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欧州難民問題(その4)デンマークでの難民の財産没収問題、メルケル首相に3月13日地方選挙の審判 [世界情勢]

欧州難民問題については、1月14日に取上げたが、今日は (その4)デンマークでの難民の財産没収問題、メルケル首相に3月13日地方選挙の審判 である。

先ずは、作家の橘玲氏が1月21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「世界でいちばん幸福な」リベラル福祉国家、デンマークの“右傾化”が突き付けていること[橘玲の世界投資見聞録]」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「世界幸福度指数」は国連が1人あたりGDPや男女の平等、福祉の充実度などさまざまな指標から各国の「幸福度」を推計したもので、2013年、2014年と連続して1位を獲得したのがデンマークだ(2015年はスイス、アイスランドに次ぐ3位)。「経済大国」である日本の幸福度が40位台と低迷していることから、「世界でいちばん幸福な国」の秘密を探る本が何冊も出された。
・ランキングを見れば明らかなように、「幸福な国」とは“北のヨーロッパ”、すなわち北欧(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク)、ベネルクス三国(オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)、スイス、アイスランドなどのことで、どこもリベラルな福祉国家として知られている。
・ところがそのデンマークで、不穏なニュースが報じられている。難民申請者の所持金や財産のうち1万クローネ(約17万円)相当を超える分を政府が押収し、難民保護費に充当するというのだ(ただし結婚指輪や家族の肖像画など思い出にかかわる品、携帯電話などの生活必需品は除外されるという)。
・デンマーク政府の説明では、これは難民を差別するものではなく、福祉手当を申請するデンマーク国民に適用されるのと同じ基準だという。難民を国民と平等に扱ったらこうなった、という理屈だ。
・だがこの措置が、ヨーロッパに押し寄せる難民対策なのは明らかだ。財産を没収するような国を目指そうとする難民は多くないだろう。デンマークは、自国を難民にとってできるだけ魅力のない国にすることで、彼らの目的地を他の国(ドイツやスウェーデン)に振り向けようとしているのだ。これではエゴイスティックな「近隣窮乏化政策」と非難されるのも当然だろう――もっともこの措置だと、所持金20万円以下の貧しい難民だけが集まってくる可能性もあるが。
・「世界でいちばん幸福な国」が、なぜこんなことになってしまうのだろうか。
▽「福祉国家とは、差別国家の別の名前である」
・じつはこれは、まったく新しい問題ではない。同じ話題を2004年9月刊の『雨の降る日曜は幸福について考えよう』(その後『知的幸福の技術』として文庫化)で書いていて、10年以上たってもとくにつけ加えることもないので、それをそのまま転載しよう。  *****************************************************************************
(( )の本文内の注は下の部分に説明あり)
 米国では4000万人が医療保険に加入していない。高齢者と貧困層のための公的医療保険はあるが、アメリカ人の多くは企業が提供する医療保険プランを利用している。労働ビザを持たない不法移民はもちろん、自営業者や失業者も自分の身は自分で守るしかない。
 米国の貧弱な社会福祉に比べて、ヨーロッパは公的年金や医療保険、失業保険が充実している。日本が目指すのは、そうした福祉国家だと言われる。 ドイツやフランスをはじめとして、ヨーロッパ諸国はどこも極右政党の台頭に悩まされている。それに比べて米国では、人種差別的団体は存在するものの、移民排斥を掲げる政党が国会で議席を獲得することはない。
 一見、無関係に見えるこのふたつの話は、同じコインの両面である。米国に極右政党が存在しないのは、福祉が貧困だからだ。ヨーロッパで組織的・暴力的な移民排斥運動が広がるのは、社会福祉が充実しているからである。
 国家は国民の幸福を増大させるためにさまざまな事業を行なっている。その中で、豊かな人から徴収した税金を貧しい人に再分配する機能を「福祉」という。 公的年金や医療・介護保険、失業保険は、国家が経営する巨大な保険事業であるが、それ自体は「福祉」ではない(1)。社会保障が福祉になるのは、一部の保険加入者が得をするように制度が歪められているからだ(2)。制度の歪みから恩恵を受ける人たちを「社会的弱者」と言う。
 民主政は一人一票を原則とするので、社会的弱者の数が増えれば大きな票田が生まれる。彼らもまた経済合理的な個人だから、自分たちの既得権を守るために政治力を行使しようと考える。その既得権は国家が「貧しい者」に与える恩恵であり、より貧しい者が現れることで奪われてしまう。
