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東芝不正会計問題(その15)闇株新聞:ここからの東芝 [企業経営]

東芝不正会計問題については、12月12日に取上げたが、今日は(その15)闇株新聞:ここからの東芝 である。

先ずは闇株新聞の12月9日付け「ここからの東芝」を紹介しよう。
・証券取引等監視委員会は12月7日、「重要な事項につき虚偽の記載がある」発行開示書類を提出し、それに基づき社債を発行したなどとして東芝に対し73億7350万円の課徴金納付命令を発出するように金融庁長官に勧告しました。課徴金額としては史上最高です。
・課徴金そのものは巨額ですが、これは「重要な事項につき虚偽の記載がある」発行開示書類を使って平成22年に1200億円、平成25年に2000億円もの社債を発行していたため、いわば市場を欺いたペナルティーとなります。
・課徴金そのものは調達した社債発行額面の2.25%と規定されており(それで72億円)、それに「重要な事項につき虚偽の記載がある」有価証券報告書を提出した年度における株式時価総額の10万分の6が加算されています。有価証券報告書は過去7年分訂正されていますが、課徴金は平成24年3月期と25年3月期の2期分しか加算されていません(理由はよくわかりません)。
・明らかに市場を欺いて3200億円も調達したペナルティーといっても規定通りに機械的に算定されただけの話で、そのペナルティーが金額的に妥当なのかとか、単に金(課徴金)だけ支払えばよいのかなどは、どこにも議論されていません。
・ここから東芝がとる行動は、監査を担当していた新日本監査法人の契約解除と、総額3億円を請求している旧経営陣への損害賠償請求金額の増額くらいしかありません。あとはひたすら嵐が過ぎるのを待つだけです。
・株主の代表訴訟はこれから乱発されるはずですが、これは粛々と対処するしかありません。日本の法律では株主側に「会社の悪意」を疎明する義務がないため、ほぼ株主の要求が認められてしまいます。
・また東芝はADRを海外市場で発行していますが、これは東芝が発行したわけではない「勝手ADR」であるとして海外株主の請求を(されたとして)突っぱねるつもりのようです。仮にそうだとしてもADRの裏付けとなる東芝株式は間違いなく東芝が発行したものなので、通用しない理屈のような気がします。
・さて巷間では、一部の旧経営陣への刑事責任の追及とか、新日本監査法人への何らかの処分が囁かれていますが、この2つの可能性について考えてみましょう。
・確かに課徴金納付命令が出ると、もう刑事告発されることがないのかというと、そんなことはありません。本日(12月8日)の記者会見で麻生金融担当大臣もそういう意味の発言をしています。 じゃあ東芝の一部の旧経営陣が刑事告発される(つまり逮捕・拘留・起訴される)可能性があるのか?といえば、やはり「ない」と考えます。
・確かにここのところ急に刑事告発の可能性がマスコミで取りざたされているため、捜査当局(本件では東京地検特捜部)の一部にはそういう「願望」があるのかもしれません。
・しかし証券取引等監視委員会は、東芝の問題が発覚した(タレこみがあった)本年2月頃からずっと開示調査課(課徴金納付を勧告するところ)が担当していたはずで、そこが課徴金納付を勧告して「一丁上がり」となったところに、あとからプライドの高い特別調査課(刑事告発をするところ)がのこのこ出てくることはありません。
・また証券監視委員会の実務トップの事務局長が本年7月に交代しており、前任者が刑事告発しなかった東芝を、後任が着任早々に方向転換してしまうことも高級官僚の世界ではありません。
・その辺から考えると、東芝が急に刑事告発されて逮捕者が出るということは「大変に考えにくい」となります。やはり東芝の歴代経営者は「悪いことなどするはずがない」としておかなければ都合が悪いことがあるようです。
・じゃあ新日本監査法人はどうでしょう? 過去にもIHIやオリンパスの監査を担当しており「粉飾の常連」ともいわれていますが、オリンパスは大半の責任が2009年3月期まで監査を担当したあずさ監査法人にあったはずです。
・普通は粉飾決算で(東芝はいまだに不適切決算だそうですが)大手監査法人が処分を受けることはまずありませんが、東芝は刑事告発できないとなると「身代わり」で何らかの処分となる可能性はあります。 それでも業務にほとんど何の影響もない軽い処分だとは思いますが「運が悪かった」ということになるのでしょうね。
・<追記>この記事を書いたあとの12月9日にも「東芝巡り刑事告発 協議へ」との報道が出ています。  ただ報道では証券取引等監視委員会が東京地検特捜部と協議する方針を固めたようであるとの内容で、課徴金処分を発表した直後の証券取引等監視委員会が「返す刀で」刑事告発を担当する特別調査課に移すことを意味し、極めて珍しいケースとになります。過去にはある程度時間がたってから特別調査課が「掘り起こした」ケースはありますが、直後というのは見たことがありません。
・報道は明らかに証券取引等監視委員会からの意識的なリークで、まだ「願望」の段階と思われますが、 先日の加藤暠逮捕(さらに再逮捕)や村上ファンドへの強制調査とともに、7月に着任したばかりの新・事務局長が特色を出していると感じます。
・本誌も最初から東芝に関しては刑事告発すべきと考えているのですが、まあ絶対にできないだろうと諦めていました。それが少し(まだ少しのはずですが)動き始めたようです。ちなみに証券取引等監視委員会の事務局長とは「絶対権限」のある現場の最高責任者で、退任が近い佐渡委員長よりはるかに「勢い」があるはずです。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-date-20151209.html

