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TPP問題(その4)合意先送り [外交]

TPP問題については、前回は7月19日に取上げたが、合意が先送りされたのを受け、今日は(その4)である。

先ずは、8月19日付けダイヤモンド・オンライン「日本が読み違えたTPP合意先送りの悪い影響」のポイントを紹介しよう(▽は小見出し)。
・「大筋合意の確率は70%」。甘利明TPP担当相の読みは甘過ぎた。7月末からハワイで開催されていた環太平洋経済連携協定(TPP)の閣僚会合は、合意に至らないまま閉幕
・甘利大臣が読み違えたのは、“伏兵”の存在を軽く見ていたからだ。「日米交渉がまとまれば、あとは何とか決められると考えていたのではないか」(菅原淳一・みずほ総合研究所上席主任研究員)。ところが、ふたを開けてみると、ニュージーランドが日米などに乳製品の輸入拡大を求めて強硬な姿勢を最後まで崩さなかった
・自動車や自動車部品の交渉では、日米では関税撤廃で合意する方向で進んでいたが、メキシコとカナダが原産性基準(TPP圏内で一定の付加価値比率を累積で満たせば圏内原産と認定される基準)について、日本が主張する40%台では小さ過ぎるとして反対し、交渉が難航したといわれる
・また、医薬品の新薬承認に必要なデータの保護期間でも折り合いが付かなかった
▽TPP漂流の可能性も
・今回の大筋合意が先送りされたことで、TPPが漂流する可能性も出てきた。来年に大統領選挙を控える米国の政治日程が厳しくなってきたためだ
・現時点では、大筋合意が実現するのは早くても9月とみられている。その場合、米国政府がTPPに署名できるのは12月となる。政府が他国と結んだ通商合意について、議会に修正なしで賛否の議決を求めることができる大統領貿易促進権限(TPA)には「90日ルール」があるからだ。議会に通知してから90日たたないと政府は署名することができない
・しかし、12月後半にはクリスマス休暇がある上、2016年2月からは大統領予備選挙が始まる。民主党内部では反対派も多く、予備選が始まると、TPPは蚊帳の外に置かれる可能性が高い。通商政策の専門家の間では、TPP交渉は次期大統領が誕生する17年1月以降に仕切り直しになるとの見方さえ浮上
・大筋合意の先送りは、日本の政治日程にも影を落とす。16年夏に参議院選挙を控える自民党としては、その前に何としてでもTPP法案を可決する手はずだった。大筋合意がずれ込めば、参院選でTPPが争点となる可能性
・今年9月の自民党総裁選挙で安倍晋三首相が再選されるのは確実といわれるが、支持率の低下が続けば、参院選前に農業従事者を刺激するのは得策ではない。TPP法案可決を急ごうにも、党内から反発者が出る可能性が高い。TPPは日本でも停滞する可能性
・TPPを輸出拡大や構造改革の起爆剤にしようとしてきた安倍政権にとって、7月に大筋合意ができなかった打撃は想定以上に大きくなりそうだ
http://diamond.jp/articles/-/76982

次に、8月29日付け日刊ゲンダイ「TPP漂流決定…米国にハシゴ外された甘利担当相の赤っ恥」のポイントを紹介しよう。
・TPPの漂流が決定的になってきた。26日に電話会談した安倍首相と米オバマ大統領は「引き続き連携していくことで一致した」と伝えられているが、ちゃんちゃらおかしい
・7月末にハワイで開かれたTPP閣僚会合で、交渉に前のめりだった日本のハシゴを外したのは、ほかならぬ米国だったのだ
・閣僚会合に合わせて現地入りした「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」共同代表の山田正彦元農相(弁護士)はこう言う。 「潮目が変わったのは、共同記者会見前日の30日。乳製品をめぐる交渉で、USTR(米通商代表部)のフロマン代表が、切りかけたカードを引っ込めたのです。これが大筋合意見送りの決定打になった。製薬業界などから多額の献金を受けるハッチ上院議員(共和党)による電話攻勢や、会場のホテルに陣取ったTPP反対派急先鋒で、自動車業界を代表するレビン下院議員(民主党)のプレッシャーに負けた。かたや日本は重要5項目に挙げられていた牛肉、豚肉、乳製品に加え、自動車や新薬のデータ保護期間でも譲歩してしまった。参加12カ国のうち、カードを切ったのは日本だけ。次期大統領選を控えた米国の政治日程から逆算すれば、年内の大筋合意は極めて厳しい情勢になってきました」
・ピエロを演じた甘利TPP担当相は「某国はいろいろ過大な要求をしている。頭を冷やしていただかないと」とニュージーランドをヤリ玉に挙げたり、「議長国の米国が十分な根回しをできなかった」と恨み節だったが、後の祭り。来年の参院選への影響を最小限に抑えるため、今秋の臨時国会に法案提出をもくろんでいた安倍首相の政治スケジュールはこれでパーだ
・ 「TPPが頓挫しても、TPP交渉参加条件にされた日米並行協議が残っている。これまで日本が切ったカードの中で米国に有利なものは当然のようにのまされることになるでしょう」(山田正彦氏)
・安保法制しかり。国民を無視し、米国の顔色だけをうかがう安倍首相を総理の座に座らせ続けたらこの国は終わりだ。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/163187/1

