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ソニーの経営問題(その2)ソニーはどこで間違えたか②「革新」という美名のもとに、本質を見失った [企業経営]

今日は、一昨日に続いてソニーの経営問題(その2)ソニーはどこで間違えたか②を取上げたい。

ジャーナリストの森 健二氏が、ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビューに連載した「ソニーはどこで間違えたか」のうち、7月7日付けの「②「革新」という美名のもとに、本質を見失った」を紹介しよう。そのポイントは以下の通り。
・社員の胸に届かないメッセージ:出井伸之は、アナログからデジタルへの「戦略転換点」で表に登場。「アナリスト」として優秀であることと、現場で汗して働くエンジニアや社員たちを動機づけ、実践のなかで成果を上げる「経営者」の優秀さとは別のものだ
・彼は、経営に関する基本的な考えを披露した97年5月のマネジメント会同で、ソニーのミッションは「夢の創造と実現」であるとし、経営理念は「夢のある企業活動をしていく。夢のある個人を大切にしていく。夢のある技術や商品を開発すること」と表明し、当時、注目されはじめた「複雑系」の概念を持ち出し、(途中省略) 複雑系の概念を援用して見せても、地に足がついていないから、聴き手の胸にメッセージが届かない
・ソニーの社員は、ほぼ全員が井深の書いた設立趣意書が、わかりやすい言葉で・深い内容を・具体的に・熱く届けていること。井深が盛田とともにそれを実践してきたこと、を知っている
・だが、出井が語るミッション=「夢の創造と実現」は、「リ・ジェネレーション」(第二創業)を謳うにしては、当たり前すぎて漠然としている。また経営理念は、具体的な戦略を描くベースだが、何をすればいいのかが見えない
・現場に足を運び、“手で考え足で思う”が井深や盛田のスタイルだった。ソニーの企業文化は、そうした風土のなかで育まれたものだ。 頭で考えたトップダウン戦略とは違う。盛田もトップダウンで経営をしてきたが、電話魔・メモ魔と称されたほど、現場の担当者の考えや反対意見にも耳を傾け、その上で決断を下してきた。 さらに盛田の口癖は「Don't trust anybody(任せても任せっきりにするな)」で、自分の決断に対して最後まで責任をとる覚悟を、見えるかたちで示してきた。ウォークマンの開発に当たって、社内の大反対を押し切る時に、「会長のクビを掛ける」と言ったのもその一環だ。だから求心力が生まれたのだ
・出井の経営理念(たとえば「夢のある個人を大切にする」)は、どう担保されるか。とりわけ、夢を実現する難しさを日々実感しているエンジニアたちの眼は厳しい
・出井は取締役時代には、久夛良木健の「夢」だった<プレイステーション>に強硬に反対、社長になってからも土井利忠(元・上席常務)が開発した犬型ロボット「AIBO」に反対を表明、会長・CEOになると04年にはロボットの開発中止を指令。これではエンジニアから遊離し、「求心力」が生まれるべくもなかった
・「ネットワークビジネスに関しては一番進んでいる米国で戦略を練り、日本の本社とともに進めるといった体制をつくります。そのためにこのたび、ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカ(米国ソニー)の社長に、ハワード・ストリンガーさんを迎えました」。 ネットワークビジネスに着眼したこの発言の前段は間違っていない
・しかし、米大手テレビ局CBSの報道・制作畑を歩み、放送部門トップになったストリンガーに、ネット時代の司令塔を託したことは大きな人選ミス。ネットワークビジネスは、放送ではなく、インターネットに本流がありそこで爆発的な成長を遂げていたからだ
・出井自身が著書『迷いと決断』(新潮新書)で、その失敗を認めている。 「00年に私はCEO兼任で会長に就き、後任の社長に安藤国威さんを据えて、アメリカをハワード、日本を安藤さんに統括してもらう形にしました。今だから言えますが、この人事は私の最大の失敗だったと思っています」
・確かに、会長・CEOの大賀がにらみをきかせ、伊庭保が副社長・CFOとしてテキパキ実務を処理していた間は(95年~2000年)、社長・COO出井との三者間で緊張関係もあり、業績も順調だった
・だが00年6月に、出井が会長・CEOとなり、大賀が取締役会議長、伊庭が副会長に棚上げされると、緊張関係が一挙に崩れた。 当時、出井は、大賀の桎梏から逃れたことを言祝(ことほ)ぐように、自らを主神「ジュピター」(ゼウス)になぞらえ、社長・COOの安藤を軍神「マールス」、副社長・CFOの徳中暉久を守護神「マーキュリー」にたとえてみせた
・出井は「なぜ私は社長ポストを離れ、会長兼CEO就任という人事にとらわれるというミステイクを犯してしまったのか」、そう自問しながら、最も重要な間違いについてさらりと語っている。 「それは、ファウンダー世代の空気を完全に払拭したかったからです」
・「求心力」が自分に集まらないことに悩んだ末に、「社内を不安定にする要素は極力排除したい」と思い、「そのためにはソニーを完全に新しい、出井色に染め上げたほうが新しい時代に対応しやすくなると考え」たと打ち明ける。 しかし、自らの求心力のために出井色に染め上げること――。そのこと自体が、本人の本意ではないにしろ、結局、ソニー・スピリットを失わせることにつながった
・盛田は「革新という美名のもとに、大事な本質を見失うことなかれ」と語っているが、出井は革新という美名のもとにソニーの本質を見失わせた責任を負っている
・本質を見失わせた3つのメカニズムは、①トップ人事のミス;エレクトロニクスとプロダクト・プランニングが分からないストリンガーを重用し、ソニー本体の社長経験も経ずにいきなり会長兼CEOに任じたこと
・②繰り返す組織改革;ほぼ毎年のように大幅な組織改編・経営改革に着手、「リ・ジェネレーション」「デジタル・ドリーム・キッズ」「eプラットフォーム」といったスローガンを次々とぶち上げた。いずれも「求心力」を得るための方策でもあったが、コンセプトがわかりにくく、そのたびに社内は混迷を深めていく。 各事業ユニットにEVA(経済的付加価値)を導入し、課長以上の個人報酬にまで連動させたことも、横のつながりを断ち「サイロ化」(ストリンガーの診断)を進めた
・③慢性化するリストラ;経営者が業績アップのために駆られる最も大きな誘惑は、リストラ策だ
・ソニーは、盛田が「われわれはこれまで、一人の従業員もレイオフをしたことはない。1973年、オイルショックにおそわれた困難な時代でさえ、レイオフはしなかった」と胸を張るように、レイオフ旋風が吹き荒れたアメリカでさえも、リストラに乗り出そうとする米国ソニーのハーベイ・シャイン社長を制止し、本社がその分の人件費を負担してまで従業員を守った会社だ。 「ソニーが決して顔のない非人間的な会社でないことを理解してもらい、彼らに自分たちはソニー一家のメンバーなのだとの意識を持たせ、アメリカの労働者にわれわれの望むとおりの仕事をやってもらうために」だった。求心力は人を大切にしてこそ生まれるものだ
・一方、出井は会長になる前年の99年にCEOに就くや、グループで1万7000人のリストラを開始。2003年にはさらに2万人を追加。「トランスフォーメーション」(事業変革)を唱えながら成長戦略を実現できずに、後継のストリンガー時代には2万6000人、平井一夫CEOになってからも1万7000人、と「構造改革」と称するリストラが年中行事化
・ハワード・ストリンガーをヘッドハンティングしたときに、メディア王のマードックが電話で、『ハワードだけは取らないほうがいい。絶対に後悔するぞ』と警告。2003年4月に「ソニーショック」が起きると、その後の業績不振の責任を問われて、出井会長、安藤社長が2005年に退任。後を継いだのはマードックが「警告」したストリンガー
http://www.dhbr.net/articles/-/3366

