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不正会計(東芝以外も含む) [企業経営]

昨日は、東芝不正会計問題を取上げたが、今日は、不正会計(東芝以外も含む) である。

先ずは、2月13日付け日刊ゲンダイ「上場企業の粉飾会計が過去最多…背景に現場へのノルマ圧力」を紹介しよう。
・東芝が2016年3月期決算予想を、過去最大の7100億円の連結最終赤字に下方修正した。“粉飾決算”の代償はとてつもなく大きかったが、実は東芝に限らず、こうした“怪しい”決算を明らかにする上場企業が増えていることが分かった。
・東京商工リサーチによれば、2015年度に「不適切な会計・経理」を開示した企業は43件(2月9日まで)。07年4月の調査開始以来、年度ベースでの最多記録を更新した。そのうえ、不適切な内容も「経理処理の間違い」などの単純ミスより「粉飾」の方が多く、全体の4割以上を占め、最多だった。
・見過ごせないのは、東証1部上場企業が20件とダントツだったことだ。東証2部が8件、ジャスダックほかが15件。以前は新興企業の不慣れな経理担当者のミスが目立ったが、ここへきて、大手企業の“確信犯”が急増しているのである。背景には、どうやら厳しいノルマ達成を求める経営側のプレッシャー強化がありそうだ。東芝の不正会計の温床となった“魔の言葉”「チャレンジ」が他の企業でも横行しているようなのだ。
・「東芝の『チャレンジ』と絡めてしまいますが、やはりどこも営業管理や予算管理が厳しくなっていて、現場はその達成が難しくなると、ペンをなめなめして数字をつくるという風潮になってしまっているのです。全体の開示件数が増えているのは、ネガティブ情報は隠すよりも開示した方がいいという最近の傾向も影響していると思います」(東京商工リサーチ情報本部・押野健史氏)
・東証1部で「不適切な会計」を明らかにした企業は別表の通り。子会社や関連会社の不正が際立つ。粉飾以外に着服横領など問題のあるケースも増えている。
・世界経済不安や異常なまでの円高加速など、今後は企業業績の悪化が避けられそうにない。東芝を反面教師に、経営者や社員のコンプライアンス意識がますます重要になってくる。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/175193/1