第三に、選択2015年9月号「日本「大敗北」のTPP交渉 官邸「大本営発表」の大嘘を暴く」のポイントを紹介しよう(▽は小見出し)
▽通商交渉の大物に「出て行け」
・甘利担当相はNZ(ニュージーランド)との交渉中に、「(合意しないなら)部屋から出て行け」と怒鳴った。NZはTPPを始めたのは我々と軽くいなす
▽公式会見でからかわれた甘利
・メキシコの経済相が、パロディ好きの甘利のパロディを演じた。日本のメディアは伝えなかったが、世界中にネット中継された会見でからかわれた

NZはシンガポール、ブルネイ、チリと2005年6月にTPPを締結した当初のメンバー国である。甘利担当相が、選択が伝えるような態度を取ったとすれば、無礼千万である。いくら、対米協議での海千山千のフロマン代表とのやり取りで、イライラしていたとしても、外交の場で、「人間味」を出し過ぎであろう。メキシコの経済相からからかわれたのも、むべなるかなだろう。
「参加12カ国のうち、カードを切ったのは日本だけ」とは、空いた口がふさがらないほどの、稚拙な外交交渉だ。「これまで日本が切ったカードの中で米国に有利なものは当然のようにのまされることになるでしょう」(山田正彦氏)との指摘も、今後を考えていく上で重大だ。日本の「御用」マスコミも、「パロディ」の無視はいいとしても、交渉実態をもっと丁寧に伝えてほしいものだ。
また、日経新聞の7月31日夕刊は、日米協議で「車関税撤廃に30年超」と伝えたが、日本にとっての数少ないメリット実現に30年超もかかるようでは心もとない限りだ。
タグ:TPP問題 (その4)合意先送り ダイヤモンド・オンライン 日本が読み違えたTPP合意先送りの悪い影響 甘利明TPP担当相 読みは甘過ぎた 、“伏兵”の存在を軽く見ていたからだ 日米交渉がまとまれば、あとは何とか決められる ニュージーランドが日米などに乳製品の輸入拡大を求めて強硬な姿勢 自動車や自動車部品 メキシコとカナダ 原産性基準 医薬品の新薬承認に必要なデータの保護期間 TPP漂流の可能性も 大統領選挙を控える米国の政治日程 大統領貿易促進権限(TPA)には「90日ルール」 クリスマス休暇 大統領予備選挙 次期大統領が誕生する17年1月以降に仕切り直しになるとの見方 参議院選挙 その前に何としてでもTPP法案を可決する手はずだった TPPは日本でも停滞する可能性 日刊ゲンダイ TPP漂流決定…米国にハシゴ外された甘利担当相の赤っ恥 日本のハシゴを外したのは、ほかならぬ米国 山田正彦元農相 フロマン代表が、切りかけたカードを引っ込めた 大筋合意見送りの決定打になった 日本は重要5項目に挙げられていた牛肉、豚肉、乳製品に加え 自動車や新薬のデータ保護期間でも譲歩してしまった 参加12カ国のうち、カードを切ったのは日本だけ 年内の大筋合意は極めて厳しい情勢 ピエロを演じた甘利TPP担当相 恨み節 日米並行協議が残っている これまで日本が切ったカードの中で米国に有利なものは当然のようにのまされることになるでしょう 米国の顔色だけをうかがう安倍首相 選択2015年9月号 「日本「大敗北」のTPP交渉 官邸「大本営発表」の大嘘を暴く 通商交渉の大物に「出て行け」 NZはTPPを始めたのは我々と軽くいなす ・メキシコの経済相 パロディ好きの甘利のパロディを演じた 世界中にネット中継された会見でからかわれた 「御用」マスコミ
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