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東芝不正会計問題(その14)減損回避のための「64基計画」 [企業経営]

東芝不正会計問題については、前回は11月29日に取上げたが、今日は(その14)減損回避のための「64基計画」 である。

先ずは、12月2日付け日経ビジネスオンライン「スクープ 東芝、原発幹部さえ疑う「64基計画」 経営幹部の電子メールを入手、不正会計問題は経営問題に発展へ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・東芝は11月27日、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)の減損問題について記者会見し、新たな事業計画を発表した。2029年度までの15年間で、新たに「64基」の原発建設を受注するのがその骨子だ
・2011年の東日本大震災以降、東芝・WHは原発の新設受注で苦戦している。にもかかわらず64基という極めて高い目標を掲げた裏側には、WHでこれ以上の減損を回避しなければならないという事情がある。東芝社内でさえこの目標が“非合理的”であると認識していることが、日経ビジネスが入手したWH首脳宛ての電子メール記録で判明した
・そもそも東芝が不正会計に手を染めたのは、事業全体で稼ぐ力が弱体化しているため。社長の室町正志が「売却できる事業は売却する」と会見で述べるなど、否応なしに構造改革が迫られている。この状況で、WHがさらなる減損に追い込まれれば、東芝の屋台骨が揺らぐことになる
▽「苦し紛れ」に基数を増加
・東芝は本誌が指摘するまでWHの経営状況を開示せず、2012年度と2013年度に巨額減損を計上し、赤字に陥っていたことを隠蔽してきた。室町は会見で「不十分な開示姿勢を深くおわびしたい」と陳謝。2006年の買収以降、WHが2億9000万ドル(約350億円)の累積営業赤字に陥っていることも明らかにした
・一方で2014年10月の「減損テスト」の結果、東芝が連結で抱えるのれんについては減損が不要であると説明した。そのうえで発表したのが、冒頭の64基計画である。ただこの計画も、内部資料を基に分析すると“結論ありき”で策定されたものと言わざるを得ない
・下のグラフで示したように、東芝は原子力事業の利益が2018年度以降に急増するとしている。電力・社会インフラ事業グループを所管する副社長の志賀重範は「全世界で約400基の新設計画がある」と強調。WHが米国と中国で計8基を建設している実績が、有利に働くと説明した
・だが、志賀の見通しは楽観的すぎる。その根拠は東芝の経営幹部でやり取りされたメールにある。 2014年3月11日。東芝電力部門の幹部は、副社長CFO(最高財務責任者)だった久保誠が定例会議で発した“コメント”をまとめ、以下のようなメールを発信した) (リンク先にメールの抜粋あり)
▽原発幹部さえ“非合理的”と認識していた
・「監査人の印象も悪くなるので、のれん減損テスト事業計画上の64基を今から減らす必要はないが、どこかの時点で冷静になってリーズナブルなレベルに見直す必要がある」  受信したのは、WH会長の岡村潔(現・東芝執行役常務)など複数のWH幹部。64基計画は“非合理的”なレベルだとして、近い将来に引き下げるべきだとCFOの立場から示唆している。この数字が生まれた背景には、WHの監査を担当する米監査法人アーンスト・アンド・ヤング(EY)との確執がある
・さらにメールを引用する。 「昨年度(2012年度)はEYが聞く耳もたずの減損ありきで割引率を上げていったので、やむを得ず苦し紛れに基数を増やす結果となってしまったと説明を受けたので、それに対してクレームしてパートナーも変えさせた」
・WH単体では2012年度に約9億3000万ドル(約762億円、為替レートは当時=以下同)の減損を計上し、メール送信時点では2013年度にも減損を認識する可能性が高まっていた(実際に約394億円の減損を計上)
・WHでは主に将来の収益予測を基に減損テストを実施し、減損の要否を判定する。2012年度の監査に不満を持った久保は、EYと提携する新日本監査法人に担当を変えるよう圧力をかけた(詳細は日経ビジネス11月16日号を参照ください)
・その後もEYはWHの収益力を低く見積もり、東芝に対して減損テストの厳格化を求めた。テストの結果、東芝本体が抱えるWHののれんの減損につながれば、厳しい財務状況がさらに傷んでしまう。東芝はこれを回避するために、EYを納得させるための「苦し紛れ」の計画として、64基の新設受注計画を示したわけだ
▽コスト超過が問題に
・ただし久保は、64基計画が“非合理的”だと認識していた。WHが建設を進めていた「AP1000」型原発の新設プロジェクトでは、コスト超過が顕著になっていた。受注を増やしても赤字を垂れ流すのなら、将来の収益予測にはマイナスになる。そこで岡村ら原発幹部に、こんな指示を出した…
・詳しい内容は、日経ビジネス12月7日号の「時事深層」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120100165/?P=1

