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新安保法制成立後の政治情勢(その2)米軍は守ってくれない [外交]

新安保法制成立後の政治情勢については、前回は12月5日に取上げたが、今日は(その2)米軍は守ってくれない である。

先ずは元共同通信ワシントン支局長で早大客員教授の春名幹男氏が、12月14日付け日刊ゲンダイのインタビュー記事「春名幹男・早大客員教授「米軍が守ってくれるなんて幻想」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の記者の質問、Aは春名氏の回答)。
▽安倍首相自身が同盟の真相を知らない
・つい最近、来年度の米軍基地への思いやり予算がちっとも減額されないことが分かったが、驚くのはまだ早い。スッタモンダした集団的自衛権行使の大前提は「イザというときは米軍が日本を守ってくれる」だったのに、これがウソっぱちだったのである。衝撃の書、「仮面の日米同盟」(文春新書)は膨大な資料、文献から、国民はもちろん、恐らく安倍首相も誤解している日米同盟の真相を暴いたものだ。ボーン・上田賞受賞のジャーナリストで早大客員教授の春名幹男氏がすべてを語る――。
・Q:本の帯には〈「アメリカが日本を守ってくれる」は幻想だ!〉とあります
・A:そうです。幻想に基づいて、いろいろな政策が行われている。集団的自衛権の行使容認もそうだし、思いやり予算もそうです。すべてを見直すような議論を始めなければいけません
・Q:米軍は日本のために血を流してくれる。だから基地の提供は当然だし思いやり予算も必要。集団的自衛権で助け合うことも大事で、そうすれば日米同盟が深化し、抑止力になる。安倍首相は何度もこう言っていますが、ウソであると?
・A:政治家は勉強不足です。安倍首相自身も分かっていないと思います
・Q:米国は日本を守ってくれないんですか?
・A:自衛隊と米軍の役割分担を定めた日米ガイドラインは改訂を重ねて、今は3版目です。最初は1978年。ここには「日本は小規模な侵略を独力で排除する。独力で排除することが困難な場合には、米国の協力を待って、これを排除する」とあり、「陸上自衛隊および米陸上部隊は陸上作戦を共同して実施する」と明確に記されています。ところが、97年の第2版では「日本は日本に対する武力攻撃に即応して主体的に行動し、極力早期にこれを排除する。その際、米国は日本に対して適切に協力する」という文言に変わっているのです。2015年版は「米国は日本と緊密に調整し、適切な支援を行う。米軍は自衛隊を支援しおよび補完する」と書いてあります。つまり、97年以降、米軍の任務は「サブ」に変わった。支援し、補完するだけで、主体的に防衛するのは自衛隊であるわけです
▽官僚が作為的翻訳で“協力”
・Q:「適切な支援」という言葉がまた曖昧ですね
・A:適切かどうかは米軍が決める。情報提供だけでも支援になる。血を流すとは限らない。しかも、英語の原文に当たって驚きました。ガイドラインは英語で交渉し、英語で文章を作る。それを官僚が翻訳するのですが、その際、作為的に米軍が日本の防衛に積極的に関与するかのような翻訳をしているのです
・Q:情報操作ですね
・A:例えば「主体的」ですが、英文にはprimary responsibilityとある。「主な責任」という意味で、主体的とはニュアンスが違う。「支援し補完する」も英文はsupplement。栄養補助食品に使う言葉で、補足する、追加するという意味です。補完するであれば、complementがふさわしくて、78年版ではcomplementが使われていた。米軍支援のニュアンスは明らかに後退しているのです。さらに15年版には「米軍は自衛隊を支援し、補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる」という日本語がありました。「できる」というからにはcanだと思ったら原文はmayだった。してもよい、するかもしれない、という意味ですよ。共同作戦も通常はjoint operationだが、原文はbilateral operation。「2国の作戦」という意味で、これを共同と訳すには無理がある
・Q:官僚が必死になって、米軍は日本を守ってくれるという幻想を振りまいているんですか?
