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東芝不正会計問題(その12)巨額減損の隠蔽2 [企業経営]

東芝不正会計問題については、前回は11月22日に取上げたが、今日は(その12)巨額減損の隠蔽2 である。本日付けの日経新聞によれば、東芝は、米国の原子力事業子会社WHが計上した過去の減損損失を公表せず、東京証券取引所から開示義務違反と指摘された問題について記者会見。東芝の室町正志社長は「不十分な開示姿勢を深くおわびしたい」と陳謝。今後は自ら主導して情報開示を改善すると表明ーーーとのことである。東証からせっつかれる形で、やむなく開示した姿勢はあきれるほかない。隠蔽については、前回に続いて、以下の事実が判明した。

先ず、11月19日付け日経ビジネスオンライン「スクープ 東芝、室町社長にも送られた謀議メール 巨額減損問題、第三者委の調査は“出来レース”だった」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・本誌既報の通り、WHは1156億円(当時の為替レートに基づく)もの減損損失を計上し、2012年度と2013年度は単体赤字に陥っていた。東芝はこの事実を日経ビジネスが指摘するまで、隠蔽していた。明るみに出れば、東芝が連結で抱えるのれんが減損を迫られる可能性があったからだ
・だが、ひた隠しにしてきたWHの厳しい経営状況が露見しかねない事態が発生した。今年発覚した、不正会計問題である。外部の専門家で作る第三者委が本気で調べれば、WH問題の深刻さが見抜かれるかもしれない。そこで東芝は第三者委と話し合い、調査の手が及ばないよう画策した。その「謀議」を裏付けるのが以下のメールである
▽室町に送った“極秘”の中身
・「Privileged & Confidential:WEC/L+G関係」。2015年5月28日。東芝法務部長(現・執行役常務)の櫻井直哉は、“極秘”と題したメールを送信した。宛先は、室町と田中、前CFO(最高財務責任者)専務の前田恵造、現取締役の牛尾文昭、現財務部長の渡邊幸一、そして部下の法務担当者の6人。東芝社内用語ではWECはWHを、L+Gはスイスのメーター製造大手ランディス・ギアを意味する
・メールの内容を説明する前に、少し経緯を振り返ろう。 きっかけは2月12日。一部インフラ工事案件について、東芝は証券取引等監視委員会から開示検査を受けた。 4月3日には室町を委員長とする社内の特別調査委員会が立ち上がったが、調べるうちに問題の深刻さが判明。外部の視点から不正会計を調べ直すため、5月15日に第三者委が発足した
▽第三者委の調査は“出来レース”だった
・東芝は5月22日、「工事進行基準」「映像事業における経費計上」「半導体事業における在庫の評価」「パソコン事業における部品取引等」の4分野を委嘱し、第三者委の調査が始まった。だが、なぜか、最大の懸案事項だった、WHの減損問題は調査対象にならなかった
・前出の5月28日のメールは、その直後に送信された。以下、櫻井が室町らに送信した要旨を引用する。  「第三者委員会の松井(秀樹)委員から、森・濱田(松本法律事務所)のF弁護士に連絡があった。WEC及びL+Gの減損について、丸の内総合(法律事務所)としては調査するか否かは会社(東芝)で判断すべきとの見解で、第三者委として会社の意向を確認したいとのこと」
・松井は丸の内総合法律事務所の共同代表で、第三者委の中心メンバー。同事務所は東芝の連結子会社との顧問契約を5月13日に解約した。つまり、松井は第三者委発足の「2日前」まで一定の利害関係があった。一方、森・濱田松本は東芝と関係が深い法律事務所だ
・メールからは、松井がWHの減損問題を知りつつも、積極的に調査しない方針を東芝に伝えていることが読み取れる
・「調査範囲の決定は、第三者委の専権事項のはず。判断を会社に委ねるのは責任放棄と同義だ」。企業不祥事に詳しい警察関係者は憤る。 松井から調査範囲について相談された東芝は、「本件(WHの減損)を第三者委に委嘱する可能性は全くない」(櫻井のメール)との態度を示した。まさに“あうんの呼吸”で、WHの減損問題を封じ込めたわけだ
・そして櫻井は、5月28日時点でその後の展開を予想している。「メールを見た以上、第三者委としては何らかのアクションが必要。報告書に『減損について検討すべき論点が認識されているが、本調査の範囲外であるため、本委員会では詳細調査は行っていない』等の記載がなされる可能性がある」
・結果はその通りになった。7月21日に公開された第三者委の報告書には、「東芝と合意した委嘱事項以外の事項については(中略)いかなる調査も確認も行っていない」と明記されている。さらに、減損については「派生的な修正項目への影響は考慮していない」(報告書)と記載された。櫻井の予想通りの結論が出たことで、調査が“出来レース”だったことが示された
・本誌は第三者委委員長の上田広一に取材を申し込んだが、「報告書に全て書いてある。対応に問題があったとは考えていない」と拒否。松井も取材に応じなかった
▽恐慌した東芝経営陣
・東芝の経営陣は不正会計問題をきっかけにWH減損問題が露見することを恐れていた。4月6日に前社長の田中が送信したメールが、それを裏付ける。 「今回の課題は原子力事業の工事進行案件と初物案件(ETCなど)であって、それ以外は特に問題がないという論理の組み立てが必要だ。そうでなければ、会社の体質、組織的な問題に発展する」
・田中は4月に発足した、特別調査委の動向に神経をとがらせていた。社内調査とはいえ、歴代社長が必死に守ってきた“聖域”にメスが入ると、東芝の存続を揺るがしかねないからだ。 実際、東芝は様々な地雷を抱えていた…(以下は次の日経ビジネス本誌記事参照)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/111900149/?P=1