 アフリカ諸国やインドなど最貧国では、国民の大半が今も1日1ドル以下で生活している。東ヨーロッパの最貧国であるルーマニアでは、1日4ドル以下で暮らす国民が半数を超えるという。先進諸国の社会的弱者は、世界基準ではとてつもなく裕福な人たちだ。彼らが極右政党を組織して移民排斥を求めるのは、福祉のパイが限られていることを知っているからだ。
 貧乏人の子供は貧乏のまま死ぬのが当然、と考える人はいないだろう。不幸な境遇に生まれた人にも、経済的成功の機会は平等に与えられるべきだ。では、貧しい国に生まれた人にも、豊かな暮らしを手に入れる機会が与えられるべきではないだろうか。
 ここに、貧困を解決するふたつの選択肢がある。ひとつは、世界中の社会的弱者に平等に生活保護を支給すること。そのためには天文学的な予算が必要になるだろう。もうひとつは、誰もがより労働条件のよい場所で働く自由を認めること。こちらは、何の追加的支出も必要ない。
 北朝鮮や旧イラクのような独裁国家には移動の自由はなく、国民は政治的に監禁されている。福祉国家は厳しい移民規制によって、貧しい国の人々を貧しいままに監禁している。誰もが独裁国家の不正義を糾弾して止まない。では、福祉国家は正義に適っているだろうか。
 米国ではベビーブーマーが引退の時期を迎え、社会福祉の充実が叫ばれている。それに伴って、移民規制は年々、厳しさを増している。米国がごくふつうの福祉国家になる時、「移民の国」の歴史は終わりを告げるだろう(3)。
 福祉国家とは、差別国家の別の名前である。私たちは、福祉のない豊かな社会を目指すべきだ。
(上記の注)(1)民間保険会社が福祉団体ではないのと同じだ。加入者が支払う保険料と受け取る保険金がバランスしていれば、単なる保険ビジネスである。
(2)時には、すべての保険加入者が得をするように設計されていることもある。誰にも損をさせず、みんなが幸福になる保険会社は、構造的に破綻を運命づけられている。日本の公的年金制度がその典型だ。
(3)現実には、アメリカは「福祉社会」に移行してきている。その実態は、ミルトン・フリードマンが『選択の自由』(日経ビジネス人文庫)で鋭く告発した。   ********************************************************************************  
・ 「福祉国家は差別国家の別の名前」というのは10年前は奇矯な主張だったが、いまになって振り返れば、現実はここで書いたとおりに進んできた。
・EUが「人権大国」を目指す一方で加盟各国に極右勢力が台頭し、いまではデンマークだけでなく、ポーランド、スイス、ベルギー、フィンランド、ノルウェー、オーストリアなどでも移民排斥を掲げる政党が主要な政治勢力になっている。デンマーク国会が難民流入を抑止する法案を成立させれば、これらの国があとにつづくのは間違いないだろう。
・オバマケア(医療保険制度改革)に象徴されるように、アメリカはオバマ政権の登場で明確に「リベラル=福祉」に舵を切った。それと同じくしてティーパーティの草の根運動が広がり、いまでは「イスラム教徒を入国禁止にせよ」と主張するドナルド・トランプが次期大統領選の共和党有力候補になっている。
・だがここで、自分の先見の明を誇りたいわけではない。これは構造的な問題だから、国家が国民の福祉を充実させようとすればこうなるほかないのだ。こんな当たり前の指摘が珍しいのは、「福祉は無条件に素晴らしい」と信じるひとたちが不愉快な現実から目を背けているからにすぎない。
▽リベラルな国デンマークの思想信条
・もちろん私はここで、デンマークがナチスのような人種差別国家になっていく、などと主張したいわけではない。実際に訪れるとわかるが、デンマークは(物価が高いことを除けば)旅行者にとってとても快適な国だ。石造りの古い建物を残しながら、車と自転車、歩行者を機能的に分離した都市はきわめて魅力的で、美食の街としても頭角を現わし(「世界最高のレストラン」Nomaはコペンハーゲンにある)、外国人という理由で差別されるようなことは考えられない。
・そんな“リベラル”なデンマークをよく表わしているのが、女性映画監督スサンネ・ビアのアカデミー外国語映画賞受賞作『未来を生きる君たちへ』だ(原題は「復讐」。英語タイトルは“In a Better World”=「よりよい世界のなかで」)。
・主人公のアントンは、アフリカの難民キャンプで医師として(明示されていないが「国境なき医師団」だろう)働いている。だがアントンが、デンマークに妻と二人の男の子を残してボランティアに打ち込む理由は善意だけではない。彼の浮気が原因で、妻との関係がうまくいかなくなっているのだ。
・アントンの息子のうち、兄のエリアスは前歯が目立つことから小学校で「ネズミ」と呼ばれ、いじめられている。そんなエリアスの親友になったのが、がんで母親を失い、父親との確執を抱える転校生のクリスチャンだった。 クリスチャンは、エリアスをいじめる男子生徒が自分にも手を出そうとしたとき、逆に徹底的に殴りつけ、ナイフを見せて「次は殺す」と脅した。この「復讐」によって、エリアスへのいじめもなくなった。
