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中国経済(その2) [世界経済]

中国経済については、前回は9月2日に取上げたが、今日は(その2)である。

先ずは、11月27日付け日経ビジネスオンライン「年114兆円を国外に流す中国「闇金融」の実態 3350拠点12万人で国家予算の4割相当を動かす」を紹介しよう(▽は小見出し)
・9月30日、中国“公安部”は、8月末から全国で展開中の「“地下銭荘(ヤミ金融)”撲滅のための集中統一行動」の初歩的成果を公表した。それは最初の1カ月間で、地下銭荘の営業拠点37カ所を摘発し、犯罪容疑者75人を逮捕し、関連する地下銭荘の扱い総額が2400億元(約4兆5600億円)余りであることを確認したというものだった。
▽「地下銭荘」撲滅のための集中統一行動
・今年4月、公安部、中央銀行である“中国人民銀行”、“国家外滙管理局(外貨管理局)”などが連合して、全国で“離岸公司(オフショア企業)”と地下銭荘を利用した不正資金の海外移転を撲滅する特別行動を展開するための配備を行った。
・これは“反腐敗協調小組(腐敗撲滅協調チーム)”が実施する“天網”<注1>行動を支える重要な一部分で、その重点対象は(1)オフショア企業や非居住者の口座を利用し、地下銭荘の協力を受けて、汚職による賄賂などの犯罪に関連する不正資金を海外へ移転する犯罪活動と、(2)他人に協力してクロスボーダー取引、違法な外貨売買、資金の支払清算業務などに従事する地下銭荘の違法犯罪活動であった。<注1>“天網”は成語の「天網恢恢,疎而不漏(疎にして漏らさず)」から採った言葉で、「悪人や悪事を逃すことはない」という決意を示している。
・過去数カ月間における中国株式市場の大幅変動は、民衆に外資による中国株式の空売りを憂慮せしめたのに加えて、人民元為替レートの変動は地下銭荘を経由した外貨の海外流出圧力を高めた。こうした状況を踏まえて、8月24日、公安部は全国の公安機関に対して8月下旬から11月末までを期間とする地下銭荘撲滅のための集中統一行動を実施するように指示したのだった。
・中国の地下銭荘による違法犯罪活動は日一日と激化し複雑化しているのが実情である。地下銭荘は汚職腐敗、賭博、麻薬、脅迫、脱税などの各種犯罪に関わる不正資金を海外へ持ち出すための重要な通路であると同時に、その営業活動が地下に隠れ、出所不明な大量のクロスボーダー資金が国家の金融管理体系から遊離する形で存在することで、金融資本市場の秩序や国家のマクロコントロール政策の実施を阻害するのみならず、国家金融そのものの安全性を脅かしている。
・香港誌「動向」9月号は、中国国務院が9月2日に第3回「地下銭荘による非合法・違法な“洗銭(マネーロンダリング)活動撲滅会議」を招集したと報じた。会議には中国人民銀行、財政部、外貨管理局、“銀行監督管理委員会”、“国有資産監督管理委員会”、“証券監督管理委員会”、公安部および4大商業銀行(“中国工商銀行”、“中国農業銀行”、“中国銀行”、“中国建設銀行”)の責任者が出席した。
・この会議に出席していた“国務院”総理の“李克強”は、「地下銭荘は金融部門に所属する下部機関であり、金融部門と政府機関が腐敗堕落していることの確固たる証拠だ」と怒りを込めて指摘すると同時に、1999年から現在に至るまで16年間にわたり地下銭荘が白日の下で違法な犯罪を何ら阻害されることなく営んで来たとは何事かと問いただした。
▽国家予算の4割相当が「地下」経由で国外へ
・地下銭荘について中国メディアが報じた内容を取りまとめると以下の通り:
(1)中国の21の一級行政区(省・自治区・直轄市)および香港と“澳門(マカオ)”では地下銭荘が非常に活発であり、中国国内の120都市には約3350カ所以上もの営業拠点があり、密かに人民元や外貨を国外へ送り出す活動を展開している。地下銭荘の活動とその所在地区にある国有商業銀行、“発展銀行(開発銀行)”、都市銀行、さらには国境外にある国営企業、中国資本企業、中外合資企業は隷属関係にある。現在地下銭荘の従業員は12万~15万人規模に達しており、その非合法・違法な営業利益は4~15%に達している。
