SSブログ

行政の過剰な権限行使(その1)空港発着枠 [経済政策]

今日は 行政の過剰な権限行使(その1)空港発着枠 を取上げよう。

3月2日のブログ「安倍政権のマスコミへのコントロール(その3)国谷キャスター降板、高市総務相発言など」では、現代ビジネスの記事で、放送電波に入札制(オークション制)を取り入れるべきとの主張があったが、今日は空港の発着枠についてである。

2月2日付け日経ビジネスオンライン「日航・全日空、第2次羽田決戦の攻防 求められる発着枠の入札制」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・日本の表玄関、羽田空港を舞台に日本航空と、全日本空輸を傘下に持つANAホールディングス(HD)の航空二強が再び激突する。2月9日に日米航空交渉が再開される見通しとなり、政府は羽田の米国便発着枠を1日12便(1往復で1便)にすることを提案する方針だからだ。
・2社の攻防は広く知られるところだが、有識者の間では、公平な競争環境と利用者の利便性を高める視点から、発着枠を入札で配分するべきだとの意見が多い。
・「先生、ニーヨン(2:4)が妥当ではありませんか」。昨年末、東京・永田町界隈のホテル。ANAHDの渉外担当者は政府関係者にこうささやいた。これに遅れること数日。日航の幹部は同じ政府関係者に「日米関係の橋渡し役として公平な配分をお願いしたい」と請願している。
・空港のダイヤを決める基本となる発着枠は国際線の場合、路線を結ぶ二国間の政府が協議して決める。次回の日米航空交渉では昼時間帯(午前前6時~午後11時)に10便、深夜早朝時間帯(午後11時~翌日午前6時)は2便を計画している。
▽合意すればニューヨーク便など就航へ
・現在は深夜早朝時間帯の8便だけで、発着枠は実質的に4便増える。合計12便の発着枠を日米の航空会社に半分ずつ配分する。日本側が使う6便の配分先は日航、ANAHDにどのように配分されるかが焦点になる。
・ANAHDの担当者が口にした「ニーヨン」は自社に4便を割き、日航は2便にとどめる案をほのめかしている。一方の日航はどうか。2012年9月の株式上場から3年半余を経過し、かつて“お家芸”とされたロビー活動を本格再開しようとしている。
・日米両政府が合意すれば、今年秋にも昼時間帯にニューヨーク行きなどの東海岸路線が就航する見通しだ。これまで都心から1時間前後離れた成田空港や羽田の深夜便を利用していたビジネスマン出張などで、利用者の利便性が飛躍的に高まる。日航、ANAHDともに「発着枠=顧客」の囲い込みに躍起になるのは無理もない。
・しかし、発着枠の決定プロセスには不透明感が漂う。政府間交渉に加え、日本側では航空行政を所管する国土交通省の裁量に委ねられているためだ。国交省は「国益、利用者の利便性を最大化するよう慎重に検討したい」(航空局)とするが、内実は複雑だ。
・航空会社に公平な競争環境を与え、多様な運賃や運航ダイヤの提供を通じて利用者の利便性を高める秘策はあるのだろうか。その糸口になりそうなのが、発着枠の入札制だ。実は政府も過去何度も入札制導入を検討した経緯がある。
・直近では規制改革会議が2007年、2010年秋の羽田空港の国際化にあたり、近距離便に限定せず、需要に応じて柔軟に発着枠を設けることなどを柱とする航空政策の提言を発表した。
▽市場再参入時の規制は「支援決定時に」
・この分野の規制緩和を通じて、空港発着枠を航空会社による競争入札に基づいて配分する仕組みの導入や、運賃の自由化を求めた。公共工事や資材調達のように、入札に委ねれば所管官庁と企業などの恣意的な意思決定が排除できるためだ。しかし国交省の反発などで具体化せず、その後の政権交代などで立ち消えとなった経緯がある。
・そして現在、公正取引委員会が1月末にまとめた一通の指針案が注目されている。テーマは政府系機関による企業の再生支援に対する指針案である。
・日航への公的支援を巡り自民党などから批判が出たことを踏まえ、有識者を交えて策定したものだ。法的拘束力はないが、2月末まで意見募集した上で、正式に決定する。