・事件は、アントンが休暇でアフリカから帰国したときに起こった。二人の息子とクリスチャンを公園に連れて行ったとき、遊具をめぐって別の子どもと諍いになり、そこにアントンが割って入った。すると相手の子どもの父親ラース(明示されていないが明らかに移民風)が現われ、「息子に手を出すな」といきなりアントンを平手打ちしたのだ。アントンはそれに対して報復も抗議もせず、黙って子どもたちを車に乗せる。
・目の前で父親が殴られたことで、エリアスは大きなショックを受ける。彼が学校で学んだのは、「やり返さなければやられ続ける」というルールだからだ。そこで子どもたちはラースを探し出し、彼の仕事場(自動車整備工場)にアントンを連れて行く。父親に「復讐」の機会を与えるためだが、ここでアントンは思いもかけない行動に出る。
・突然職場に現われて「なぜ暴力をふるったのか?」と詰問するアントンを、ラースはにやにや笑いながらふたたび平手打ちする。だがここでもアントンは報復せず、「お前の暴力は恐れない」といいながら理不尽に殴られつづけるのだ(トラブルになるのを恐れた整備工場の同僚が止めに入った)。
・その後アントンは、エリアスとクリスチャンセンに次のようにいう。「あいつは暴力をふるうことしかできない愚か者だ。愚か者の暴力に、暴力で報復することになんの意味もない」――ここは「リベラル」の思想信条がよくわかる俊逸な場面だ。
・最初の公園の場面だけなら、「バカを相手にしてもしょうがない」という軟弱な知識人の保身にも見える。だがそれなら、わざわざもういちど、それも子どもの前で殴らるようなことはしないだろう。
・日本映画で同じ場面が描かれたとしたら、観客はそうとう奇異に感じるはずだ。主人公の行動にまったくリアリティがないからだが、これはアメリカ映画でも同じで、悪漢に殴られた主人公は殴り返さなければヒーロー(主人公)の資格がない。
・なぜデンマークでは、右の頬を打たれたら左の頬を出すような(かなり奇妙な)場面が現実=リアルとして受け止められるだろうか。それは観客が、アントンを突き動かしている信条を共有しているからだ。
・20世紀後半から、リベラルの新たな潮流が(北の)ヨーロッパを席巻した。それは、人種差別や女性への暴力、子どもの虐待(さらには「動物の権利」の侵害)に対する強い拒絶感情だ。1990年代の凄惨なユーゴスラヴィア紛争を間近で見たヨーロッパのひとびとは、あらゆる暴力を否定するという「原理主義」に急速に傾いたのだ。
・父親としてのアントンの奇矯な行動は、こうした背景があってはじめて理解できる。息子が理不尽な暴力を恐れるようになったと危惧したアントンは、「いかなる暴力も問題解決の手段としては使わない」という信念の優越を示すために、わざと子どもたちの前で殴られてみせたのだ。
▽原理主義的なリベラルは現実によって常に裏切られる運命にある
・「いっさいの復讐を自分に禁じ、相手が殴ったら殴られつづける」という原理主義的なリベラルは、いうまでもなくきれいごとにすぎない。映画はそのことも承知していて、アフリカの難民キャンプにおけるアントンの“偽善”を容赦なく暴く。
・キャンプの病院には、ときおり腹を切り裂かれた女性が運ばれてくる。「ビッグマン」という地域の悪党が、呪術のために妊婦の腹から生きたまま胎児を取り出すのだ。 ある日、このおぞましい悪党が足に大怪我を負ってやってくる。病院のスタッフや患者たちは、ビッグマンを治療せず死ぬに任せておくべきだと口々に懇願するが、アントンはそれを医師の倫理に反すると拒否する。
・だが一命をとりとめたビッグマンはアントンを挑発し、暴言を浴びせるようになる。それに耐えかねたはアントンは、最後にはビッグマンを復讐を叫ぶ群衆のなかに放置してしまう。暴力に対して暴力で報復することを許したのだ。
・映画はその後、アントンがデンマークに戻ったところでもうひとつの事件を用意する。「報復は復讐の連鎖を招くだけ」というアントンの理想論に、子どもたちは納得していなかった。そこで彼らは、アントンに代わって自分たちの手でラースに復讐すべく、納屋で見つけた火薬を使って自家製のパイプ爆弾をつくりはじめたのだ……。
・『未来を生きる君たちへ』が描いたのは、原理主義的なリベラルは現実によって常に裏切られる運命にある、ということだ。それは「リベラル」が絵空事だからだが、その理想を愚直に実践することには絵空事を超えた価値がある。
・できるわけがないことをやろうとする人間の前に、現実の壁が真っ先に立ちふさがるのは当たり前だ。だがそんな“愚か者”こそが、「人権」という人工的な(人間の本性に反する)思想を擁護し、暴力のない安全で幸福な社会(Better World)をつくることに貢献してきたのだ――この話の詳細はスティーブン・ピンカー『暴力の人類史』(青土社)を読んでほしい。
・だがこの「人権尊重」は、移民を受け入れるときだけでなく、彼らを排斥するときにも方便として使うことができる。妻や娘を平等に扱い、子どもの人格を尊重し、宗教よりも世俗的な価値観を優先する啓蒙思想を拒絶する者は、「リベラルのユートピア」に居場所を与えられないのだ。
・このようにして、リベラルな福祉社会はリベラルなまま、「価値観」の異なるムスリムの移民を排除できる。ヨーロッパの“極右”と呼ばれる政治集団は、東欧などからのキリスト教徒の移民への差別は許されないが、近代的でリベラルな世俗社会の価値観に同化できないムスリムの移民への「区別」は正当化できる、と主張しているのだ。
