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ビジット・ジャパン戦略 [経済政策]

今日は今日はビジット・ジャパン戦略(観光戦略、インバウンド戦略)を取上げよう。

まずは、ジャーナリストの長谷川豊氏による11月4日付けZAKZAK「日本人は「おもてなし」の心はほとんど持っていない民族」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・あぁ……やはりデータには表れているのだなぁ……と感じた記事がこちら
  ●世界で最も他人に冷たい先進国、日本 (http://bit.ly/1HmVoHJ
・言論サイトのブロゴスに載っていた記事ですが、イギリスのチャリティー団体が毎年調べているデータだそうです
・世界中の人々が、どれだけ他人に対して優しくしているか……簡単に言うと、その数値をデータ化したものです。詳しくはこのコラムを読んでいただければわかるのですが、この数値は、私が海外で経験してきた実感と、ほぼ重なります。そう。日本人って……   他人にめちゃくちゃに冷たい民族ですよね
・データ上の数字では、先進諸国ではダントツの最低。 人助け指数では、世界で134位。 ボランティア指数では39位。 寄付指数では62位。 ボランティア指数だけが突出して高くなっているのは、学校授業で「やらされている」のか、会社の業務で「やらされている」のか……。内申点を稼ごうとしているので「やっているだけ」というのが見て取れます。そもそも内申点に影響しない人助け指数で134位の日本が「ボランティア」だけ39位ってのもおかしな話でね
・私がニューヨークに家族とともに住んだのが2年半でした。その期間、どれだけ多くのアメリカ人に温かい声をかけてもらったことでしょうか。もちろん日本と同様に、残念で、悲しい対応をしてくるアメリカ人も何人もいました。それは事実です
・特に中南部……テキサスやオクラホマに取材に行ったときは、信じられないような差別的な言葉を投げかけられたこともありました。 でも、それを何倍も上回る温かい言葉を、時には街中で、時には電車のホームで、何度も何度もかけてもらいました。(中略)
・日本は2020年に「おもてなし」するそうです。 いや、はっきり言いますが、絶対今のままでは無理でしょう。日本人は他人に対して冷たすぎます。自分だけを大事にしすぎます。おもてなしの心は、世界でダントツで持っていないのが日本人の現状です
・実は、私は日本の経済の低迷や少子化など、多くの問題点は、この日本人の「自分だけがハッピーであればいい」「他人が困ってても知らねーよ」的な価値観が根底にあると思っているのですが、その話はまたの機会にしましょう
http://www.zakzak.co.jp/zakjyo/watcher/news/20151104/wat1511041840003-n1.htm

次に、 12月3日付け日経ビジネスオンライン「なぜ外国人観光客を心から歓迎できないのか 松田英子・東洋大学 社会学部 社会心理学科 教授に聞く」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・外国人観光客が急増している。観光地や都心部にはかつてないほど海外からの旅行者が溢れ、爆買いマネーで潤う企業も増加中だ。高齢化で市場成熟が進む今後の日本は、外国の人々に来てもらいお金を使ってもらうことが経済活性化に不可欠。政府の観光立国政策は、着実に成功へ向けて前進していると言っていい
・だが、すべての日本国民が、押し寄せる外国人観光客を心の底から歓迎しているかと言えば話は別。表向きはそうでも、どこかで、街を埋め尽くす観光客に複雑な感情を抱いている人も少なくないのではないだろうか
・外国人観光客の多くは日本のルールを守っており、一部を除けば迷惑行為などもしていない。「人類は皆兄弟」でもある。それが分かっていながら、せっかく日本に来てくれた方々に、ネガティブな感情を抱くとすれば、レイシストの素養があると言われても仕方がない――。そう不安に思っている人もいるのでは。外国人観光客に対する日本人の複雑な心情を専門家に分析してもらった
・聞き手:先生、ずばり聞きます。外国人観光客の集団を見て、心のどこかで複雑な感情を抱いてしまうのは、レイシストの始まりなんでしょうか
