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ソニーの経営問題(その3)ソニーはどこで間違えたか③「経営は詐欺まがいの仕事にもなりかねない」 [企業経営]

昨日に続き、ソニーの経営問題(その3)ソニーはどこで間違えたか③を取上げたい。

ジャーナリストの森 健二氏が、ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビューに連載した「ソニーはどこで間違えたか」のうち、7月14日付けの③「経営は詐欺まがいの仕事にもなりかねない」を紹介しよう。そのポイントは以下の通り。
・目指した姿からズレたガバナンス:ソニーは出井伸之が社長だった1997年に取締役会改革を行い、日本で初めて「執行役員制度」を導入。これは出井の功績とされているが、実際は副社長・CFOの伊庭保が提唱し制度設計を行ったものだ
・この5年前の92年3月期に、ソニーは上場以来初めて200億円を超える営業損失を計上。米CBSレコーズとコロンビア映画を続けて買収した結果、有利子負債は1兆7200億円と買収前の5倍に膨れあがり、バブル崩壊、円高、商品力の低下と合わせて経営危機に陥った
・急遽、大賀典雄社長は、ソニー生命社長の伊庭を本社に呼び戻し、再建を託した。彼は、コロンビア映画のトップの人選を含め、「経営の意思決定プロセスが不透明で、適切に機能していないのではないか」と診断
・そこで、「米国子会社の企業統治を整備し直し、その経験を活用してソニー本社の改革に取り組んだ」。「そもそもdue process, due diligence(公正な手続きを踏んで、本来なされるべき真っ当な調査・注意義務)が欠ける経営の意思決定は、企業価値の極大化につながらないリスクがある」と問題提起。 つまり取締役会を、業務「執行」の「監督」だけでなく、「経営上の重要事項を議論し、意思決定する最高機関」として機能させ、コーポレート・ガバナンスの改善につなげようとした。ソニーも含めて形骸化した取締役会が多かった当時の日本企業としては、かなり画期的な考え方。ちなみに「執行役員」という呼称も伊庭が考案
・だが、出井が会長・CEOになると、ソニーは2003年に委員会等設置会社に移行(CEOの後継指名や報酬決定は委員会が行う)。ガバナンスが利くどころか、出井は2005年のCEO交代の記者会見でも「自分がストリンガーを選んだ」と強く主張。 この言葉の裏には、社外取締役も、エレクトロニクスやソニーの内情に詳しいわけではないから、出井が推すハワード・ストリンガーがCEOとして最適かどうかを判断する材料を、持ち合わせていなかった事情(本当はそれが取締役の重要な仕事なのだが)があったと思われる
・もう一つは、取締役会議長の中谷巌(当時、多摩大学学長)や社外取締役カルロス・ゴーン(日産自動車社長)が、出井の采配に批判的だったため、実質的な“解任”と見られることを否定したかったこともある
・しかもこの時、取締役16名のうち、会長の出井、社長の安藤国威を含めた社内取締役8名全員が退任したため、ストリンガーは経営機構の刷新を思いのままに出来ることになった。 懐刀の法務担当役員ニコール・セリグマンを事務局に就け、取締役総数を12名に減らし(うちエレクトロニクス生え抜きは社内1名のみ)、それまで社内と社外が半々だった比率を、社内3名・社外9名と、社外取締役を社内の3倍へと一挙に増やした。経営の「執行」を「監督する」ためという名目は、むしろガバナンス効果を高めると当時は評価
・だが実は、ソニーの本体であるエレクトロニクス事業に全く掌握感がないストリンガーにしてみれば、エレクトロニクスに詳しくない社外取締役が多ければ多いほど、安らかでいられるのだ。取締役会議長は、温厚な紳士で知られる富士ゼロックス会長・小林陽太郎に依頼、社外取締役との「good relationship」(役員OBの言)を築きさえすれば、CEOとして長期にわたって君臨できる体制を整えた
・その結果、「ショートリリーフ」と見ていた当時の首脳・取締役の想定を超えて、会長・CEO在任期間は出井よりも長い7年となり、年間報酬も8億円超に達した。 このストリンガーの“刷新”によって、伊庭が目指したソニーのコーポレート・ガバナンスの本来あるべき姿は機能しなくなる
・これらを長期にわたって事態を放置した取締役会議長をはじめ、各取締役の責任は大きい
・2005年に出井とともに退任した社長・COOの安藤は、「出井さんとか僕らまでは、ソニーのDNAをある程度引き継いでやりましたが、その後の体制になってあらゆるものが変わりすぎた。ソニーがずっとやってきた“想いみたいなもの”(スピリット)が、完全に一端途切れてしまった。僕はそこが一番残念だし、途切れさせてしまった責任は出井さんにも私にもあると思う。あのとき、ソニーがこんなふうになるとは、思いもしなかった」
