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東芝不正会計問題(その18)医療売却の問題点、わずか58億円の利益水増しの「裏」 [企業経営]

東芝不正会計問題については、3月20日に取上げた。今日は、(その18)医療売却の問題点、わずか58億円の利益水増しの「裏」 である。

先ずは、3月28日付けダイヤモンド・オンライン「東芝が医療売却でキヤノン・富士に迫った仰天要求」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・3月17日にキヤノンへの売却が決まった東芝の医療子会社・東芝メディカルシステムズ。売却金額は6655億円。価格がつり上がった熾烈な買収合戦の裏で何があったのか。本誌の調べで、東芝が驚くべき要求を行っていたことが分かった。
・事態が動いたのは2月末。日を追うごとに財務悪化に歯止めがかからない東芝が、入札参加者に出したリクエストは以下の通り。
 (1)買収金額の2割を3月24日までに支払うこと。いかなる理由があっても東芝は返済しなくてよい。
 (2)残り8割の金額は3月末までに支払う。仮にクロージング(事業譲渡)ができない結果になっても、うち350億円について東芝は返済しなくてよい。
・この要求に対して、「(コニカミノルタと組んだ)英ペルミラや(三井物産と組んだ)米KKRら投資ファンドは、グローバルスタンダードから逸脱している」(関係者)と憤りをあらわにして、実質的には戦線離脱。この時点で、キヤノンと富士フイルムホールディングスの一騎打ちとなった。
・両社共に、破格の条件引き上げを行った。最終的には負けてしまったが、「富士は医療子会社の買収と引き換えに、東芝本体への増資引き受けまで提案していた」(入札参加者)という。
・多数の企業が群がり、「最初は、誰しもが欲しがる案件だった」(電機メーカー幹部)はずのディールが、次第に東芝本体の救済色を強めていった。東芝が何よりも優先したのは、医療子会社の行く末ではなく、3月末までにカネを手にするというデッドラインだった。
▽入金優先の技巧スキーム
・ここにきて、勝ったキヤノンのスキームが問題視されている。
・主要国の競争法ルールでは、当局に株式取得を届け出てから一定期間(日本の場合は30日)を経過するまでは株式を取得してはならない、という規定がある。キヤノンが独占交渉権を得たのが3月9日。このタイミングで、キヤノンが買収手続きを始めたとしても、到底3月末に間に合うように株式は取得できず、東芝への入金もできない。
・そのため、キヤノン陣営は極めてテクニカルなスキームを編み出した。競争法手続きの要らない特定目的会社MSホールディングス(MSH。資本金3万円)を設立し、一時的にこの会社が東芝メディカルを買収したことにして、MSHから東芝へ入金を済ませたのだ。リリースでは、「MSHは独立した第三者」となっているが、その代表者として、御手洗冨士夫・キヤノン会長と近い宮原賢次・住友商事名誉顧問が名前を連ねている。
・果たして、第三者的存在と言い切れるのか。法の網をくぐり抜けるようなディールに、「脱法行為との議論が巻き起こるリスクがある」(競争法に詳しい弁護士)。波乱含みのディールになった。
http://diamond.jp/articles/-/88599

