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三菱重工はどうしたのか?(その2)米加州の原発トラブル、大型客船引渡し遅延 [企業経営]

昨日に続いて、三菱重工はどうしたのか?(その2)米加州の原発トラブル、大型客船引渡し遅延 を取上げたい。

先ずは、9月14日付けHuffingtonpost「「東芝」だけではない「原発事業」の世界的衰退」のうち、東芝関連、仏「アレバ」を除く部分を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽巨額訴訟に直面した三菱重工
・欧米の先進国市場で原発ビジネスが終焉に向かっていることは否定しようがなく、巨額の案件を受注してきた大手メーカーがプロジェクトの破綻で泥沼にはまりつつあるのは東芝のケースに限らない。
・三菱重工が米カリフォルニア州のサンオノフレ原発の配管破損事故をめぐり、事業会社の米電力大手サザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE)から巨額の損害賠償を請求されている問題もその1つ。事実関係は拙稿(「『廃炉』で訴訟される三菱重工――『原発輸出』のリスクとは」2013年7月31日)に詳しいが、かいつまんで説明すると、三菱重工が納入した同原発3号機の蒸気発生器の配管で2012年1月に異常な磨耗が発生して原子炉が緊急停止、放射性物質を含む微量な水が漏れ出した。その後、2号機でも同様な磨耗が確認され、米原子力規制委員会(NRC)は2基(ともにPWR)の原子炉の稼働を禁止するとともに、同年6月になって「三菱重工の不十分なコンピュータシミュレーションの分析が設計ミスを招いた」という調査結果を公表。
・その後、2基の原子炉に設置されている蒸気発生器にある約3万9000本の細管のうち、約3400本に擦(こす)れや振動による異常な磨耗が見つかり、破損箇所は1万5000カ所以上に上ったことも明らかになった。  SCEは周辺住民の強い反対で再稼働を断念。2基の原発を廃炉にすることを決め、三菱重工に損害賠償を求める方針を明らかにしていた。廃炉の決定は2013年6月。
・これまでSCEは賠償金額を「40億ドル(約4000億円)以上」としていたが、今年7月27日、SCEは国際商業会議所(パリ)に証拠書類を提出し、正式に仲裁を申し立てた。提示された請求額はなんと75億7000万ドル(約9300億円)。三菱側はSCEの請求額について「交渉の経緯、契約履行の事実を正確に反映していない不適切な内容」とし、契約上の同社の責任は「1億3700万ドル(約169億円)が上限」という従来の立場を崩していない。だが、百戦錬磨の米電力大手が起こした訴訟だけに、株式市場ではこのニュースが伝わった7月28日以降、三菱重工株の急落を招いた。
http://www.huffingtonpost.jp/foresight/toshiba-nuclear-power_b_8131564.html

