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甘利前大臣事件(その5) その後の展開 [国内政治]

昨日の下村前文科相が係る問題に続いて、今日は 甘利前大臣事件(その5) その後の展開 を取上げよう。なお、甘利前大臣事件を前回取上げたのは2月9日。

先ずは、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が、2月16日付けの同氏のブログに掲載した「甘利氏疑惑調査の「元特捜弁護士」は、本当に存在するのか」を紹介しよう。
・甘利明氏は、1月30日の夕刻に開いた記者会見において、「元東京地検特捜部の検事である弁護士」が秘書や経理担当者などの関係者から直接聴取し、関連資料等を確認された結果、とりまとめられた報告書があるとして、それにもとづいて、URへの「口利き」や現金授受の疑惑についての説明を行った。そして、その「特捜OBの第三者の弁護士」が秘書からの聴取等による調査した結果として、「S社総務担当者からURとの間の補償に関する陳情があった」「URに行って話合いの進捗状況について確認した」「URに行って現状について教えてもらった」「秘書が金額交渉等に介入したことはない」などと説明した。
・甘利氏は、「URへの口利き」も「金額交渉への介入」も否定した上で、秘書が、S社側から政治献金として現金を受領しながら一部を使い込んでしまったり、多数回にわたって現金を受領したり、飲食の接待を受けていたことなどについて、「秘書が疑惑を招いていることについての監督責任をとって辞任する」ことを明らかにした。
・「私の監督下にある事務所が招いた国民の政治不信を秘書のせいと責任転嫁するようなことはできません。それは私の政治家としての美学、生き様に反します。」などと涙ながらに述べた甘利氏は、ネットを中心に、「全く潔い」「現代の『武士』」などと賞賛され、重要閣僚の辞任にもかかわらず、安倍内閣の支持率を低下させるどころか、逆に、支持率が上昇するという結果をもたらした。
・甘利氏の記者会見での説明において最大の拠り所とされたのが、「元特捜検事の弁護士による調査」だった。しかし、その弁護士が一体どこの誰なのであるのか、甘利氏は、一切明らかにしなかった。
・私は、この時点から、果たして、甘利氏が説明しているとおり、「元特捜検事の弁護士による調査」が行われているのか、そもそもそのような弁護士が果たして存在しているのか、多大な疑問を持ってきた。
・その後、20日近く経ったが、「元特捜検事の弁護士による調査」に関する情報は、何一つ明らかになっていない。一方で、昨日、民主党の疑惑追及チームが、甘利事務所に「口利き」を依頼したS社の一色氏が甘利事務所側やURとのやり取りを録音した音声記録を公表し、甘利氏の秘書がURからS社へ支払う補償金の金額交渉に深く関わっていたことがわかり、会見での甘利氏の説明が事実に反していたことが明らかになった。
・「元特捜検事の弁護士」による調査が本当に行われているのかについて疑問に思った第一の理由は、甘利氏が、「私は調査を担当した弁護士とは一切接触をしておりません。」と述べたことである。「公正な調査を担保するため」だということだが、第三者としての調査を受任する際に、依頼者と全く会わないで調査をするということは、我々の常識からは考えられない。企業不祥事等でも、「第三者調査」を受任する際には、依頼者本人と会って、調査の趣旨・目的、調査の範囲、調査期間等を確認するのが通常のやり方である。
・もし、依頼者である甘利氏本人が直接会っていないとすると、そのような調査依頼に関する協議・打合せは誰との間で行われたのであろうか。甘利事務所は、事務所長の公設第一秘書、現政策秘書、政務秘書官等の事務所の主要メンバーが、すべて今回の問題に関係し、少なくとも、そのうち二人は犯罪的な行為を行って既に退職している。「自らは違法なこと、やましいことは全くしておらず、秘書の監督責任しかない。」と言っておられる甘利氏以外に、第三者調査の依頼に関して話ができる人間はいないはずだ。
・甘利氏が、「第三者としての公正な調査」を依頼したいのであれば、「真実が明らかになるように、私に遠慮することなく厳正に調べてください」と言って直接頼めば済むことであり、接触しない理由は全く考えられない。
・しかも、その弁護士が甘利氏と接触しておらず、甘利氏本人のヒアリングは行われていないということであれば、調査のやり方としても考え難いものである。今回の疑惑の中心は、大臣室及び大和事務所における現金授受の問題など「甘利氏自身の問題」なのだから、調査を行うのであれば甘利氏本人からの聴取が不可欠なはずだ。ところが、甘利氏は、その弁護士と全く接触していないというのだ。少なくとも、特捜部でまともな仕事をした経験のある検事であれば、あり得ない調査方法だ。