・松田:そんなことはありません。簡単に説明すると、人間は、未知の集団に会った時、敵か味方か、とりあえず分類するようになっています。これは誰もが持つ「認知の構造」です。この時、「自分たちと異なる集団」だと認知すれば、当然、人は警戒します。特にその集団に関する情報が少ない場合、第一印象は、驚きとともに違和感とか拒絶感とかネガティブなものになる可能性が高いと言えるでしょう
・聞き手:納得です。10万年とも15万年とも言われる現生人類の歴史で、そうした脳の「敵・味方識別機能」は生存の必須条件だったのでしょうね。「敵」と認識した集団にポジティブな感情を抱いたりしていたら、その個体は、あっと言う間に淘汰されたはずです
▽異民族を警戒するのは生き物として当たり前
・松田:その際、問題は、何を持って敵と味方に区別するかですが、その判断に大きな役割を果たすのが、日頃の生活の中でインプットされる情報から形作られる「ステレオタイプ」です。例えば、体育会系の集団に遭遇したとしましょう。日頃から体育会系の学生集団に、「礼儀正しい」とか「打たれ強い」といったポジティブなステレオタイプを持っている人は、その集団に所属する個人を「好意を持てる」と分類します。逆に、「自己主張が強そう」とか「粗暴なのでは」とかネガティブなステレオタイプを抱く集団に属する人は「好ましくない」と分類する。こういう視点で、外国人観光客に対する感情を考えると、どうなります?
・聞き手:ええと、外国人観光客の国民性などに対し普段から好意的なステレオタイプを持っている人は警戒心なんか沸かない。逆に、敵対的なステレオタイプを持っている人は、心穏やかと言うわけにはいかない
・松田:そうですね。ここで最初のポイントになるんですが、人間は、外国人観光客に限らず、異文化の人に最初からプラスのステレオタイプはなかなか抱きにくいんです。人間に限らず多くの生き物は、自己保存本能もあって、自分の“縄張り”を侵されることに強く危機感を感じるようになっていて、異文化の住民にはどうしてもまず警戒心を抱きやすい
・聞き手:なるほど
・松田:それにステレオタイプの形成には、メディアの報道も強く影響します。外国人観光客に関するニュースには、ポジティブなものもあれば、ネガティブなものもありますよね
・聞き手:はい。日本経済に対するプラスの面などはポジティブな報道です。一方で、使用済みのトイレの紙を流さず放置したり、ホテルの備品を持ち帰ったり、子供に思わぬ場所で排便させたり、コンビニでお金を払う前にアイスを食べ始め店員が注意したら暴力に訴えてきたり、観光客が増え過ぎて日本企業の会社員が出張先でホテルに宿泊できず野宿を余儀なくされたり(日経ビジネス2015年8月24日号)など、ネガティブな報道もあります
▽観光客の良い噂より悪い噂の方が心に残る
・松田:その場合、私たちの心には、どうしても悪いニュースがより強く印象に残ります。人間には、幸せ度を高めるポジティブ情報より、ネガティブ情報の方が「情報価」が高い。なぜなら、ネガティブ情報はポジティブ情報より我々の生存や財産にダイレクトに影響を及ぼすからです
・聞き手:これまた納得です。サルから進化する過程で、何より必要だったのは生き残るためのネガティブ情報ですよね。「大型獣が来た」とか「嵐が来そうだ」といったネガティブ情報に鈍感な個体は、財産も生命も直ちに失ったに違いない。我々は、ネガティブ情報に敏感であったが故に生き残った個体の子孫だから、ネガティブ情報が心に残るのは当たり前、と
・松田:最初にお話した「認知の構造」も同じことが言えます。向こうから敵が来たのにぼやぼやしていたら生命も財産も守ることは出来ません
・聞き手:とすると、ここまでの話をまとめると、こうなりませんか。(1)我々は進化の過程で、未知の集団に会うと敵か味方か識別するようになっている、(2)その識別基準はステレオタイプである、(3)異文化の住民には最初からポジティブなステレオタイプは抱きにくい――。つまり、外国人観光客を警戒するのはレイシストの始まりでもなんでもない、普通のことだと
▽ウエルカムだけどウエルカムでない微妙な心理
