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日本企業のコーポレート・ガバナンス問題(その5)セブン会長引退問題 [企業経営]

昨日に続いて、今日は 日本企業のコーポレート・ガバナンス問題(その5)セブン会長引退問題 である。

先ずは、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏が4月13日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「鈴木敏文氏、「カリスマ・サラリーマン経営者」の3つの敗因」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽経営の主導権めぐる権力闘争、カリスマの奇妙な勝負
・セブン&アイ・ホールディングスの「お家騒動」が表面化した。鈴木敏文会長(CEO)が提案した、同社傘下のセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長を更迭する人事案は、賛成が過半数に満たなかったことで、4月7日に行われた取締役会で否決された。この結果を受け、鈴木氏は、次の株主総会で会長を辞任し、その後の経営体制には加わらないと、記者会見で表明した。
・この記者会見で、鈴木氏は、井阪氏の経営手腕を徹底的に批判するのと共に、自分が信任されなかったことの背景として、創業家で約10%の株式を持つ伊藤家の「世代交代」を示唆した。
・当事者の証言を直接聞くことが難しいので、正確な背後の事情は推測するよりないが、本件は、伊藤家及び井阪氏サイドと鈴木氏との間の経営の主導権を巡る権力闘争だったのだろう。筆者には、経営者としての圧倒的な力量と実績をもってこれまで会社を支配して来た鈴木氏を、同氏の「暴走」をきっかけに、伊藤家・井阪氏サイドが排除することに成功しつつあるように見える。
・鈴木氏は、コンビニエンスストアという業態を作り上げてきた、わが国の経営史に残る経営者の一人だ。われわれの生活に大きな(プラスの)影響を与えたという意味でも、経営とマーケティングのアイデアと実践の意味でも、わが国の経営史で、彼は、実質的に歴代ナンバーワン経営者であるのかも知れない。その彼が、会社が自分の意向を通すか、そうではないかを通じて、自分が会社を主導できるか否かを問うたのが、今回の人事案であり、権力闘争だった。しかし、今のところ筆者には、この勝負に、鈴木氏が敗れたように見える。
・もっとも、セブン-イレブンのあれこれを全て主導してきた鈴木氏が、いきなり「引退」を宣言したことが、フランチャイズ店のオーナーたちや個々の社員の想定外の動揺につながる可能性もある。セブン-イレブンの「鈴木敏文依存」があまりに強力であった場合、現在の形勢がひっくり返って、鈴木氏が退任を撤回する可能性もわずかだが残っていよう。勝負は未だ完全決着したわけではない。
▽「心理学」を重んじた経営者が犯した3つのミス
・「鈴木氏の負け」と筆者が判断するに至った今回の一連の問題で、鈴木氏の敗因ないしミスと思われるポイントが3つあった。 (1) 息子を会社に置いたこと、 (2) 勝負のタイミングが遅かったこと、 (3) 現社長を対外的に批判したこと、 の3つだ。
・まず、大きな持ち株を持つオーナー経営者ではない鈴木氏が、次男の康弘氏を会社に入れて、要職(取締役)に就けていたことは彼の「弱点」だった。今回、鈴木氏に対して、世論の支持が意外に盛り上がらないように見えることの原因として、鈴木氏が提案した井阪社長更迭の人事案が、鈴木氏が将来息子にセブン-イレブン及び、セブン&アイの経営を継がせようとした「世襲狙い」であると見えることの構図の拙さがある。  鈴木敏文氏ご本人は、「そんな考え(世襲狙い)は全くない」と否定するものの、「世間から見ると、そう見える」という事実に対して、彼は、もっと敏感であるべきだったろう。自身の力を過信したのかも知れないが、大衆の心を読む「心理学」の重要性を強調した経営者としては、勝負に出るに当たっていかにも不用意だった。
・そもそも、ワンマン社長が息子を自社に入社させること自体が、社長に対する人望を下げる要因だし、周囲は何も言わないだろうが、息子個人にとっても名誉な話ではない。家庭や本人の事情もあるので、入社自体を悪いとまでは言わないが、勝負に出る時期に、「世襲懸念」が出ない程度には息子を遠ざけておくべきだった。
