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ブラック企業(その2)人材派遣大手の”クビ切りマニュアル”と労働移動支援助成金 [経済政策]

ブラック企業については、3月1日に取上げたが、今日は、 (その2)人材派遣大手の”クビ切りマニュアル”と労働移動支援助成金 である。

先ずは、2月24日付け日刊ゲンダイ「パソナが「リストラ指南書」 裏に竹中平蔵会長と650億円利権」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・安倍政権が国のカネを使って「クビ切り」奨励だ。人材会社が国の助成金による利益欲しさで、企業に「クビ切り指南書」を伝授している実態が浮き彫りとなった。クビ切り利権と言える助成規模は第2次安倍政権の誕生以降、150倍もアップ。拡充に動いたのは産業競争力会議の一員で、人材派遣大手パソナの竹中平蔵会長(64)だ。本来、労働者を守るカネのロコツな「我田引水」は絶対に許されない。
▽人材会社が利益欲しさに「クビ切り指南書」
・本紙の手元に「退職勧奨制度対象者のための面談の進め方」と題されたA4判10枚つづりの文書がある。を紹介しよう(▽は小見出し)。
パソナグループ傘下で、法人契約の再就職支援シェアトップを誇る「パソナキャリア」が作成したとみられる“指南書″だ。
・〈誰が退職勧奨に応じたか、誰にどのようなことを言ったか等の面談の内容に関しては一切伝言しないこと〉〈面談は1対1が望ましい〉〈会社に残ることが本人のキャリアのためにならないことを強調する〉――などのノウハウを次々と披露。
・〈再就職支援サービスを受けることによって、かなり高い確率で再就職が可能であることを強調する〉〈パソナキャリアで直接詳しい話を聞いてみるよう勧める〉と、サービスの宣伝も忘れない。
・さらに「面談テクニック」として、〈「今回の再就職支援の中では、その道のプロが君の適正をしっかり把握して、最もふさわしい場を紹介してもらえると思うよ」〉と、自画自賛の模範回答例まで紹介している。
・ 「かつての『追い出し部屋』に代わって、リストラ策の主流は対象社員を個別に呼び出して自主退職を促す手法です。社内外に非公表で進め、対象が誰かも知らせず、社員同士の団結も分断する。対象者は誰にも相談できずに孤立し、精神的にさいなまれるケースも増えています」(雇用問題に詳しい弁護士)
・問題の指南書は最新のトレンドに乗った内容だが、人材会社がクビ切り指南書の作成に躍起なのは利権目当て。 クビ切り指南とワンセットで、雇用保険を財源とする「労働移動支援助成金」の対象である再就職支援ビジネスで儲けるためだ。
・「離職する労働者の再就職支援を人材会社などに委託すると、企業に支給される助成金です。委託しただけで1人あたり10万円、6カ月以内の再就職実現で、さらに委託費用の一部が支給されます。上限は1人につき60万円。人材会社にすれば、助成金が企業の委託費を肩代わりし、離職者の数が多いほど、利益も増える仕組みです」(厚労省関係者)
▽竹中会長の強弁で上積みされた助成金
・怪しいのは、安倍政権によって助成金が桁違いに増えたこと。2014年度の予算301.3億円は、前年の支給実績の約2億円から実に150倍増。15年度には349.4億円まで増額された。2年間で650億円だ。
・「13年6月に政府は『産業競争力会議』の議論を踏まえ、『日本再興戦略』を閣議決定。その中で『行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換』を掲げたため、一気に予算が拡充されました」(所管の厚労省職業安定局の担当者)
・政策転換の言いだしっぺは竹中氏その人だ。13年3月の産業競争力会議ではこう訴えていた。 「今は雇用調整助成金と労働移動への助成金の予算額が1000対5くらいだが、これを一気に逆転するようなイメージでやっていただけると信じている」
・竹中氏が訴えた通り、今や雇用調整と労働移動の助成金の予算規模は本当に逆転。助成対象の再就職支援は人材企業に利益をもたらしている。竹中氏の「我田引水」について、パソナグループに見解を求めたが、締め切りまでに回答はなかった。安倍政権も黙認すれば、クビ切り支援を国是に掲げたも同然となる。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/175875