(2)地下銭荘の運営規模は、2000年から2004年までは4500億~8000億元(約8兆5500万~15兆2000万円)で推移していたが、2007年から2012年までには年3兆元(約57兆円)の水準に達し、2013年と2014年は年6兆元(約114兆円)の水準に達した。一方、今年7月24日から8月14日までの3週間に中国国内から国外へ流出した人民元は8240億元(約15兆6560億円)を上回ったが、そのうちの70%は地下銭荘を通じて国境を越えた。
・2015年の中国国家予算は15兆4300億元であるから、上記の運営規模が正しいとすれば、2013年と2014年の年6兆元の規模は国家予算の約39%に相当する。それだけ巨大な金額が地下銭荘によって動かされて国外へ流出しているとなると、中国経済を脅かし、国家の安定を揺るがしかねず、事は極めて重大である。
・地下銭荘がいくら強大な組織と強力な「後ろ盾」を持っていると言っても、6兆元もの巨額な資金を動かすのに地下銭荘単独で事を運ぶことは不可能であることは言わずもがなである。それは、李克強がいみじくも指摘したように、中国の金融部門に連なる各種銀行と香港やマカオを含む国境外に所在する中国資本の企業が協力連携しているからこそ成せる業と言えるのである。
・11月20日付の北京紙「京華時報」は、「金華警察当局が全国最大の地下銭荘事件を摘発、4100億元(約7兆7900億円)が国境の外へ送られる」と題する記事を掲載した。浙江省中部の中心都市である“金華市”は、475万人の人口を抱える中都市で、交通の要衝としても知られている。日本でも「百円ショップ製品の故郷」として知られる中国最大の日用品雑貨市場が所在する”義烏(ぎう)市“は、金華市の管轄下にある“県級市(県レベルの市)”である。その金華市で全国最大規模の地下銭荘が摘発されたというのだが、その概要は以下の通り。
▽百円ショップの故郷から7.8兆円が流出
・【1】2014年9月、中国人民銀行の“反洗銭(マネーロンダリング防止)”部門は中央政府「公安部」の経済犯罪捜査局に対して一つの手がかりをもたらした。初歩的な捜査を経て、浙江省義烏市に所在する“宇富物流有限公司”(以下「宇富物流」)などの銀行口座が多額の資金を国境外へ移しており、しかもその資金規模が数千億元(約6~8兆円)に上っていることから、地下銭荘の特徴に符合していることが判明した。このため、公安部ではこの事案を特定案件に定め、コード名を“9・16専案(重大事件)”と命名した上で、浙江省の“金華市公安局”に捜査を移管した。
・【2】金華市公安局は9・16重大事件の専従チームを組織して2か月間にわたる捜査を行った結果、当該地下銭荘の“蛛絲馬跡(かすかな手がかり)”を発見した。それは、宇富物流が“趙○宜”という人物によって香港で設立登記された会社で、同時期に設立された会社が他に数十社あり、それらの会社は全て実体のない“空殻公司(ペーパーカンパニー)”だった。そればかりではなく、これらのペーパーカンパニーは全てNRA(Non-Resident Account:非居住者口座)<注2>を開設していた。  <注2>NRAとは国境外の機構が中国国内の銀行に開設した国内外貨口座。
・【3】専従チームは、趙○宜が2013年1月以来NRAを利用して数千億元を国境外へ移したことを突き止めた。専従チームの捜査結果によれば、地下銭荘の顧客は1万4000か所以上に及び、それらの所在地は北京市、広東省、寧夏省、江西省などの各地に分布していた。そのうち、取引額が10億元(約190億円)以上の顧客は21人、1億元(約19億円)以上は610人、5000万元(約9億5000万円)以上は1128人であった。その後、趙○宜と共謀していた仲間の“施●飛”、“季△輝”、“楊▲翔”、“李◇朋”、“林◆湖”の存在が次々と明らかになり、これら6人に対する従チームの捜査が密かに進められた。
・【4】2014年12月15日、公安部、外貨管理局および中国人民銀行の三者による共同指揮の下で、浙江省、広東省など7省の公安機関連携による地下銭荘拠点の一斉急襲を命じた。銀行部門は全国にある91銀行の口座3000以上を凍結したし、公安部門は58人の容疑者を逮捕すると同時に、大量の銀行カード、パソコンなどを押収した。この日、浙江省で金華市公安局が主体となって摘発したのが、趙○宜を主犯とする史上最大の地下銭荘であり、彼らが行った外貨の違法売買によって国境外へ持ち出された金額の総額は4100億元(約7兆7900億円)に達し、370人以上が検挙されて刑事罰や行政処罰を受けたのだった。