次に、2014年11月6日付け東洋経済オンライン「客船でまた巨額損、三菱重工がはまった泥沼 前期と今期で造船の特損1000億円超に」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・130年の歴史を誇る、三菱重工業の造船事業が危機に直面。10月31日、同社は2011年に受注した大型客船をめぐり、仕様変更などで398億円の特別損失が発生することを明らかにした。前期もこの客船で巨額の特損を計上しており、前期と今期で関連特損は1000億円を超す。
・問題となっているのは、クルーズ客船の世界大手、米カーニバル傘下の欧州アイーダ・クルーズ社から受注した大型客船2隻。3000人以上の収容が可能な大型クルーズ客船で、日本で建造される客船としては過去最大。三菱重工は2002年に建造中の大型客船が炎上して巨額損失を被った経緯があり、11年ぶりに受注したのがアイーダ社の客船だった。
▽巨額の追加費用が発生、完成も半年遅れ
・しかし、客室の内装など細かな仕様を決めるに当たって、アイーダ社との間で認識の違いが顕在化。三菱重工の提案に対し、アイーダ側はより高級な仕様に変更するよう強く主張。結局、三菱重工側は先方の要求をのんで大幅な設計変更や高価な資材の使用を余儀なくされ、前期決算で641億円もの追加費用を特損計上。
・今期の特損に計上するのは、新たに発生が見込まれる追加費用分。「アイーダ社と最終的な仕様を確認していく中で、パブリックエリアやホテル部分に関して、再び設計のやり直しが大量に生じてしまった」(野島龍彦CFO)という。
・すでに1隻目は長崎造船所の香焼工場で内装工事に取り掛かっている段階だが、最終設計の変更により、工事をやり直す箇所が続出。作業の遅れを取り戻すための人件費もかさみ、追加費用が400億円近くにまで膨れ上がった。完成は当初の予定より半年遅れ、1隻目の引き渡しは2015年秋にずれ込む見通しだ。
・アイーダ社の客船を受注した2011年当時、造船業界はリーマンショックまで続いた海運・造船バブルの反動で新船の発注量が激減。韓国、中国勢の攻勢にもさらされ、日本の造船業は存続が危ぶまれた。
・こうした中でいち早く動いたのが三菱重工だった。同社は民間船舶分野で一般汎用商船から撤退。1000人規模に及ぶ設計陣を生かして技術難易度の高い船種に集中する戦略を掲げ、得意とするLNG(液化天然ガス)運搬船に加えて、大型客船を新たな柱と位置づけた。客船に活路を求めたのは、バラ積み船やコンテナ船などの一般汎用商船とは違って、1隻あたりの金額が大きくライバルも少ないからだ。
・だが、そのもくろみは完全に外れた。問題となっている客船の受注金額について三菱重工は公表していないが、2隻合計で総額1000億円前後と見られる。1000億円で受注した客船2隻を作るために1000億円以上の損が出るのだから、開いた口がふさがらない。
▽もともと赤字受注だったが…
・そもそも今回の客船は当初から採算割れの受注だった。「最初の2隻を造れば、3隻目、4隻目、5隻目とその後も継続的に仕事が取れる。トータルで考えれば(最初の赤字分は)取り戻せる」(同社関係者)とそろばんをはじき、受注に踏み切った経緯がある。
・ここで経験不足が露呈した。これまで三菱重工が手掛けてきた客船は、すでに同じ設計の船が存在し、あらかじめ仕様が決まっているものだった。今回、アイーダ社から受注したのは新型客船の「1番船」。初の船型となるため、仕様を含めて一から協議して設計を決めていく必要があった。
・当然、1番船は相手側の意向で仕様が変わる可能性があり、追加費用が発生するリスクも大きい。本来なら、そうした費用負担の扱いについて契約書の中で細かく明記しておく必要があるが、三菱重工のリスク認識が甘く、契約書の中で十分なリスクヘッジが行われていなかったと見られる。
・客船の巨額損失により、同社が描いた造船事業の生き残り戦略は破綻。客船の受注は事実上凍結し、民間船舶における当面の受注活動は得意とするLNG運搬船などに専念する。長崎造船所の雇用維持や収益確保のための対策として、今後は同業他社から大型商船の船体ブロック建造を引き受けるなど、下請的な仕事も検討するという。
・宮永俊一社長は「(祖業なので)船に対する愛着はあるが、事業のやり方を見直し、きちんと収益を出せる事業に変えていく必要がある。これからどうすべきかを徹底的に詰めていく」と構造改革の必要性を強調した。造船事業の生き残りに向けた試練は続く。
http://toyokeizai.net/articles/-/52567

客船に関しては、本年12月9日付け日経新聞が、「客船引き渡し また延期 三菱重工、損失膨らむ恐れ」と伝えた。そのポイントは以下の通り。
・三菱重工業が客船世界最大手、米カーニバル系向けに建造中の大型客船が、12月の納入予定に間に合わない見通し。延期は3度目。これまでの遅れで累計1600億円超の特別損失を計上、さらに損失額が膨らむ可能性が高い。
・年度内の納入を目指すが、度重なる延期で造船分野の中核と位置付ける客船建造事業の信用低下は免れない。納入が遅れているのは、カーニバル傘下のアイーダ・クルーズ向け大型客船の1番船だ。当初は3月に納入予定だったが、設計や資材の変更などで2度延期し、12月にずれ込んでいた。内装の仕様変更などへの対応にさらに時間が掛かり、年内納入が困難に。三菱重工は2011年にアイーダ・クルーズ向け大型客船2隻を受注し、長崎造船所で建造中。
・受注額は2隻で1000億円とみられるが、既に累計1600億円超の特別損失を計上。3度目の延期に加え、2番船についても納期の16.3から遅れる見通しとなり、さらに損失が膨らむ公算が大。
・三菱重工は造船業界で台頭する中韓勢に対抗するため、客船建造のコア事業化に取り組んでいるが、思うように進んでいない。引き渡しを急ぐため作業員を4千~5千人と、1年前に比べ倍以上に増やしている。2番船は1番船の建造ノウハウを生かし、戦略立て直しを急ぐ。