・原理主義的なリベラルの信念は、ISによる度重なるテロでも試されることになった。テロに報復してシリアやイラクのISの領土を空爆しても、相手の憎悪を煽るだけで問題はなにひとつ解決しないのは明らかだ。だがテロの犯人に「赦し」を与えたところで、彼らはそんなものを一顧だにせず新たなテロを計画するだろう。
・EUというゆるやかな共同体のなかに複数の国家が共存するヨーロッパは、いわば巨大な社会実験をやっているようなものだ。いまやもっとも過激(原理主義的)なリベラリズムは北のヨーロッパから生まれ、それがニューヨークやカリフォルニアのような「リベラルなアメリカ」に伝わり、カナダやオーストラリアなどの英語圏の移民国家(アングロスフィア)に広まって「グローバルスタンダード」をつくっていく。
・こうしたリベラルの潮流が(良くも悪しくも)世界の基準を決めているのだとしたら、その源流である「世界でいちばん幸福な国」の“右傾化”は、私たちの未来を知るうえで重要な出来事になるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/85030

次に、在独ジャーナリストの熊谷徹氏が2月26日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「メルケルを待ち受ける「3月危機」 トリプル地方選挙が下す難民政策への審判」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今年のドイツは異常な暖冬に見舞われた。2月だというのに、時折4月並みに暖かい日がある。すでに野の花が咲き始め、小鳥が囀り始めている。春がすぐそこまで迫っている感じだ。 だが首相のメルケルを初めとする大連立政権の幹部たちは、春に似つかわしくない重苦しい空気の中にいるはずだ。メルケルは最近、公の場でも眉の間に深い皺を寄せて、厳しい表情を見せることが増えてきた。
▽「難民を歓迎する文化」の終焉
・政権内部の空気が重苦しさを増しているのは、来月、つまり3月がメルケルにとって、大きな正念場となるからだ。3月13日には、ドイツ南西部のバーデン・ヴュルテンベルク州、ラインラント・プファルツ州、そして旧東ドイツのザクセン・アンハルト州で州議会選挙が行われる。ドイツ人たちは現在、この選挙の行方を固唾をのんで見守っている。
・これらの州議会選挙が注目されている理由は、ドイツの有権者たちがメルケルの難民政策に審判を下す最初の機会となるからだ。これらの選挙は、メルケルにとって「運命の分かれ目」となるかもしれない。 メルケルの難民政策は現在、国論を真っ二つに割っており、連日、侃々諤々の議論が行われている。
・昨年9月5日にメルケルは、ブダペストで立ち往生していたシリア難民らに対して国境を開放し、ドイツで亡命を申請することを許した。EUの「ダブリン協定」によると、難民は通常、最初に到着したEU加盟国で亡命を申請しなくてはならない。メルケルが、すでにハンガリーにいた難民たちに、ドイツでの亡命申請を許可したのは、ダブリン協定に違反する「超法規的措置」だった。大半の難民は、ハンガリーやオーストリアではなく、社会保障が手厚く、難民の受け入れに寛容なドイツに亡命申請することを望んだ。
・この決定により、9月には一時、ドイツに到着する難民の数が1日あたり約1万人に達した。ミュンヘンやベルリンの駅では当時、ドイツ市民が難民たちを拍手で出迎えたり、子どもたちに玩具を贈ったりした。大都市では数千人のボランティアたちが、難民の収容施設で衣服を与えたり、ドイツ語を教えたりした。
・当時、英仏や東欧の国々が難民に対して冷淡な態度を見せる中で、ドイツ人たちが示したこの姿勢は、「難民を歓迎する文化(Willkommenskultur)」と呼ばれた。米国やイスラエル、国連関係者らは、「メルケルはヨーロッパの良心だ」と絶賛した。米国のタイム誌は昨年、メルケルを「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に選んだ。普段はドイツに対して舌鋒が鋭い英国のエコノミスト誌も、「今日のヨーロッパは、メルケルを必要とする」と彼女の功績を称えた。
・だが今日では、ドイツでも「難民を歓迎する文化」は影をひそめつつある。日本とは異なり、ドイツの行政当局は外国人が「亡命を申請する」という言葉を発しただけで、宿泊場所や食事、医療の世話をする義務がある。昨年ドイツに到着した亡命申請者の数は110万人に達し、難民に対し衣食住の世話をしなくてはならない市町村は、「受け入れ能力の限界に達した」と悲鳴を上げている。
・亡命申請を審査するのは、連邦難民移住庁(BAMF)。110万人の難民のうち、審査が終わったのは約28万人。全体の25%にすぎない。亡命を認められたり、人道的な理由により滞在を許されたりしたのは、約14万人にとどまっている。今年1月の時点でBAMFでは約34万5000人分の申請書が山積みとなっている。BAMFは昨年末に職員の数を増やしたものの、難民数の急増に対応しきれていない。
・また昨年9月には一時、毎日1万人を超える難民がドイツに流れ込んだため、指紋採取や出身国の聞き取りなど、到着時の登録作業もきちんと行われなかった。行政機関に全く把握されていないまま入国した外国人の数も約20万人にのぼると推定されている。
