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シャープ再建問題(その4)鴻海か 革新機構か 迫る最終決定 [企業経営]

シャープ再建問題については、2月7日に取上げたが、最終決定を明日に控えた今日は、(その4)鴻海か 革新機構か 迫る最終決定 である。

先ずは、2月20日付け日経ビジネスオンライン「揺れるシャープ再建、「鴻海案」支持の欺瞞 決断へ秒読み 鴻海派と機構派が対立」を取上げよう(▽は小見出し)。
・シャープ再建の行方が揺れている。支援するのは鴻海(ホンハイ)精密工業か、産業革新機構か。シャープ経営陣の「決断の時」が刻一刻と迫る。20日の取締役懇談会で議論したうえで、24日の取締役で決議する、という流れが濃厚だ。
・2月4日以降、シャープ経営陣が鴻海による支援に心を固めたかのような報道で一色になったが、舞台裏を探るとそう単純な構図ではない。鴻海派と機構派の対立が生じており、足元では「鴻海案を支持する取締役には欺瞞がある」との指摘も出てきた。
・鴻海は1月30日、支援額を積み増し7000億円規模の再建案を提示した。一部のシャープ取締役、そして債権を抱える主要取引銀行がそれに乗り、約3000億円を出資するという機構の提案が揺らいだのは事実だ。 一部の取締役の間に「条件の良い鴻海案を蹴って機構案に乗ることは、シャープ株主に対する『善管注意義務違反』に問われかねない」という意思が働いたとされている。
・しかし、真相はそう単純ではない。「高橋興三社長以下、シャープのプロパー系の取締役は、依然として機構案を支持し続けている。鴻海案を支持しているのは、主に金融機関系の取締役だ」(シャープ関係者)。
▽機構の支援効果は「1兆円」規模
・結果、13人いるシャープ取締役会は、鴻海派と機構派に分断され、態度を鮮明にしない者もおり、「どっちに転んでもおかしくはない緊迫した状態にある」(同)という。 鴻海か機構、どちらに乗った方が、シャープの未来は安泰なのか――。シャープ経営陣によるスポンサー選びの視点は明確。しかし、その答えを、表面上の出資額の多寡では測れないことが「分断」の理由だ。
・一部の取締役が鴻海案に傾いたポイントは、その出資額の多さ。鴻海は7000億円規模を拠出、一方、機構案は、シャープ本体への出資額は3000億円。この「7000億円対3000億円」という表面上の数字だけが独り歩きした。確かに「シャープ本体への出資」という観点ではそうだが、「支援総額」という観点では逆転する。
・あまりにシャープ取締役の理解度が低いことに業を煮やした機構が、2月2日に改めてシャープへ内々に提示した「産業革新機構提案のポイント」という文章がある。
・これによると、シャープ本体が成長投資のために使える出資額が「3000億円」。加えて、鴻海との液晶子会社である「堺ディスプレイプロダクト(SDP)」の売却で「1500億円」がシャープに入り、計4500億円を成長投資に使えることになる。そして、さらに続きがある。
・機構案では、シャープが窮地に陥った元凶とも言える液晶事業を、シャープ本体から分離、将来は機構傘下のジャパンディスプレイ(JDI)と統合する予定だ。統合までの数年間、この旧シャープ液晶事業を立て直すために投資をする必要がある。そのための融資枠を「2000億円」用意するとある。これを先の4500億円に足せば、計6500億円となる。この時点で、支援効果は鴻海案の7000億円に匹敵する。
・液晶事業の分離については、髙橋社長も2月4日の記者会見で「液晶と家電などそれ以外はまったく違うビジネス」「(今後は)2つの固まりに分かれての運営になっていく」などと語り、液晶を分離していきたい意向を強調している。鴻海案に乗って再建するとしても、シャープの液晶事業は鴻海傘下の液晶子会社、イノラックスと統合すると見られ、いずれにせよ、液晶事業はシャープから分離される命運にある。
・機構案の特徴は、これらに加え、主力取引銀行を中心に「3500億円」の金融支援を求めていることにある。昨年5月にシャープが発表した資本増強策では、主力取引銀行のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に各1000億円、計2000億円のA種優先株を割り当てている。機構は、これらを無償で放棄することに加え、2行が抱えるシャープへの債権を「デット・エクイティ・スワップ(DES)」で削減するなどして、計最大「3500億円」の支援を金融機関に求めている。