出井の責任の重大さがさらに明確になった。
今日はもっと圧縮して、③も紹介するつもりだったが、長くなってしまったので、③は明日に回したい。
タグ:ソニーの経営問題 ②「革新」という美名のもとに、本質を見失った ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー ソニーはどこで間違えたか 社員の胸に届かないメッセージ アナログからデジタルへの「戦略転換点」 「アナリスト」として優秀であることと 「経営者」の優秀さとは別のものだ ミッションは「夢の創造と実現」 出井伸之 経営理念は「夢のある企業活動をしていく。夢のある個人を大切にしていく。夢のある技術や商品を開発すること」 複雑系の概念を援用して見せても、地に足がついていないから、聴き手の胸にメッセージが届かない 現場に足を運び、“手で考え足で思う”が井深や盛田のスタイル 頭で考えたトップダウン戦略とは違う 盛田もトップダウンで経営をしてきたが 現場の担当者の考えや反対意見にも耳を傾け、その上で決断 Don't trust anybody(任せても任せっきりにするな) ウォークマンの開発に当たって、社内の大反対を押し切る時 「会長のクビを掛ける」 出井 取締役時代 <プレイステーション>に強硬に反対 犬型ロボット「AIBO」に反対を表明 04年にはロボットの開発中止を指令 エンジニアから遊離 ハワード・ストリンガー ネット時代の司令塔を託したことは大きな人選ミス ネットワークビジネスは、放送ではなく、インターネットに本流 後任の社長に安藤国威さんを据えて アメリカをハワード、日本を安藤さんに統括してもらう形に この人事は私の最大の失敗 大賀が取締役会議長、伊庭が副会長に棚上げされると、緊張関係が一挙に崩れた 大賀の桎梏から逃れた ファウンダー世代の空気を完全に払拭したかった 自らの求心力のために出井色に染め上げること ソニー・スピリットを失わせることにつながった 盛田は「革新という美名のもとに、大事な本質を見失うことなかれ」 出井は革新という美名のもとにソニーの本質を見失わせた責任 トップ人事のミス 繰り返す組織改革 慢性化するリストラ 「構造改革」と称するリストラが年中行事化 メディア王のマードック 、『ハワードだけは取らないほうがいい。絶対に後悔するぞ』と警告 後を継いだのはマードックが「警告」したストリンガー
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