・A:外務省はなぜ、こんな訳をしたのか。安保法制を可決しやすくするためなのか、それとも安倍首相の意図なのか
・Q:いずれにしても、米国は日本を守ることについて、表現を後退させているのはハッキリ分かる。これはなぜですか
・A:実は長年の取材、研究を通じて、日米安保条約の真相を物語る幾つかの機密文書を発見しました。一つは1971年、アレクシス・ジョンソン国務次官が一時的に長官代行としてニクソン大統領に提出したメモです。そこにはハッキリ、こう書いてあったのです。  〈在日米軍は日本本土を防衛するために日本に駐留しているわけではなく(それは日本自身の責任である)、韓国、台湾、および東南アジアの戦略的防衛のために駐留している。在日および在沖縄米軍基地はほとんどすべてが米軍の兵站の目的のためにあり、戦略的な広い意味においてのみ、日本防衛に努める〉
▽米軍協力よりもまずは専守防衛だ
・Q:そのものズバリ、戦略的な広域防衛の兵站であると?
・A:似たようなメモは他にもありました
・Q:ちょっと待ってください。そういうことを外務官僚は知っていながら隠しているわけですか?
・A:逐一、過去の文書やメモをチェックしているわけではないし、米国もあえて通告はしない。しかし、米国はこうやって、対日政策を戦略的によく考えている。日本の防衛官僚もガイドラインの文言が変わっていることは知っている。しかし、米側の発言があるわけではないので、政治家に「変わりましたよ」とは言わない。日本のメディアも原文に当たらないから、真相が国民に伝わらない。こうやって仮面の同盟の真相が覆い隠されてきたのです
・Q:でも、尖閣は日本の施政下だから日米安保条約の適用範囲内なんですよね? オバマ大統領も言っていた
・A:尖閣主権の経緯について米国はホームページで何も触れていません。都合の悪いことには関わりたくないのが本音でしょうが、政府もメディアもその本質に切り込まず、政府は『安保条約の適用対象だと言ってくれ』という形式を整えることにきゅうきゅうとしている。メディアも大統領がそう言えば、あたかも米軍が尖閣を守るかのような報道をする。幻想で日本の防衛政策が決められているのは極めて不健康なことです
・Q:安倍首相は閉会中審査で、自衛隊の南シナ海派遣にも踏み込んでいました
・A:米国の航行の自由作戦は形だけで完全に腰が引けています。その消極さが米国内でも批判されているほどです。あの海域をイージス艦が通ってもソナーを海に入れるわけでもないし、火器管制レーダーのスイッチも入れてない。ヘリも飛ばしていません。そんなところに自衛隊が出ていく余地なんてありません
・Q:それなのに、安保関連法案が通ったのをいいことに、安倍首相だけが勇ましい
・A:米国の狙いをきちんと分析してないで言っているのですから、危険ですよ
・Q:結局、日本は日米安保の真相、米国の本音を知らないまま、自衛隊を出す法律だけ作った。そういうことになりますか?
・A:そうです。これは自衛隊を白紙委任で米国に差し出すようなものです。具体的、緊急の課題があって決めたわけではないし、どのような戦争であれば、集団的自衛権を行使して協力するのか、という議論もなされていない。日本の安全保障が百八十度変わる話なのに、閣議決定から法案成立まで1年ちょっとというのは、あまりにも乱暴な話です
・Q:大体、米国が日本を守ってくれるかどうか分からないのであれば、米軍にくっついて、地球の裏側まで行くより専守防衛こそ固めるべきじゃないですか?