・調査を担当している「特捜OBの弁護士」というのが実際には存在しないので、甘利氏が、そのような人物と接触しようにも接触できるわけがないということではないのか。
・わざわざ「元特捜検事の弁護士」に依頼したということは、できる限り真実を明らかにするために「捜査経験を持つプロ」に頼んだということのはずだが、甘利氏の説明どおりだとすると、調査のやり方も姿勢も、到底「プロ」とは思えない。
・甘利氏自身も、会見で、「このたびの報道によれば異例にも相手方が膨大な録音や写真を持っているとのこと」と述べているように、今回の週刊文春の記事では、一色氏が、甘利氏の秘書やUR側とのやり取りについて50時間以上にわたる録音記録を残しているとはっきり書かれているのであるから、第三者の弁護士が調査を行うのであれば、調査結果が録音記録によって覆されることがないよう、秘書のヒアリングを行う際にも、真実を話すように強く説得するはずだ。
・しかし、甘利氏が明らかにした調査結果の中には、文春の記事に書かれていないことで、甘利氏にとって不利なことは何一つ含まれていない。真相を明らかにしようとする姿勢は全くうかがえない。
・今回、一色氏の録音記録が公表されて、秘書がURのS社への補償金の金額交渉に深く関わっていたことが明らかになり、会見での甘利氏の説明が事実に反していたことが明らかになったのも当然の結果と言えよう。
・「元特捜検事の弁護士による調査」は、甘利氏側においても真相解明のための努力が行われているかのように世の中に認識させることに最大の効果を発揮した。甘利氏自身が「涙ながらのパフォーマンス」で「潔さ」を演出したことと相まって、「現職閣僚の口利き疑惑」から国民の関心をそらすことにつながった。
・昨年の東芝の会計不祥事において、「第三者委員会スキーム」があたかも中立的かつ客観的な調査が行われているかのように装い、ステークホルダーを欺くために悪用され、不祥事対応において重要な機能を果たすべき「第三者委員会」に対する一般的信頼すら損ないかねない事態を招いたばかりだ(⇒【偽りの「第三者委員会」で原発事業の問題を隠蔽した弁護士と東芝執行部】)。
・それと同様に、記者会見で甘利氏が強調した「元特捜検事による調査」が、「特捜検事」という言葉で、国民の目をごまかすために使われたものだったとすれば、多くの国民がこれまで「正義」と重ね合わせてきた「特捜」ブランドを悪用するものであり、「特捜関係者」にとっても許し難いもののはずだ。
・「元特捜検事の弁護士」というのが、本当に実在しているのか、実在しているとすれば、誰なのか、これまでどのような調査が行われてきたのか、甘利氏は、早急に明らかにすべきである。
 https://nobuogohara.wordpress.com/2016/02/16/%e7%94%98%e5%88%a9%e6%b0%8f%e7%96%91%e6%83%91%e8%aa%bf%e6%9f%bb%e3%81%ae%e3%80%8c%e5%85%83%e7%89%b9%e6%8d%9c%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e3%80%8d%e3%81%af%e3%80%81%e6%9c%ac%e5%bd%93%e3%81%ab%e5%ad%98/

次に、 ジャーナリストの須田慎一郎氏が2月18日付けZAKZAKに寄稿した「ニュースディープスロート 須田慎一郎氏:甘利氏が処罰されればS社の「思惑通り」だが…果たして検察は動くのか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・金銭授受疑惑に揺れる甘利明経済再生担当相は1月28日、釈明会見を行い、調査結果を公表するとともに辞任を表明した。
・甘利大臣は、大臣室などでの2回の現金授受について認めたうえ、「政治資金として適切に処理するよう、秘書に指示した」と強調。公設秘書が現金500万円を受け取り、繰り返し接待を受けていた問題では「口利きの指示はない。事実かどうかまったくわからない」と自身の関与を全面的に否定した。ただし、「国会審議に影響が出ることは避けたい」として、閣僚を辞任する意向を明らかにした。
・疑惑に火をつけた『週刊文春』に対し、当初は「ハメられた」と主張していたが、国民の目にはそうは映らなかったということか。今後も野党は「首相の任命責任」を厳しく追及していくだろう。
・この問題で、次に焦点となるのが、この問題が刑事事件化されるかどうかだ。ここでもう一度、文春報道の概要を振り返ってみよう。 誌上で甘利氏とその秘書らを告発したのは、千葉県内の建設会社S社の総務担当者・一色武氏だ。