・松田:そうです。よく知らない相手にネガティブな気持ちを抱くのは自然なことなんです。でも、その「感情」を「行動」に移したらダメですよ。それは、人種差別です。さらに付け加えると、今の日本人が外国人観光客に抱いている感情はとても複雑だと思うんです。経済的にはウエルカム。でも一方で、自分の縄張りに来ないで欲しいという気持ちがある。こういう状況を、心理学的にはアンビバレント(両面価値的)な状況と呼びます。アンビバレントは、ただ単に「嫌い」よりも厄介な心理で、もやもやした状況が続くことになりかねません
・聞き手:分かりました。いずれにせよ、外国人観光客に「イラッ」としても別にレイシストの素養があるわけではないと分かり、安心している人は多いのでは。でも、そういう「異文化苦手症候群」は、やはり島国で生まれ育った日本人に特に顕著なものなんでしょうか
・松田:そういう部分はあると思います。特に、日本は移民の受け入れが少ない歴史があり、これまで異国の方との個人交流も少なかったと言えるでしょう。また、そうした地政学的な問題とは別に、現代日本人のストレスへの耐性が低いことも関係しているかもしれません。さらに私は、日本独特の文化の問題もあるんじゃないかと考えています。例えば、日本人はとにかく「他人に迷惑をかけるな」と言われて育ちますよね。だから、他人に迷惑をかける行為にはとても敏感です。でも、例えばウチの大学の留学生によれば、国によってはだいぶ事情が違うようです。小学校で子供が友達を殴ったとしましょう。日本の価値観だとどんな親が立派ですか?
・聞き手:そりゃしっかり子供を叱れる親ですよ。他人に迷惑をかけたんですから
・松田:でも国が違えば、相手の親にしっかり慰謝料を払える親こそ誠意があると見なされると留学生は言うんです。これが一般化できるかは難しいところですが、お互いの文化の違いを知らないと学校現場などでは混乱が起こるでしょうね
・聞き手:個別ケースで全体を語るのは危険かもしれませんけど、「他人に迷惑をかけるのは良くないこと」という道徳観が最初からない国もあるんですね。だとすれば、イラッとするのも無理はないですよね
・松田:日本人の中には、生真面目すぎて外国人観光客と距離を置こうとする人もいると思います。英語が苦手な人などはこのパターンで、例えば、道に迷っていても自分には助けるスキルがない、せっかく日本にきてくれたのに、と罪悪感を持ち、関わりが生じないように距離をとってしまう
▽とにかく相手を知ることが大事
・聞き手:そういう人は確かに日本人に多そうですね。「異文化苦手症候群」を克服する方法はないんでしょうか
・松田:一つは相手をよく知ること。個人との交流を深め、ネガティブなステレオタイプから生じる感情を修正することが大切です。実際、今の学生は話を聞いている限り、外国人観光客にさほど警戒心など抱いていないようです。彼らは上の世代よりずっと外国人との交流が多い。バイト先に行けば外国人留学生や外国人労働者がいることも多く、仲良くしないとやっていけません
・聞き手:若い世代は、英語力も、団塊やバブル世代よりは総じて高いでしょうし
・松田:もう1つは外国人観光客が何か問題を起こしたとしても、「なぜ彼らがそういうことをするのか」といった動機を知ることです。そうすれば、文化の差で説明可能になり納得をもって受け止めることが出来るようになると思います。そのためには、やはり多くの外国人と個人レベルで接したり、外国の文化を学ぶことが必要なんでしょうね
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/120100094/

オリンピック招致での「お・も・て・な・し」フィーバーで、すっかり日本人は「おもてなし」の心を持っていると思い込まされている向きも多い。長谷川氏が引用した英国団体の冷徹な調査結果は、私も同意する部分が多い。どうも、マスコミなどに踊らされた「幻影」なのかも知れない。
松田英子教授の指摘もうなずかされる。「観光客の良い噂より悪い噂の方が心に残る」、「ウエルカムだけどウエルカムでない微妙な心理」、「とにかく相手を知ることが大事」などは、まさにポイントを突いていると思う。日本人が、あらゆるレベルで国際化していく絶好のチャンスなのだろうけど、一筋縄ではいきそうもなさそうだ。
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