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日本郵政(その7)郵政民営化をめぐる4つの不可思議 [経済政策]

昨日に続いて、日本郵政である。今日は(その7)郵政民営化をめぐる3つの不可思議 を取上げたい。

これは、郵政民営化の過程でこれまでの記事になったものでは紹介しきれない問題を、私がまとめたものである。

(1)かんぽの宿問題などで西川社長を糾弾していた鳩山邦夫総務相が解任
・2008年12月に日本郵政は、全国に展開する宿泊保養施設「かんぽの宿」70施設を、運営事業部門ごとオリックスに109億円で一括譲渡すると発表
・これら施設の建設には推定で2400億円要したこと、固定資産税評価額は857億円だったことに加え、公社時代の末期に簿価を算定するに際し、当初提示された鑑定価格221億円を、「売れる価格」にと、僅か1週間で97億円まで下げさせたことが判明。
・かんぽの宿は、従業員3200人、収支は年40~50億円の赤字、売却には2年間の雇用保証付き。ただし、これも、償却年数を60年から25年に短縮したことで、赤字を大きくし、評価額を下げさせたとの疑惑が浮上
・売却先は、公募の結果、オリックスに決まったが、同社の宮内会長は規制改革会議の議長として、規制改革の旗を振っていたことから、利益相反の疑念も浮上
・これに対し、日本郵政を監督する鳩山邦夫総務相が、日本郵政の西川善文社長(元三井住友ファイナンシャルグループ会長)の売却手法を徹底批判し、2009年2月に日本郵政に入札経緯などの報告を命令。日本郵政は譲渡を白紙撤回、売却を凍結(その後、2013.年9月に凍結解除)
・2009年6月に麻生首相が鳩山総務相を更迭。鳩山氏は「正義を体現する自分のクビを刎ねるとは言語道断」、去り際には西郷隆盛にならって「政治に尋問の筋これあり」とまで言い放ちました。こうした経緯もあって内閣支持率は一段と低下。8月総選挙での民主党への政権交代の一因に
・ただ、この問題の本質は、もともと赤字になることが事前に分かっていながらかんぽの宿を建設させた政治家や旧郵政省、郵政公社の「政官癒着」にある。事業を売却するとなれば、当初の建設コストは無関係になり、不動産鑑定価格も二義的問題になってしまう。無論、雇用保証は2年間なので、通常の「事業売却」とも異なる。
・いずれにしろ、鳩山氏の「マスコミうけ」を狙った「正義の味方」ぶりは、旧中央郵便局ビル解体問題と並ぶ単なるパフォーマンスに過ぎず、監督する担当大臣としては不適切な面もあり、更迭にも一理はあった。

(2)民営化が事実上棚上げから急転、推進に戻った
・2009年8月の総選挙で政権交代を果たした民主党・国民新党連立政権の登場で、日本郵政の西川社長は交代、後任は斉藤元財務次官に。12月には郵政株売却凍結法が成立。
・斉藤新社長は、西川社長がそれまで金融2社の上場に備えて行ってきた郵便局内での郵便部門と金融部門の業務隔壁などを、取り払い旧来の体制に戻したことで、上場も凍結と思われた
・2011.年3月の東日本大震災の発生により、金融2社の上場が震災復興財源として着目され、小泉政権下で成立した郵政民営化法が、郵政改革法として手直しされ、野党だった自民党も賛成して成立
・郵政改革法では、政府は日本郵政株の1/3以上を保有し続け、日本郵政は金融2社株の1/3以上を保有し続けるとして、政府の関与を残すことで、小泉時代の完全民営化とは一線を画した
・政権交代で自民党の第一次安部政権が発足した2012年12月、斉藤社長は退任し、財務省出身の坂副社長を社長にする人事を政権の了解なしに取締役会で決定。これに怒った安部政権は、2013年6月に坂社長を退任させ、東芝出身の西室氏を社長にしたことで、部分的とはいえ民営化路線に戻した

(3)雲散霧消したゆうちょ預入限度額引き上げ
・本ブログ8月12日付けで取上げ、自民党からの要望を郵政民営化委員会や郵政民営化推進本部がどう判断するかにかかっているとした
・しかし、本件はその後、目立った報道がないまま上場寸前まで来たということは、郵政民営化委員会などに完全に黙殺されたことを意味
・つまり、自民党として要望したことを大票田である全国郵便局長会(全特)に示したという政治的なポーズに過ぎなかったことになる。もともと、金融2社の政府保有分が50%未満になると、預入限度額も届出制で変更可能になる可能性があるといった事情からすれば、日本郵政にとってもどうでもいい問題だったためだろう

それにしても、これほどまでに政治に振り回された日本郵政の問題は、民営化のスタート台につくに過ぎない11月4日の部分上場後も、くすぶり続ける懸念があることは要注意だ。
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