・この時、安藤に代わって中鉢良治を社長兼エレクトロニクスCEOに指名したのも出井。中鉢は、メタルテープの研究開発に熱心に取り組んできたエンジニア。だがコンシューマーグッズで生き馬の目を抜くグローバルな競争戦略を、闘い抜いた実績があるわけではなかった
・それに「エレクトロニクスCEO」という“辻褄合わせ”の肩書きは、ストリンガーの不得手な分野をカバーさせようという意図が感じられるが、ハードとソフトが一体化する時代に、ハードだけを切り出したCEOという発想自体が、すでにナンセンスだった。 当然のように、ストリンガーCEOと中鉢エレクトロニクスCEOとで、事業部との指示・レポート関係が二重となったり、主導権の錯綜が起きたりしてくる。 ストリンガーは「どんなに頑張っても、英語がうまく伝わらなかった。変化を好ましくなく思う人、デジタルの世界に移行したくない人々の反対で、前進が遅れた」と嘆いてみせた。それは言葉の壁というよりも、ストリンガーと中鉢との、またエンジニアと彼らを納得させるビジョンを示し動機づけができない経営者との、コミュニケーションの齟齬や軋轢を物語っている
・苛立ちを募らせたストリンガーは、09年4月に中鉢を副会長にして外し、自ら社長を兼務。そして、流暢な英語を話す平井一夫をはじめとする若手“四銃士”が登場。12年にはその平井が、ストリンガーの後を継いで社長・CEOの座に就いた
・冒頭で「(ソニー・スピリットを)途絶えさせた責任は、出井さんにも私にもある」と明言した安藤は、「僕がもっとしっかりしていなければならなかった」と自戒を込めて語る
・前述した伊庭は、「設立趣意書を原点とする経営理念が希釈化し、継承が断絶しようとしている」との危機感から、経営機構の刷新とソニー・スピリットの復活を目指して、行動を起こしている。今年1月の『最適な経営機構を求めて』を皮切りに、4月『ソニーの経営理念の原点は設立趣意書にあり』、5月『ソニー・スピリットが蘇る日』、6月『コーポレートガバナンス・コードに基づく質問状』と立て続けに、提言や質問状を現在の経営陣と取締役に届け、問題を提起。止むに止まれぬ想いから行動に移しているのだ。それがソニー・スピリットというものだ
。安藤や伊庭をはじめとするOBや、リストラされた社員でさえ、ソニーに対する愛情を失っていない人が多い。ソニーは、そういう会社なのだ
・「盛田さん・大賀さんの時代には、エレクトロニクスの各分野ですごい人材が群雄割拠していた。気脈を通じる仲間もいっぱいいた。ITの天才や若い猛者たちも、ひしめいていて、<VAIO>はそんな個性派を集めてきて、彼らのベクトルを1つの方向に合わせたから成功することができた
・「ソニーの一番大きな問題は、それが出来なくなったことです」。そう語る安藤は、「目標(=明確なビジョン)」、「戦略(=具体的な行動に移す指針)」、「企業文化(=自由闊達なソニー・スピリット)」の3つがワンセットになって強みを発揮していたソニーの本質を、その後の経営者たちが正しく受け継げなかったことを指摘
・久夛良木健(「プレステの父」、元副社長)も、「ソニーが素晴らしかったのは『人』ですよ。定年で卒業された人も増えたけれど、(リストラで)早期退職者をどんどん募っていった。人材が資産だった会社から、優秀な人が出ていくわけだよ、バランスシートのためにね。テクノロジーが、メカトロニクスからPCへ移り、そのPCの時代も終わりモバイルへ。これからクラウド時代に入ろうという時に、そんなことをやっている
・だって、塀がなくて、みんなが実力を認め合って、最高の人材が集まっていると思っていたら、わけのわからないインデックスをたくさん持ち込んで、全然違う会社にしてしまった。そうすると、活き活きと動き回っていた魚たち、動物たち、猛獣もいたけど、みんな生態系が変わった、基準が変わったと思いはじめたわけだ。 そうこうしているうちに、大きなメガトレンドが変わって、流れに対応できない人も増えてきたソニーだけでなく、日本のかなりの企業が適応できていないけれど、そのなかでポストが上がってきた人たちは、よく言えば失敗しないでやってきた人たち。別に彼らが悪いわけじゃないけど、失敗しない人たちに新しい何かを生み出すことはできない。 大賀さんがいつも言っていたけど、『extraordinaryな(並外れた・希代の)人』じゃないと……。猛獣がたくさんいて、盛田さんなんて猛獣使いの達人だった」
・別に彼らが悪いわけじゃないけど、失敗しない人たちに新しい何かを生み出すことはできない。 だけど、いつの間にかメダカや「羊やハムスターだらけ」になってしまったという