・一色氏は、S社が独立行政法人都市再生機構(UR)との間で抱えたトラブルをめぐり、補償が受けられるよう甘利事務所に口利きを依頼。過去3年にわたり、甘利大臣や地元の大和事務所所長・清島健一氏(公設第一秘書)や鈴木陵允政策秘書に資金提供や接待を続け、その総額は証拠が残るものだけで1200万円に上るという。
・だが、S社はその過程で、一度はURから約2億2000万円の補償金を手にした。この成果を足場に、S社はURと別の巨額の補償交渉でも甘利氏の口利きに頼るが、こちらは停滞してしまう。そこで告発となったわけだ。
▽検察審査会の決議で起訴せざる得なくなる
・つまり、S社が首尾よく巨額の補償金を手にできたならば、甘利事務所に提供された資金や接待は“経費”として消化され、告発はなされなかったのではないか、と想像できるのだ。 これはひとつの“ビジネス”であり、結果に満足できないからと告発したのなら、「罠」であると考えられても仕方なかろう。
・その一方で、甘利氏と秘書らの行為が、政治資金規正法とあっせん利得処罰法違反の構成要件を満たしているのは明らかだ。誰が見てもアウトである。しかし、甘利氏が政治家としてやってはならない行為を働いたのだとしても、S社側のやり方もあざとく映る。
・ここで一方的に甘利氏が処罰されれば、S社側の「思惑通り」の構図になってしまう。検察としては、大いに悩むところだろう。 とはいえ、仮に疑惑の中心が甘利氏でなく、安倍首相の政敵であったならば、検察は何のためらいもなく事件化に突き進んだであろう。いわゆる「国策捜査」だ。
・それに、検察が事件化を見送ったとしても、検察審査会ではまず間違いなく「起訴相当」や「不起訴不当」の決議が出るはずだ。そうなればいずれにせよ、検察としては起訴に踏み切らざるを得なくなるだろう。 事件化の行方がどのようになるにせよ、甘利氏は政治家として高い代償を払わされそうだ。
▽金銭授受疑惑で甘利大臣が辞任! 政権への影響懸念
・甘利明経済再生担当大臣は1月28日に記者会見し、金銭授受があったことを認め、閣僚を辞任する意向を明らかにした。ただ、疑惑の大部分については「秘書がやった」とし、「自分自身は違法な行為は一切していない」と強調した。
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20160217/zsp1602171130001-n1.htm

甘利氏が強調した「元特捜検事による調査」は、郷原氏の指摘通り、余りにも不自然さが目立つ。しかも、50時間以上の及ぶ音声記録と矛盾しているとなれば、甘利氏として改めて説明する責任がある。“睡眠障害”で国会を欠席しているたしいが、野党には参考人招致ではなく、証人喚問で厳しく追及する責任がある。
郷原氏が証拠隠滅の恐れがあるから、早期に捜査すべきとしているにもかかわらず、検察の動きは依然として鈍いようだ。
須田氏は『一方的に甘利氏が処罰されれば、S社側の「思惑通り」の構図になってしまう』としているが、S社側の一色武氏なども贈賄の疑いを問われるので、「思惑通り」の構図にはならないのではなかろうか。
いずれにしても、国会、検察のこれからの動きを注目したい。
タグ:甘利前大臣事件 (その5) その後の展開 郷原信郎 甘利氏疑惑調査の「元特捜弁護士」は、本当に存在するのか 元東京地検特捜部の検事である弁護士 報告書がある ネットを中心に、「全く潔い」「現代の『武士』」などと賞賛 説明において最大の拠り所とされたのが、「元特捜検事の弁護士による調査」 その弁護士が一体どこの誰なのであるのか、甘利氏は、一切明らかにしなかった 民主党の疑惑追及チーム 一色氏が甘利事務所側やURとのやり取りを録音した音声記録 甘利氏の秘書がURからS社へ支払う補償金の金額交渉に深く関わっていたことがわかり、会見での甘利氏の説明が事実に反していたことが明らかになった 弁護士とは一切接触をしておりません 第三者としての調査を受任する際に、依頼者と全く会わないで調査をするということは、我々の常識からは考えられない 50時間以上にわたる録音記録 甘利氏側においても真相解明のための努力が行われているかのように世の中に認識させることに最大の効果を発揮 、「特捜検事」という言葉で、国民の目をごまかすために使われたものだったとすれば 多くの国民がこれまで「正義」と重ね合わせてきた「特捜」ブランドを悪用するものであり、「特捜関係者」にとっても許し難いもののはずだ 須田慎一郎 ZAKZAK ニュースディープスロート 須田慎一郎氏:甘利氏が処罰されればS社の「思惑通り」だが…果たして検察は動くのか 週刊文春 当初は「ハメられた」と主張 資金提供や接待を続け、その総額は証拠が残るものだけで1200万円 URから約2億2000万円の補償金 別の巨額の補償交渉でも甘利氏の口利きに頼るが、こちらは停滞 告発 検察審査会の決議で起訴せざる得なくなる
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