▽保守政党、20万人の上限を要求
・大連立政権を構成するうちの一党、キリスト教社会同盟(CSU)で党首を務めるホルスト・ゼーホーファーは、昨年9月の時点ですでに「メルケル首相の国境開放は、大きな誤りであり、我が国に長期的な悪影響を与えるだろう」と警告していた。
・ゼーホーファーは、バイエルン州政府の首相でもある。バイエルン州は、ドイツの南部に位置するために、オーストリアを通過してドイツに流れ込む難民たちの「玄関口」となった。彼は、今年1年間にドイツが受け入れる難民の数を、20万人に制限することを要求している。ゼーホーファーは、「ドイツに入った難民の数が20万人に達したら、少なくとも内戦が起きていない安全な国から来た難民については、国境で追い返すべきだ」と主張する。彼は、今年1月に「今日のドイツでは無法状態が支配している(die Herrschaft des Unrechts)」と発言してメルケルを批判した。
・バイエルン州政府財務大臣のマルクス・ゼーダー(CSU)によると、昨年ドイツに入国した110万人の難民のうち、亡命する資格があるのは約67%。彼は「亡命の要件を満たしていない残りの約35万人は、ドイツから追い出すべきだ」と訴える。またゼーダーは、「EUではドイツとフランス、英国、東欧諸国との間で難民の扱いをめぐって不協和音が高まり、分裂の危機さえ生じている。ドイツが昨年、他国と事前に協議することなく、独断で国境開放に踏み切ったことが、現在のEUの混乱の大きな原因となっている」と述べ、メルケルの決定を強く批判している。
・さらに同党は、メルケルが難民政策を根本的に変更しない場合には、連邦憲法裁判所に対して違憲訴訟を提起することも検討している。連立政権の一翼を担う政党が、「首相の政策が憲法に違反している」として、裁判を起こす―――。ドイツの政治史上でも例のない事態だ。
・特に前回お伝えしたように、昨年の大晦日から元日にかけてケルンやハンブルクで約1000人の女性が、難民らによって取り囲まれて携帯電話や財布を奪われたり、性的暴力の被害にあったりした事件は、多くのドイツ市民にショックを与えた。この事件以来、市民の間では、治安の悪化について懸念が強まっている。
・メルケルは、国内の批判に応えて、難民の数を減らさなくてはならないと発言しているものの、「ドイツの憲法(基本法)で保障されている亡命権に上限はない」として、毎年の難民受け入れ数に上限を設定することには反対している。ただし最近ではメルケルも徐々に難民に対する態度を硬化させつつある。
・メルケルは1月30日にメクレンブルク・フォアポンメルン州で開かれたCDU(キリスト教民主同盟)の集会でこう述べた。「シリアが平和になり、イスラム国(IS)が撃退されたら、シリア難民はドイツで学んだ知識を持って、シリアに戻ってほしい」。これは、難民たちが祖国に帰還することを望むメルケルの心情を示した初めての発言として、ドイツの政治家やメディアに注目された。彼女は心の中で、「難民に対して寛容な姿勢を見せ続けた場合、3月の州議会選挙での得票が低下する」と計算しているのだろう。
▽崩壊した「欧州の連帯」
・メルケルにとって最大の誤算は、他のEU加盟国が難民の本格的な受け入れを拒否したことだった。この結果、ドイツに大きな負担がのしかかることになった。 メルケルは昨年9月にシリア難民らの受け入れを決めた時、難民の一部を英仏など他の国々に配分できると期待していた。だが彼女の期待は完全に裏切られた。
・たとえばEUは昨年9月に、ギリシャやイタリアに到着した16万人の難民を、人口やGDP、失業率などに応じてEU加盟国に配分することを決めた。しかし、この16万人のうち、これまでに各国に配分された難民の数は、1000人にも満たない。わずか0.6%である。
・ハンガリーなど東欧諸国は、EUが難民を各国に強制的に割り当てることに頑として反対しているほか、すでに多くの移民を抱えている英仏も、受け入れに消極的なのだ。これまで難民の受け入れに比較的前向きだったスウェーデンとデンマークも、今年1月から国境での検査を開始し、難民数を制限する動きを見せ始めた。
・今年1月にドイツの隣国、オーストリアは、「2019年までに受け入れる難民の数を12万7500人に制限する。今年の受け入れ数の上限は、3万7500人」と発表した。同国政府は、1人あたりの難民受け入れ数を80人に限る。ドイツに行くためにオーストリアを通過する難民の数も、1日あたり最高3200人にする。
・欧州委員会は「オーストリア政府の決定は、EUの精神に反するものだ」と警告したが、同国政府は聞く耳を持たない。オーストリア内務大臣のヨハンナ・ミクル・ライトナーは、「我々はヨーロッパを要塞化しなくてはならない」と発言したことがある。
・ハンガリー、スロベニアなど東欧諸国も、ギリシャからドイツに至る難民の移動ルートにあたる国境地域に防護フェンスを建設しつつある。
・昨年の9月以降、ドイツ以外のEU加盟国政府がとった態度は、欧州の政治統合やシェンゲン協定に象徴される国境の開放、移動の自由の確保が、平時だけに可能な、一時的な現象だったことを示している。シリアからの難民流入という異常事態が起こるや否や、各国は国家エゴをむき出しにし、「ヨーロッパの連帯」は死語となった。