・A:その通りです。しかし、それを正面に据えた議論が国会でもなされなかった。集団的自衛権を行使するのであれば、自衛隊の仕事が増える。その分、日本を守る要員が削られてしまう
・Q:それでなくてもパリの同時テロ以降、トルコのロシア機撃墜もあり、世界は一気にきな臭くなっています
・A:イスラム国との戦争は当面、終わらない。終わる可能性が予見できない。トルコのロシア機撃墜でロシア機が領空侵犯したのはたった17秒ですよ。トルコはロシア機の領空侵犯を待っていて、その機会を逃さず撃墜したことになる。それほど世界は血なまぐさいのです。それなのに日本は自衛隊は出すけど、そうした国際情勢を分析、検討するインテリジェンスの体制が整っていない。ますます、危なっかしいのです
▽はるな・みきお 大阪外大卒。共同通信でワシントン支局長、特別編集委員など歴任。「秘密のファイル CIAの対日工作」など著書多数。現在は早大客員教授
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/171390/1

次に、同じ春名幹男氏が12月3日付け週刊文春のインタビュー記事「機密解除 米政府の外交文書でわかった 「在日米軍は日本防衛に直接関与しない」のポイントを紹介しよう(「」内が春名氏の発言)。
・「日米安保条約があるから、イザとなったら米国は日本を守ってくれる」 多くの日本人は漠然とそう考えている筈。安倍首相も著書で「軍事同盟というのは”血の同盟”です。日本がもし外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流します」 だから日本も自衛隊が米軍の後方支援活動ができるようにして、日米同盟を強化ーそれが安保法制を推し進めるための安倍首相の”理屈”
・「しかし、そもそも米軍が日本を守ってくれるという考え方自体が”幻想”に過ぎない」(春名の著書「仮面の日米同盟 米外交機密文書が明かす真実」(文芸春秋11月)
・1971に米ジョンソン国務長官代行がニクソン大統領に提出したメモでは、「在日米軍は日本本土を防衛するために駐留しているわけではなく、韓国、台湾、および東南アジアの戦略的防衛のために駐留」
・フォード政権で作成された統合参謀本部の文書「在日米軍および基地は日本の防衛に直接関与しない」、「在日米軍は、日本を守るために存在しているわけではないという米国のスタンスは、70年代以降、脈々と受け継がれている基本的な考え方」。安保に携わる官僚の間では周知の事実、「政治家は誰も知らないでしょうが、私は気づいていました」
・(中略)日米ガイドライン日本語訳では、日本防衛に当って自衛隊の責任の度合いが薄められ、米軍の関与の度合いが強められている。外務官僚が「日本防衛のために血を流す米国」のイメージを強めて、捻じ曲げて翻訳した疑いが濃い」
・在日米軍駐留続けるのはなぜか。「日本が最高の兵站基地だから。アジアの最も東にある地政学的位置に加え、物資が豊富で整備や修理に必要な高い技術もある。しかも手厚い「思いやり予算」もある。米国は、この最高の兵站基地維持のためあらゆる手を使ってきた。その最たる例が72の沖縄返還。69に米情報機関がNSCに提出した「日米安保関係の見通し」では、「沖縄返還で合意が得られなければ、佐藤首相は辞任に追い込まれかねない。その場合、後任候補は米国にはより自立的で、中国にはより柔軟な姿勢を示すだろう」。キッシンジャーも親米的な佐藤政権を延命させることで、沖縄の米軍基地を半永久的に利用する狙い
・尖閣諸島の施政権は返還で日本への移転を認めたが、「主権については一切触れず。駐日米国大使だったマイヤーは回想録で「そんな巧みな立場によって、3つの当事国に嫌われることなく、今後何年も続きそうな論議に米国は不関与の立場を保障された」と記している」
