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日韓慰安婦問題合意(?) [外交]

今日は日韓慰安婦問題合意(?)を取上げたい。

先ずは、合意直後の昨年12月26日付け東洋経済オンライン「慰安婦問題、「最終的解決」に残る多くの疑問 「不可逆的」という約束は守られるのか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・日韓間で最大の懸案の一つである旧日本軍の慰安婦問題について、日韓政府による協議が「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。12月28日、ソウルで開かれた日韓外相会談で岸田文雄外相は、安倍晋三首相が「心からお詫びと反省の気持ち」を表明すること、元慰安婦支援のために日本側が10億円を拠出すること、その基金によって韓国政府が財団を設立することを発表した。
・また、岸田外相は「日韓両政府は、慰安婦問題について不可逆的に解決することを確認するとともに、互いに非難することを控えることで一致した」と述べた。韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相も、「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と述べた。これにより、四半世紀も続いた日韓の懸案解決に一区切りをつけることになる。
▽ぎりぎりの対応を続けた日本政府
・日本政府はこれまで、1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」という立場を崩していない。しかし、今回、岸田外相は「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と、あえて「責任」という言葉を使って示した。
・同時に、「安倍総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として、あまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からお詫びと反省の気持ちを表明する」と、岸田外相が合意後に述べており、踏み込んだ発言を行っている。
・韓国メディアの報道によると、慰安婦問題に対する日本政府の責任を明記すること、安倍首相が内閣総理大臣の資格で謝罪・反省を表明すること、また日本政府の予算を投入して支援に充てることを韓国政府が要求し、出してきた場合は評価するという方針だったという。
・また、日本側がこれまで強く要求してきたソウルの日本大使館前にある慰安婦像の撤去について、尹外相は「可能な対応策を関連団体と協議し、適切な解決されるよう努力する」と述べるに留まっている。
・日韓両政府は今回の合意で、「国連および国際社会で互いに非難、批判することを控える」と述べた。今回の合意により、本当に最終解決となるのだろうか。
▽予想される元慰安婦や支援団体の反発
・現在、韓国で生活する元慰安婦の女性は46人。韓国メディアによると、今回の合意内容を聞いた元慰安婦からは「反対」「政府の意志を考えて受け入れる」など、相反する反応が出ているという。 だが、これまでの経緯を考えると、「韓国最大の圧力団体」とまで言われる韓国挺身隊問題対策協議会など市民団体を中心に反発が予想される。日本政府の法的責任をあくまでも追及していたことから、今回の内容では当然、反発が予想される。
・さらに、日本大使館前の慰安婦像を撤去・移転するとなった場合、彼らを中心に韓国社会の反発が高まるのは当然で、尹外相がいう「努力」が、実際にどの程度の努力であり、それが日本側との合意内容に沿うものになるかはまったく想像が付かない。
・「韓国政府が実際に元慰安婦や支援団体とどこまで協議してきたか、意見の調整をしてきたかは疑問」(韓国全国紙記者)。仮に、韓国政府が彼らとこれまで十分な意見調整がなされていれば、「ゴールポストが動く」といった声は、日本からは出てこなかったはずだ。
・また「最終的かつ不可逆的な解決を確認」したとしても、韓国側がその確認を守るかどうかは疑わしい。現在の朴槿恵政権の任期も半分を過ぎた。政権が変われば政策もがらりと変わるのが韓国の政治だ。政権が変われば「当時の合意はおかしかった」と、外交の一貫性が欠如した発言が出て問題が再燃する可能性もある。
・韓国は法を守ることよりも、情を優先する国民性。しかも相手が日本ということになれば、合意が継続して守られることなどありえない。したがって、今回「ない」とされた問題の「蒸し返し」も十分考えられる。
▽韓国以外の元慰安婦や政府から新たな要求も
・合意に関する詳細な内容はこれから出てくるであろうが、日本政府の対応にも不安が残る。仮に韓国とは今回の合意で決着がついたとしても、中国や台湾、フィリピンなど、他国の元慰安婦やその支援団体、あるいは政府の動きが気になる。
・すでに台湾外交部は「(日韓の)動向を把握し、台湾の元慰安婦も同様に扱うべきだとする要求を日本政府に伝える」よう、日本大使館に当たる台北中日経済文化代表処に命じたという。台湾には4人の元慰安婦が存命だ。
・さらに、中国が歴史問題と絡めて新たな要求をしてくる可能性がある。また、北朝鮮からも国交正常化交渉や日本人拉致問題解決のための交渉などの場でさらなる強い要求をしてくることもありえる。これら韓国以外の国に対しても、日本側がどう対応するか。日韓関係を悪化させた懸案は、これからも、範囲を拡大して続きそうだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/98605