次に、同じ闇株新聞の12月22日付け「ここからの東芝  その2」を紹介しよう。
・12月9日付け「同題記事」の続きです。東芝は本日(12月21日)、2016年3月期の通期連結決算予想を発表しました。今まで決算予想を出していませんでした。 発表された数字は、売上が6兆2000億円(前年度は6兆6559億円)、営業損益が3400億円の赤字(同、1704億円の黒字)、最終純損益が5500億円の赤字(同、378億円の赤字)という、かなり驚愕すべきものでした。
・2016年3月期には構造改革費用を2600億円計上するようですが、一部で騒がれた米原子力子会社・ウエスティングハウスの減損は現段階で見送ったままです。ウエスティングハウスの帳簿価格は7200億円(うちのれんが3500億円)もあります。
・またパソコン・映像・家電のライフスタイル部門を中心に国内外で10600人を削減し、2016年3月末現在で33500人にするとも発表しました。つまり4人に1人が東芝を去ることになります。 また2016年3月期末のバランスシートは、有利子負債マイナス現預金が1兆4700億円(前期末は1兆1420億円)、株主資本が4300億円(同、1兆840億円)となります。つまりウエスティングハウスののれん3500億円を減損するだけで、株主資本がほとんどなくなってしまいます。
・東芝の不適切決算(これでも粉飾決算ではないそうなのでこう書くしかありません)が本年2月頃に発覚してからほぼ1年が経過したのですが、株主にとって最も重要な情報である「東芝は大丈夫なのか?」が、ここまで全く明らかにされていませんでした。
・今回ようやく少しだけ明らかになったのですが、残念ながら全く大丈夫ではなかったようです。 ここまで、やれコンプライアンスだとか、やれ第三者委員会だとか、やれ旧経営陣への損害賠償請求など(総額でたった3億円)、責任逃れ(押しつけ合い)を1年近く延々と続け、東芝再生を本気に考える貴重な時間を無駄にしてしまっていたことになります。
・東芝は、実質的にはすでに株主資本が紙のように薄くなり、これから稼ぐべき事業の大半を人員整理と事業売却で縮小してしまうことになり、いったいどのように生き残るのかが全くわかりません。このままでは本当に東芝が消滅してしまうことになります。
・まあその辺は過去の経団連会長(2名)や日本郵政・現社長を輩出している名門企業なので、最後は何とかしてくれると考えているのかもしれません。 さてそんな名門企業・東芝なので、最初から刑事告発される(首謀者が逮捕・拘留・起訴される)ことはないと思われていました。ところが73億円余の課徴金納付が確定しても、水面下では刑事告発に向けた動きがあるようです。
・少し前になりますが12月15日付け日本経済新聞朝刊の「迫真」に、証券取引等監視委員会の幹部が「東芝は刑事化すべき事案だ。課徴金と刑事告発で車の両輪となる」とつぶやいたと書かれていました。
・証券取引等監視委員会の幹部がこんな重要な内部情報を新聞記者に漏らすはずがないため、これは意識的なリークです。まだ東京地検特捜部も含めて方針が固まっていないからと感じます。
・仮に刑事告発するとして、最も高いハードルは粉飾決算だったと断定しなければならないところです。なぜならここまで(たぶん最初から)粉飾決算ではなかったとの前提で1年近くが過ぎているため、第三者委員会の報告書や修正した過去の有価証券報告書や決算短信などIR資料を、新たに粉飾決算だったとして読み替えなければならないからです。
・ただ課徴金の対象ともなった「重要な事実に虚偽の記載がある」発行開示資料を使って合計3200億円の社債を発行したところは、金融商品取引法158条の「偽計」に該当するような気がします。
・だとすると課徴金を支払ったにもかかわらず、同じ容疑で刑事告発されることになり、やっぱり無理があるような気もします。 まあ本誌が悩むところでもなさそうなので、この辺にします。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1612.html

12月31日付け日経新聞によれば、「革新機構、東芝を支援 シャープと家電統合検討」とあり、いよいよ東芝の実質的な解体が動き出しているようです。刑事告発については、闇株新聞によれば、仮に告発したとしても、社債発行での「偽計」という粉飾という本質的犯罪行為からみれば、脇道的な微罪に終わりそうです。
明日は、東芝不正会計問題での新日本監査法人処分を取上げるつもりである。
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