米加州の原発トラブルは、2基の原発が廃炉となり、損害賠償請求は9300億円もの巨額。三菱重工が主張する上限額約169億円とのひらきは大きく、最終的に幾らで決着するのかは不明だが、海外での原発受注を目指す三菱重工にとってのイメージダウンが大きな足枷となるだろう。
大型客船引渡し遅延問題も、「お粗末」の一言につきる。2002年に建造中の大型客船が炎上も、だらしのない事故だった。今回は、いくら大型客船の契約を受注したかったとはいえ、「契約書の中で十分なリスクヘッジが行われていなかった」とは、驚くほかない。先方の言いなりに仕様変更を重ねた結果、「受注額は2隻で1000億円とみられるが、既に累計1600億円超の特別損失を計上」、というのでは、悲劇というより喜劇である。しかも、当初の2隻は赤字覚悟で、その後の受注で回収する予定だったのに、「客船の受注は事実上凍結」というのでは、まるで「あつものに懲りてなますを吹く」である。さらに、「大型商船の船体ブロック建造を引き受けるなど、下請的な仕事も検討」と、プライドもかなぐり捨てたようだ。
これだけ、問題を起こしている割には、経営責任を問う記事は少ないようだ。同社広報の「にらみ」が効いているのかも知れない。しかし、来年の株主総会前になっても出てこないようであれば、これもマスコミの自殺というほかない。
タグ:三菱重工はどうしたのか? 米加州の原発トラブル 大型客船引渡し遅延 Huffingtonpost 「東芝」だけではない「原発事業」の世界的衰退 米カリフォルニア州 サンオノフレ原発 配管破損事故 米電力大手サザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE) 巨額の損害賠償を請求 蒸気発生器の配管 異常な磨耗が発生 原子炉が緊急停止 射性物質を含む微量な水が漏れ出した 米原子力規制委員会(NRC) 原子炉の稼働を禁止 三菱重工の不十分なコンピュータシミュレーションの分析が設計ミスを招いた 破損箇所は1万5000カ所以上 2基の原発を廃炉 請求額はなんと75億7000万ドル(約9300億円) 三菱側 責任は「1億3700万ドル(約169億円)が上限」 東洋経済オンライン 客船でまた巨額損、三菱重工がはまった泥沼 前期と今期で造船の特損1000億円超に 米カーニバル傘下 欧州アイーダ・クルーズ社 大型客船2隻 三菱重工 2002年に建造中の大型客船が炎上して巨額損失 11年ぶりに受注 客室の内装など細かな仕様を決めるに当たって、アイーダ社との間で認識の違いが顕在化 大幅な設計変更や高価な資材の使用を余儀なくされ 受注した2011年当時 海運・造船バブルの反動で新船の発注量が激減 日本の造船業は存続が危ぶまれた 民間船舶分野で一般汎用商船から撤退 技術難易度の高い船種に集中する戦略 当初から採算割れの受注 経験不足が露呈 新型客船の「1番船」。初の船型となるため、仕様を含めて一から協議して設計を決めていく必要 追加費用が発生するリスクも大 契約書の中で細かく明記しておく必要 三菱重工のリスク認識が甘く、契約書の中で十分なリスクヘッジが行われていなかった 客船の受注は事実上凍結 同業他社から大型商船の船体ブロック建造を引き受けるなど、下請的な仕事も検討 日経新聞 客船引き渡し また延期 三菱重工、損失膨らむ恐れ 延期は3度目 受注額は2隻で1000億円 累計1600億円超の特別損失
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