・第二に、鈴木敏文氏が現在も個人として有能であり元気なのだとしても、年齢が83歳である。これまで同様の現役プレーヤーとして会社に貢献できるとの期待値は縮小しているといわざるを得ない。 仮に、鈴木氏が、もう15年早くに、「伊藤家を取るか、自分を取るか」と株主及び社員に対して選択を迫っていたなら、創業者で大株主である伊藤家よりも、彼が支持された可能性が十分あったのではないか。時価総額の10%よりも、鈴木氏の経営手腕が今後も発揮されることの方が価値が大きいと判断された可能性は十分あったのではないか。
・潜在的には、これまでが、そうした選択を突きつけつつ勝ち続けてきた結果だったのかも知れないが、自分自身に十分な残存価値がある間に、将来にも価値がある何かを獲得すべく、勝負をかける必要があったのではないか。
・加えて、今回、鈴木氏の決定的なミスは、公の場で井阪隆一・セブン-イレブン社長の経営手腕を批判してしまったことだ。  結果的に井阪氏が交代するにせよ、しないにせよ、彼の経営手腕の対外的価値を下げることは、セブン&アイ・ホールディングスにとって、マイナスの影響しか持たない。
・鈴木氏が井阪氏のクビを切ろうと思ったのであれば、事前に完全に手回しをして、井阪氏が自ら辞任しようとする申し出に対して、鈴木氏が慰留した、というくらいの対外的な「形」を作ることができなければ、会社の印象が(株主・投資家に対しても、顧客に対しても)悪化してしまう。今回の鈴木氏の人事案提出から自らの引退発表に至る一連の経緯は、少なくともこの点で「暴走」と呼ばれても仕方がない。普通の組織の論理からすると、許されない愚挙だ。
・対外的に組織を批判したメンバーは、組織から徹底的に排除すべきで、中途半端に影響を残すべきではないというのが、組織の論理だ。また、権力闘争は基本的に勝ち負けいずれかのゼロ・イチで決着するゲームだ。常識的には、鈴木氏の側に「残る」選択肢はもうない。
▽ノーサイドなどあり得ない
・セブン&アイ・グループ、もう少し関心を絞るとセブン-イレブンは、これからどう経営するのがいいのだろうか。この問題に関しては、まだ「対案」が発表されていない。
・どのようにやっていくべきなのかは、まずは鈴木氏以外の現在の経営陣が考えるべき問題だが、「最低の解決策(!)」は“集団指導体制”だろう。 報道に乗ったコメントとして、現経営陣の一部から、「ノーサイドで、皆で協力してやっていく」との発言があったが、これだけの権力闘争の後に実質的なノーサイドはあり得ない。もちろん、対外的には、ノーサイドで一体となってわだかまりなく経営に邁進しているという「形」をアピールすることが必要だが、二派に分かれて、お互いに相手を牽制して、足を引っ張り合うような経営が今後に始まるのが最低の選択肢だ。
・常識的には、鈴木氏が「改革案がまったく出てこない」とその経営手腕を批判した井阪セブン-イレブン社長だが、彼が会社とグループを主導して経営して行く以外に、グループが求心力を持ちつつ同時に経営のスピードを落とさずに進んでいくための道はあり得ない。
・将来、彼及び、彼をバックアップする人々の力量が不十分だったことが明らかになった場合には、別の誰かによって、彼らが排除される新たな淘汰を待つしかない。 ただ、それでも、派閥争いを抱えた集団指導体制よりはましだろう。
・付け加えるなら、これまでのリーダーであると同時に功労者であり、彼を頼る人も多いはずの鈴木敏文氏には、セブン-イレブンから、できるだけ早くに、かつできるだけ遠くに、離れてもらうことが望ましい。もちろん、大功労者なので、「終身名誉相談役」くらいの地位を新経営陣は鈴木氏に(表面上)オファーすべきだろうが、鈴木氏がキッパリと辞退するような形が、会社の運営にとっても、鈴木氏の世評においても望ましいのではないだろうか。
▽組織は権力闘争を通じて進化する
・世間的には、コンビニエンスストアという一大業態を作り上げて、そのトップ企業を主導してきた鈴木敏文氏の唐突な引退を惜しむ声が大きいのではないか。また、今回の「暴走」とも言うべき一連の事態を通じて、彼が引退に至る経緯を残念だと思う方が多いのではないか。筆者も心情的にはその通りだ。
・しかし、組織というものは、闘争を通じて進化するものでもある。以前の実力者であり功労者が、権力闘争の末に去り、新しい権力者が組織をリードするようになることは悪いことばかりではない。 もちろん、権力闘争の結果疲弊して衰えたり、無能な権力者が勝利して没落する組織が多数あるのも事実だが、そうした組織は、別の組織に取って代わられる。
