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村上ファンドへの強制調査 [経済]

今日は村上ファンドへの強制調査を取上げたい。

先ずは、11月27日付け闇株新聞「村上世彰氏らを相場操縦の疑いで強制調査!? その2」を紹介しよう。
・昨日付け「同題記事」の続報ですが、さすがに一夜明けるともう少し正確な情報が(リークされたのか)伝わってきました。  まず株価操作の疑いをかけられた銘柄は、東証1部上場のTSIホールディングスであり(コード・3608)、村上氏らは2014年6~7月にかけて同社株を貸株で調達して売却をしていたそうです。TSIホールディングスとは2011年にサンエー・インターナショナルと東京スタイルが経営統合した会社です
・報道によると「今までにない新しい手口」と書かれていますが、ヘッジファンドなど外国人投資家の間では日常茶飯事に行われている取引です。またこれらヘッジファンドなど外国人投資家に対して証券取引等監視委員会が処分に関与した事例は、過去に1件しかありません
・その1件とは、倒産前の日本航空(JAL)が2006年7月に強行した7億株の公募増資について、その値決め当日の大引け直前に大量の売り注文を出した香港のオアシス・マネジメントと代表のセス・フィッシャー氏に対し、2011年9月に香港証券先物委員会(日本の証券取引等監視委員会ではありません)がそれぞれ750万香港ドル(当時の為替で7500万円)の制裁金を課した事例のことです
・まあ日本の証券取引等監視委員会は、香港証券先物委員会に情報提供して課徴金を取るお手伝いをしただけだったのですが(だから「処分に関与した事例」としてあります)、それほど海外投資家にとっては「一般的」な取引手法でありながら、証券取引等監視委員会が今まで問題にしたことがほとんどなかった取引となります。2011年9月19日付け「証券取引等監視委員会による香港の資産運用会社の処分」に書いてあります
・それをわざわざ今回は「今までにない新しい手口」として、証券取引等監視委員会が村上氏らを相場操縦の疑いで強制調査したことになります
・さらに報道では「意図的に株価を下落させた」とも書かれていますが、当のTSIホールディングスの株価は村上氏らが同社株を「大量に」売却したとされる2014年6月初めの688円から7月終わりには762円まで上昇していました。 途中の値動きをもっと詳しく見ても「意図的に株価を下落させた」ようには見えませんが、そこは「株価を意図的に下落させる意図があった」とでも強引に立件してしまうのでしょうね
・昨日も書いたように金融商品取引法はどんどん拡大解釈され、誰でもいつでも逮捕できる(まだ村上氏らは逮捕されているわけではありませんが)「万能の武器」に仕立て上げられていくことになります
・まあ強制調査で資料をごっそりと押収したはずなので、もう少しくらいは「無理筋でない」容疑があとから出てくるかもしれませんが、そうは言っても「何でそこまでして」村上氏らを強制調査したのか?との疑問が残ります
・村上氏らの「物言う株主」としての投資行動は、同じくアクティビストとして日本では評価さえされているダニエル・ローブ氏などの投資行動とともに、本誌は全く容認していません。どんな綺麗ごとを並べてみても、所詮は会社資産をかすめ取ることと持ち株の高値売却以外の目的などあり得ないからです
・ところが最近の当局によるコンプライアンス重視の指導方針には、できるだけたくさん株主還元するとか社外取締役を多数選任するとか、まさに村上氏らが最近の黒田電気臨時株主総会で要求した内容そのものになってしまいます
・くどいようですが本誌は絶対に容認していませんが、最近の(その昔も同じでしたが)村上氏らは当局によるコンプライアンス重視の指導方針に沿って行動していたことになり、少なくとも当局とすれば村上氏らを「無理筋ででも強制調査してしまう」対象ではなかったはずです
・巷間では「村上氏は最近、日本郵政を貸株で調達して売却していたため当局の逆鱗に触れた」とも囁かれています。もちろん単なる噂話ですが、そうでもない限りは到底理解できない強制調査ということになります
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1591.html