これに続く日経ビジネス12月7日号「時事深層」では
・「コストオーバーランがもうこれ以上削減できないというのなら、WHから田中(久雄)P(社長)に対して「AP1000ではこれだけしか利益が出せないから事業として成り立たせるのは難しい」とはっきり言ってほしい」
・だが、いったん掲げた計画を撤回することはなかった。東芝は2014.10に減損テストを実施。64基受注を前提にした収益予測を基にWH単体の事業価値を算定して、減損する必要はないと結論づけ。志賀は、2029年度までに46基の受注にとどまっても東芝連結では減損は不要としている
・東芝の主張を整理してみよう。WH社長は「世界で原子力を求める声は高まっている」と主張。400基の新設計画のうち、WHは64基を受注できるとする。 それによって利益は急増する見込み。東芝の原子力事業は2018年度から2029年度までの平均で、1800億円のEBITDA(営業利益と減価償却費の合計)を稼ぐ見込みだ。新規受注が3年後から本格化する予定だからだ。 これらを基に計算すると、東芝の原子力事業の「公正価値」は、2014.10時点で約8100億円となり、「帳簿価額」7300億円を上回るため、減損不要と説明
▽過去9年間は計画未達
・WHを買収した2006に、西田社長は2015年度までに33基の新規受注を見込むと公言、後に39基へと上方修正
・ところが2015.12時点でもWHが受注し建設中なのは8基に止まる。なぜ今後15年間で64基を受注できるのか。原発事故を境に事業環境は厳しさを増しているうが、記者会見では合理的な説明はなかった
・利益見通しも甘い。WHは過去9年間で累積赤字を計上。東芝連結の原子力事業全体の平均EBITDAは400億円程度に過ぎない。現時点で新規受注を利益計画に織り込むのは「理想的過ぎる」といわれえも仕方ないだろう
・つまり東芝は、監査法人を納得させるために、非合理的な利益計画を立てざるを得なかった。そこから「逆算」して導き出されたのが、ここまで述べてきたストーリー。減損回避という結論を成立させるために、64基という数字が浮上
・WH社長は「来年度までにインドで6-12基の原発新設を受注できる見通し」と語った。だが、東芝社内の関係者は「価格交渉すら始まってない段階で、受注を見込むと言うのは時期尚早」と打ち明ける。途上国で原発建設を受注するためには、資金調達を含め先進国とは異なる難しさがある
・東芝が不正会計と決別したことを市場に示すには、実現可能性の高い計画を示し、それを着実にクリアすることが求められる。そうした実績を積み重ねない限り、信頼回復は難しい筈だ
・志賀は「ビジネスプランが達成できなければ、その分だけ公正価値は下がる」と認めた。そして今後は「減損評価状況を適時適正に情報開示していく」と約束。2015年度の減損テストは年明けに予定

減損回避のための工作がここまで暴露されては、東芝も形なしである。今日の日経新聞によると「東芝、トーマツなど3監査法人と協議 新日本の後任検討へ」として、進行中の2016.3期決算の監査を最後に新日本との契約を打ち切り、17.3期から変更する見通しと伝えている。ただ、年明けに予定されている減損テストを担当する新日本監査法人としては、「後顧の憂いなく」判断するので、東芝本体での減損の必要性を主張する可能性が強いのではあるまいか。東芝としても、仮に新日本で続けたとしても、新日本も金融庁の手前、今回は厳しい姿勢に出てくるとみて、この際、監査体制見直しを通じて経営刷新をアピールするべく交代させようと判断したのではなかろうか。年明けの結果が楽しみだ。
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