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安倍政権の教育改革 [国内政治]

今日は安倍政権の教育改革を取上げよう。

7月24日付けの日経新聞は「文科相通知の国立大改革に懸念 日本学術会議」と題して、「教員養成系や人文社会科学系学部の廃止や見直しを国立大に求めた6月の下村博文文部科学相の通知に対し、「国公私立を問わず大学の在り方全般に多大な影響を及ぼす可能性に重大な関心を持たざるを得ない」と懸念を示す声明」を報じた。この通知についてはその他にも批判が相次いでいる。

安倍政権の教育改革については、本欄で一昨日に紹介した8月24日付け日刊ゲンダイ「“Mr.文部省”寺脇研氏 「新国立問題の迷走は政治家の暴走」」の4頁目以降のポイントを紹介したい。
・文系学部廃止論については、ブルドーザー的な発想をしない役人には到底考えられない政策。国が支給する運営費交付金の増減に言及したのも極めて政治的
・国立大に文系学部が設置されている理由はおおまかに、▼文理両方あることで学問が体系的に成り立つ▼地方の私学では一定レベル以上の文系教育が難しい――の2点が挙げられます。東大や京大の文系学部を廃止して地方大学は維持、というのであればまだ理解できる。東大ならそれを補う私学の早慶上智、京大なら関関同立がありますからね
・入学式や卒業式での国旗掲揚や国歌斉唱の要請もそう。安倍政権のやっていることは論拠が薄弱。安倍首相は国会で「税金によって賄われていることに鑑みれば、新教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきではないか」と答弁しました。つまり、「国がカネを出しているんだから」ということですよね
・その理屈がまかり通るなら、生活保護受給者は国旗を掲揚しろ、補助金や助成金を交付されている企業は朝礼で国歌を歌え、ということになる。あり得ない話でしょう。
・憲法23条は学問の自由とともに、それを担保する制度的保障として大学の自治を認めている。違憲にもかかわらず、野党は追及しない。政治の世界も自民党と野党が10ゼロになっている。情けない話ですよ
・安倍教育改革は極端に言えば支離滅裂です。第1次政権の方針は、まだ理解できた。ゆとり教育を「軟弱な若者ばかりになった」と否定し、教育法を改正。教科書検定で愛国心を盛り込み、全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)を実施して成績を比べさせました
・国家主義的かつ競争主義的なんです。国民は国家が教育するもので、競争によって経済は活性化する――というのが安倍首相の考え方
・ゆとり教育はその真反対。国家より、国民。生涯学習に立脚し、国民が学ぶことによって、その集合体である国家も栄えるという考え方なんです。競争ではなく共生を目指している。 「ゆとり教育」では、私が役人のくせに分をわきまえずやってきたように思われていますが、中曽根元首相の強いリーダーシップで始まった政策なんです
・といっても、中曽根元首相は10ゼロの政治家ではありませんから、多方面の意見を集約して87年にスタートし、02年からゆとり教育と呼ばれるようになりました
・第2次安倍政権で、安倍首相がフリースクールを視察したのにはビックリしました。学校という“素晴らしい教育機関”に合わない子供たちの学習の場がフリースクール。生涯教育、ゆとり教育の権化みたいなところですよ。それを制度化もしようという。夜間中学の拡充もそう
・一番驚いたのはセンター試験の廃止。1点刻みの入試をやめろという。私が大賛成することを次々にやる。同じ政権が、ですよ。だから、教育専門家は一体どっちなの? と戸惑っています。政策の統一性が取れていなければ、原則もない。こんな教育改革は、役人だったらあり得ない。中曽根臨教審は生涯学習社会がこの国の教育制度の方向性であるというハッキリした理念があり、閣議決定もされました。ゆとり嫌いの安倍首相がこの閣議決定を取り消す閣議決定をすれば、ゆとり教育は瞬く間に消えたんです。それが名前を変えて復活してきているんですから……
・文科省がグローバル人材育成を旗印にしきりと言う「キャリア教育」や「アクティブラーニング」は生涯学習のことですし、ヨーロッパにならって「国際バカロレア」(国際的な教育プログラム)を推進。ゆとり教育はヨーロッパスタンダードで、どれもゆとり教育でやろうとしていたことなんです。私はニヤニヤしながら見ていますが、現場は大混乱ですよ
・近代国民教育は国家の言うとおりにしていれば必ず立派な人間になれるというものでした。しかし、ポスト近代は、幸せは自分で勝ち取るもの、という考え方。ヨーロッパはいち早くそれに気づいて実行しているんです。安倍政権は上半身が保守で、下半身は新自由主義。結局、国家主義も競争主義も立ち行かないのは歴史の必然だと気付かされたのでしょう
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162922/4

