となった東海路駅のひとつ手前の会展中心駅だ。ここには国際会展中心(コンベンションセンター)があり、私が訪れたときはアニメのイベントが行なわれていて、平日にもかかわらず若者たちですごい熱気だった
・会展中心駅の周辺にはイオンのショッピングセンターのほか、サッカー場や体育館、シネコン(複合映画館)などがつくられ、伊勢丹のある泰達(テダ)駅周辺と並んで、ビジネス新区のなかではもっとも開発が進んでいる。爆発現場から南西2キロほどのこの地区の高層アパートが被災し、住民たちが避難を余儀なくされた。報道でこの地区だけが取り上げられるのは、ここにしかひとが住んでいないからだ
・天津市の直接負債は同市の年間財政収入(2013年)の1.28倍に上る2246億元(約4兆3572億円)に上り、融資平台などを使って調達した資金を加えるとその総額は5兆元(約97兆円)を超えるという。中国国務院の会議で、汪洋副首相が「天津市は実質上破産している」と発言したとも報じられた
・上海市場の株価暴落や人民元の切り下げなどで中国経済の減速が明らかになったが、この国の経済の“時限爆弾”は地方政府が抱える膨大な債務だ。 中華人民共和国審計署(日本の会計検査院に相当)の発表では、2013年6月末時点の政府債務残高の合計は国内総生産(GDP)の50%程度に相当する約30兆2700億元に達し、そのうち地方政府の債務残高が17兆9000億元(GDP比約30%)で全体の約6割を占めた。10年末の10兆8000億元(同27%)に比べて約7兆元も増えており、その資金の多くは「地方政府融資平台」を通じて借りられている。こうした債務は償還時期が迫っており、15年末までに債務残高の約半分、16年末には約65%が期限を迎える。(内藤二郎「中国経済の行方地方債務問題解決程遠く」(2015年8月19日「日経新聞」朝刊「経済教室」)
・今回の事故をきっかけに天津市政府の破綻状態が表面化することになれば、中国経済に与える影響は甚大なものになるだろう
http://diamond.jp/articles/-/77149?page=1
新聞報道の表明的な事実からだけでは、何故このような「お粗末」な事故が起きるのかが理解できなかったが、これらを読んで漸く納得できたので、今回、紹介した次第。
地方政府の債務問題に火がつけば、すでに減速傾向の経済に大きなダメージを与えざるを得ないだろう。
今回の事故が単に、消防だけの問題ではなく、天津市、さらには中国社会全体の問題から生じた歪みであるとすれば、解決は容易ではない。これからも、トンデモナイことが起こり得ることを前提に、商売やおつきあいをしていく他なさそうだ。
先ずは、19日付け日経ビジネスオンライン「プロの消防士がいない中国 天津化学薬品倉庫爆発事故、悲劇の必然」のポイントを紹介したい。
・100人単位の死者を出す人災事故・事件は中国では非常にまれなことではなく、例えば今年、長江クルーズ船の沈没事故も430人以上の死者・不明者を出している
・ただ、今回の件で特徴的だったのは犠牲者・不明者の約半数が消防士であったことだ。建国以来、一度にこれほど多くの消防士が殉職する火災は初めてである。そして、この爆発自体、消火にあたった消防士の放水が引き起こしたという
・8月12日午後10時55分ごろ、保税区の瑞海国際物流有限公司の危険薬品倉庫前のコンテナヤードに集積されていた化学薬品コンテナで火災が起きた。港湾警察の連絡を受けて、まず23の消防中隊および93輛の消防車両、総勢600人が出動し消火作業にあたったという。10分ぐらいの放水のあと、ぱちぱちと音がして、燃えていたコンテナが発光し、危険を感じた消防隊は撤退を指示。だがその直後に大爆発が起き、逃げ遅れた消防士たちが多数巻き込まれた
・爆発の原因は、おそらく消火用放水の水が、コンテナ内の化学物質に反応したことだといわれている。爆発後の現場には水をかけると発火する白い粉があちこちに散らばっていることが確認
・最初の爆発はトリニトロトルエン(TNT)換算で3トン分の爆発に相当し、その30秒後に起きた爆発はTNT21トン分に相当するほどの威力。爆発は2分の間に4回起きたという。日本の気象衛星ひまわりからも確認できるほどの威力
