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五輪エンブレム問題(その2) [社会]

五輪エンブレム問題については、8月15日に取上げたが、今日は(その2)である。

先ず、9月2日付け日経ビジネスオンライン「ついに白紙撤回。五輪エンブレムはなぜ炎上したか? ガソリンを注ぎ続けたデザイナーの権利意識の甘さ」のポイントを紹介しよう(▽は小見出し)。
▽感情的な発言が仇に
・今回の問題を振り返ると、デザイナーと一般の人々との見識の違い、それに伴うコミュニケーションのミスが、両者の隔たりを次第に大きくしていった
・ベルギーのロゴとの類似問題が発覚した直後に、オリンピック準備委員会が2015年8月5日に開催した会見で、デザイナーの佐野研二郎氏は両者のロゴについて「まったく似ていない」と発言。さらに「人のデザインを模倣したことは一切ない」と断言した。おそらく制作プロセスの違いから、両者の手がけたデザインには差があると佐野氏自身は思ったのだろう。しかし長方形と、正方形から円弧を切り取った形状を使ったTの文字と、その一部を右下に配置した点が共通するのは事実。そこで両者を「似ていない」と切り捨てても、一般的な人々への理解は得るには無理があった
・誰もが使うアルファベットをベースにした単純なデザインは、実際に似ることはあるのは仕方がない。その点を説明した上で、法的には問題ない点のみを説明していれば、ここまでの炎上はなかっただろう。しかし、一部の人々は「まったく似ていない」、「模倣は一切したことがない」という佐野氏の感情的な発言のみに反応。インターネットを通じて佐野氏が手がけたこれまでのデザインの検証を始めた
・そこで出てきたのが、サントリーのノンアルコールビール飲料「オールフリー」の景品のトートバックのデザインだ。佐野氏がデザインを手がけたとの触れ込みで発表されたデザインの一部に、明らかに他者のイラストや写真をそのまま使ったものがあった
・ここで「模倣したことはない」という佐野氏の発言の信頼性が完全に崩れた。もはや佐野氏が何を言っても、そこに説得力は無くなったのだ
・その後も、佐野氏が手がけた別の企業や団体のロゴも槍玉に挙げられる。その中の多くは相当無理のある比較で、法的にはほとんど問題のないものだったと考えられる。しかし問題ない程度のデザインではあったものの、一般の人から見ると似ているデザイン。すでに信頼が失われている中で、佐野氏が「模倣をする」という印象は拭いきれないものになっていった
▽2度目の会見がとどめに
・そこに止めをさしたのが、今回の公募の審査委員長を務めた永井一正氏が出席した最終デザイン案完成までのプロセスを解説した会見だ。ベルギーのデザインを模倣したわけではないことを証明するつもりで、佐野氏が応募した当初案の公開に踏み切ったが、これが裏目に出た
・そもそも元の佐野氏の案は、商標登録されているほかのロゴに似る可能性があるとして変更が加えられた経緯のあるものだ。この状況で、そもそもそんなリスクの高い元のデザイン案をなぜ公表するのか疑問に残る
・結果的に当初の案が、ヤン・チヒョルト氏の展示会のポスターにある文字に似ているとの指摘を受ける。  そしてさらなる決定打となったのは、デザインの展開事例案が7月24日のエンブレム発表に続いて改めて公開され、それが標的になったことだ。佐野氏によればもともとこの展開例はあくまで内部資料扱いの「カンプ」のつもりだった。カンプというのは一般的に外部に公表されることはない、関係者内のプレゼンのみに使われる資料のこと。関係者内だけの資料だとしても権利侵害はあってはならないことだが、最も権利意識の薄い部分である。そこの油断に落とし穴があった。7月24日の発表後になんの指摘もなかったために、大丈夫だと思ったようだ。それが炎上後に改めて公開されたことで、佐野氏の展開例はウエブから無断で画像を使い改変していたことが、後になって発覚したのだ。結果的に本来なら問題のなかったはずのオリンピックエンブレムにまで泥を塗ってしまうことになった
