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東芝不正会計問題(その11)巨額減損の隠蔽 [企業経営]

東芝不正会計問題では前回は11月14日に取上げたが、今日は(その11)巨額減損の隠蔽である。

日経ビジネスオンラインや週刊日経ビジネスが、スクープ記事を連載している。
先ずは、11月12日付け日経ビジネスオンライン「スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽 内部資料で判明した米ウエスチングハウスの巨額減損」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)で、計1600億円の巨額減損が発生。WHの単体決算は2012年度と2013年度に赤字に陥っていたが、本誌が指摘するまで東芝は事実を開示しなかった
・これまで東芝は、原子力事業については一貫して「順調」だと説明し、WHの売上高や利益、資産状況については明らかにしてこなかった。5月に発足した第三者委員会もWHの減損問題については踏み込んでいない
・本誌が独自に入手した内部資料によると、WHの実情は東芝の説明とは大きく乖離している。経営陣の電子メールなどを基に、東芝とWHが抱える“秘密”を明らかにしていく
・東芝の中核子会社で原子力発電所の建設や保守を手掛ける米ウエスチングハウス(WH)が、計1600億円の減損処理を行っていたことが日経ビジネスの取材で分かった。東芝経営陣の電子メールのやり取りなどを記録した内部資料から判明した
▽WHの減損を巡り東芝社内は緊迫
・日経ビジネスが入手した内部資料から再現した東芝幹部の発言(肩書は当時)
・この対応は監査人として明らかに失格。ビットを行うので、EY(米監査法人アーンストヤング)の監査体制を一新してベストで臨んでほしいと申し入れた。(2013年7月)東芝副社長久保誠氏
・2012年度監査で合計9億2600万ドルと巨額の減損を認識することになり、誠に申し訳ありません。特にQ2(第2四半期)での資金不足は深刻な状況。(2013年7月)WH幹部
・田中P(久雄・東芝社長)への3Q決算ストーリー説明に関連して、WHのコストオーバーラン、減損についての状況を下記日程で報告予定です。(2013年12月)東芝財務部門幹部
・EYの主な論点は「過去数年間新規受注がなく、キャッシュフローが減少」「事業計画が毎年遅延」「買収当時に算定した54億ドルのフェアバリューが維持できているとは思えない」ということでした。(2014年3月)東芝電力部門幹部
・EY単独の手法と少々異なる手法で、日本側主導で連結の評価を行うことを新日本監査法人が受け入れるための“屁”理屈をアピールすることが必要となっている。(2014年4月)東芝電力部門幹部
・WHの減損テストは東芝にとって非常に重要。社内であっても関係者以外に情報を不用意に伝えず、間違っても社外(会食時、タクシー内など)で本件の会話をすることのないよう、徹底をお願いします。(2014年4月)東芝原発部門幹部
・WHは原発の新規建設が不調だったことなどを受け、単体決算で2012年度に9億2600万ドル(約1110億円)、2013年度に約4億ドル(約480億円)を減損処理した。資産価格を大幅に切り下げたことが損失となり、2012年度と2013年度はWH単体で赤字に転落
・だが、東芝は「当社の連結決算には影響がなく、会計ルール上も問題がない」(広報)として、本誌(日経ビジネス)の指摘があるまで開示してこなかった
・東芝はこれまで、ほぼ一貫して原発関連事業は好調だと説明してきた。しかし、対外的な説明と内情が全く違っていたことが明らかになった。これに対して東京証券取引所の幹部は「WH単体で巨額の減損があったのなら、今までの説明とは食い違う。企業ぐるみの隠蔽と言わざるを得ない」と指摘
▽上場廃止の恐れも…
・東証は9月15日、企業統治などの管理体制に深刻な問題があるとして、投資家に注意を促す「特設注意市場銘柄」に東芝株を指定したばかり。不正会計が発覚した今年4月以降、東芝は社内の特別調査委員会に続いて、弁護士など社外専門家による第三者委員会でも調べを続けてきた。その結果、7年間で2248億円の利益水増しを認め、過年度の決算を訂正した
・歴代3社長が辞任し、上場企業としての「みそぎ」を済ませたはずの東芝。しかし、中核子会社のWHで減損した事実を伏せたままでは、「上場企業として投資家への説明責任を十分果たしていない」(東証幹部)と言える。東芝株は1年間の改善期間を経て来年9月に、東証の審査を受ける。これまで通り株式の売買はできるが、管理体制の改善が見られなければ上場廃止の恐れも出てくる
・東芝における原子力事業は、2006年に約5400億円を投じてWHを買収した頃から大きく変容する(後に出資額は計6600億円に増加)。買収当時の社長の西田厚聰や副社長の佐々木則夫は、2015年度までに30基以上の原発新設を受注し、原子力事業の売上高を1兆円規模に伸ばすと公言していた。
(全部門が大幅減益に●東芝の2015年度上期セグメント別営業損益の表はリンク先参照)
▽「配当の原資がなくなる」
・もくろみは2011年の東日本大震災で大きく揺らぐ。新規の受注実績は、2015年に至っても計10基にとどまる。それでも東芝は、WHを含む原子力事業で5156億円の「のれん及び無形資産」を9月末時点で計上している。一方でWHの売上高や利益、資産状況は明らかにしていない
・東芝は、WHのビジネスは好調だと説明し続けている。11月7日に開かれた2015年4~9月期決算会見で、上席常務CFO(最高財務責任者)の平田政善は「サービスや燃料事業が着実で、福島第1原発事故以降は安全対策というビジネスが伸びている」と述べた。だが平田は直近の利益額など、主張を裏付ける数字は提示しなかった
・本誌が入手した内部資料は、WHの実情が東芝の説明と乖離していたことを示している。経営不振を続けるWHの処理に苦慮した経営陣が、様々な手法を駆使して本体への飛び火を防いできた姿が、克明に記されている。仮に東芝本体が抱えるWHののれんの減損につながれば、「配当の財源がなくなる」(内部資料から)などの可能性があるからだ
▽副社長が監査法人に“圧力”
・以下は次の記事を参照
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/111100135/?P=1

