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中国経済 [世界経済]

今日も日経平均株価は3日連続の下げとなったが、株安の主因とされる中国経済を取上げよう。なお、人民元切り下げ騒動については、8月19日に取上げたので、参照されたい。

先ずは、8月27日付けJBPress(FinancalTimes)「中国について心配することが妥当な理由 問題は中国株の下落そのものではなく、それが示唆すること」のポイントを紹介したい。
・中国の株式市場の下落は心配する価値がある。それは、単なる株式バブルの破裂にもうまく対処できていないように見える中国政府当局が直面している難問の大きさだ
・中国主導で調整局面に入った株式市場:株式市場は確かに、中国がリードする形で調整局面に入っている。上海総合指数は6月につけた高値から今週火曜日(8月25日)にかけて43%下落。だが、それでも2014年初めの水準に比べれば50%高い。ここ10年で2度目となる中国株バブルの崩壊はまだ終わっていないと思われる
・中国の株式市場は普通の市場ではない。「自分よりも愚かなプレーヤー」に割高なチップを手遅れになる前に渡してしまおうと全員が願っているカジノのような面が、この世界のほとんどの市場よりも強い。そういう市場はボラティリティー(変動性)が極端に高くなるのが常だ。だが、この気まぐれな動きは、中国経済全体についてほとんど何も物語らない
・それでも、中国市場でいま起こっていることは、関連し合う2つの点で非常に重要な意味を持っている
・第1の点は、中国政府当局がバブル崩壊を阻止する取り組み(意外なことではないが、成功していない)にかなりの量の資源と、さらには政治の威信まで賭ける決断を下したこと
・第2の点は、当局は経済が心配だったからこそそこまでやったに違いないということだ。成功する望みのない行動に出るほど当局が心配しているのであれば、我々も心配すべきだろう
・中国当局の行動が懸念される理由はこれだけではない。8月11日に行われた人民元切り下げの決断も懸念すべき材料だ。米ドルに対する切り下げ率は今のところ2.8%に過ぎず、切り下げ自体はさして重要ではない
・しかし、この行動には重要な意味が隠されている。第1に、中国当局は、25日に行ったような金利引き下げの余地を欲しがっている。そのこと自体、当局が経済の状態を懸念していることを表している
・もう1つ考えられる意味合いは、中国当局が輸出主導の経済成長を復活させようとしている可能性がある、ということだ。もしそんなことになれば世界経済に破滅的な影響が及ぶため、筆者自身は信じがたいことだと考えているが、少なくとも、不安定性をもたらすそのような可能性について心配すること自体は妥当だろう
・考えられる最後の意味合いは、中国当局は資本逃避の容認に備えているということだ。もしその通りなら、米国は自分で仕掛けた罠にかかってしまうことになる。米国政府は以前から、中国に資本勘定の自由化を求めてきた。それゆえ、人民元の下落という短期的な不安定要因を容認せざるを得ないかもしれない
・最近の出来事は、より深刻な懸念という文脈で見ていかねばならない。問題は、中国を投資主導の経済から消費主体の経済にシフトするという仕事を、総需要の水準を維持しながら成し遂げる能力と意志が中国政府当局にあるか否か、である
・もしその能力があるのなら、中国経済は6~7%の経済成長も維持するだろう。その能力がないのであれば、経済と政治が不安定化することになる
・中国の景気はすでに減速している。「新常態(ニューノーマル)」の話はこの現実を認識。しかし、アナリストらが独自に予想した経済成長率を調査会社コンセンサス・エコノミクスが集計したところ、2015年第4四半期の予想成長率(前年比)の平均はわずか5.3%になった
・このような数字が正しいと仮定してみよう。 政府の公式統計によれば、2014年の総固定資本形成は国内総生産(GDP)の44%を占めていた。 しかし、GDPの44%を投資に回していながら5%しか成長しないというのは、経済にとって理にかなった行動なのだろうか。 答えはノーだ。このデータは、投資の限界収益率がマイナスとは言わないまでもかなり低い値であることを示唆している。もしその通りであれば、投資は急減する恐れがある
・総需要の不足への懸念は今に始まったことではないが・・・:ムダな投資が真っ先にカットされるのであれば、投資が急減しても中国の潜在成長率は低下しないかもしれない。しかし、需要は急減するだろう。中国当局がこれまでやってきていることはすべて、需要の急減こそが当局の心配の種であることを示唆
・総需要が不足するという心配は目新しいものではない。西側諸国で金融危機が起こり、中国の輸出への需要が大幅に落ち込んだ時からずっと強く懸念されていることだ。この輸出の急減を受けて、中国は独自の、借り入れを燃料とする投資ブームに乗り出したのだ
・目覚ましいことに(そして心配なことに)、GDPに占める投資の割合は高まり、それにつれて潜在的産出量の伸び率は低下した。長期的に見れば、これは持続可能な組み合わせではなかった
・中国政府当局は経済の面で頭の痛い課題を3つ抱えた。 第1の課題は、金融危機を回避しながら、過去の金融行動の行き過ぎによる遺物を片付けること。