・この件について佐野氏は、オリンピック組織委員会にこう説明したという。「展開例のカンプはもともと応募時に審査委員会の内部資料として作ったもの。(他人の写真などを資料などに仮に使うといったことは)審査委員会のようなクローズドの場ではよくあること。しかし公にするには、著作者に了解を取るなどの対応が必要になる。これを怠った」。その後、事後的ではあるが権利者にどうしたらいいか話をしているという
・デザイナーからも、こうした佐野氏の姿勢には疑問の声が上がっている。少なくともトートバッグの絵柄と、カンプ用画像の無断利用などは「なんらかの対策を施すことで防ぐことができる問題だった」と語るのはデザインコンサルティングを手掛ける、ウジパブリシティーのウジトモコ氏だ。「多くのデザイン事務所では、ストックフォトの定期購入サービスを利用したり、デザイナーが自ら写真を撮るなどの工夫をしている。出どころを管理すればスタッフのキャリアに関わらず事故の発生は防げるはずだし、また普段からデザイナーには無料素材などに飛びつかないようにと指導している」(ウジ氏)
・今回の佐野氏の模倣問題に関して、明らかに他者の著作権を侵害しているケースは、トートバッグとカンプの2件だけだ。そして2つの問題は簡単なマネジメントで防げたはずの出来事だ。その簡単な作業を怠った代償は、あまりにも大きすぎた
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/090100076/?P=1

次に、9月4日付け日経ビジネスオンライン「五輪組織委は“東大話法”をすぐ止めましょう」のポイントを紹介しよう。
▽主体性がない
・記者会見における武藤事務総長の説明を振り返ると、どうも言葉通りには受け取れません。 全文を追ってみても、撤回理由の長い説明は、「問題がなかったわけではないが、専門家の意見を聞き、みんなで相談して次に進みます」ということに尽きるからです
・ここで忘れてはならないのは、エンブレムの選考そして所有の主体は組織委員会であるということです。  決定したエンブレムに問題が起きても、エンブレム選定の仕組みに瑕疵があっても、決定したエンブレムが支持されなくても、主体は組織委員会ということになります
・今回、記者会見で繰り返し出た質問は、次にどうするという前に、デザイナーを含むエンブレム自体の問題と、選定の仕組みの問題と、支持が得られなかった問題とその責任を問題の主体である組織委員会がどう考えているのかということでした
・世間の関心としては、これをはっきりさせずに次には進めない
・ところが武藤事務総長は、これに対してまったく主体性の感じられない回答をします。「大勢の人が関与し、いろんな手続きをとって、この問題をいかに進めるかというのが非常に大事だと思います。誰か1人がいいから決めたんだというようなことであってはならない。むしろいろんなかたちで専門家が関与して、みんなが責任を分担してこういう結論を出すと、誰かひとりが責任をもって結論を出すということではないと思います。もちろん組織としては、トップが責任を持つという論理はわかりますけれども、分解して誰かに責任があるのかという議論はするべきでないし、またできないだろうというふうに思います」
・「責任ということに対しては我々は決して責任がないなんていうことは申し上げておりません。たいへん申し訳なく思っております。しかし、それを新しいエンブレムを作って、一刻も早く国民の皆さまの支持を得られるようなものを作っていく、それがもっとも大事なことではないかというふうに考えるわけであります」
・これは俗に言う東大話法と呼ばれる話の構成で、質問には答えているけれども、その意図に対しては応えていない、腰の引けた、人ごとのような答弁です。言葉に主体性がないので、真面目に聞いている人ほど嫌悪感を持ちます
・これでは支持を生まないばかりか、パブリックムードとしては怒りが増幅されて、どんどん敵を生むことにつながっていきます。これが現在の一番の課題であり、この先のリスクです
・今回の騒動の早い段階から組織委の姿勢にはこうした印象がとても強い。 審査の主体ではなくデザイナー個人に最初の説明をさせ、原案は見せないと言ったのに後に公開し、IOCとの協議そして裁判の関係で情報公開が遅れたと言い、審査委員長を出して更に混乱を生み、デザイナーが取り下げを申し出たのでみんなで撤回することに合意した、と