・指針案によると、公的な再生支援は民間の手に負えないケースに限り、必要最低限の規模にとどめ、その内容を開示することを原則とした。市場から退場すべき企業までが政府の支援で生き永らえ、競争環境がゆがむことを防ぐのが狙いだ。
・ここで特徴的なのは、再生を果たした企業が市場に再参入する場合、所管官庁などが課す規制は「支援決定時に決定することが適当だ」としたことだ。
・日航には2017年3月まで新規路線の開設や設備投資を大幅に制限する「暗黙のルール」が国交省から課されている。2012年8月10日に取りまとめられた通称「8.10ペーパー」だ。公取委の指針案に従えば、このペーパーは本来、日航が会社更生法の適用を申請した2010年1月当初に示されるべきだったことになる。
・かつて日航再生に奔走し、今回の指針案の取りまとめにも従事した経営共創基盤の冨山和彦CEO(最高経営責任者)は、かねてから「公的支援を受けた企業が再生後、身軽なコスト体質となって優位に競争を進めるのは自明の理。本来、国の関与そのものは慎重かつ抑制的であるべきだが、主な出資者として関わるとなったら、市場プレーヤーとして徹底的にやるべきだ」と主張してきた。
▽入札制導入で、自ら成長軌道へ
・冨山氏の持論は官民ファンド、企業再生支援機構(当時)が一気呵成(かせい)に経営改革を完遂して株式を民間に早期売却した時点で、国や所管官庁は日航の経営に過度に関与するべきではないということだ。だとすれば、発着枠に入札制を導入し、純粋な市場メカニズムで配分することは、合理的な政策といえる。  一方、ANAHDは1月末に発表した2016~20年度のグループ中期経営戦略で“大勝負”に打って出た。収益の柱である全日空の国際線では中南米や中央アジアなど未就航路線への展開を加速するほか、2018年度から欧州エアバスの超大型機「A380」3機を導入し、日航の牙城とされるハワイ路線に切り込む。 計画期間の5年間で売り上げ規模を全日空の国際線で1.4倍、LCC(格安航空)では3倍以上にそれぞれ増やすとした。羽田発の北米路線も順次拡大する見込みだ。
・常に自力で経営の舵取りをしてきたANAHDからすれば、日航の打ち手が限られているうちに日米航空交渉を優位に進めたいとの思惑もにじむ。だからこそ発着枠の入札制導入は、航空会社が自らの戦略や財務に基づいて成長軌道に乗っていくきっかけとなるだろう。
・つまり日米航空交渉をきっかけとして、政府と航空二強には、市場メカニズムに立脚した政策・経営判断が求められることになる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/020100157/?P=1

日本航空は会社更生法で再生を図った際に、有利子負債11578億円のうち、実に6割に相当する7300億円を金融機関に放棄させ、これにより財務体質が全日空よりはるかに強固になったとして、再建策そのものに批判があった。特に、株主・債権者である企業再生支援機構が管財人になったことで、手続きの中立性にも疑義が呈された。
このように如何に問題がある再建策であったとしても、裁判所が最終的に承認した以上は、これに従い、更生手続き終了後は、通常の企業として扱うのが、法治国家のルールであろう。さらに、その後も規制が必要なら、公正取引委員会指針案のように、事前にそれを明らかにしておくべきだ。
にも拘わらず、2013年10月の羽田の国際線割当てでは、全日空11路線、日本航空5路線と大きな格差をつけられた。現在の第2次羽田決戦でも、同じような全日空優遇が採られようとしている。日本航空再建が、民主党政権時代だったということで、政権復帰した自民党が「つらく」当たるというのは、どんなものか。まるで、「江戸の敵を長崎で討つ」である。
こうした不透明な裁量行政の余地をなくすためにも、空港発着枠は入札制にすべきだし、それまでの間も公正取引委員会の指針案に沿った運用が求められる。
なお、日米航空交渉は2月18日に合意。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0