次に、他国の元慰安婦について触れた記事として、12月29日付け朝日新聞「慰安婦問題 これまでの経緯」のうち、「慰安所、アジア各地に 日本政府調査「痛ましい生活」」のポイントを紹介しよう。
・「アジア女性基金」のサイト「デジタル記念館 慰安婦問題とアジア女性基金」は、慰安婦について「かつての戦争の時代に、一定期間日本軍の慰安所等に集められ、将兵に性的な奉仕を強いられた女性たち」と定義。基金の元専務理事、和田春樹・東大名誉教授は著書で、この定義による慰安婦には、正規の慰安所だけでなく、日本軍の部隊が現地の女性を拉致し、部隊近くの建物に一定期間監禁して性的奉仕を強いた「準慰安所」の女性たちが含まれるとした。
・基金から償い金を受け取ったフィリピンの被害者らがこうしたケースに当てはまると説明。93年までの日本政府の調査などによれば、慰安所は日本、中国、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマー、ベトナムなど、アジア各地に作られた。軍人による強姦、その結果としての反日感情激化、性病の防止などが目的だった。
・軍直営や、軍が関与して民間業者が経営する慰安所があった。日本、朝鮮半島、中国、台湾、フィリピン、インドネシアなどの女性らが慰安婦に。だが、どれぐらいの慰安婦がいたのか、総数はわかっていない。基金の事業の対象になった人は韓国で61人、台湾13人、フィリピン211人、オランダ79人。
・政府の調査結果によると、業者が女性を募集することが多く、本人の意向に反して集めるケースが多かったほか、「官憲等が直接これに加担する等のケースもみられた」。戦地の慰安所では、「常時軍の管理下において軍と共に行動させられており、自由もない、痛ましい生活を強いられた」と説明