・最悪なことに、倉庫内に保管されていた危険薬品の中には水に反応すると青酸ガスが発生するシアン化ナトリウム700トンが含まれ、それらが大気や地下水に流出。 爆発後も天津消防総隊から1000人以上の消防士が投入されたが、彼らの多くが、その毒ガスの存在を知らされていなかった。爆発現場の倉庫に保管されていた7種の化学薬品にシアン化ナトリウムなどが含まれている可能性が正式に発表されたのは爆発後59時間経ってから
・実は中国の消防士は素人同然。 中国には独立した消防署が存在しない。中国で一般に消防隊と呼ばれるのは、公安(警察)所属する消防隊、石油化学企業などが独自に雇用する臨時消防員、そして居民や企業職員が自主的に組織する消防組織の三つくらいだ。一部省では地元政府が公務員として消防官を募集し公安消防隊と協力する「合同制」が導入されているが、主力の公安消防隊は、解放軍傘下の武警消防隊を通じて徴用される「消防新兵」と呼ばれる兵士たちである
・彼らは2年の任期でほとんど義務兵役のような形で配属。このため、ベテラン消防士というのはほとんど存在せず、その多くが20~28歳で、その経験不足から死傷率が高い。例えば2011年、米国の消防士は10万回の出動の中での殉職率は2.51人。同じ年の中国公安当局の資料では、消防隊の殉職率は4.8人でおよそ倍だという
・2006年から2012年までの中国の殉職消防隊員の平均年齢は24歳で、最年少は18歳という。 学歴も低く、たとえば2010年、上海市で消防新兵になった1213人のうち高卒水準が32.31%、高専水準が40.49%、中卒水準が15.41%(香港フェニックステレビ調べ)という。専門の消防技術を教える教育機関は南京士官学院など中国に三つしかない
・彼らはわずか3か月の研修の後、現場に入る。2015年、消防新兵の月給は1700元(研修期間中は1500元)、危険手当300元。広東省の工場労働者よりも待遇が悪い。危険できつく、待遇も悪いために誰もなりたがらない。一般に先進国では人口1万人に対し消防士10人が水準だと言われているが、中国は1万人に対して2人に満たず、慢性的な消防士不足
・もともとは、非戦時下の兵士訓練の一環として民間の消防活動に従事させられる解放軍の伝統から始まった。しかし、現代の火災の現場は高層ビルや石油化学コンビナート、はては原発火災なども想定しなければならず、もはや3か月研修を受けた消防新兵たちの手に負えるようなものではない。未熟な消防活動が被害を拡大したり、二次災害を引き起こすことはこれまでもあった
・今年1月2日の黒竜江省ハルビン市で起きた倉庫火災で18歳から22歳までの5人の若い消防兵士が焼け崩れる建物に巻き込まれ殉職。この事件後、メディアが消防隊の実態をこぞって取材したが、消防新兵たちは、バックドラフトなど基本的な火災動力学も知らずに無知な勇気だけで現場に突っ込み、同僚を危険に陥れることも多々あることを紹介
・無知な勇気と無茶な命令。この倉庫火災では、出火後9時間も経って、消火活動が意味をなさない状況であったにもかかわらず、市当局幹部たちが、建物の中からの消火活動を望んだために、突入させられたという背景もあった。つまり官僚たちは末端の新兵の命などよりも、倉庫や中身の損害を少しでも食い止める方が大事だったのだ。そして公安消防隊は、毎年補充できる新兵の命よりも、市政府から予算を得て最新装備をそろえることの方が重要であり、市政府の無茶な命令にも従う。もし、彼らが消防新兵でなく、十分に研修費用をかけて育てあげた一騎当千のプロフェッショナルな消防士であれば、市政府もいたずらに彼らを危険な現場に突入させるような「浪費」はしないはずである
・こうした中国の消防隊が抱える問題が、今回の天津の最悪の大爆発をもたらしたといえる