・それでも、歴代政権は、日本の施政権下にある以上、尖閣諸島は安保条約の対象であるとしてきた。「ところが、対中融和姿勢を取るオバマ政権になると、「尖閣諸島は安保条約の対象である」は聞かれたら「そうです」と答える程度にまで一時はニュアンスが弱まった」。この事実は国務省記者会見で報道官が認めた。中国漁船が海上保安庁の巡視艇に衝突したのはその3週間後。「事件の真相は、オバマ政権の政策変更をみた中国が実地で日本の反応を試したものと考えられる。米国の本音は領有権争いに巻き込まれたくないということに尽きる」

外務官僚がここまで「作為的翻訳」により国民だけでなく、首相まで欺く「情報操作」をしていたとは、驚くと同時に腹が立った。日本のマスコミを原文を読まずに、外務省による日本向けの「公式文書」だけに頼っているとは情けない限りだ。記者クラブに所属している記者諸君は、原文と「作為的翻訳」の違いに仮に気づいても、あえて質問せずに見過ごす「大人の対応」をとっているのだろう。
週刊文春のインタビュー記事は、機密解除された米政府の外交文書を多用しているだけに、歴史的でより幅広い。
尖閣諸島問題で、「主権については一切触れず。駐日米国大使だったマイヤーは回想録で「そんな巧みな立場によって、3つの当事国に嫌われることなく、今後何年も続きそうな論議に米国は不関与の立場を保障された」と記している」のは初めて知った。
また、尖閣諸島問題での中国漁船による巡視艇衝突事件は、「事件の真相は、オバマ政権の政策変更をみた中国が実地で日本の反応を試したものと考えられる。米国の本音は領有権争いに巻き込まれたくないということに尽きる」との指摘には、私が知る限り初めての見方で、うなずかされる。
それにしても、アメリカ政府から安部政権をみると、恐らく「民主主義的手続きを踏み外しているとはいえ、御し易い便利なお財布」と映っているのだろう。やれやれ・・・
タグ:文春新書 情報操作 週刊文春 日刊ゲンダイ 機密文書 春名幹男 日米ガイドライン 新安保法制 成立後の政治情勢 (その2)米軍は守ってくれない 春名幹男・早大客員教授「米軍が守ってくれるなんて幻想 安倍首相自身が同盟の真相を知らない 仮面の日米同盟 幻想に基づいて、いろいろな政策 3版目 97年以降、米軍の任務は「サブ」に変わった 支援し、補完するだけで、主体的に防衛するのは自衛隊 官僚が作為的翻訳で“協力” 作為的に米軍が日本の防衛に積極的に関与するかのような翻訳 米軍支援のニュアンスは明らかに後退 bilateral operation 共同と訳すには無理がある アレクシス・ジョンソン国務次官 在日米軍は日本本土を防衛するために日本に駐留しているわけではなく(それは日本自身の責任である 韓国、台湾、および東南アジアの戦略的防衛のために駐留 尖閣主権 政府もメディアもその本質に切り込まず、政府は『安保条約の適用対象だと言ってくれ』という形式を整えることにきゅうきゅうとしている 幻想で日本の防衛政策が決められているのは極めて不健康 自衛隊の南シナ海派遣 米国の航行の自由作戦は形だけで完全に腰が引けています 国際情勢を分析、検討するインテリジェンスの体制が整っていない ますます、危なっかしいのです 機密解除 米政府の外交文書でわかった 「在日米軍は日本防衛に直接関与しない 在日米軍は、日本を守るために存在しているわけではないという米国のスタンスは、70年代以降、脈々と受け継がれている基本的な考え方 尖閣諸島の施政権は返還で日本への移転を認めたが 主権については一切触れず。駐日米国大使だったマイヤーは回想録で「そんな巧みな立場によって、3つの当事国に嫌われることなく、今後何年も続きそうな論議に米国は不関与の立場を保障された 対中融和姿勢を取るオバマ政権になると、「尖閣諸島は安保条約の対象である」は聞かれたら「そうです」と答える程度にまで一時はニュアンスが弱まった 中国漁船が海上保安庁の巡視艇に衝突したのはその3週間後 事件の真相は、オバマ政権の政策変更をみた中国が実地で日本の反応を試したもの
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