一昨日も紹介したが、筆者の寺脇 研氏は、元文部省官僚。映画評論家。京都造形芸術大学芸術学部マンガ学科教授。文部省時代には、「ゆとり教育」「脱偏差値」「学校週5日制」「総合的な学習の時間」「生涯教育」などを推進したため、「ミスター文部省」と呼ばれ、批判も受けた。安部首相が思い付き的に、統一性・整合性のない「改革」を打ち出し、一旦は否定した「ゆとり教育」の考え方に、再び結果的に近づいてきたことに、ほくそ笑んでいるようだ。
これを読むまでは「ゆとり教育」はとんでもない代物と思っていたが、読んでそこまで広がりがあることを知り、いまさらながら再評価した。
教育問題は、誰でも一家言を持ち、あの金銭トラブルで自民党を離党した武藤貴也議員ですらも、安保法案に反対する学生らを「利己的」などと非難するついでに、現在の教育制度がこうした学生を生み出したと「ご高説」をのたまわったらしい。こんなバカ議員なら影響力はないが、影響力が極めて大きい安部首相が、いいかげんな教育改革をすることによる教育界や学生が被る被害は甚大である。野党やマスコミは、憲法23条違反などを見逃すことなく厳しく追及してほしいものだ。
タグ:安倍政権は上半身が保守で、下半身は新自由主義 ポスト近代は、幸せは自分で勝ち取るもの 国家の言うとおりにしていれば必ず立派な人間になれるというもの 近代国民教育 国際バカロレア 生涯学習 「キャリア教育」や「アクティブラーニング」 グローバル人材育成を旗印 こんな教育改革は、役人だったらあり得ない 政策の統一性が取れていなければ、原則もない 教育専門家は一体どっちなの? と戸惑っています 文科相通知の国立大改革に懸念 日本学術会議 日経新聞 センター試験の廃止 制度化もしようという 教員養成系や人文社会科学系学部の廃止や見直し 生涯教育、ゆとり教育の権化みたいなところ 安倍首相がフリースクールを視察 第2次安倍政権 多方面の意見を集約 中曽根元首相 中曽根元首相の強いリーダーシップで始まった政策 ゆとり教育はその真反対 国家主義的かつ競争主義的 全国学力テスト 教科書検定で愛国心を盛り込み ゆとり教育を「軟弱な若者ばかりになった」と否定し、教育法を改正 第1次政権の方針は、まだ理解できた 安倍教育改革は極端に言えば支離滅裂 政治の世界も自民党と野党が10ゼロになっている 違憲にもかかわらず、野党は追及しない 学問の自由とともに、それを担保する制度的保障として大学の自治を認めている 憲法23条 あり得ない話 補助金や助成金を交付されている企業は朝礼で国歌を歌え 国がカネを出しているんだから 論拠が薄弱 入学式や卒業式での国旗掲揚や国歌斉唱の要請 地方の私学では一定レベル以上の文系教育が難しい 文理両方あることで学問が体系的に成り立つ 国立大に文系学部が設置されている理由 運営費交付金の増減に言及したのも極めて政治的 ブルドーザー的な発想をしない役人には到底考えられない政策 文系学部廃止論 「“Mr.文部省”寺脇研氏 「新国立問題の迷走は政治家の暴走」 日刊ゲンダイ 下村博文文部科学相の通知 安倍政権の教育改革 懸念を示す声明
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