・機構の文章によると、先の6500億円に金融機関の支援を考慮すると、「(機構案の)財務支援の効果は1兆円に上り、メディアで報道されるホンハイの6000億円を大きく上回ります」とある。最終的に鴻海は支援額を積み増して7000億円規模となったため、数字に食い違いがあるが、それでも、支援総額の規模という観点では機構が上回ることに違いはない。
▽鴻海案賛成が「善管注意義務違反」の可能性も
・確かに、鴻海がいくら出すのか、機構がいくら出すのか、という議論に拘泥しては本質を見誤る。「7000億円対3000億円」という比較は「木を見て森を見ず」であり、どちらの条件が良いかという答えを出す作業は、極めて難しい。そのことに加え、鴻海による支援案が金融機関の支援を求めていないことが、事態をさらに複雑にしている。
・前述の通り、機構案は金融機関に「痛み」を求める内容。翻って鴻海案では、優先株を簿価で買い取るとしており、金融機関にとっては都合が良い。「だから鴻海案に賛成しているのが、メーンバンクであるみずほ銀行出身の取締役と、その仲間」とシャープ関係者は言う。
・仲間には、東京三菱UFJ銀行出身の取締役と、みずほ・東京三菱UFJの2行も出資する投資ファンド、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)から来ている2人の社外取締役、すなわち、JISの住田昌弘会長と斉藤進一社長も含まれると見られる。
・JISは、昨年、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が計2000億円のA種優先株を引き受けた際、それよりも条件の良いB種優先株を250億円引き受けている。この配当は7~8%と破格。機構案では、これを普通株へ転換するよう求めており、「旨味」が消えるという点ではJISも痛みを伴う。
・ただし、これらはあくまで「投資家」としての論理。シャープの株主や、シャープ経営陣としては、負債が圧縮されるという点で機構案の方が良い、という論理もある。
・企業法務に詳しいある弁護士は、こう指摘する。「仮に、銀行やファンドの意向を反映して、それらと関係するシャープ取締役が鴻海案に票を投じるのであれば、そのことが逆に『善管注意義務違反』に問われる可能性もある」。
・機構の関係者もこの点に憤りを隠さない。「シャープの既存株主からすれば、銀行やファンドが自分たちに都合の良い方を選んで逃げ切るようにも映る。金融機関は、ほかの株主のためにもシャープのためにも、『貸主責任』を取るべきで、シャープのために鴻海案だ、と主張するのは欺瞞にほかならない」。
▽「特別利害関係人」という新たな火種
・この利害関係をめぐっては、新たな火種も浮上している。会社法が定める「特別利害関係人」だ。 会社法では、取締役がこうした自らに都合の良い判断を下さないよう、「特別利害関係人は、取締役会の議決に加わることができない」と規定している。銀行出身の2人のシャープ取締役は、銀行を辞めているため、利害関係を立証することが難しい。しかし、JISから来ている2人の社外取締役については、JISの現職の会長と社長を務めているため、鴻海案か機構案かを決める議決では特別利害関係人に当たる可能性がある。
・実際、シャープの顧問弁護士事務所が、「JISの社外取締役は特別利害関係人にあたる可能性がある」としてシャープに意見書を出しており、2月4日の取締役会では、「JIS入り」の13人での議決と、「JISなし」の11人での議決、2通りをとっている。
・この時の議案は、「鴻海案と機構案の2つを検討していく」という内容で、2通りの結果は変わらないため問題にはならなかった。しかし、鴻海か機構か、どちらかを選ぶ、という議決においては、JISの2人が「キャスティングボート」を握る可能性もある。
・JIS入りとなし、2通りの議決をとって、結果が変わった場合は、どうなるのか。この点について、前出の弁護士は「そうはならないよう、事前に取締役会で議論を尽くし、どちらかを選ぶのが通例」とする。いずれにせよ、JISの取締役を議決に参加させるか否か、という攻防戦も水面下では繰り広げられており、シャープ再建の行方はますます混沌の方向へ進んでいる。