次に、同じ闇株新聞が11月30日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「村上世彰氏を相場操縦の疑いで「強制調査」!? これでいいのか金融商品取引法の拡大解釈」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽強制「捜」査でなく強制「調」査なのはなぜ!?
・25日午後遅く、テレビ局等報道機関が一斉に報じた「第一報」は、さっぱり要領を得ません。調査の詳細やその背後に隠れている意図(必ずあります)はおいおいわかってくるはずです
・報道が出始めた時間から考えると、本日早朝から取り掛かっていたであろう強制調査が終了する頃になって初めて、証券取引等監視員会が各報道機関に発表した(あるいはそっと囁いた)ようで、こういう事例につきものの事前リークはなかったようです
・各報道機関も突然に発表された(あるいは囁かれた)ものの基本的に意味がよく理解できず、各社揃ってさっぱり要領を得ない報道になっています。「強制調査」は証券取引等監視委員会の特別調査課の権限です。もし、こういう事例でありがちな東京地検特捜部とのタッグであれば「強制捜査」となります。つまり、今回は東京地検特捜部は乗り出していないことがわかります
▽この件では東京地検特捜部が動いていない
・東京地検特捜部が出てくると事前に各報道機関にリークするため、捜査員が強制捜査に入るところには必ずテレビカメラが待ち構えており、その映像がテレビニュースで繰り返し放送されます
・また、彼らは事前にもう少し丁寧な説明をしますから、各報道機関の解説も当局の意向が入った(本件なら村上氏らが極悪犯罪人であるような)ものになるはずです
・今回はそうではありません。NHKの19時のニュースでも調査員が資料を押収して引き上げるところ(のようです)が辛うじてカメラに収められていましたが、やはりニュースの解説がさっぱり要領を得ず、事前に何も知らされていなかったと感じます
・これは証券取引等監視委員会の特別調査課が、東京地検特捜部を出し抜いて「独自」で動いた可能性があるような気がしますが、これ以上の推測は控えます
▽特別調査課が出てきたからには刑事事件で有罪か
・証券取引等監視委員会はどの部署も調査権限があるはずなのに、何で出てきたところが「特別調査課」だったかというと、今回の強制調査が刑事事件化を目的としているからです。 どこもそのように報道していませんが、令状を携えて強制調査する権限があるのは特別調査課だけです。同じような相場操縦を調査する「取引調査課」や粉飾決算などを調査する「開示調査課」には令状が交付されず、あくまでも任意調査しかできません
・令状を携えて強制的に何でもかんでもひっくり返していくのが「特別調査課」で、強制調査権や令状がなくても「あるような顔をして」何でもかんでもひっくり返していくのが「取引調査課」や「開示検査課」です
▽株式は”ある程度まとめて”売買すると犯罪になる!?
・ところで肝心の村上世彰らにかけられた相場操縦容疑ですが、報道では「複数の銘柄の株式を市場で大量に売るなどして株価を意図的に下げた疑い」があるのだとされています。つい先日、加藤暠氏が新日本理化の「すっ天井」を買ってしまったことで相場操縦容疑で逮捕されたばかりです
・報道が正しいとすれば、今回は村上世彰氏が持ち株を(借株かもしれませんが)市場で大量に売って相場が下がってしまったので相場操縦容疑がかけられたことになります。 ということは、株式は「ある程度まとめて」買っても売っても犯罪になることになります
▽もの言う株主の行動は当局の姿勢とも矛盾はしないが…
・本紙は、村上氏らの「もの言う株主」としての行動には全く賛同していませんが、最近の当局のコンプライアンス重視の姿勢には「株主への配分を増やすように」指導しているようでもあり、村上氏らの行動とは矛盾していないことになってしまいます
・それでは相場操縦だったら「問題あり」なのか?ですが、村上氏らの投資行動は容認できないとしても、この相場操縦が報道されている通りなら「えっ!?」と言いたくなる容疑です。 金融商品取引法が当局によってどんどん拡大解釈され、誰でもいつでも逮捕できる「万能の武器」に仕立て上げられていく状況に恐怖を感じます
・本紙はこれからも当事件の闇に深く切り込み、既存の報道機関とは異なる目線・異なる角度から真実に迫ってまいります。この連載でお読みいただけるのは闇の入り口までですが、もっと奥深くまでのぞいてみたいという方は、ぜひ金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」においでください
http://diamond.jp/articles/-/82286