次に、3月28日付けダイヤモンド・オンライン「巨額粉飾事件? 東芝が新たな利益水増しを発表。 わずか58億円の自主的発表に違和感あり オリンパス事件で手口を暴いた「闇株新聞」が抉る!」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・昨年5月、粉飾決算ならぬ「不適切会計問題(?)」が発覚した東芝。第三者委員会の徹底調査で膿を出し切り、今年に入ってからは事業の売却や再編で立て直しを図っているところですが、3月15日新たに計58億円の利益水増しが判明したと公表しました。すでに関係者の処分を決め、監査体制の強化を図るとも。しかし「オリンパス事件」発覚当初にその手口を暴いた刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』は、この発表に"違和感"があるとしています。東芝はオリンパスを上回る巨額粉飾会計事件となるのか!? 
・3月15日、東芝は昨年発覚した不正会計問題で新たに7件、計58億円の利益水増しが判明していたと公表しました。 2015年第2四半期と第3四半期にかけて損失計上していたものの、不正な利益水増しだったとはしておらず「情報開示に問題があった」というのです。
・同社は2015年9月にも、規定より4カ月も遅れて2015年3月期連結決算を発表し、2009年3月期から2015年3月期までに税引き前利益で2248億円の不正な水増しがあったと公表しています。このたび公表された58億円を加えると2306億円だったことになります。
・今回の公表で東芝は担当常務の報酬カットなど関係者の処分を行い、社外取締役(公認会計士)が4月1日付で常勤監査委員に就任、監査体制の強化を図るとしていますが、どうにも違和感があります。
▽自発的に58億円の不正会計を公表し 関係者の処分を公表したのには裏がある!?
・なぜなら2015年7月に第三者委員会の調査報告書が公表され、そこで過去の帳簿を徹底的に洗って2248億円の不正会計が「発見」されたはずです。 ところが本年2月4日には2016年3月期連結決算で営業損失が4300億円、最終純損失が7100億円になるとの「唖然とするような」業績の大幅下方修正を公表しています。
・その間にも昨年11月には子会社・ウエスティングハウスが2012~2013年度に合計13億2600万ドル(1500億円)もの減損を「こっそりと」行っていたことを指摘され、しぶしぶ認めました。 現時点でも東芝はウェスティングハウスの3441億円にも上る「のれん」を1円も減損しておらず、上記7100億円の純損失予想にも1円も反映していません。それでも2016年3月時点で東芝の純資産は1500億円ほどまで減少するため、ウエスティングハウスの現状を考慮すると「すでに大幅な債務超過」に陥っていることになります。
・そんな1000億円単位の損失がどこからともなく次々と出てくるような「おおらかな」東芝が、桁が2つ少ない58億円の、しかもすでに計上済みの損失が不正な利益水増しだったとわざわざ公表し、関係者の処分と監査体制の強化まで行っているのはなぜでしょう。
・本誌は、東芝が2016年3月期決算に計上する7100億円の純損失には、まだ公表していない過去の不正な利益水増しが「かなり」含まれており、あとでバレないようにあらかじめ58億円だけの不正を自首してウヤムヤにしてしまうつもりなのではないかと見ています。
▽7100億円に過去の不正を紛れ込ませ「最終処理」する意図はないか!?
・つまり「2016年3月期にも58億円の不正な利益水増しがありました。すでに関係者を処分し社内の監査体制を強化しており、今後はこのようなことはございません」としておいて7100億円の純損失を計上するわけです。 4300億円と予想されている営業損失の内訳も含め、この7100億円の中に過去の不正な利益水増しの「最終処理」が1円も含まれていないとは言い切れません。
・オリンパス事件では、過去から「飛ばしていた」最大1178億円の簿外損失を、M&Aの際に過剰な「のれん」を計上するなどで簿内に取り込んだところが犯罪とされました。 東芝は事件化していませんが、まさにこれから作業する2016年3月期の決算処理のなかで過去の不正な利益水増しの「最終処理」が行われる可能性があるため、本紙でもしっかりと「実況中継」していくつもりです。何しろ7100億円の範囲内で行われるなら「やりたい放題」となるはずだからです。
・東芝は公表分だけで2306億円の不正な利益水増しが行われており、あれだけ大騒ぎされたオリンパス事件の最大不正額である1178億円の2倍もあります。 これだけでも刑事事件化すべきであり、確かに捜査当局の中ではそのような動きもあるようですが、まだまだ何とも言えません。
・当初は金融庁による73億円の課徴金だけで何ごともなかったかのように済まされようとしていた東芝の「不適切会計問題」ですが、刑事事件化する可能性も残っています。名門企業になるとなかなか手を付けようとしない捜査当局が、重い腰を上げるのはいつなのか!? 独自の視点と鋭い切り口で闇の裏側を解説する金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』の続報と”実況中継”にもご期待ください。
http://diamond.jp/articles/-/88487

東芝が入札参加者に出していた要求は、同社の窮状からすれば理解できなくもないが、競争法手続きを不要にするため、特定目的会社スキームまで使い、しかもその「第三者的存在」が疑われるようであれば、「脱法行為」とされる余地が十分にあろう。それにしても、この特定目的会社スキームは、昨日取上げたタックスヘイブンでのペーパーカンパニーと似ていなくもない。
わずか58億円の利益水増しには、私も違和感は抱いたが、そのモヤモヤを闇株新聞の記事が解いてくれたようだ。「7100億円も純損失には、まだ公表していない過去の不正な利益水増しが「かなり」含まれており、あとでバレないようにあらかじめ58億円だけの不正を自首してウヤムヤにしてしまうつもりなのではないかと見ています」 とは明快な謎解きだ。刑事事件化は、東芝が名門というだけでなく、抱えている原子力事業が「東芝にとっての救い」となっているのかも知れない。
タグ:東芝 不正会計問題 ダイヤモンド・オンライン (その18)医療売却の問題点、わずか58億円の利益水増しの「裏」 東芝が医療売却でキヤノン・富士に迫った仰天要求 キヤノン 売却 東芝メディカルシステムズ 芝が驚くべき要求 投資ファンドは、グローバルスタンダードから逸脱している」(関係者)と憤りをあらわにして、実質的には戦線離脱 キヤノンと富士フイルムホールディングスの一騎打ち 月末までにカネを手にするというデッドライン キヤノンのスキームが問題視 主要国の競争法ルール 当局に株式取得を届け出てから一定期間(日本の場合は30日)を経過するまでは株式を取得してはならない 競争法手続きの要らない特定目的会社 独立した第三者 脱法行為との議論が巻き起こるリスク 巨額粉飾事件? 東芝が新たな利益水増しを発表。 わずか58億円の自主的発表に違和感あり オリンパス事件で手口を暴いた「闇株新聞」が抉る! 新たに計58億円の利益水増し 2015年第2四半期と第3四半期にかけて損失計上 情報開示に問題があった 自発的に58億円の不正会計を公表し 関係者の処分を公表したのには裏がある ウエスティングハウス 合計13億2600万ドル(1500億円)もの減損 東芝はウェスティングハウスの3441億円にも上る「のれん」を1円も減損しておらず ウエスティングハウスの現状を考慮すると「すでに大幅な債務超過」 7100億円の純損失には、まだ公表していない過去の不正な利益水増しが「かなり」含まれており、あとでバレないようにあらかじめ58億円だけの不正を自首してウヤムヤにしてしまうつもりなのではないか やりたい放題 刑事事件化
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