・天津の事件後、メディアや世論は再び、中国の消防士のプロ化を求める声を上げている。だが、一言で消防士のプロ化といっても、簡単ではないようだ。天津の倉庫で初期消火にあたっていた消防士の中には、天津港が雇用している「専業消防士」も含まれていたが、彼らがプロかというと、そうではなく、公安消防隊よりもさらに技術の低い「バイト消防士」である。この場合、プロと呼ばれるべきは、それなりの専門知識と技術、経験の蓄積をもつ人材であり、なおかつプロ組織として機能する体制が必要なのだ。つまり目下、最低賃金に近い徴兵式で集めている全国16万人の消防士に関して、公務員並みの給与と職位、育成機関などをともなう一つの独立したシステムを構築しなければならなくなる
・消防士のプロ化は、深?市でテストケースとして1984年から取り組まれてきた。そして25年後の2009年、この試みは失敗であったと宣言された。深?では地方財政から年間1億元の予算をつけ、消防士を公務員として採用。これは財政的に大きな負担に。また、徴兵式の消防士と違って、彼らは公務員の地位に安住してしまい、時間が経つにつれ消防士の老齢化・官僚化問題が深刻に。その矛盾がはっきりしたのが、2008年2月の南山区の大火の時で、現場に派遣された消防隊はわずか6人、隊長1人、班長3人、実際に消防活動にあたる消防士は2人。この年、深?市消防局が出した報告書によれば、現役消防官および公安消防士はあわせて1123人だが、実際に消防救援活動に従事できるのは600人あまりで、消防士プロ化計画は断念せざるを得ないという結論に達した
・プロ化の最大のネックはまず経費。そして、何よりも、年齢が上がり給与が上がっても、第一線の現場に立ちたいというプロ意識を本人が持てるか、という問題があるのだ。 これには職業に対する矜持、あるいは社会全体のその職業に対する尊敬の念が重要なのだが、中国においては権力と金にまさる名誉も矜持も存在しない。ましてや命を危険にさらしてまで現場で働く人間となるより、そういう現場に他人を赴かせる権力を持つことの方が、中国人にとっては出世であり、魅力なのである
・これは別に消防士に限ったことではなく様々な職業について私が日々感じていることだが、例えば日本人の新聞記者は40歳になっても50歳になっても最前線の現場に出たがる人が多いが、中国人記者は30歳になれば、デスク業務やコラムニスト、解説員になりたがる。日本の中小企業や工場では社長になってもラインに降りてきて、製品の出来不出来を一目で見分ける人が少なくない。中国で企業や工場の管理職は、経営管理を専門に学んだエリートが多く、いわゆる生産現場にはほとんど関心がない。現場で技術や知識をもって働く人間に対する敬意というのが日本人は比較的強い。それは職人気質、プロフェッショナルという言葉に賞賛の意味が含まれることが示している
・消防士プロ化論争の中には、「消防局が、公安などから独立して一つの省庁となれば、汚職と利権の温床が一つ増えるだけ」と皮肉る声もあった。今の体制の中国には、プロ意識そのものが育つ土壌・環境がないのだ。末端の現場で働く人間は、権力を持つ官僚に利用され搾取され、使い捨てられ、死んだ後で「烈士」「英雄」と祭られるだけ。中国では権力を持たない人間の命はあまりに軽いのだ。命を軽視するから、金と時間をかけて人材を育成することができない。プロやプロ意識を育てる手間暇費用をかけるよりも、安い命を使い捨てるのだ
・命の軽視、悲劇は止められない。天津の爆発事故の背景には、消防隊の問題のほか、大物政治家・官僚の庇護を受けた企業(爆発を起こした倉庫の企業・瑞海国際は李瑞環の甥が株主という噂も)が、公共インフラ施設や居民区の1キロ以内に危険物倉庫などを設置してはいけないという法規を無視できることや、シアン化ナトリウムなどの猛毒をコンテナヤードに放置する危険物管理のずさんさなどが指摘
・すべての問題が、法が権力を持つ者を平等に裁くことができず、民衆・メディアが権力を監視する機能を持たない共産党独裁体制下での、権力を持たぬ者の命の軽視という一言に集約される気がする。このままでは、こうした大惨事はまた繰り返されるはずである
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/081700010/?P=1
次に、作家・ジャーナリストの莫 邦富氏が21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「天津市の没落を象徴する、爆発事故での呆れた対応」のポイントを紹介しよう。