・第2の課題は、官民の消費への依存度を高めつつ、異常な水準にある投資への依存度を低くできるように経済を作り直すことだ
・そして第3の問題は、総需要のダイナミックな拡大を持続させながらこれらの課題をすべて達成することである
・昨今の出来事が重要なのは、中国当局がこの3つの課題を解決する方法をまだ見いだせていないことを示唆しているからだ。さらに悪いことに、当局がこの7年間に講じてきた弥縫策により、状況はさらに悪化してしまっている
・ひょっとしたら、今後の情勢が厳しいこと、そして当局が実際に選ぶかもしれない方策の中には不安定さを高めるものも混じっていることを、株式市場はすでに把握しているのかもしれない。具体的には、人民元の切り下げ、超低金利、さらには金融の量的緩和などだ
・もしこの見方が正しいのであれば、市場の心配はばかげたものではないかもしれないことになる。世界の貯蓄過剰はさらにひどくなる恐れがある。もし本当にひどくなったら、全員が影響を受けることになるだろう
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44641

次に、8月31日付け東洋経済オンライン「中国の金融緩和は、なぜ不発に終わったのか そして忍び寄る深刻な「債務デフレ」」のポイントを紹介しよう。
・年明けからバブル的に上昇してきた中国の株価は完全に振り出しに戻った。上海総合指数は8月24日、25日と2日連続で大幅に下落し、2014年12月以来の3000ポイント割れとなった
・中国メディアは8月25日、証券大手である、中信証券の徐剛総経理(社長)が公安当局の取り調べを受けていると報じた。違法取引がらみとされているが、具体的な内容は明らかではない
・有力経済誌『財経』の記者もこの日に連行された。この記者が7月20日に報じた「当局が株価下支え策の縮小を検討中」という趣旨の記事が問題視されたもよう。とにかくスケープゴートを作ろうとしている印象だ
・同日夜に中国人民銀行(中央銀行)は、追加金融緩和策を発表。政策金利は26日から0.25ポイント引き下げられて4.6%とされた。銀行に義務づけられている預金準備率についても、9月6日から0.5ポイント引き下げられることになった
・メディアに強権をちらつかせて服従を迫りながら、切り札である金融緩和を素早く実行。が、翌26日の上海総合指数は1.3%安の2927ポイントとなり、その後も当局の思うようには戻っていない
・6月以降の大幅な株価下落局面で、当局は買い支えのために大手証券会社を動員し、警察が「悪意あるカラ売り」を取り締まるなど、さまざまな手立てを講じて大台とされる4000ポイント台に回復させた。 結果、中国の株式市場は当局が極端な手段で介入する市場であることが、世界中に知られるようになった。ところが今回、テコ入れがまるで効かないことは、「よほど経済のファンダメンタルズが悪いのではないか」という疑念を抱かせる
・実際、景気の低迷は明らかだ。中国製造業PMI(購買担当者景気指数)の8月速報値は47.1と、7月の47.8を下回り6年半ぶりの低水準。同指数は50を切ると景気後退を示唆するといわれており、8月まで6カ月連続で50を割り込んでいる
・デフレ圧力も高まっている。7月の卸売物価指数は前年同月比5.4%と大きく落ち込み、41カ月連続のマイナス。ここに企業活動の停滞ぶりがはっきり表れている
・中国は8月11日に人民元の基準値設定のあり方を見直し、対ドルレートは元安の方向に振れた。介入で元安を止めるという従来の政策を転換した背景には、元買いが金融引き締め効果をもたらし、デフレ阻止のための金融緩和と矛盾するという、構造問題がある。その交通整理を行うことで、さらなる緩和の地ならしができていた
・預金準備率の引き下げと利下げを同時に発表した8月25日、人民銀行の発表文には、「企業の資金調達コストを下げるため」と記された
・中国の非金融企業(地方政府の資金調達機関である、地方融資プラットフォームを含む)の債務残高は、2014年末時点で99.7兆元(約2000兆円)だ。GDPに対する比率は156.7%にも達する。これは日本のバブル期(1989年に132.2%)をも上回る水準である
・日本総合研究所の関辰一・副主任研究員は「金利を6%、返済期間を10年と仮定すれば、毎年の元利支払い負担は16兆元(約320兆円)に及ぶ。金融緩和があっても、企業は設備投資より、バランスシート調整を優先する可能性が高い」と見る。実際、人民銀行が発表している企業の資金需要を表す指数は、金融緩和が始まった14年冬以降も、低下の一途をたどっている
・日本ではポストバブル期の91年に金融緩和に転じたものの、企業の設備投資の回復にはつながらず、「バランスシート不況」が長期化した。現在の中国も、そのとば口に立っている可能性がある
・行き場のない資金が不動産へ?:潜在成長力が落ちている中で金融緩和を継続すれば、資産バブルをいっそう膨らませるおそれがある
・2014年半ばからすでに総崩れの様相を呈していた不動産市況は、今年の春から回復傾向だ。内陸部の都市で低迷が続く一方、深センなど沿海部では突出した上昇が見られる。株式市場の低迷を受けて、行き場のない資金が実勢以上に価格を押し上げている、という懸念はぬぐえない