・【5】この種の地下銭荘が扱う資金量は大きく、そこからもたらされる収益は莫大である。金華市公安局の専従チームがある容疑者のパソコンから取り出した電子帳簿には、毎日の収益が通常は5万元(約95万円)以上、最も多い日には135万元(約2565万円)、毎月の平均利潤は200万元(約3800万円)と記載されていた。まさに地下銭荘は違法な暴利ビジネスであり、一度やったら止められないぼろもうけ商売なのである。
▽他人名義の大量口座でロンダリング
・上述した浙江省の例からも分かるように、顧客の需要があるから、地下銭荘の存在は可能となる。「取引額が10億元(約190億円)以上の顧客は21人」とあったが、彼らがそれだけの資金を国境外へ持ち出す目的は何なのか。それは、国内に資金を置いておけない理由があるからである。資金の出所が収賄や横領などの腐敗である場合もあるだろう。また、合法的に稼いだ資金かもしれないが、海外移民するために違法な外貨送金を行う場合もあるだろう。その1つの例が2015年4月に福建省“福清市”で摘発された地下銭荘事件から見て取れる。
・(1)2015年4月、公安部経済犯罪捜査局と中国人民銀行マネーロンダリング防止部門は、福建省福清市の“余□和”名義の口座が疑わしい取引を行っていることを発見した。当該口座は2万8678個の口座と取引を行い、その取引銀額の合計は162億元(約3078億円)に上っていた。同口座は取引の資金規模が巨大であるだけでなく、その取引相手が多数の中国国内および国境外の個人であることから、地下銭荘の特徴と符合していた。
・(2)公安当局によれば、余□和という人物は身障者で、学歴も低く、その家族および友人の多くは農民であり、どう考えても違法な外貨売買に従事できるはずがない。そればかりか、余□和の銀行口座を開設する際に記載されている連絡先の電話も失効していることから、当該口座は典型的な“人頭帳戸(他人名義で開設された口座)”<注3>であると判定された。  <注3>“人頭帳戸”は、マネーロンダリングの手段として使われる。
・(3)公安当局の調査結果、余□和の口座を実際に運用しているのは“林■蘭”であり、林■蘭をトップとする犯罪集団は友人知人の名義で地元の福清市や外地にある多数の銀行に大量の口座を開設し、それらの口座を使って違法な外貨と人民元の両替を行っていたことが判明した。公安当局が同犯罪集団の一員である“周■”を取り調べて判明したのは、周■が顧客のために300万ドルをサウジアラビアから国内に移したという事実だった。当該資金はある大型“中央企業”<注4>の上級管理職が汚職を行って稼いだ不正資金だった。事件に関与した“王▼乃”は某国有企業のサウジアラビア支店の副支店長だったが、王▼乃は周▽に協力して国外にある不正資金300万ドルを地下銭荘経由で中国国内にある周▽が指定した口座へ送ったのだった。これは氷山の一角に過ぎず、地下銭荘を通過する不正資金は莫大な金額に達している。なお、上述した上級管理職はすでに“中央規律検査委員会”による取り調べを受けたという。  <注4>“中央企業”とは中国政府の監督管理を受ける国有企業。
▽国を揺るがす終わりなきモグラ叩き
・中国関連のメディアは、中国共産党総書記の“習近平”と“中央政治局常務委員”で中央規律検査委員会書記の“王岐山”が主導する“天網”行動は、地下銭荘を摘発すると同時に、政敵の江沢民”グループに属する“曽慶紅”、“劉雲山”、“戴相龍”の3家族を引きずり出す手段だと報じている。紙面の関係でその詳細は省くが、彼ら3人の子弟は地下銭荘を開設してマネーロンダリングを行ったり、株価操作やインサイダー取引などを行って、不正な利益を獲得したと言われている。
・3家族の問題はさておき、上述したように、巨額の資金を秘密裏に国境を越えて動かす地下銭荘の存在は国家経済にも多大な影響を及ぼす危険な存在である。昨今、莫大な外貨流出に苦悩する中国にとって、地下銭荘の撲滅は必要不可欠であるが、それが暴利を生むビジネスである限り、モグラ叩きの図式で、叩かれれば息を吹き返し、その壊滅は不可能と言えるのではなかろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/112500027/?P=1

次に、12月11日付けZAKZAK「【お金は知っている】中国が抱える“巨大債務爆弾” たった1年で600兆円も膨れ上がっていた」を紹介しよう。