・天津はかつて上海に次ぐ屈指の商工業都市だった。重慶が直轄市になる1997年まで、中国には直轄市が3つしかなかった。北京、天津と上海だ。天津は中国北部を代表する最大の港湾都市として、近代に入ると最も早く諸外国に開かれ、中国北部の開放の最前列となり、中国の富国強兵、近代化を目指した洋務運動の中心地となった。 天津の推し進めた、鉄道、電信、電話、郵便、採鉱、近代教育、司法などの近代化的整備は全国の先駆けとなり、上海に次ぐ第2の商工業都市となり、北方最大の金融・商業・貿易の中心にまで上り詰めた。たとえば、往時は100を超える国内外の銀行が参入し、全国総資本の15%を占めるほど、北方最大の金融都市としてその存在を誇った
・天津は今や中国で最も地盤沈下の激しい都市に。1978年から始まった改革・開放は中国の都市勢力図を大きく塗りかえた。80年代の後半から、天津はだんだん改革・開放の波に乗れなくなり、いつの間にか「つかみどころのない都市」となってしまった
・1990年代に入ってから、中国で地盤沈下がもっとも激しい大都市といえば、多くの中国人がまず天津を思い浮かべる。 改革・開放が始まって間もなかった1980年代初期、珠江デルタの経済的実力は京津唐地域(北京、天津、唐山)のそれに遥かに及ばなかったが、90年に入ると、両者は互角となった。京津唐地域はいまや話にならないほど後れをとってしまった。なかでも、天津の地位低下には目を覆いたくなるほどのものがあった
・いまの中国では、北京、天津、上海という3つの直轄市の実力を誇示する「京津滬」という熟語はもう聞かれなくなって久しい。変わって登場したのは「京上広」だ。つまり北京、上海、広州という3つの都市を指す。広州はただの省都だ。直轄市のランクまでは行っていない
・都市間の競争は、南の都市が勝ち、保守的な北方が大きく後れを取っている。天津市がその代表として消えて久しい。 「京上広」という新しい順位もいまやまた変わろうとしている。これからは「京上深」つまり北京、上海、深センになるかもしれない。深センの成長と飛躍に比べて、天津はすでに取り返しがつかないほどの後れをとってしまった。今度の爆発事故から見れば、天津の後れは端的に幹部の人材、意識に集中していると言えよう
・事故対応での市政府関係者の堕落した態度は象徴的。今回の事故でもすでに数回も記者会見を行ったあとでも、事故現場で指揮を取っている市政府の責任トップが誰なのかという簡単な事実も説明できないでいた。事故に直接責任を負う倉庫の運営会社についての情報も開示しようとしなかったその傲慢な態度に、天津に対する絶望感を覚えた
・2001年に、中国のネットにアップされた「絶望的な天津」と題する文章が当時、広く読まれた。再読すると、14年前に書かれたものとは思えないほどの鮮度が保たれている。 後れを取り戻そうとやけになった天津側は、天津を発展させるには北京との合併以外に道がないと思うほどに追いつめられた。しかし、天津が持ち出した合併案に対して、北京側は、「北京の火葬場を天津に移す程度なら考えてもいい」と一蹴
・ここまで侮辱されていいのか、私は判官贔屓で天津の肩を持っていたが、今度の爆発事故後の天津市政府関係者の対応を見ると、意外と核心を突いた発言だったかもしれない、という心境になってきた。 新生天津のために、腐りきった天津市政府関係者をしっかりと抉り出す外科的手術が必要だ
http://diamond.jp/articles/-/77032
第三には、橘玲氏の[橘玲の日々刻々]の20日付け「中国・天津の爆発事故。少ない死傷者、鬼城化した街…。報道では伝わらない実態とは?」のポイントを紹介したい(この記事は写真も多いので、ご一読をお勧めしたい)。
・爆発があった天津の浜海新区は、浜海新区は渤海湾に面した天津港を中心とした総面積2270平方キロの広大な開発区で、敷地面積は東京23区より大きい。今回の事故が起きたのは天津港に近い中心部。天津市の中心部から浜海新区は40キロほど離れており、東京と横浜の位置関係だから、これを「天津」爆発というのは若干の語弊がある。天津市と浜海新区は高架鉄道・津浜軽軌で結ばれている
