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新安保法制(その11)参議院での通過・成立を踏まえて [外交]

新安保法制については前回は8月18日に取上げた。今日は参議院での通過・成立を踏まえて、(その11)である。

先ずは、8月20日付け日刊ゲンダイ「<第8回>「弾薬」はいつの間に「武器」に含まれなくなったのか」のポイントを紹介したい。
・後方支援を基礎づける本改正法で、後方支援の内容に「弾薬」の提供が含まれることになった。改正前の周辺事態法では、「武器」は提供できないこととされており、この「武器」には「(弾薬も含む)」と明記。つまり、改正法でも「武器」の提供はできないが、「弾薬」の提供は可能であるというのが政府答弁で、明らかに「武器」の定義が変わっている。そして、この「武器」から解き放たれた「弾薬」には、ドラえもんのポケットよろしく何でも入ることになってしまった
・安倍首相及び中谷防衛大臣は、手りゅう弾、ミサイル、さらには核兵器も「核弾頭がついている」から「弾薬」に含まれると驚愕の答弁をしている。これは法律論であり、弾薬という語感からどこまで入るのかを競うゲームをしているのではない。後方支援で「武器(弾薬も含む)の提供はできない」としていたのは、武器・弾薬を提供することが、憲法9条が禁止している「武力行使」にあたるからだ。国語的な話ではない。日本人が選択した価値・精神の枠組みがNOと言ってきたのである
・それを、安倍政権は、口先の言葉遊びにおとしめ、揚げ句は「武器」の提供も「米国のニーズがないから」やらないと答弁した。「ニーズ」があればやるのか
・そもそも改正前に「武器=弾薬」とされていたものが、法文で切り出しただけで、「武器」性を脱ぎ捨て、憲法上の武力行使には触れることのない“清廉”な概念となり得るわけがない
・日本近海という地理的限定も脱ぎ捨て、世界中に展開し、核兵器も運搬できる「自衛隊」は、もはや憲法9条2項の下で許容された「我が国防衛のための最小限度の実力」をも逸脱するのではないか
・しかも首相の国会答弁を聞いていると、政権の判断に極めて重大な影響を与えているのが、「米国のニーズ」だということがわかる。「米国のニーズ」を「主権者国民の総意」よりも優先させ、今年4月にアメリカで本法案の成立を“先約”してきた安倍首相
・現行憲法を「押し付け」として、「我が国固有の歴史と伝統」を軸に憲法を改正して「日本を取り戻す」と意気込む首相が最も依存するのが「米国のニーズ」では、なんとも聞いて悲しい。権力に近づくほど、その行動を縛りつけ、規定する磁力を持つのは、「米国」ではなく「憲法」である
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162900/1

第二に、9月4日付け日経新聞「機雷掃海 隠された「戦死」 朝鮮戦争、海保が後方支援 安保法案に重ねる遺族 「国民 納得いく議論を」」のポイントを紹介しよう。
・朝鮮戦争の米軍の掃海任務に派遣され、機雷の爆発で亡くなった海上保安庁職員がいる。9条を定めた日本国憲法施行後で、「戦死」の問題化を恐れた日米両政府は長くかん口令。遺族は今、国会で大詰めを迎えつつある集団的自衛権の行使を含む安全保障法制の見直し議論を複雑な思いで見つめている
・「料理が得意でね。生きていたら大きな食堂でもやっていたんじゃないか」。大阪市の会社役員、中谷藤市さん(88)は、朝鮮戦争中に死亡した弟、坂太郎さん(当時21)の遺影を前に寂しそうな表情
・坂太郎さんは1945年春、志願兵として海軍に入り、終戦後は海上保安庁で日本近海の残存機雷の掃海業務に当たっていた。当時の海保の掃海部隊は、海軍から組織を引き継いでおり、元軍人ばかり
・朝鮮戦争が50年に始まると、半島周辺海域の機雷に手を焼いた米軍は、日本に掃海支援を求めてきた。既に現憲法は施行されており、9条に抵触する可能性もあったが、占領下の日本政府は極秘裏に海保の掃海艇30隻以上で「特別掃海隊」を編成
・坂太郎さんが乗り込んだ木造艇「MS14号」も下関を出港し、戦場に向かった。50年10月17日午後3時すぎ、砲弾の飛び交う北朝鮮・元山沖の北緯39度付近。掃海中だったMS14号は突然、轟音とともに水しぶきの中に姿を消した。僚船が慌てて駆けつけたが、波間に破片と重油が漂うだけ。海中の機雷に触れたのだった。海に投げ出されるなどした他の乗員20人余は救助されたものの、船内にいた坂太郎さんだけが死亡
・約1週間後、家族の元に米軍将校がやってきた。「公になると国際問題になりかねない。補償はする。瀬戸内海で死亡したことにしてほしい」。将校は「戦死」を口外しないよう強く迫った。父はそれを受け入れ、家族にも厳しく口止めした。掃海業務による死亡は約30年後、事件当時の海保長官が自身の著書で明らかにしたことなどから公となり、坂太郎さんは戦没者として公式認定