・こうした状況で景気を刺激する最終手段は、中央財政によるインフラ投資の拡大だろう。9月には、G20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議や、習近平国家主席の訪米が控えている。世界経済の中での存在感を示すという意味合いからも、中国が財政出動に打って出る可能性が高まっている
・だがそれは、08年のリーマンショック後に中国が総額4兆元もの景気対策を打ち、地方政府の財政を悪化させた失敗の二の舞いになりかねない。財政頼みで景気刺激を繰り返すようになれば、日本がたどった道に重なる
・結局のところ、国有企業改革など生産性向上のための地道な取り組みしか、活路はない。そのために残された時間は決して多くない
http://toyokeizai.net/articles/-/82220

リーマンショック後の総額4兆元もの景気対策は、世界経済にも大きな救いになったことは事実だが、その裏で地方政府の財政や、企業の債務大幅増加があった。これを繰り返して、現在の苦境を凌ごうとすれば、目先は何とかなっても、必要な調整を先送りするだけでなく、必要な調整をますます大きくしているに過ぎず、長期的には調整が深く、長くなるようだ。中国経済の軟着陸させるには、神業が必要らしい。
タグ:JBPress(FinancalTimes) 株安の主因 中国について心配することが妥当な理由 問題は中国株の下落そのものではなく、それが示唆すること 単なる株式バブルの破裂にもうまく対処できていない 中国経済 上海総合指数 中国政府当局が直面している難問の大きさ 43%下落 2014年初めの水準に比べれば50%高い 中国株バブルの崩壊はまだ終わっていない 中国の株式市場 カジノのような面 中国政府当局がバブル崩壊を阻止する取り組み にかなりの量の資源と、さらには政治の威信まで賭ける決断を下したこと 当局は経済が心配だったからこそそこまでやったに違いない 人民元切り下げの決断 金利引き下げの余地を欲しがっている 当局が経済の状態を懸念 輸出主導の経済成長を復活させようとしている可能性 世界経済に破滅的な影響 資本逃避の容認に備えている 米国は自分で仕掛けた罠にかかってしまうことになる 投資主導の経済から消費主体の経済にシフト 総需要の水準を維持しながら成し遂げる能力と意志 新常態(ニューノーマル) 総固定資本形成は国内総生産(GDP)の44% 投資の限界収益率がマイナスとは言わないまでもかなり低い値であることを示唆 投資は急減する恐れ 需要は急減するだろう 金融危機 中国は独自の、借り入れを燃料とする投資ブームに乗り出した GDPに占める投資の割合は高まり 潜在的産出量の伸び率は低下 持続可能な組み合わせではなかった 頭の痛い課題を3つ抱えた 金融危機を回避しながら、過去の金融行動の行き過ぎによる遺物を片付けること 官民の消費への依存度を高めつつ、異常な水準にある投資への依存度を低くできるように経済を作り直すこと 総需要のダイナミックな拡大を持続させながらこれらの課題をすべて達成すること 中国当局がこの3つの課題を解決する方法をまだ見いだせていない がこの7年間に講じてきた弥縫策により、状況はさらに悪化 人民元の切り下げ 超低金利 金融の量的緩和 世界の貯蓄過剰はさらにひどくなる恐れ 東洋経済オンライン 中国の金融緩和は、なぜ不発に終わったのか そして忍び寄る深刻な「債務デフレ」 中信証券の徐剛総経理(社長)が公安当局の取り調べ 有力経済誌『財経』の記者もこの日に連行 中国人民銀行 追加金融緩和策 翌26日の上海総合指数は1.3%安の2927ポイントとなり、その後も当局の思うようには戻っていない 買い支えのために大手証券会社を動員 察が「悪意あるカラ売り」を取り締まる 大台とされる4000ポイント台に回復させた 当局が極端な手段で介入する市場 今回、テコ入れがまるで効かない よほど経済のファンダメンタルズが悪いのではないか 景気の低迷は明らかだ 製造業PMI(購買担当者景気指数) 8月まで6カ月連続で50を割り込んでいる ・デフレ圧力も高まっている 卸売物価指数 41カ月連続のマイナス 人民元の基準値設定のあり方を見直し 中国の非金融企業 債務残高は、2014年末時点で99.7兆元(約2000兆円) GDPに対する比率は156.7% 日本のバブル期(1989年に132.2%)をも上回る水準 企業は設備投資より、バランスシート調整を優先する可能性が高い 日本では 、「バランスシート不況」が長期化 現在の中国も、そのとば口に立っている可能性 資産バブルをいっそう膨らませるおそれ 不動産市況は、今年の春から回復傾向 行き場のない資金が実勢以上に価格を押し上げている 景気を刺激する最終手段は、中央財政によるインフラ投資の拡大 9月には、G20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議や、習近平国家主席の訪米 中国が財政出動に打って出る可能性が高まっている 総額4兆元もの景気対策を打ち、地方政府の財政を悪化させた失敗の二の舞いになりかねない 国有企業改革 地道な取り組みしか、活路はない
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