・それは、一人の経営者が求心力を得るために、「ファウンダー世代の空気を完全に払拭し、出井色に染め上げたい」(出井の著書『迷いと決断』)と思った時から、加速した。 「自由闊達なる」ソニー・スピリットが一挙に希薄化し、次々に打ち出した経営革新が、「重層的に連なっていた」人材のネットワークを、断ち切ることにつながってしまった
・かつて本社が置かれていたソニーNSビルの大賀の部屋から、創業の原点の地に立っていた御殿山の旧本社工場が重機で取り壊される姿を眺めながら、大賀は「なんでこうなったんだ」とうめくようにつぶやいた。一緒に見ていたOBの元経営幹部は「大賀さん、答えは簡単ですよ。あなたが経営者の人選を誤ったからですよ」、と答えたという
・出井に全ての責任があるわけではない。経営トップ・CEOを選ぶ怖さ・その責任の重さを十分に認識した上で、長い時間をかけて育成し、何重ものフィルターをかけて、そのとき選べる最高の人材を選出する仕組みを、つくっていなかったことに問題の本質がある
・盛田は、「経営首脳の不思議なところは、ミスをしてもその時にはだれにも気付かれず何年もそのままでいられる点である。それは経営というものが一種の詐欺まがいの仕事にもなりかねないことを意味する」と全経営者が自戒しなければならない言葉を吐いている
http://www.dhbr.net/articles/-/3376

今回のは、出井以降のコーポレート・ガバナンスの変質sていった様子が見事に描かれている。ただ、伊庭の問題提起がどのように扱われたのかの言及がないが、残念だ。
久夛良木の「ポストが上がってきた人たちは、よく言えば失敗しないでやってきた人たち・・・失敗しない人たちに新しい何かを生み出すことはできない」、「猛獣がメダカや「羊やハムスターだらけ」」との指摘は言い得て妙だ。
盛田の「経営首脳の不思議なところは、ミスをしてもその時にはだれにも気付かれず何年もそのままでいられる点」との自戒が残されていながら、出井以降、長年にわたってミスをし続け、現在の苦境に陥ったのは「皮肉」という他ない。
執筆者の森 健二氏は、この後、「盛田昭夫ならどんな手を打つか」で2回書いているが、本欄での紹介は省略し、下記にリンクを付けたので、興味のある方は参考にされたい。
http://www.dhbr.net/articles/-/3393
http://www.dhbr.net/articles/-/3401
タグ:取締役会 盛田 久夛良木健 ソニーの経営問題 森 健二 ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー ソニーはどこで間違えたか ③「経営は詐欺まがいの仕事にもなりかねない」 出井伸之が社長 取締役会改革 日本で初めて「執行役員制度」を導入 92年3月期 200億円を超える営業損失 米CBSレコーズとコロンビア映画 業務「執行」の「監督」だけでなく、「経営上の重要事項を議論し、意思決定する最高機関 コーポレート・ガバナンスの改善 2003年に委員会等設置会社に移行 自分がストリンガーを選んだ」と強く主張 社内取締役8名全員が退任 ストリンガーは経営機構の刷新を思いのままに出来ることになった ストリンガーにしてみれば、エレクトロニクスに詳しくない社外取締役が多ければ多いほど、安らかでいられる 社外取締役との「good relationship」 CEOとして長期にわたって君臨できる体制 在任期間は出井よりも長い7年 年間報酬も8億円超 。ソニーがずっとやってきた“想いみたいなもの”(スピリット)が、完全に一端途切れてしまった 流暢な英語を話す平井一夫をはじめとする若手“四銃士”が登場 平井が、ストリンガーの後を継いで社長・CEO 伊庭 提言や質問状を現在の経営陣と取締役に届け、問題を提起 盛田さん・大賀さんの時代 エレクトロニクスの各分野ですごい人材が群雄割拠 人材が資産だった会社から、優秀な人が出ていく 塀がなくて、みんなが実力を認め合って、最高の人材が集まっていると思っていたら わけのわからないインデックスをたくさん持ち込んで、全然違う会社にしてしまった 盛田さんなんて猛獣使いの達人 ポストが上がってきた人たちは、よく言えば失敗しないでやってきた人たち 失敗しない人たちに新しい何かを生み出すことはできない いつの間にかメダカや「羊やハムスターだらけ」 ファウンダー世代の空気を完全に払拭し、出井色に染め上げたい 「自由闊達なる」ソニー・スピリットが一挙に希薄化 最高の人材を選出する仕組みを、つくっていなかったことに問題の本質 、「経営首脳の不思議なところは、ミスをしてもその時にはだれにも気付かれず何年もそのままでいられる点である それは経営というものが一種の詐欺まがいの仕事にもなりかねないことを意味
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