上記の続きとして、11月23日付け日経ビジネス本誌「スクープ東芝 減損隠し 第三者委と謀議 室町社長にもメール」のうち、上記の続きの部分のポイントを紹介しよう。
・パソコン事業では「バイセル取引」を利用し、利益操作を継続。映像事業では、コストの一部を意図的に先送り。これらは後に、不正会計と認定されるが、田中は当時からそうした手口を認識していたはず。脳裏には、2年連続で赤字に陥ったWHの経営不振がよぎっただろう
・だからこそ田中は、「工事進行案件と初物案件」に調査を絞るよう、「論理の組み立て」が必要と考えた。  調査が進むにつれ田中の懸念は現実味を増す。前CFOは「ホレンジック(正しくはフレンジック)等で何が起きるか不透明な側面も否定できない」と田中に訴えた
・(中略)5月15日、第三者委員会の発足にあたっては、経営陣は委嘱する調査範囲を限定することで、調査に手心を加えさせ、問題が露呈するのを防ごうとした
・こうした動きは社外取締役には明かされず、田中など社内取締役が主導。社外取締役を「お飾り」にしていた。11月7日の取締役会で、WHが単体で減損処理していた事実が、初めて社外取締役に伝えられた
・東芝の連結決算では減損を見送っている奇妙な会計処理に、公認会計士の社外取締役を中心に厳しい指摘が相次いだ。しかし、CFOは「燃料やサービス事業が順調に拡大している」と主張、社外取締役を抑え込んだ
・情報を持たない”外野”が余計な口を挟まないように操作して、執行部が権力を握り続ける構図は変っていない。この構図を維持するのに一役買ったのが第三者委報告書。多くの法曹関係者が「第三者委の名に値しない」と切って捨てる所以。内部資料は、東芝と第三者委の間で「謀議」があり、室町自身もそれを認識していたことを示している。

室町をはじめとする東芝首脳陣が、「隠蔽工作」をしていた事実は、こうしたメールのやりとりで暴露された。その割に、昨日の謝罪は、開示の遅れに対するものだけであった。記者会見に出席していた記者諸君は、「隠蔽工作」に関する質問をしなかったようだ。「武士の情け」もここまでくると、行き過ぎであろう。
さらに、法律事務所の動きも問題が多い。丸の内総合法律事務所はランキング27位の中堅、森・濱田松本法律事務所は3位の大手法律事務所である。こうした一流の法律事務所が、裏で隠蔽工作に加担していたとは、驚くほかない。無論、森・濱田松本法律事務所はおそらく東芝の顧問弁護士的役割を果たしていたのだろうから、やむを得ない面もある。しかし、丸の内総合法律事務所は、東芝の連結子会社との顧問契約を5月13日に解約。つまり、松井は第三者委発足の「2日前」まで一定の利害関係があったのに、第三者委の中心メンバーを引き受けた上に、隠蔽工作のお先棒を担いだことになる。
明日は、第三者委員会の問題について、さらに掘り下げる予定である。
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