・その総括として、問題がなかったわけではないが、専門家の意見を聞き、みんなで相談して次に進みます、と言っているのです。この段階で「支持を得る」ためにどうしようとしているのかという強い意思が見えない
・こうした組織委員会の姿勢も少なからず影響しているものと思いますが、8月頭にネット上で始まった「2020年東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムの変更を要求します」には撤回が決まるまでの段階で2万人を超える署名が集まっていました
・この状態から、支持を得ようというわけですから、この先、相当な困難が待ち受けていることは確かです
▽次は広く公募と言うけれど
・新しいエンブレムは広く公募することを検討すると言いました。そして「できるだけオープンな選考、密室でない選考を心がけたい」と言ったのです
・この発言から、少なくともこれまでの方法では密室だというイメージを持たれているという認識があることが分かります。さらに、「新しいご提案はいろいろありうると思いますので、何か特定のものを排除することなくいろんなことを考えていきたい」 ということで、まだ具体的にはなっておらず、苦慮している様子が伝わってきます
(これ以降の、どうすべきかの説明は、パブリック・リレーションズ(広報戦略)の手法的な解説なので、紹介を省略)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/245872/090300004/?P=1

懸念されたエンブレム利用企業からの損害賠償請求は、トヨタの豊田社長からの無言の圧力で一応、抑えられたようだ。
新国立競技場に続く大失態で、デザイン業界のいいかげんさを示した。と同時に、ネット社会のなかで、閉鎖的に決めてしまおうとの官僚的な手法の限界を示したものともいえそうだ。出直しとなる両案件の今後を注目したい。
タグ:五輪エンブレム問題 日経ビジネスオンライン ついに白紙撤回。五輪エンブレムはなぜ炎上したか? ガソリンを注ぎ続けたデザイナーの権利意識の甘さ デザイナーと一般の人々との見識の違い コミュニケーションのミス 両者の隔たりを次第に大きくしていった ・ベルギーのロゴとの類似問題 オリンピック準備委員会 佐野研二郎氏 両者のロゴについて「まったく似ていない」と発言 実際に似ることはあるのは仕方がない。その点を説明した上で、法的には問題ない点のみを説明していれば 佐野氏の感情的な発言のみに反応 デザインの検証 インターネット サントリー トートバックのデザイン 別の企業や団体のロゴも槍玉 多くは相当無理のある比較で、法的にはほとんど問題のないものだった 佐野氏が「模倣をする」という印象は拭いきれないものに 2度目の会見がとどめに 審査委員長を務めた永井一正氏が出席 当初案の公開に踏み切ったが、これが裏目に出た そもそもそんなリスクの高い元のデザイン案をなぜ公表するのか疑問 当初の案 ヤン・チヒョルト氏の展示会のポスターにある文字に似ているとの指摘 デザインの展開事例案 ウエブから無断で画像を使い改変 デザイナーからも、こうした佐野氏の姿勢には疑問の声 五輪組織委は“東大話法”をすぐ止めましょう 武藤事務総長の説明 エンブレムの選考そして所有の主体は組織委員会 まったく主体性の感じられない回答 東大話法 質問には答えているけれども、その意図に対しては応えていない、腰の引けた、人ごとのような答弁 言葉に主体性がない 嫌悪感を持ちます 怒りが増幅されて、どんどん敵を生むことにつながっていきます 審査の主体ではなくデザイナー個人に最初の説明 原案は見せないと言ったのに後に公開 IOCとの協議そして裁判の関係で情報公開が遅れたと言い 審査委員長を出して更に混乱を生み デザイナーが取り下げを申し出たのでみんなで撤回することに合意 次は広く公募と言うけれど
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