・現在ドイツでは、「欧州連合の崩壊」を危惧する声があるが、EUの凋落は昨年の9月からすでに始まっている。メルケルは2005年に首相に就任して以来、欧州の政治統合を深化させるために力を注いできた。このため、昨年9月以来の各国の態度を見て、いたく失望しているはずだ。
・ヨーロッパ各国から見捨てられたも同然のメルケルにとって、唯一の頼みの綱は、トルコだ。トルコ政府は、すでにシリアからの難民を260万人も受け入れているが、メルケルは同国が難民キャンプを拡大・整備するとともに、金を取って難民をEU圏内に送り込む「人間運搬業者」に対する取り締まりを強化して、ヨーロッパへの難民流入に歯止めをかけることを望んでいる。EUが同国に30億ユーロ(約3900億円)という巨額の援助を行うと決めたり、トルコのEU加盟交渉を再開する姿勢を見せたりしている背景には、メルケルの強い希望がある。
・メルケルが最も信頼している部下の一人で、難民対策を取り仕切るペーター・アルトマイヤー連邦首相府長官は、ドイツのメディアに対して、「トルコ政府は、あたかもEU加盟国であるかのように、立派に振る舞っている。難民対策におけるトルコの貢献は、EU加盟国を上回る」とほめちぎっている。
▽英国のEU脱退問題と難民危機
・2月20日にブリュッセルで開かれたEU首脳会議でも、最大の焦点は英国のEU脱退を防ぐための改革案となったため、難民の公平な配分についての合意は得られなかった。このためドイツ政府には大きな不満が残った。
・だが英国のEU脱退問題は、ヨーロッパ大陸での難民危機と密接に絡み合っている。EU加盟国首脳は今回、英国の要望に応えて、域内の移民を制限するための方策について合意した。たとえば、各国政府は、他のEU加盟国から入国する外国人に対して、社会保障サービスを最高4年間にわたって禁止できる。さらに、EU加盟国政府は、「EUの新しい法案が自国の利益を侵す」と判断した場合、EUの法案提出を早い段階で阻止することも可能になる。これは、「加盟国の議会の権限を強めるべきだ」と主張する、英国内の反EU勢力の意見に配慮したものだ。
・英国首相のキャメロンは、ブリュッセルでの合意を「英国の勝利」と位置づけ、EUに残留するべきかどうかについて、今年6月23日に国民投票を実施する。キャメロン自身は英国がEUに残留することを希望しているが、脱退を求める意見は彼が属する保守党内でも強まっている、ポピュリスト政党だけが求めているのではない。
・2月21日に、同じ保守党に属する議員で、ロンドン市長でもあるボリス・ジョンソンが英国のEU脱退を要求し、注目を集めた。確かに、キャメロンがブリュッセルで獲得した合意案は、英国の反EU勢力が要求するものには程遠い。英国の反EU勢力は、EUの憲法に相当するリスボン条約を改正して、域内での移動と就職の自由を制限することを求めていたからだ。だが移動の自由は、EUの基本精神の1つである。このためメルケルなどEU擁護派は、条約改正に難色を示した。
・4月以降はヨーロッパでも気温が上昇し、海も穏やかになるため、エーゲ海や地中海を渡って西欧を目指す難民の数が再び増加し始めるので、大きな混乱が予想される。だが既に、東欧の国々が部分的に国境を封鎖しているために、多くの難民がギリシャやマケドニアなどで立ち往生しているのだ。東欧の一部の国々は、国境地域に軍隊を投入することも計画している。入国を求める難民と軍隊・警察の間で小競り合いが起き、死傷者が出るかもしれない。
・その模様はテレビなどを通じて、世界中に流される。EUは新たな難民危機に十分に対応することができず、各国政府はお互いの利害をめぐって激しく衝突するだろう。英国市民の中にはこの様子を見て、「EUの状態は、これほどひどい。EUに加盟し続けたら、難民危機に対処するために、どのような負担を課されるかわからない」と考えて、EUから脱退するべきだと考える人が増えるかもしれない。
・今年2月に行われた世論調査では、EU残留を支持する市民が約48%で、脱退派(33%)を上回っているが、19%はまだ意見を表明していない。今後ヨーロッパ大陸で難民をめぐる混乱がさらに深刻化した場合、英国のEU脱退支持派にとって追い風となるだろう。
▽ドイツでも右派ポピュリストが躍進へ
・さてドイツで難民危機によって追い風を受けているのが、右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」だ。ユーロ圏からの脱退やギリシャに対する金融支援の停止を求めるこの政党は、今年3月の州議会選挙で大きく躍進するものと予想されている。
・公共放送ARDが今年2月に行った世論調査によると、AfDの支持率は約12%に達し、CDU・CSUと社会民主党(SPD)に次いで、第3党となった。右派政党が、緑の党や自由民主党(FDP)を追い抜いたのである。
・さらに「連邦政府の仕事に満足している」と答えた回答者の割合は、昨年7月には57%だったが、今年2月には、19ポイントも下がって38%になった。メルケルに対する支持率は今年1月には58%だったが、2月には12ポイントも下がって46%になった。 また、「連邦政府は難民問題にきちんと対応していると思うか」という設問に「ノー」と答えた市民の割合は、81%にのぼった。