次に、2月26日付け日刊ゲンダイ「社員を末期患者扱い 人材大手が作成“クビ切り手引き”の仰天」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・末期患者が「死」を受け入れるプロセスを「クビ切り」の参考にしていた。本紙は、製紙大手の王子ホールディングス(HD)が昨年10月に退職勧奨の面談担当の社員向けに配った内部資料を入手した。表紙の左上に「厳秘」、右上には「コピー厳禁、施錠保管 プロセス終了後回収」と記された完全極秘の“クビ切りマニュアル”だ。
・作成したのは、王子HDの退職勧奨を無償で支援し、国の助成金を受ける再就職支援業務を受託した大手人材会社テンプHDの子会社だ。みっちり5時間かけて担当社員に退職勧奨のノウハウを伝授していた。
・驚くのはクビ切り対象であるローパフォーマー、いわゆるローパー社員の「心理ステージの変化」として、「キューブラー・ロスのモデル」を参考に挙げていること。この言葉は、ドイツの女性精神科医が提唱した末期患者が死を受容するまでのプロセスを指す。
 (1)自分が死ぬはずはないと「否認」
 (2)なぜ自分がこんな目に遭うのかという「怒り」
 (3)神にもすがろうとする延命への「取引」(4)取引がムダと認識し、すべてに絶望を感じる「抑うつ」
と4段階を経て、最終的に死を安らかに受け入れる「受容」にたどり着くとする学説で、マニュアルには「面談を重ねること+事前キャリア相談を経験すること+時間経過=受容(決断)につながる」なんて書いてある。
・クビ切りの対象とはいえ、従業員を末期患者になぞらえるとはムチャクチャだが、マニュアルでは「退職強要」とならないための“違法スレスレ”のリスク回避策がズラリ。面談担当の心得として「重要なのは傾聴スキル」と説き、面談における応答の基本軸として以下の“心理戦術”を披露している。
 「例:会社は将来の持続的成長を確実にするために改革を実施しなければならない→一般的にこうした変革の必要性には反対しません。こうした総論の合意形成から、対象者の社外転身の必然性につなげます」  「新体制では○○さんに適した職場を用意することは極めて難しい→対象者のこれまでの貢献には感謝する姿勢がお勧め。ただ、変革の中では今後は“適した職場”を準備することが難しい視点を強調します」
・ローパー社員を「神経戦」に引きずり込み、相手の神経が参るまで追い詰める作戦だ。最新のクビ切りノウハウは、えげつない。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/176027

第三に、2月22日付け朝日新聞「リストラ誘発しかねない再就職助成金 支給要件厳格化へ」を紹介しよう。
・事業縮小や再編で離職を余儀なくされた人の再就職を支援する国の助成金について、厚生労働省は4月から支給要件を厳格化する方針を固めた。人材会社が、企業にリストラ方法をアドバイスし、助成金が使われる退職者の再就職支援で利益を得るなどしているためだ。労働者を守るためのお金が、リストラを誘発しかねない仕組みになっている。
・支給要件を見直すのは雇用保険を財源とする「労働移動支援助成金」。企業が雇用を維持できない状況になった場合、労働者を速やかに再就職させるため、再就職支援を人材会社などに委託すると企業に支給される。委託時に10万円、6カ月(45歳以上は9カ月)以内に再就職が実現すれば委託費用の一部が支払われる。上限は1人につき60万円。
・厚労省が問題視しているのは、人材会社の関与だ。事業効率化を考えている企業に、人材会社が人員削減の手法を提案。上司が部下に退職を促す方法などを無料でアドバイスする。退職者の再就職支援は、同じ人材会社が引き受け、助成金が流れているという。「アドバイスは無料だが、最終的な利益は人材会社に入る仕組みだ」(厚労省幹部)。この仕組みだと人材会社の利益のために、必要以上のリストラが誘発されかねない。
・このため厚労省は、人材会社にこうした提案をしないよう求めたり、人材会社が関与していないことを助成金の申請手続きで企業に明記させたりすることを検討している。具体的な要件は3月末までに詰める。
・人材会社が関与したケースでは、企業が評価の低い「非戦力社員」をリストアップし、退職を迫っていた例があった。退職を勧めること(退職勧奨)自体は合法だが、何度も強く迫るなど強要すれば違法だ。退職を強要したと受けとられかねないような迫り方で、厚労省も雇用の安定を図る法の趣旨に照らして「問題なしとは言えない」(担当者)として、防止策を検討する。
・この制度は「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換を図る」(安倍晋三首相)ため、2014年3月から大企業も対象に加えるなど拡充された。予算規模も2014年度当初は前年度の150倍にあたる301億円に急増。15年度も349億円を計上した。ただ景気の回復もあり、14年度に使われたのは6億円にとどまる。
・〈国学院大・本久洋一教授(労働法)の話〉 本来は規制すべき退職勧奨を助成金で国が後押ししているようなものだ。企業が社員の再就職を人材会社に丸投げし、助成金を支給する形では、人材会社が得をするだけ。助成金が何にどう使われているかを調べるモニタリングも不十分で、無責任な支援策と言わざるを得ない。 そもそも新卒一括採用や終身雇用が根強く残る日本で、人材の流動化を進める政策は合わないのではないか。外見だけ流動化を進めようとしても、流動化が進む欧米とは似て非なるものになるのは当然だ。
http://www.asahi.com/articles/ASJ2M566MJ2MULFA015.html 

雇用調整は、本来、一時的に業績不振に陥った企業が従業員を一時帰休(レイオフ)する際に、助成金が出る制度だが、これが恒常的な不振企業(いわゆるゾンビ企業)が利用することで、従業員が好調な企業に移動するのを妨げているとの「批判」があり、「労働移動支援助成金」が安部政権下で拡充された。しかし、日刊ゲンダイの2つの記事は、人材派遣大手がこれを悪用した典型例である。幸い、厚労省が朝日の記事のように是正に乗り出すようだ。ただ、最終案がどうなったかの記事はまだ読んだ記憶がない。これから出てくるのかも知れない。
それにしても、竹中平蔵氏が産業競争力会議で、「学識経験者」の一員として(パソナ会長を表に出さずに)、「我田引水」の主張をしたとは、許し難い行為だ。彼のこうした行為については、6月22日のこのブログ「労働者派遣法の改正」でも取上げたが、こうした中立の立場を装った利益誘導は、極めて悪どい。それを承知の上で重用している安部首相も同罪だろう。
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