▽「自らの身をとしてでも」と高橋社長
・もう1つ、鴻海案と機構案で決定的に異なる点がある。それは、「高橋社長以下、経営陣の退陣を求めるか否か」という処遇面。機構は経営陣の刷新を求めているが、鴻海は経営体制を維持すると約束している。  高橋社長は、鴻海案が急浮上したその日の記者会見で、「まず構造改革を全力でやり切ることが一番の経営責任。その先は、今の時点で考えていない」と語り、「続投に意欲を示した」と報じられた。仮に、自らの処遇を理由に鴻海案に票を投じるのであれば、それも「欺瞞」だとのそしりを免れないだろう。
・しかし高橋社長は側近に、こうも語っている。「自らの身をとしてでも、何としてもシャープが生き残る道を選びたい」。 この言葉が本心であれば、金融機関やファンドのため、あるいは処遇のために決断が左右されるようなことがあってはならない。それは、高橋社長以外の取締役にも言えることだ。
・既存株主や従業員、顧客のために最善の道はどちらなのか。極めて難しい判断が、13人の取締役に委ねられている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/021900258/?P=1

次に、特別利害関係人(者)については、企業法務の詳しい山口利昭弁護士が2月22日の同氏のブログ、「ビジネス法務の部屋」に掲載した「シャープ再建支援策の選択と社外取締役の「特別利害関係者」該当性」を紹介しよう。
・社内の権力闘争を扱ったノンフィクションは大好きなので、さっそく週末に「シャープ崩壊~名門企業を壊したのは誰か」(日本経済新聞社編 1,600円税別)を読みました。
・関西在住の50代のオッサンとして、あのシャープさんがこのような状況になってしまったのはいまでも信じられません。しかしコーポレートガバナンス改革が謳われる昨今、何が名門企業の価値を毀損していったのか、社内クーデターの勃発など、ガバナンスの側から眺めていくとナットクするところがあり、他社への警鐘(「形だけのガバナンス」への痛烈なる警鐘)にもなる一冊です。クーデターを起こす側も、また防御する側も、昨今の「ガバナンスコード」の考え方は自陣の行動を展開するにあたり、有利に援用できることがわかります(つまり「体制を変える」ということは理屈よりもパワーであり、勝てば官軍、勝利したら理屈は後からなんとでも言える、ということがわかってきます)。
・そのパワーゲームの象徴が、なんといっても台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の存在です。ここ5年、シャープの権力闘争の中枢に存在した当該企業に、シャープのガバナンスが翻弄されてきたことがわかります。「決めきれない経営者」「過去の成功体験がもたらす誇り→奢りによる経営判断の遅延」「社内政治の末の宿敵サムスンへの接近」等、ホンハイの戦略に「正義」が宿る要因には事欠きません。本書はこの2016年2月初旬までの産業革新機構の動きとホンハイの動きまで追っていますので、大詰めを迎えたシャープの再建支援策協議の課題についても理解が進みます。
・ところで先週末あたりからマスコミで話題になっているのがシャープの社外取締役2名の「議決権はずし」です。2015年6月に実施した債務の株式化による優先株の消却をめぐる産業革新機構とホンハイとの再建支援計画案の違いから、優先株を保有するファンド出身の2名(シャープの社外取締役)は再建支援策を決定する取締役会の議決には加わることはできないのではないか、との意見が出されているとのこと。当該2名の取締役は会社法369条2項における「特別利害関係者」たる取締役に該当するかどうか、といったことが問題になっています。おそらくこの2名の社外取締役が決議に加わることができるか・できないかによって、再建支援策の決定内容が左右されるからこそ問題になっていると推測されます。
・シャープの社外役員には、私も存じ上げている著名な大先生(弁護士)がいらっしゃるので、たとえ地方弁護士による場末のブログ(このフレーズはひさしぶり・・・(^^; )の発言でも「何を偉そうに言うとんねん!」と叱られるかもしれず、以下の個人的意見は小声での「つぶやき」だけにしておきたいと思います(笑)。