・これらの数字は、難民危機に対する既成政党の対応に不満を抱いた有権者たちが、抗議の姿勢を示すために、AfDを支持し始めていることを表している。AfDが、バーデン・ヴュルテンベルク州など3つの州議会で議席を獲得することは、ほぼ確実だ。特に、難民の流入に批判的な市民の比率が高い旧東ドイツでは、AfDに票を投じる有権者が多くなるだろう。
・ドイツでは来年、日本の総選挙に相当する連邦議会選挙も行われる予定だ。全国レベルでもAfDは10%を超える票を確保すると見られている。 だがAfDには、ネオナチに近い過激思想の持ち主も加わっている。今年1月には、同党の幹部が「ドイツは国境を閉ざすべきだ。もしも難民が警官の制止に逆らって国境を突破した場合、警察官は銃を使用してでも、難民の侵入を防ぐべきだ」と発言した。ドイツの法律は、警察官は国境を越えようとする外国人に対して発砲することを禁じている。
・一方、社会主義時代の東ドイツ政府は、国境警備兵に対し、ベルリンの壁を越えて西側に逃亡しようとした市民を見つけた場合には、射殺してでも逃亡を食い止めるよう命じていた。AfD幹部の発言は、民主国家ドイツを、社会主義時代の東ドイツのような国にすることを求めるものであり、噴飯物である。この発言は、今日のドイツ社会における議論が難民危機のために、いかに感情的なものになっているかを浮き彫りにするものだ。このような政党が、世論調査で10%を超える支持を集めるという事態に首をかしげざるを得ない。
▽難民危機はメルケルの「アゲンダ2010」
・こうした世論調査の結果を見て、メルケルが率いるCDU内部でも、不協和音が高まっている。たとえばバーデン・ヴュルテンベルク州とラインラント・プファルツ州で首相になることを目指すCDUの2人の候補者たちまで、メルケルに対して難民政策を根本的に転換するよう要求し始めた。彼らは、「このままでは州議会選挙で、十分な票が集まらない」と訴えているのだ。そのうちの1人、ラインラント・プファルツ州首相候補のユリア・クレックナーは、CDUの中でメルケルの後継者の一人と見られている人物。昨年9月にメルケルがシリア難民に対して国境を開放した時には、メルケルの決定を全面的に支持していた。彼女はわずか5ヶ月で、「メルケル批判派」に転向したことになる。メルケルは、クレックナーの風見鶏のような態度に失望しているに違いない。
・州議会選挙の候補者が党首に政策の変更を迫るのは、事実上の造反である。CDU内の危機感は、それほど強まっているのだ。CDUの議員たちは、トリプル州議会選挙で、多くの有権者がメルケルの難民政策に「ノー」という審判を下すのは、ほぼ確実と見ている。  筆者は今、2005年に首相の座を追われたゲアハルト・シュレーダーのことを思い出している。彼は、2003年に労働市場と社会保障制度を大きく改革するためのプログラム「アゲンダ2010」を断行した。シュレーダーは、長期失業者のための給付金を生活保護と同じ水準に引き下げることによって、労働コストの伸びに歯止めをかけることに成功した。そして企業収益を拡大し価格競争力を強化することによって、2010年以降、就業者数を劇的に増やすことができた。
・だが2003年から2年間にわたって、ドイツ全土で「アゲンダ2010」に対する抗議運動が吹き荒れた。彼が率いるSPDは、州議会選挙で連敗。SPDの地方支部には、シュレーダーに対して「有権者の評判が悪くなるから、応援演説に来ないでくれ」と言う者もあった。シュレーダーは2005年の連邦議会選挙でも敗北し、首相だけでなく議員も辞職して政界を去った。
・私は難民政策が、メルケルにとっての「アゲンダ2010」になる気がしてならない。国家エゴではなく、人道主義に基づく政策を貫こうとしたメルケルの善意は、現実政治(レアールポリティーク)という巨大なブルドーザーによって押しつぶされようとしている。
・3月のトリプル地方選挙の結果は、ドイツ、そしてEUの政局の今後を占う上で、重要な材料となるだろう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/219486/022500013/?P=1

デンマークでの難民の財産没収を初めに聞いた時には驚いたが、「福祉手当を申請するデンマーク国民に適用されるのと同じ基準」とのことで一応、納得した。「福祉国家とは、差別国家の別の名前である」との思いがけない指摘や、トランプの躍進の背景には「オバマケア」があるとの指摘には、確かに一面の真実かも知れないと考えるようになった。映画『未来を生きる君たちへ』もリベラリズムについて、深く考えさせる内容だ。
その主張の「原理主義的なリベラルは現実によって常に裏切られる運命にある」は、確かに「非暴力主義」の面ではその通りかも知れないが、リベラリズム一般にまで言えるのかは慎重に考えるべきだと思う。
メルケル首相はいまや孤立無援の状況にあるが、元来は旧東独の科学者出身ながら10年超首相の座にあり、原発廃止やギリシャ支援をまとめ上げた卓越した政治家である。にも拘わらず、政治的にも行政実務的にも破綻必至の無制限受け入れという理想論的政策を選択した理由は、一体どこにあったのだろう?