・もちろん、セブン-イレブン及びセブン&アイ・ホールディングスが今後自らをどう経営していこうとするのかは、関係者(経営陣、株主、社員)が決める問題だが、あえて筆者の個人的な意見を言うなら、「5期連続増益で、交代というのは世間が認めない」と社外取締役が考えたという井阪隆一氏の手腕に期待すべきではないか。何でも自分で指示したがるトップがいなくなってみると、これまで上司の蔭で目立たなかった「改革力」も「リーダーシップ」も意外なくらい彼にはあったのだ、という事になるのかも知れないではないか。
・会社は、まずはそのストーリーを盛り立てるべくまとまるべきだし、それでだめなら、また、その時に考えたらいい。
http://diamond.jp/articles/-/89512

次に、闇株新聞が4月12日付けで掲載した「鈴木敏文氏の突然の引退で「感じること」」を紹介しよう。
・発表からやや時間がたってしまいましたが、4月7日にセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文・代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)が突然に引退を発表しました。
・本来の4月7日はセブン&アイの2016年2月通期決算が発表される日で、連結では売上に相当する営業収益が前年比0.1%増の6兆457億円、営業利益が同2.6%増の3523億円、最終純利益が7.0%減の1609億円となりました。 営業利益は5年連続で最高益を更新し、最終純利益の減益は傘下のイトーヨーカ堂・そごう・西武百貨店の閉店に伴う構造改革費用を106億円計上したからです。
・セグメント別では国内に18572店舗(前年度末比1081店舗増)、海外では北米で8500店舗、中国で317店舗を運営するコンビニエンス事業の営業利益が前年比9.9%増の3041億円と、グループ全体の営業利益の86.3%(前年は80.6%)を稼ぎ出しているようにやや偏っていますが、全体的に何の問題もない決算内容でした。
・鈴木氏はそのコンビニエンス事業の「育ての親」であり、持ち株会社と傘下のセブンイレブン・ジャパンとイトーヨーカ堂の代表取締役会長兼最高経営責任者、米セブンイレブンの会長を務める「完全なるグループの支配者」だったはずです。
・そんな鈴木氏が突然に引退を発表するに至った背景は、自らの人事案(セブンイレブン・ジャパンの井坂隆一社長の更迭)が役員会で否決されたからとも、創業家の伊藤雅俊名誉会長の支持が突然に得られなくなったからとも言われていますが、はっきりとしません。
・巷間囁かれるのは、更迭されそうになった井坂隆一氏を中心に反鈴木グループが形成され、創業家やアクティビストで株主であるサード・ポイントと連携を取りながら鈴木氏と次男の鈴木康弘取締役の追い落としを図ったクーデターだったということですが、だいたいそれに近いような気がします。
・そうすると「大変に嫌な感じ」がするところはサード・ポイントの存在と役割です。 ダニエル・ローブ率いるサード・ポイントは2015年7~9月にセブン&アイの株式を取得したようで、同年10月には業績が低迷する総合スーパーのイトーヨーカ堂の切り離し、大幅増配、米セブンイレブンの米国での分離上場などを要求していたようです。
・こういうヘッジファンドは株式をストレートに取得することはなく、海外の証券会社からデリバティブを相対で取得して資金をあまり使わずに短期的な値上がり益を追求するスタイルが多く、サード・ポイントのようなアクティビストは(デリバティブの)取得と同時に発行会社に要求を突き付け同時にマスコミも動員して短期間で利益を得ようとします。
・時間がたてばたつほどコストがかさむ仕組みなので早期決戦となります。こういうアクティビストの撃退方法は、要求があっても「のらりくらりと時間稼ぎをする」ことで、勝手に資金負担に耐えられなくなって撤退してしまいます。 ただこの辺までの要求は、アクティビストとしては一応筋が通っていました。
・ところがダニエル・ローブは本年3月27日にセブン&アイに書簡を送り「鈴木氏の次男の康弘氏をセブンイレブン・ジャパンの社長、将来的にはセブン&アイの社長に指名するとの懸念が株主の間に広がっている。サード・ポイントはセブン&アイの社長にはセブンイレブン・ジャパン社長の(今回更迭されそうになった)井坂隆一氏が最有力候補であるべきと考える」と指摘していたようです。