第三には、9月19日付け東洋経済オンライン「安保法案可決の参院、振り返れば問題だらけ 「良識の府」の威厳は完全に失われた」のポイントを紹介しよう(▽は小見出し)。
▽民主党には「党勢回復」の狙い
・「決戦日」である18日は、午前9時からの民主、維新、共産、社民、生活の野党5党党首会談から始まった。この時、参院に内閣問責決議案、衆院に内閣不信任決議案を提出することを合意したことで、会期末の「山場」が決定している
・もっとも圧倒的多数を占める与党の勢力に対して、野党が提出する決議案が可決する可能性は皆無だ。だが、可決されると内閣が総辞職しなければならないと憲法が規定する衆院の内閣不信任決議案や、政治的効果しかないが三権分立で重要な意味を持つ参院の問責決議案を出すことは、国民に対して大きくアピールすることができ、次の選挙に繋がってくる。とりわけ2012年12月に政権から転落した民主党にとって、党勢を回復するためには不可欠だ
・よって、無謀と思われるようなことは極力抑えられた。たとえば1996年に新進党が住専問題で6850億円の公的資金投入されるのを阻止すべく、衆院第一委員会室を物理的に占拠したことがあるが、今回は噂されたピケ張りは行っていない
・むしろ自民党など与党側の方が、よほどアグレッシブに見えた。与党側は18日の未明に開かれた中谷元防衛相の問責決議案を採決する本会議で、各党による趣旨説明や討論の時間を10分以内に制限することを求める動議を提出して可決。この制約は山崎正昭参院議長の問責決議案や内閣問責決議案を採決する際にも踏襲されたが、鴻池祥肇・参院平和安全保障特別委員長に対する問責決議案では趣旨説明に25分、討論については各人15分に制限。さらに安保関連法案の採決についても、各討論者の持ち時間が15分に制限
・時間で粘ろうとする野党に対し、与党は時間を制限する動議を出して対抗するという形だ。同日の衆院本会議で審議された内閣不信任決議案でも、討論時間は1人15分に制限
・ただし趣旨弁明については時間的制限が付されなかったため、登壇した枝野幸男民主党幹事長には「4時間やるつもりらしい」との噂が流れたが、1時間40分余りで終わっている。ちなみに戦後における議場での演説では、2004年6月4日の年金法案改正についての審議の際に森ゆうこ参院議員(当時)が参院本会議場で水を飲みながら3時間1分にわたって行ったのが最長記録
▽地方公聴会の報告はどうなった?
・「前代未聞」の事件も発覚した。9月16日に横浜で行われた地方公聴会の内容が、平和安全保障特別委員会で報告されていなかったのだ。野党の推薦による公述人の広渡清吾専修大教授と弁護士の水上貴央氏は18日午後5時に参院議員会館で記者会見を開き、この問題を訴えている
・彼らが公述人として公聴会で述べた内容は、本来なら委員会で報告され、議事録として残されるべきものだった。ところが公聴会当日は混乱のために委員会が開かれず、翌17日午前9時45分から開かれた委員会でも報告は行われないまま、安保関連法が採決されてしまったのだ
・「これは憲政史上の重大な汚点だ」「(参院)委員部に確認したが、公聴会での公述人の発言で、記録に残らなかったものはないとのことだ」
・ただし彼らは自分たちの意見が記録に残されないことに不満を抱いているだけではない。公聴会を無視するということは、参議院先例280の「派遣委員は、その結果について、口頭または文書をもって委員会に報告する」に明確に反している。そもそも公述人は、議長の要請に基づいて集められる。議長の権威はどこに行ったのか
・会見に同席した福山哲郎参院議員がこう証言。「実は17日朝の平安特理事会で鴻池委員長が職権で立てた議事の中に、『派遣報告』はあった。しかし与党がああいう暴力的強行採決をしてしまったので、報告がされていない」。さらに、公述人の水上氏は鴻池委員長の17日の採決について、法律家の立場から疑義を述べている。議事が確認できないため、採決は無効になるのではないか、というのだ
・17日の委員会の速記録の未定稿版には、採決の様子が記されている。鴻池委員長の解任動議が否決された後、代理を務めていた自民党側の筆頭理事の佐藤正久参院議員が「速記を止めて下さい」と述べて鴻池委員長と交代。そしてマイクの音声が消されたまま、鴻池委員長の発言は「……」と記録されており、議事録には「発言する者多く、議場騒然、聴取不能」と付記されているのだ
・動画もチェックしてみたが、この時は音声が消された状態で、与野党の議員たちが一斉に委員長席に駆け寄っている。その後に音声は復活し、各自の席に付いていた自民党の同委員会の委員たちは何度か立ちあがって万歳したが、鴻池委員長の声は周囲の怒号のためによく聞き取れなかった。つまり、採決が行われたことが記録として残されていないのである
▽大沼みずほ参院議員が投げ飛ばされた?
・採決の際には、男女の議員の間で暴力事件もあったようだ。「辞めなさい、暴力」「あなたが叩いたでしょう」というやり取りも聞こえた。報道によると、自民党の大沼みずほ参院議員が民主党議員からはがいじめにされ、投げ飛ばされて負傷したという
・安保法案については「成立したからといって、すべてが終わったわけではない。法律を廃案にする立法への取り組みなど、やれることはある。野党にとって正念場は、これからかもしれない」と、楽観視する向きもある
・だが「参議院」そのものが負った傷は大きい。衆人環視のもとで、さらした混乱を多くの国民は、冷めた目で見つめていたはずだ。解散がなく6年の任期を与えられる参議院議員は、大局観をもって冷静沈着な議論を行うことを期待されていることは、言うまでもない。にも関わらず、暴力沙汰さえ起こるとは・・・。良識の府であるはずの参院は、完全に威厳を失ったともいえる。この失ったものを取り戻すことは、容易ではないだろう
http://toyokeizai.net/articles/-/85243