・天津新都心の開発は1986年から〓小平が領導し国家と共産党の威信をかけた一大事業だ。2006年、天津市は600億元(約1兆円)を投じ、「東洋のマンハッタン」を生み出すべくビジネス特区の建設に着手
・しかし、驚くべきことに現在ではその全体がほぼ“鬼城(ゴーストタウン)”化。そのなかの数少ない例外が、事故現場となった東海路駅のひとつ手前の会展中心駅だ。ここには国際会展中心(コンベンションセンター)があり、私が訪れたときはアニメのイベントが行なわれていて、平日にもかかわらず若者たちですごい熱気だった
・会展中心駅の周辺にはイオンのショッピングセンターのほか、サッカー場や体育館、シネコン(複合映画館)などがつくられ、伊勢丹のある泰達(テダ)駅周辺と並んで、ビジネス新区のなかではもっとも開発が進んでいる。爆発現場から南西2キロほどのこの地区の高層アパートが被災し、住民たちが避難を余儀なくされた。報道でこの地区だけが取り上げられるのは、ここにしかひとが住んでいないからだ
・天津市の直接負債は同市の年間財政収入(2013年)の1.28倍に上る2246億元(約4兆3572億円)に上り、融資平台などを使って調達した資金を加えるとその総額は5兆元(約97兆円)を超えるという。中国国務院の会議で、汪洋副首相が「天津市は実質上破産している」と発言したとも報じられた
・上海市場の株価暴落や人民元の切り下げなどで中国経済の減速が明らかになったが、この国の経済の“時限爆弾”は地方政府が抱える膨大な債務だ。 中華人民共和国審計署(日本の会計検査院に相当)の発表では、2013年6月末時点の政府債務残高の合計は国内総生産(GDP)の50%程度に相当する約30兆2700億元に達し、そのうち地方政府の債務残高が17兆9000億元(GDP比約30%)で全体の約6割を占めた。10年末の10兆8000億元(同27%)に比べて約7兆元も増えており、その資金の多くは「地方政府融資平台」を通じて借りられている。こうした債務は償還時期が迫っており、15年末までに債務残高の約半分、16年末には約65%が期限を迎える。(内藤二郎「中国経済の行方地方債務問題解決程遠く」(2015年8月19日「日経新聞」朝刊「経済教室」)
・今回の事故をきっかけに天津市政府の破綻状態が表面化することになれば、中国経済に与える影響は甚大なものになるだろう
http://diamond.jp/articles/-/77149?page=1
新聞報道の表明的な事実からだけでは、何故このような「お粗末」な事故が起きるのかが理解できなかったが、これらを読んで漸く納得できたので、今回、紹介した次第。
地方政府の債務問題に火がつけば、すでに減速傾向の経済に大きなダメージを与えざるを得ないだろう。
今回の事故が単に、消防だけの問題ではなく、天津市、さらには中国社会全体の問題から生じた歪みであるとすれば、解決は容易ではない。これからも、トンデモナイことが起こり得ることを前提に、商売やおつきあいをしていく他なさそうだ。
タグ:天津爆発事故 日経ビジネスオンライン プロの消防士がいない中国 天津化学薬品倉庫爆発事故、悲劇の必然 100人単位の死者を出す人災事故・事件は中国では非常にまれなことではなく 特徴的だったのは犠牲者・不明者の約半数が消防士であったこと 消防士の放水が引き起こした 爆発の原因は、おそらく消火用放水の水が、コンテナ内の化学物質に反応 爆発は2分の間に4回起きたという 水に反応すると青酸ガスが発生するシアン化ナトリウム700トンが含まれ、それらが大気や地下水に流出 中国の消防士は素人同然 公安(警察)所属する消防隊 石油化学企業などが独自に雇用する臨時消防員 居民や企業職員が自主的に組織する消防組織 2年の任期 ほとんど義務兵役のような形で配属 ベテラン消防士というのはほとんど存在せず 経験不足から死傷率が高い らはわずか3か月の研修 広東省の工場労働者よりも待遇が悪い 待遇も悪いために誰もなりたがらない 慢性的な消防士不足 兵士訓練の一環として民間の消防活動に従事させられる解放軍の伝統から始まった 