第三に、11月27日付け日刊ゲンダイ「本当の狙いは東芝隠し? 村上世彰氏「強制調査」に流れる憶測」を紹介しよう。
・旧村上ファンドを率いた村上世彰元代表(56)が証券取引等監視委員会(SESC)から相場操縦の疑いで強制調査された。 「突然のコトで驚きました。最後の相場師として知られた加藤暠氏も金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕されたばかりです。なぜ、この時期に取り締まりを強化するのか。兜町は首をかしげています」(市場関係者)
・水面下では奇妙な臆測が流れる。「不正会計問題が長引いている東芝から目をそらさせる作戦じゃないかと言われています。ここへきて東芝子会社である米ウェスチングハウスの巨額損失処理の未公表が明らかになり、東芝やSESCへの批判が一段と高まっています。だから東芝を救済したい政府筋を含め、相場操縦という悪行に批判の矛先を持っていきたかったのではないか」(証券アナリスト)
・村上氏は“新たな手口”による株価操作を行ったと伝えられている。ところが、これまでのところ“新たな手口”がサッパリ見えてこないから不思議だ。「旧来型の手口では、メディアに与えるインパクトに欠けると当局が判断した可能性はあるでしょう」(前出の市場関係者)
・株式アナリストの黒岩泰氏はこう言う。 「今回問題になっているのは、アパレル大手『TSIホールディングス』に絡む株価操作です。売り手と買い手をあらかじめ決め、売買を繰り返す手口です。そうすることで株価は動かなくとも出来高は膨らみます。投資家は出来高急増の裏に何か材料があると判断し、その銘柄に乗っかる可能性がある。これは『馴合売買』と呼ばれ、金融商品取引法で禁止されている手法です。でも、新しい手口ではありません」
・「終値関与」という相場操縦も指摘されている。特定の銘柄に対し、市場が閉じる直前に大量の売り注文を出し、株価を急落させて一日の取引を終了させる手口だ。その銘柄を保有する投資家は、「なぜ取引時間の最後になって急速に値を下げたのか」と不安になり、時間外取引を利用し、保有株を終値よりも安値で手放す。そこを拾うのが、取引時間中に株価を急落させた投資グループというわけだ
・「空売りを仕掛ければ、儲けることができます。しかも安値で大量の株を買い集めることもできる。モノ言う株主には一石二鳥の手口かもしれません。ただし、古い手口です」(中堅証券のアナリスト)
・村上親子の強制調査が本当に“新しい手口”による相場操縦だとすれば、思いもよらない真実が、今後飛び出すことになるが……。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/170550/1

村上ファンドについては、2006年にライブドアとニッポン放送株を取得する際にインサイダー取引があったとして、代表の村上世彰氏が逮捕・起訴され有罪判決を受けた。今年になって、8月22日付け日経新聞が「帰ってきた「物言う株主」 村上氏提案を黒田電気が否決 企業統治元年 対話力の重み増す」と報じたように、久方ぶりに株式市場に戻ってきた。ところが、早々の強制調査となった。ただ、闇株新聞が指摘するように、真の嫌疑が何なのかは今ひとつ明らかではない。村上氏にしても、愛娘まで巻き込んで事件化させる気はなかったのではなかろうか。そう考えると、「日本郵政を貸株で調達して売却していたため当局の逆鱗に触れた」、或いは、日刊ゲンダイの「本当の狙いは東芝隠し? 」といった見方もあながち的外れとも思えない。しばらくは、「強制調査」の行方を注目したい。
村上ファンド事件については下記のWikipediaを参照のこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%89%E4%BA%8B%E4%BB%B6
明日、金曜日は更新を休むので、土曜日にご期待を。
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