「核兵器も「核弾頭がついている」から「弾薬」に含まれる」との答弁には、腰が抜けるほど驚いた。こんな解釈を許すような法律自体にも問題はあるが、こんな答弁を平然とする政府の傲慢な姿勢、それを余り大きく問題視しない野党やそれらを報じないマスコミの姿勢にも驚かされた。
朝鮮戦争での隠された「戦死」の記事にみられるように、政府がこれほどの重大事でも30年もの長きにわたって隠蔽を続けたことにも驚かされると同時に、それを嗅ぎ付けられなかった(或いは、嗅ぎ付けても蓋をした)マスコミのふがいなさは情けない限りだ。
参議院での審議も、与野党の「出来レース」で白けてしまった。牛歩戦術を取ったのは山本太郎議員だけで、民主党議員は粛々と歩いていたのは、残念だ。地方公聴会の報告が行われなかったというのももっと問題にすべきだろう。
明日は、今回の問題にからんで、多数決について取上げる予定である。
タグ:東洋経済オンライン 日経新聞 朝鮮戦争 日刊ゲンダイ 30年後 新安保法制 (その11)参議院での通過・成立を踏まえて 「<第8回>「弾薬」はいつの間に「武器」に含まれなくなったのか 後方支援の内容に「弾薬」の提供が含まれることになった 改正法でも「武器」の提供はできないが、「弾薬」の提供は可能 明らかに「武器」の定義が変わっている 手りゅう弾、ミサイル、さらには核兵器も「核弾頭がついている」から「弾薬」に含まれると驚愕の答弁 「武器」の提供も「米国のニーズがないから」やらないと答弁 「ニーズ」があればやるのか 日本近海という地理的限定も脱ぎ捨て、世界中に展開 核兵器も運搬できる「自衛隊」 憲法9条2項 「我が国防衛のための最小限度の実力」をも逸脱 「米国のニーズ」を「主権者国民の総意」よりも優先 憲法を改正して「日本を取り戻す」 意気込む首相が最も依存するのが「米国のニーズ」 行動を縛りつけ、規定する磁力を持つのは、「米国」ではなく「憲法」 機雷掃海 隠された「戦死」 朝鮮戦争、海保が後方支援 安保法案に重ねる遺族 「国民 納得いく議論を」 米軍の掃海任務に派遣 機雷の爆発で亡くなった海上保安庁職員 日米両政府は長くかん口令 極秘裏に海保の掃海艇30隻以上で「特別掃海隊」を編成 補償はする。瀬戸内海で死亡したことにしてほしい 「戦死」を口外しないよう強く迫った 事件当時の海保長官が自身の著書で明らかにした 安保法案可決の参院、振り返れば問題だらけ 「良識の府」の威厳は完全に失われた 参院に内閣問責決議案 衆院に内閣不信任決議案 国民に対して大きくアピールすることができ 民主党にとって、党勢を回復するためには不可欠 無謀と思われるようなことは極力抑えられた 与党側の方が、よほどアグレッシブ 趣旨説明や討論の時間を10分以内に制限 地方公聴会の内容 平和安全保障特別委員会で報告されていなかった 公述人は、議長の要請に基づいて集められる 議長の権威はどこに行ったのか 速記録の未定稿版 発言する者多く、議場騒然、聴取不能 採決が行われたことが記録として残されていないのである
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