次に、上記に続く記事として、11月16日付け週刊日経ビジネス「スクープ東芝 米原発赤字も隠蔽」のうち、オンラインにない部分のポイントを紹介しよう(▽は小見出し)。
▽副社長が監査法人に”圧力”
・2013.7に久保CFOは、WH幹部宛てメールで「ビット(競争入札)を行うので、EYの監査体制を一新してベストの体制で臨んでほしいと申入れた」。東芝が新日本に払う監査報酬は年10億円程度。大口顧客として圧力。その後、EYのWH監査担当者は日本人Kに代わり、東芝と緊密に連携
▽タクシー内でもしゃべるな
・その後、WHのビジネスが好転せず東芝幹部の間では緊迫したメールのやり取り。「EY内での減損方向のムードを覆すのはKとしても厳しい」。東芝社内では「新日本が受入れられるための”屁”理屈」(電力部門幹部)を考える動きが活発化
・東芝幹部が最も恐れていたのは、WHの巨額減損が本体に飛び火すること。WHが1600億円も減損したにもかかわらず、連結決算に反映させてない。「(悪いシナリオでは)1500億円の減損が発生。これは東芝単独の2013年度末の利益剰余金を超過し、配当の財源がなくなる」
・東芝本体には2008年度から財務制限条項が付いている。瀬戸際の危機を前に2つの奇策
・①減損判定の手法を、将来のCF予測と同業他社の株価などをベースに予測する2つの手法から、事業価値を大きく測定しやすい前者の手法のみに
▽「譲歩」を重ねた新日本
・②収益の日米合算化。2014からWH事業と本体の原子力事業を統合し一体で将来のCF予測し、減損リスクを大幅に小さく。 新日本はWHに関る一連の会計処理を「適正と認めた
・さらに総額2248億円の利益水増しについても「譲歩」があったのではとの疑いから、金融庁は調査中。「新日本が引続き東芝の会計監査人を務める可能性はかなり低い」というのが市場関係者の共通した見方

第三に、11月19日付け日経ビジネスオンライン「東芝はなぜ、巨額減損の隠蔽に成功したのか 「のれん」や「減損」…難しい会計用語を解き明かす」のうち3頁目の「会計基準の変化が問題を作った」を紹介しよう
・会計は継続性が基本である。会計処理の方法を頻繁に変えると、業績が恣意的に変えられ、投資家は実態が分からなくなるからだ。まして「業績の悪い時期に、業績を良く見せられるような会計処理方法の変更は避けるべき」(ある大手監査法人の会計士)と言われる。にもかかわらず、東芝は会計の処理方法を変えている
・東芝はさらに2014年度には、WH事業と本体の原子力事業を統合。WH単体ではなく、日米の原子力事業を合算して、将来CFの予測を立てるようにした。これもまた将来CFを大きくして減損リスクを大幅に小さくすることにつながる手法だった
・それにしても東芝は、会計基準に違反しないで、なぜこうした大胆な「チャレンジ」ができたのか。そこにあったのは、会計基準の側の大きな変化だった
・先に触れたように、1990年代から世界の会計は、時価会計に移ってきた。それと同時に出てきたのが、将来の収益や損失を見積もり、現在の財務に織り込む「見積もり会計化」と呼ばれる変化。それはつまり、経営者と監査法人の行動次第で会社の決算・体質が大きく変わりかねない時代でもある
・多様なリスクを反映しようとした現代会計は今、新たなリスクを抱え込もうとしている。東芝問題は、企業の前に横たわる難題も浮き彫りにしている
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/111800148/?P=3

1,2番目の記事にある東芝でのメールを含む内部資料は、驚くべき内容で、東芝の必死さがうかがえる。米子会社で減損をしても、親会社では減損をしないで済ますという「手品」の「種明かし」は、「”屁”理屈」を支えるその巧妙さに驚かされた。しかし、「そんな会計処理はやはり不当ではないか」と思っていたら、3番目の記事では、「見積もり会計化」の時代には「それもあり」ということらしい。一般的にはもてはやされている時価会計の意外な落とし穴なのかも知れない。
もっとも、理論的には「あり」であっても、一般投資家などを納得させられるかという問題もある。新日本監査法人が東芝の監査から降りた場合、後任の監査法人はどう判断するのであろうか。
それにしても、EYのWH監査担当者を聞き分けがよい日本人に交代させるとは、東芝はやはり「剛腕」だ。
この巨額減損の隠蔽については、後日さらに取上げるつもりである。
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