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インフラ輸出(インドネシア高速鉄道問題)(その2)思い込みの競争力 [外交]

インフラ輸出(インドネシア高速鉄道問題)については10月5日付けで取上げたが、今日は(その2)思い込みの競争力 である。

元商社マンで投資銀行家のぐっちーさんが、10月19日付け週刊AERAに寄稿した「ぐっちーさん ここだけの話:新幹線の輸出不調 まずは価値観の輸出から」のポイントを紹介しよう。
・インドネシアの高速鉄道では、日本の模造品にすぎない中国に敗退する結果に
・アメリカで実際のプロモーションを見たこともあるので分るのですが、新幹線は輸出には向きません。商社で海外ビジネスの経験のある方ならピンとくるはず。新幹線だけではなく、ソニー、パナソニック、シャープのテレビは北米でどうなりましたか? こんなにきれいな映像で見られるのだから負けるはずはないと自信満々で乗り込んだのに、技術的にははるかに劣る韓国、台湾の後塵を拝し、おかげで一部は経営危機にまで陥ってしまったではないですか
・これは日本企業共通の欠点。一言でいうと「技術で勝ってビジネスで負ける」典型例なのです。根本的に、日本人の消費者のニーズに合わせると、海外ではほぼオーバースペックになり、価格が高すぎるという欠陥を持つからです。日本の携帯電話が海外で評判が悪いのも、同じ理由です
・新幹線について言うと、鉄道に対する考え方、価値観が日本だけまったく違います。朝、電車がほんの5分遅れただけで、駅員に食ってかかっているサラリーマンをよく見ます。しかし、鉄道の5分の遅延は、少なくともアメリカでは許容範囲です。新幹線のライバルであるフランスのTGVは、1時間単位での遅延ですら日常茶飯事です
・つまり、鉄道が秒単位で正確に運行されることを要求するのは日本人だけ。そもそも海外では鉄道にそんな期待をしていない、ということにまずは気づかねばなりません。 多少遅れてもいいから、運賃が半分んほうがありがたい。それが海外での鉄道に対するニーズなのに、知らずに必死で売り込んでいるわけですから、ある種、滑稽ですよ
・もし私が新幹線を売り込むなら、30年かけてアメリカ人を洗脳します。その結果、鉄道とは安全で速く正確に運行され、5分と遅れてはならないもの、と彼らが考え始めるならチャンスはあるでしょう。実はこれはまさに日本人の価値観の輸出事業、なのです。

インドネシア高速鉄道受注を中国に掻っ攫われたとカッタする人には、是非読ませたいコラムである。
最後の「価値観の輸出事業」は不可能だとの皮肉であろう。
新幹線だけでなく、かつての日本メーカーのテレビの北米での惨状、売れない日本の携帯電話、など「ガラパゴス化」してしまった例も多い。
競争力があると思い込んで旗を振っているのは、おそらく安部政権で、真の競争力を知り抜いている当該の輸出企業の腰はおそらく引けていたと思われる。それを官邸中心の取材であたかも受注確実のように報じた日経新聞の責任も重大だ。
インドネシア高速鉄道に関しては、「正確なダイヤ運行」に対するニーズなど、ぐっちーさんが指摘するまでもなくそれほどない上に、仮にこれを実現しようとすれば、従業員の教育訓練にとてつもない年月を要すると考えられるだけに、中国が責任を取ることになったのは不幸中の幸いであろう。
むしろ懸念されるのは、周国家主席の訪英(後日、取上げる予定)で、日立の鉄道輸出に強力なライバルが出現したことだ。
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