第三に、元外交官の天木直人氏が、12月31日付けの同氏のブログで発表した「安倍首相の命取りになるかもしれない日韓合意」を紹介しよう。
・安倍首相はさぞかし動揺しているに違いない。達成感と満足感を抱いて年末年始を迎えるはずが、懸念と不安を抱いて年を越さなければならなくなったからだ。
・米国主導でつくりあげられた電撃的な日韓合意は、今年の安倍外交の掉尾を飾るにふさわしいはずだった。 ところがここまで強い反発を招くとは思わなかったに違いない。
・そのなかでも、少女像の撤去問題に対する反発は深刻である。少女像撤去こそが、今度の日韓合意で安倍首相が成し遂げたかった最大の目的であったはずだ。
・それがあいまいな決着で終わり、しかも日韓合意の最大の対立点として残った。 そしてこの少女像撤去問題は、安倍首相にとって致命的になる可能性が出て来た。
・私がそう思うのは、きょう12月31日の朝日新聞に掲載されていた韓国の歴史学教授の次の言葉を読んだからだ。
・すなわち、チョンヒョンベク成均館大教授はつぎのように書いている。 「・・・(韓国の女性団体は)『民族の恥を表に出すな』という韓国男性の圧力のなか、戦争による女性の人権侵害問題を国際社会に告発した。これは韓国社会が民主化したからこそ可能だった。今回の慰安婦問題合意が高度の政治判断であることは事実だ。『年内妥結』を公言した朴槿恵大統領の功績を実現するためでもあった。米国の要求を受け入れた面もある。慰安婦問題という人権問題を、韓日両政府がそのように政治利用したことを遺憾に思う」
・私は、今度の政治決着の最大の矛盾と欺瞞を表す言葉は、この言葉に尽きていると思う。 今度の合意は、米国との同盟関係を競い合う日本と韓国の両政府が、米国政府の意向を汲んで作り上げたものだ。  日米韓の三カ国が日米同盟維持を最優先して作り上げたものだ。
・そうであるなら、今度の政治決着は成功すること間違いないはずだった。 しかし、皮肉にもその政治決着が日米韓同盟をゆさぶることになるかもしれない。 日米韓の指導者は、政治決着を急ぐあまり、女性の人権重視という、彼らが最も重視しなければいけない問題を見落としていた。
・これから本格化する反対運動の過程で、少女像が女性の人権問題、特に戦争下における女性の犠牲の象徴として国際社会に広く認識され、世界中の女性が反発るようになれば、誰もそれを撤去せよとはいえなくなる。
・このことは、とくに安倍首相にとっては深刻だ。 女性の地位向上を政治目的の為に利用しようとしている安倍首相が少女像撤去を求めるなら、それは天に唾することである。安倍首相には少女像を撤去させることはできない。
・そして、そのことは、安倍首相こそが末代まで続く負の遺産を日本国民に残した首相として、歴史に名を残すことになるからだ。 新年早々から安倍首相はみずから画策した日韓合意の後始末に追われることになる(了)
http://new-party-9.net/archives/3177

第四に、1月7日付け日刊ゲンダイ「「大筋合意」のはずが対立激化 日韓慰安婦問題は破談必至」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・雲行きが怪しくなってきた。昨年末から年初にかけて報道一色になった日韓の慰安婦問題「大筋合意」。中韓に敵意ムキ出しの安倍首相がついに方針転換か--と大騒ぎになったが、その後の報道はサッパリ。それどころか、時間が経つにつれて日韓双方の主張の違いが鮮明になるばかりで、合意“破談”の現実味も増してきた。
・日韓が「最終的かつ不可逆的な解決策」として大筋合意したとされる内容は、日本政府が旧日本軍の関与を認めるとともに、安倍首相が「心からのお詫びと反省の気持ち」を表明。日本政府が10億円程度を一括拠出して元慰安婦を資する基金をつくる――など。
・日本の大メディアは「これで一件落着。メデタシ、メデタシ」みたいに報じたが、韓国メディアの反応は全く違う。昨年12月28日付の中央日報は〈両国間の最大懸案であり難題である慰安婦問題を解決できる友好的な雰囲気が醸成されたのは事実だが、結果を楽観視することはできない〉〈安倍政権の誠意を疑わせる日本メディアの一方的な報道が相次いでいる〉〈慰安婦問題の核心はお金の問題というような報道〉とカンカンだった。
・一部メディアでは、今月中にも日韓の局長クラスによる協議が始まると報じられている。だが、今も日本政府が1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場を取っていることに対し、韓国側は協定に関係なく、「慰安婦動員が国際法違反の人権侵害だと認めるべき」と主張しているし、日本政府が提案している「基金」についても、韓国側は「謝罪金」や「贖罪金」との表現を使うよう求めているという。
・その上、慰安婦少女像の撤去問題だ。中央日報によると、そもそも慰安婦像撤去の話自体が、日本メディアの〈トンデモ報道〉と断じていて、韓国外務省も「政府がどうこうできる事案ではない」との立場だ。それなのに菅官房長官は5日、韓国側の姿勢について、「合意に従って適切に解決されるよう努力されると認識している」なんて突っぱねていた。事務レベルの協議前から、こんなにこじれている状況じゃあ、「不可逆的解決」なんておよそムリだろう。
▽大筋合意は野田政権の「パクリ」
・「そもそも安倍政権は慰安婦問題の大筋合意について『大手柄』みたいにアピールしていますが、下地は3年余り前に当時の野田政権と李政権との間でできていました。合意直前に野田首相が衆院を突然、解散したためにオジャンになりましたが、内容は今回とほぼ同じ。つまり、安倍政権の大筋合意は野田政権の焼き直しに過ぎません」(外交ジャーナリスト)
・つまり、安倍政権は人気取りを狙って、過去の合意内容をパクっただけで、中身について朴槿恵政権と詳細を詰めたわけじゃない。どうりで、早くも合意内容を反故にしかねない「慰安婦白書」がフツーに発刊される事態になるワケだ。
・野田政権で、慰安婦問題の日韓協議を担った斎藤勁・元官房副長官はこう言う。 「(日韓で)合意に至れば、それに越したことはない。しかし、日本側は合意方針を示したのだから、あとは韓国次第という(日本政府の)姿勢はどうなのか。(日韓が)互いに解決するという姿勢が重要で、気持ちを尽くして協議することが最も大事です。しかし、今の(慰安婦問題の)報道を見ている限り、(合意には)長い時間がかかると思います」
・やはり、ふんぞり返ったままの安倍政権に解決できる問題じゃない。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/172838/1 