ただ、シリアからの難民を260万人も受け入れているトルコに対し、メルケルは大いに持ち上げているようだが、他方で、トルコはイスラム国(IS)に対し最も果敢に戦っているクルド人を徹底弾圧している。政策全体の整合性はどうなっているのだろう?
今や「欧州の連帯」、EU「統合の深化」は死語になってしまった。英国の離脱論は後日、取上げるつもりだが、キャメロン首相も馬鹿げた「賭け」をしたものだ。
タグ:欧州難民問題 (その4)デンマークでの難民の財産没収問題、メルケル首相に3月13日地方選挙の審判 橘玲 ダイヤモンド・オンライン 「世界でいちばん幸福な」リベラル福祉国家、デンマークの“右傾化”が突き付けていること[橘玲の世界投資見聞録] 世界幸福度指数 「幸福な国」とは“北のヨーロッパ”、すなわち北欧(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク)、ベネルクス三国(オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)、スイス、アイスラン デンマーク 難民申請者の所持金や財産のうち1万クローネ(約17万円)相当を超える分を政府が押収し、難民保護費に充当 福祉手当を申請するデンマーク国民に適用されるのと同じ基準 自国を難民にとってできるだけ魅力のない国にすることで、彼らの目的地を他の国(ドイツやスウェーデン)に振り向けようとしているのだ 福祉国家とは、差別国家の別の名前である 雨の降る日曜は幸福について考えよう 米国の貧弱な社会福祉 ヨーロッパは公的年金や医療保険、失業保険が充実している。日本が目指すのは、そうした福祉国家 米国では 移民排斥を掲げる政党が国会で議席を獲得することはない 米国に極右政党が存在しないのは、福祉が貧困だからだ ヨーロッパで組織的・暴力的な移民排斥運動が広がるのは、社会福祉が充実しているからである 豊かな人から徴収した税金を貧しい人に再分配する機能を「福祉」 。先進諸国の社会的弱者は、世界基準ではとてつもなく裕福な人たちだ 彼らが極右政党を組織して移民排斥を求めるのは、福祉のパイが限られていることを知っているからだ 貧困を解決するふたつの選択肢 ひとつは、世界中の社会的弱者に平等に生活保護を支給すること。そのためには天文学的な予算が必要 もうひとつは、誰もがより労働条件のよい場所で働く自由を認めること。こちらは、何の追加的支出も必要ない 福祉国家とは、差別国家の別の名前 オバマケア アメリカはオバマ政権の登場で明確に「リベラル=福祉」に舵を切った ドナルド・トランプが次期大統領選の共和党有力候補 “リベラル”なデンマーク 未来を生きる君たちへ 原理主義的なリベラルは現実によって常に裏切られる運命にある 原理主義的なリベラルは現実によって常に裏切られる運命にある、ということだ。それは「リベラル」が絵空事だからだが、その理想を愚直に実践することには絵空事を超えた価値がある リベラルな福祉社会はリベラルなまま、「価値観」の異なるムスリムの移民を排除できる 近代的でリベラルな世俗社会の価値観に同化できないムスリムの移民への「区別」は正当化できる 熊谷徹 日経ビジネスオンライン メルケルを待ち受ける「3月危機」 トリプル地方選挙が下す難民政策への審判 「難民を歓迎する文化」の終焉 バーデン・ヴュルテンベルク州 ラインラント・プファルツ州 ザクセン・アンハルト州 3月13日 州議会選挙 メルケルの難民政策に審判を下す最初の機会 メルケルが、すでにハンガリーにいた難民たちに、ドイツでの亡命申請を許可したのは、ダブリン協定に違反する「超法規的措置」 メルケルはヨーロッパの良心だ 受け入れ能力の限界に達した 行政機関に全く把握されていないまま入国した外国人の数も約20万人にのぼると推定 キリスト教社会同盟(CSU)で党首 ドイツが昨年、他国と事前に協議することなく、独断で国境開放に踏み切ったことが、現在のEUの混乱の大きな原因となっている 違憲訴訟 治安の悪化について懸念 崩壊した「欧州の連帯」 シリアからの難民流入という異常事態が起こるや否や、各国は国家エゴをむき出しにし、「ヨーロッパの連帯」は死語となった 唯一の頼みの綱は、トルコ シリアからの難民を260万人も受け入れているが 英国のEU脱退問題 ドイツでも右派ポピュリストが躍進 アゲンダ2010 2003年に労働市場と社会保障制度を大きく改革 シュレーダー 首相だけでなく議員も辞職して政界を去った 難民政策が、メルケルにとっての「アゲンダ2010」になる気がしてならない
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