・米連邦準備制度理事会(FRB)が今月16、17日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の利上げを決定する。昨年秋の量的緩和打ち止めに続き、2008年9月のリーマン・ショック後から7年間続けてきた事実上のゼロ金利政策を終了する。その対外的衝撃はどうか。
・日本の株式市場は「織り込み済み」との見方が強いが、新興国市場のほうでは不安がくすぶっている。特に、あおりを大きく受けそうなのが中国である。
・中国の株式市場は6月下旬の大暴落以降、当局による強権によって相場の底抜けを何とか食い止めてきた。FRBは9月にも利上げする予定だったが、中国など新興国市場の動揺を考慮して決定を先送りしたが、米景気の堅調ぶりからみてゼロ金利を続けるわけにいかなくなった。
・中国のほうは、習近平国家主席が執念を燃やしてきた人民元の国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)構成通貨入りが実現した。その条件は元の変動幅拡大や株式など金融市場の自由化だが、外国為替制度は当面、元をドルに連動させる管理変動相場制を続ける。これだと米利上げとともに試練に直面する。  米利上げでドル高に向かう。ドル高はすなわち元高となり、中国にはデフレ圧力が加わる。それを避けるためには、元を切り下げる必要があるが、するとワシントンから制裁を受ける恐れが高まる。
・共和党の大統領有力候補、ドナルド・トランプ氏は「中国は為替操作国」だとすでに非難しているし、大統領選と同時に行われる議会総選挙を控え、議員の多くが反発しよう。
・北京のほうも、元切り下げをためらわざるをえない事情を抱えている。元安となると、巨額の資本逃避が起きる恐れがあるからだ。現に、8月に中国人民銀行が人民元切り下げに踏み切ると、大量の資金が流出した。
・グラフ(リンク先参照)は、中国企業(金融機関を除く)の債務と、企業向け平均貸し出し金利から製品出荷価格の増減率を差し引いた実質金利負担の対比である。最近では、名目の貸し出し金利は4%台半ばで、1年前の6%に比べて下がったものの、製品値下がりのために実質的な金利負担は急上昇してきた。今の平均実質金利は11~12%にも及ぶ。鉄鉱、家電、自動車、建設関連など中国の過剰生産能力はすさまじく、製品価格は12年4月以降、前年比マイナスが続き、しかも減少幅は拡大する一途である。
・支払いが困難になっている企業は、金融機関に債務返済を繰り延べてもらうほか、追加融資を受けている。さらに社債など債務証券を発行して資金調達している。
・この結果、債務は雪だるま式に膨れ上がっている。日本円換算でみると、14年3月に約1500兆円だった債務残高は15年3月には600兆円以上増えた。外貨建て借り入れも増えており、元を切り下げると、その分債務負担がかさむ。
・まさに巨大な債務爆弾である。「国際通貨元」は中身ぼろぼろの「悪貨」なのである。 (産経新聞特別記者・田村秀男) 
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20151211/ecn1512111550002-n1.htm

「地下銭荘」がここまで大規模だったとは驚きである。「李克強がいみじくも指摘したように、中国の金融部門に連なる各種銀行と香港やマカオを含む国境外に所在する中国資本の企業が協力連携」しているというのでは、撲滅が「モグラ叩き」に終わってしまうというのもうなずける。
二番目の記事にある「巨大債務爆弾」も深刻だ。米連邦準備制度理事会(FRB)は、9年半ぶりの利上げに踏み切った。人民元は対ドル、対円とも下落を続けたが、上海株は、主要国株式市場と同様に上昇した。株式市場の反応は、既に利上げを織り込んでいた上に、「当面の悪材料出尽くし」という相場力学が働いたためかも知れない。ただ、人民元の動向は記事にあるように要注意だ。
いずれにしても、中国経済には「軟着陸」をしてもらいたいが、実態は闇の部分がここまで大きいとすれば、「軟着陸」ははかない希望的観測に過ぎないのかも知れない。
明日、金曜日は更新を休むので、土曜日にご期待を!
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