・これはアクティビストとしての発言とは思えないほど「稚拙」で、だいたい本年3月下旬に外部の株主が(その後に露呈する)人事抗争について知っている方が「おかしい」はずです。 これは取得コストが5400~5500円と推測されるものの本年3月下旬には株価が4800円台まで下落して焦るダニエル・ローブと、井坂隆一氏自身が中心かどうかは不明ですが鈴木氏の追い落としを図るグループが「通じて」いたと簡単に想像がついてしまいます。
・だから「大変に嫌な感じ」がするのです。 結果的には鈴木氏が引退してしまったため、今後のセブン&アイは「うるさく言う実力経営者がいなくなった後のサラリーマン経営者は途端に緊張感がなくなり、新たな抗争にうつつをぬかし業績拡大などどうでもよくなる典型例」になってしまう恐れがあります。
・鈴木氏も「あっさり」と引退した理由の中には、セブン&アイを引っ張ってきたコンビニ事業が「もうそれほど伸びシロがない」と肌で感じていたこともあると感じます。
・セブンイレブンの成長神話と1人勝ち状態は、鈴木氏の引退と共に「急速に」終焉を迎えるような気がします。セブンイレブン以外のセブン&アイは、もともと「ガラクタ」ばかりなので、グループ全体の勢いも「急速に」落ちてしまうことになります。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1700.html

山崎氏の冷徹な組織原則に基づいたクールな分析は、小気味よく全く違和感はない。
闇株新聞が指摘する「大変に嫌な感じ」は、いつもながら鋭くポイントを突いている。ダニエル・ローブが、人事抗争を書簡を出す前に事前に知っていたのは、確かに「通じて」いるグループがいたこと以外には考え難い。ただ、サード・ポイントは昨年10月にはイトーヨーカ堂などの不採算部門の切り離しを要求していた。とすると、創業家の伊藤雅俊名誉会長とはこの点では、立場が異なる気もする。
日本の経営者には「現場第一主義」を掲げ、営業の第一線訪問に汗をかく人間が多いが、鈴木氏は、数字に基づき仮説を立て、それを検証するという科学的手法を持ち込み成功した例外的人物だった。それでも、「世襲狙い」問題まで抱えていたとは、カリスマの鈴木氏といえども、やはり「ただの人」だったのかも知れない。
明日、金曜日は更新を休むので、土曜日にご期待を!
タグ:コンビニエンスストア 鈴木敏文 人事案 ダイヤモンド・オンライン 闇株新聞 山崎 元 日本企業のコーポレート・ガバナンス問題 (その5)セブン会長引退問題 カリスマ・サラリーマン経営者」の3つの敗因 ・セブン&アイ・ホールディングス 「お家騒動」 取締役会で否決 鈴木氏は、次の株主総会で会長を辞任 井阪氏の経営手腕を徹底的に批判 伊藤家の「世代交代」を示唆 伊藤家及び井阪氏サイドと鈴木氏との間の経営の主導権を巡る権力闘争 業態を作り上げてきた、わが国の経営史に残る経営者の一人 この勝負に、鈴木氏が敗れた フランチャイズ店のオーナーたちや個々の社員の想定外の動揺につながる可能性も 犯した3つのミス 息子を会社に置いたこと 勝負のタイミングが遅かったこと 現社長を対外的に批判したこと 世襲狙い 決定的なミスは、公の場で井阪隆一・セブン-イレブン社長の経営手腕を批判 対外的に組織を批判したメンバーは、組織から徹底的に排除すべきで 権力闘争は基本的に勝ち負けいずれかのゼロ・イチで決着するゲーム ノーサイドなどあり得ない 組織は権力闘争を通じて進化する 鈴木敏文氏の突然の引退で「感じること」 何の問題もない決算内容 完全なるグループの支配者 井坂隆一氏を中心に反鈴木グループが形成 創業家やアクティビストで株主であるサード・ポイントと連携 鈴木氏と次男の鈴木康弘取締役の追い落としを図ったクーデター 「大変に嫌な感じ」がするところはサード・ポイントの存在と役割 イトーヨーカ堂の切り離し 、大幅増配、米セブンイレブンの米国での分離上場 アクティビス 早期決戦 井坂隆一氏が最有力候補であるべきと考える」と指摘 アクティビストとしての発言とは思えないほど「稚拙」 本年3月下旬に外部の株主が(その後に露呈する)人事抗争について知っている方が「おかしい」はずです 取得コストが5400~5500円と推測 本年3月下旬には株価が4800円台まで下落して焦るダニエル・ローブ うるさく言う実力経営者がいなくなった後のサラリーマン経営者は途端に緊張感がなくなり、新たな抗争にうつつをぬかし業績拡大などどうでもよくなる典型例」になってしまう恐れがあります 成長神話と1人勝ち状態 鈴木氏の引退と共に「急速に」終焉を迎える
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