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日本企業のコーポレート・ガバナンス問題(その2)岩井克人氏の見解 [企業経営]

日本企業のコーポレート・ガバナンス問題については、7月1日付けで取上げたが、今日は岩井克人氏の見解を中心に(その2)である。

8月27日付け週刊文春に、「池上彰、岩井克人「そこからですか!?」スペシャル対談:東芝の堕落 ソニーの凋落 アメリカ式経営を取り入れた企業がダメになる皮肉」として、珍しく硬派の記事が掲載された。対談とはいえ、池上彰氏は聞き手なので、語り手である岩井克人氏(国際基督教大学客員教授、元東大教授)の見解のポイントを紹介しよう。
・東芝はアメリカ型企業統治システムをソニーとともに最初期に取入れたので、「日本的経営の崩壊」ではない
・ソニー・ショック時に出井CEOは、全世界の株主に株を売らないでと頭を下げて回った。従業員を鼓舞して魅力ある新商品の開発戦略を練り直すべきだったのに、CEOの目は株主の方だけを向いていた
・(一部省略)会社の株主は有限責任なので、権利も制限。会社は二階建て。二階では株主がモノとしての会社を所有し、一階ではその会社がヒトとして工場を所有し、従業員を雇い、他の企業と契約し、製品を作っている
・二階部分のモノとしての会社を強調して株主の力を重視するのがアメリカ式。一階のヒトのところを強調して、景気の悪いときにも従業員の雇用確保や組織維持に力を尽くすのが日本式、ドイツ式
・オリンパスは組織を守るための不正で、まさに日本的経営の象徴。ウッドフォードは前任者たちが私腹を肥やしていると思って告発したが、そうでないので驚いた
・社外取締役の効果は疑問。アメリカでも最近まで社外取締役の数を増やすと逆に経営が悪くなるとの研究結果が多かった。エンロン事件、SOX法で財務の専門知識持った社外取締役が経営を監視するように。プラスの効果との研究もあるが、社外取締役の効果か、他要因の効果か不明
・忠実義務などアテにせず、代わりにストックオプションを与えて経営者を株主と同じ立場に置くことで、鼻の先にニンジンをぶらさげて株価を上げる経営をさせようとするのが世界の趨勢
・社外取締役の存在が隠れ蓑になっている。社外取締役に経営を監視させようとしても、社外取締役は自分を任命した社長に悪いことは言えない。経営者は忠実義務違反で訴えられても、社外取締役に責任を転嫁でき、社外取締役は社内事情を知らなかったと言い訳できる
・アメリカでのトップと従業員の給与格差は、70年代まで1:20だったのが今や1:500。役員報酬の公開が報酬を上げる方に作用。経営者には倫理が必要と言い続けるしかない
・日本は世界のなかでも長寿企業が他国より桁1つ多い。百年企業2万、ドイツですら1500。二百年企業でも3000社近く。数々の心得や遺訓がある。会社のステークホルダーとしての従業員や地域社会を大切にして、組織を温存させることに眼目を置いた考え方。このような知恵に立ち返ることも、資本主義にとっても、長期的にプラスの効果があると思う

アメリカ型企業統治システムを最初期に取入れた東芝とソニーがともに大きな問題に直面しているのは、偶然だとしても、少なくともアメリカ型企業統治システムを導入したたけでは、問題が解決する訳ではないことを改めて示してくれた。
岩井克人氏の「会社の二階建て論」は、同氏の「会社はこれからどうなるか」(平凡社2003年2月発行)に詳しいが、上記の週刊文春の記事は、改めてアメリカ型とは異なるコーポレート・ガバナンスのあり方を考えさせられる充実した内容であった。
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