未熟な消防活動が被害を拡大したり、二次災害を引き起こすことはこれまでもあった 黒竜江省ハルビン市で起きた倉庫火災 5人の若い消防兵士が焼け崩れる建物に巻き込まれ殉職 無知な勇気と無茶な命令 出火後9時間も経って、消火活動が意味をなさない状況 市当局幹部たちが、建物の中からの消火活動を望んだために、突入させられた 倉庫や中身の損害を少しでも食い止める方が大事 毎年補充できる新兵の命よりも、市政府から予算を得て最新装備をそろえることの方が重要 中国の消防隊が抱える問題が、今回の天津の最悪の大爆発をもたらした 消防士のプロ化を求める声 天津港が雇用している「専業消防士」 公安消防隊よりもさらに技術の低い「バイト消防士」 消防士のプロ化は、深圳市でテストケースとして1984年から取り組まれてきた 2009年、この試みは失敗であったと宣言 財政的に大きな負担 公務員の地位に安住 南山区の大火の時で、現場に派遣された消防隊はわずか6人、隊長1人、班長3人、実際に消防活動にあたる消防士は2人 最大のネックはまず経費 年齢が上がり給与が上がっても、第一線の現場に立ちたいというプロ意識を本人が持てるか、という問題 現場に他人を赴かせる権力を持つことの方が、中国人にとっては出世であり、魅力 中国で企業や工場の管理職は、経営管理を専門に学んだエリートが多く、いわゆる生産現場にはほとんど関心がない 消防士プロ化論争 汚職と利権の温床が一つ増えるだけ 今の体制の中国には、プロ意識そのものが育つ土壌・環境がない 大物政治家・官僚の庇護を受けた企業(爆発を起こした倉庫の企業・瑞海国際は李瑞環の甥が株主という噂も) 公共インフラ施設や居民区の1キロ以内に危険物倉庫などを設置してはいけないという法規を無視できることや 猛毒をコンテナヤードに放置する危険物管理のずさんさ 民衆・メディアが権力を監視する機能を持たない共産党独裁体制下での、権力を持たぬ者の命の軽視 莫 邦富 ダイヤモンド・オンライン 天津市の没落を象徴する、爆発事故での呆れた対応 天津はかつて上海に次ぐ屈指の商工業都市 直轄市 近代に入ると最も早く諸外国に開かれ、中国北部の開放の最前列となり、中国の富国強兵、近代化を目指した洋務運動の中心地 近代化的整備は全国の先駆けとなり、上海に次ぐ第2の商工業都市となり 今や中国で最も地盤沈下の激しい都市 だんだん改革・開放の波に乗れなくなり、いつの間にか「つかみどころのない都市」 京津滬 京上広 事故対応での市政府関係者の堕落した態度は象徴的 市政府の責任トップが誰なのかという簡単な事実も説明できない 事故に直接責任を負う倉庫の運営会社についての情報も開示しようとしなかったその傲慢な態度 2001年 絶望的な天津 再読すると、14年前に書かれたものとは思えないほどの鮮度が保たれている 天津が持ち出した合併案に対して、北京側は、「北京の火葬場を天津に移す程度なら考えてもいい」と一蹴 腐りきった天津市政府関係者をしっかりと抉り出す外科的手術が必要 橘玲の日々刻々 中国・天津の爆発事故。少ない死傷者、鬼城化した街…。報道では伝わらない実態とは? 浜海新区 広大な開発区で、敷地面積は東京23区より大 40キロほど離れており 天津新都心の開発 東洋のマンハッタン 現在ではその全体がほぼ“鬼城(ゴーストタウン)”化 数少ない例外が、事故現場となった東海路駅のひとつ手前の会展中心駅 ビジネス新区のなかではもっとも開発が進んでいる 天津市 直接負債は同市の年間財政収入(2013年)の1.28倍に上る2246億元(約4兆3572億円) 融資平台などを使って調達した資金を加えるとその総額は5兆元(約97兆円)を超える 汪洋副首相が「天津市は実質上破産している」と発言 経済の“時限爆弾”は地方政府が抱える膨大な債務 地方政府の債務残高が17兆9000億元(GDP比約30%)で全体の約6割 資金の多くは「地方政府融資平台」を通じて借りられている 償還時期が迫っており 天津市政府の破綻状態が表面化 中国経済に与える影響は甚大なものになるだろう
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