第五に、1月7日付けZAKZAK「自民部会、韓国側に不信感「慰安婦像の撤去が問題解決の大前提だ」を紹介しよう。
・慰安婦問題をめぐる日韓合意について“前言撤回”が目立つ韓国に対し、自民党内に不信感が高まっている。6日の外交部会などの合同会議では、韓国がソウルの日本大使館前の慰安婦像を撤去しない限り、元慰安婦支援のための10億円拠出を取りやめるべきだといった意見が相次いだ。
・まず、稲田朋美政調会長が冒頭、「(慰安婦)像の撤去がこの問題の解決の大前提だ」と強い口調であいさつした。 高鳥修一内閣府副大臣は「合意は両国が履行することが当然。像が撤去されない場合は10億円を出すべきではないと、党として決議してほしい」と要求した。
・西田昌司参院国対委員長代理も「『民間が設置したものだから撤去できない』ということでは話にならない。韓国に誠意ある対応を示してもらわないと、国民感情としては納得できない」と像の撤去を強く求めた。
・さらに、他の出席者から、韓国政府が準備を進めている「日本軍慰安婦白書」の発刊中止が10億円拠出の条件だという意見も出た。片山さつき元参院外交防衛委員長は、国連の場で韓国に「慰安婦問題を蒸し返さない」と明言させるよう求めた。

どうも「「最終的かつ不可逆的解決」と銘打った割には、その後、どんどんボロが出てくるようだ。合意といっても、文書ではなく、しかも口頭で済ませた相手が、韓国というのでは無理からぬところかも知れない。米国にせかされて、日本での報道が途絶える正月前を狙って合意発表したのかも知れないが、その後には韓国側のみならず、日本側でも異論や注文が続出している。さらに、韓国外務省は、慰安婦問題関連資料のユネスコ記憶遺産登録申請を止めるとの日本側の「認識」を否定。
オバマ大統領に褒め称えられた合意を、今になって撤回する訳にもいかず、両国政府の「お手並み」やいかに。
さらに、韓国以外の国、特に朝日記事では慰安婦が韓国より多いフィリピンやオランダの今後の出方も要注意だろう。
今日の日経新聞の慰安婦問題特集も、肝心な点はスルーしていた。安部政権にとって不都合な事実が続出していることを、遠慮して余り取上げない日本の一般マスコミの姿勢には、いつもながら失望させられる。民主主義の危機をマスコミが自ら招いているのは、嘆かわしい限りだ。
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