・おそらく弁護士による法律意見書にも記載されていると思うのですが、2名の社外取締役の方々の行動として問題となるのは再建支援策決定に向けての審議に加わることと、決議に加わることの適法性です。また、そのような「特別利害関係性」に疑義ある取締役が加わった取締役会の決議は無効になるのかならなのか、という点も考慮に入れて議論をする必要がありそうです。「提案内容」だけで考えるのであれば、当該2名の社外取締役さんは(おふたりともファンドの代表者たる地位にあるため)会社法369条2項の「特別利害関係人」に該当するように思います。
・しかし、先の「シャープ崩壊」を読みますと、ホンハイのこれまでの行動から察するに、議論が必要なのは提案内容だけでなく、信頼に足るパートナーかどうか、将来的なシナジー効果はどうか、取引銀行との関係はどうなるか、といったことも含みます。そうなると、少なくとも審議についてはファンドご出身の2名の取締役の方々も参加すべきではないでしょうか(最近の会社法369条の解釈を前提とすると、「特別利害関係人」にあたる取締役は審議にも参加できない、といった説が有力なので、すでにこの段階で問題が生じていることになります)。
・そして、当該2名の社外取締役の方々は、取締役会の再建支援策決定に関する議案については「特別利害関係者」には該当しないが(つまり審議には適法に参加できるが)、最終的な決議については実質的な利益相反状態が生じているものとして善管注意義務・忠実義務の一環として参加を控えるべきである、という解釈の余地が残ります。私的にはこの解釈が一番ナットク感が高いように思います。つまり、たとえ会社法369条2項の解釈問題をクリアできたとしても、不公正な手続きによって(忠実義務に反するような取締役による議決権行使があったとして)後日、取締役会の決議が無効になる、といったリーガルリスク(提訴可能性、敗訴可能性)を回避すべきではないかと。
・2名の社外取締役の方々が「特別利害関係者」ではないとする点ではホンハイ側に有利な解釈ですが、最終的に「取締役の忠実義務」を持ち出して決議への参加を認めない点では産業革新機構側に有利な解釈です(取締役会議長はたいへんですね)。以上はあくまでも野次馬の私見にすぎません。
・結局最終判断はシャープ内部における権力関係(パワー)に依存するものであり、いまこそ内部権力が一枚岩になることがシャープ再建にとって最も大切だと(上記本を読んで)感じるところです。特別利害関係人であろうがなかろうが、忠実義務違反による不公正決議の可能性があろうがなかろうが、審議に参加する全員が一枚岩になることさえできれば、そもそもリーガルリスクはほぼ解消するものである(後で蒸し返すことは困難)、ということを忘れてはなりません。会社法が司法の場における権力闘争の武器として活用されるのではなく、ギリギリのところで組織が一枚岩になれるためのツールとして活用されることが最も大切だと考えます。・・・・・すいぶんと長い「つぶやき」になってしまいました。。。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2016/02/post-b8ed.html

機構の「支援効果」なるものは、SDP売却1500億円、融資枠2000億円、主力取引銀行の金融支援3500億円などの水増しで膨らませただけで、「真水」は本体出資の3000億円でしかない。
取締役会での両案に対する支持が割れているなかでは、この特別利害関係者問題をどう扱うかは、最終的な結論を大きく左右する重大な問題のようだ。山口弁護士は、議論には参加してもよいが、議決には参加すべきでないとの意見だが、最後は「キレイ事」で逃げてしまったようだ。
高橋社長は、機構からは事実上クビを申し渡されているのに、それでも機構案を支持しているのは、単に「愛社精神」のためだけなのか、或いは、社内の鴻海への反発が極めて強く「同調して社内から浮く」ことを危惧したためなのだろうか。
日経ビジネスオンラインでは、JISの2名以外の銀行出身取締役は、銀行を辞めているため、利害関係の立証が困難としているが、これも「形式論」過ぎる印象も受けた。
いずれにしろ、明日の最終決定は大いに注目される。
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