次に、元産業再生機構COOで経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEOのまた、 冨山和彦氏が1月28日付け東洋経済オンラインに寄稿した「不正会計への道は「善意」で舗装されている まじめな日本企業が陥る「本土決戦」思考」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・カネボウやJALを再生させた日本のガバナンス経営の第一人者が、日本の企業統治の問題点や、今後求められるガバナンスのあり方を解説する。
・企業が不正を行うケースには、いくつかのパターンがある。たとえば大王製紙のように、オーナー経営者が会社を私物化し暴走するパターン。これは別に日本に限らず、世界中どこでも見られる現象だ。
・しかし今回の東芝の事件のように、社長をはじめ優秀な幹部社員たちが「まじめに」「仲間のためを思い」コツコツと不正を積み重ねるというのは、日本独特の病理である。なぜこうしたことが起こるのかを、考えてみよう。
▽不正を見抜くことは社外取締役の責務ではない
・最初にはっきりさせておきたいことがある。マスコミの記事で、「経営陣を監視する立場の社外取締役がいながら、なぜ不正が見破れなかったのだ」といった、ガバナンスの無力を嘆く論を目にすることがある。しかしこの主張は、やや的外れなのである。その理由は2つある。1つは、会社が本気で綿密に実行した粉飾決算を社外取締役が見抜くことはほぼ不可能だからだ。もう1つの理由は、社外取締役の本来の責務が、そこにないからだ。後者について、少し補足しよう。
・そもそも、不正会計とか粉飾決算というものは、あくまで結果に過ぎない。誰も、やりたくてやっているわけではなく、「結果としてやってしまった」ものなのだ。では、なぜ「やってしまう」のか。
・オリンピックを考えてみてほしい。競技において、不正行為や、ドーピングに手を染めてしまうのは「メダルがとれないかもしれない」「出場できるかできないか微妙」という選手だ。金メダルが確実視されている人が、自分から記録をごまかしたりすることは、まずない。
・企業も同じである。事業がきちんと収益を生み出し、利益をあげているならば、不正会計の誘惑は生まれない。だが、不幸にして事業が稼ぐ力を失ってダメになってしまうこともある。そのときに、当該事業があたかも順調であるかのように見せかけたい衝動に駆られ、不正会計や粉飾が「結果的に」起きるわけである。
・そして社外取締役の本来の役割は、そもそも不正会計をする必要がないくらいに、企業がしっかりと収益をあげ続けられるよう、たとえばある事業が不振に陥っていれば「この事業はおかしい」と進言するなどして、外部から経営陣を支援することである。決して、「結果」としての不正会計を見破ることではないのだ。
・さて、健全に事業が収益を生み出すよう舵取りをする主役は、もちろん経営者である。もし事業の回復が見込めないなら撤退する決断も下す必要があるだろう。しかし、こうした決断を先送りにし、結果的に被害を拡大させる経営者は、特に日本では後を絶たない。
▽不正会計への道は善意で舗装されている
・おそらく経営者も「構造的にこの事業は負け戦になっている」とか「もう自社の事業単位だけではやっていけない」ということはわかっているはずだ。シャープの液晶も東芝の家電も、冷静に考えればそれは明々白々なのだから。要は「どこで撤退を決断するか」だけなのである。しかし、日本企業の経営者はこれができないのだ。これは「太平洋戦争をもっと早く終結させればよかった」という議論と同じで、長引けば長引くほどよくない。しかし会社という共同体内だけで議論をしていると、できるだけ「昭和20年8月15日」が来るのを引き延ばそうということになりがちなのだ。
・日本的企業は極めて同質的な共同体であり、その内部においては「現状の共同体内の調和をできるだけ乱してはいけない」という暗黙の同調圧力が働く。特にありがちなのは、かつて企業全体の収益に非常に貢献した伝統事業――シャープであれば液晶、カネボウであれば繊維、東芝であれば家電など――にメスを入れるということがたいへんなタブーになってしまうことだ。社長自身、あるいは前社長で自分を後任に指名した会長がその事業部出身であればなおさらだ。よほど会社が追い込まれてからでないと「メスを入れるのも仕方がない」というコンセンサスは得られず「共同体内の不文律を乱す裏切り行為」と見なされ、社内で権力を維持することができなくなるのだ。
・また当該部門も、絶対に負けを認めない。それは自らの保身のためというより、まじめだからこそ、「まだやれる」「がんばらせてくれ」と言うのだ。もちろん「シャープとして液晶事業をなんとかしたい」のであり「ジャパンディスプレイの一部としてがんばる」とか、ましてや「サムソン電子の一部としてがんばる」という考えは、その共同体の中には存在しない。結局、できるだけ「8月15日」を引き延ばそうとして、「次は沖縄で決戦だ」「本土で決戦だ」と、ジリジリと破滅の道を進むのだ。
・そして、ここが日本的企業の「たちの悪い」ところなのだが、こうした共同体内の調和を守ろうという行為は、悪意ではなく善意で行われていることである。誰かが私利私欲のために悪意をもってそうしているなら、それを暴けば解決する。しかし、太平洋戦争時に本土決戦を主張した青年将校と同じで、彼らは極めて善意で、まじめに、共同体内の調和を守ろうとしているだけなのだ。そうして被害を拡大させ、決定的なダメージを受けて、ようやく「仕方がない」とポツダム宣言を受け入れるのだ。もっと早く受け入れていれば、あるいは、自分からポツダム宣言を起草していれば、被害はもっと小さなものになることを知っているのに、である。
・これは日本人の性(さが)であり、日本の組織が構造的、あるいは歴史的に抱え続けている構造的欠陥である。これはもう宿命ともいっていい。
・さて、事態が悪化していて現実的な打開策の見込みも見い出せないのに、そこから撤退する決断を下せずに、ジリジリと被害を拡大させていく組織が次にすることは何か。それは、軍であれば大本営発表であり、企業であれば不正会計や粉飾決算だ。 日本の企業の強みの一つに「すりあわせ」があるが、不正会計や粉飾決算は、実はある意味、「すりあわせ」なのである。
▽不正会計は日本のお家芸の産物
・プリウスなどのハイブリッド自動車は、日本が世界に誇る「ものづくり」の結晶である。そして、日本の「ものづくり」の強さの源泉の一つが「すりあわせ」だ。「スピードの出るエンジンをつくりたい」「でも燃費はよくしたい」というように、「あれもこれも」の欲求を、根気よくすりあわせていくことで、ハイブリッドエンジンが生まれたのだ。こうした「あれもこれも」という「すりあわせ」は、日本企業の共同体としての特性、つまり、団結力、連続性、あうんの呼吸でものごとが動いていくことの、なせる技である。
・一方で、こうした共同体としての特性や「すりあわせ」は、ものづくりにおいてはプラスになるものの、経営においては必ずしもそうではない。
・たとえば今のシャープにとっての液晶事業は、撤退「する」か「しない」か、つまり「あれかこれか」のどちらかしかない。ところがそんな問題ですら、「あれもこれも」で解決しようとしてしまう日本企業は多い。当然、解決できないから、最後は「あれもこれも」を丸くおさめる方法として、不正会計に行き着いてしまうのである。「撤退したくない」「でも業績はいいことにしたい」という要望を「すりあわせ」た結果が不正会計や粉飾決算なのだ。
・日本企業の共同体意識やそこから培われる「すりあわせ」は、日本人にとってこの先も強みとなるが、世の中には、すりあわせてはいけないものもあるのだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/101774

第一の記事は、東京商工リサーチの2月9日まで集計では43件だったが、4月14日に発表された最終集計では58件となった。
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160414_01.html
第二の記事の、「日本的企業は極めて同質的な共同体であり、その内部においては「現状の共同体内の調和をできるだけ乱してはいけない」という暗黙の同調圧力が働く」、「共同体内の調和を守ろうという行為は、悪意ではなく善意で行われている」などの指摘は、鋭くポイントを突いている。この点については、頻繁に紹介する郷原信郎氏が、「アメリカでの違法行為は個人的利益目的で単発的なムシのようなものだが、日本での違法行為は組織の利益目的で継続的・恒常的なカビのようなもの」としているのに、通じるものがある。
また、冨山氏が、「不正会計は(「すりあわせ」という)日本のお家芸の産物」と指摘しているのも、考えさせられる点だ。
過度な共同体意識からの脱却なしには、不正会計の土壌は変わらず残ることになりそうだ。
タグ:不正会計 (東芝以外も含む) 日刊ゲンダイ 上場企業の粉飾会計が過去最多…背景に現場へのノルマ圧力 東芝 東京商工リサーチ 2015年度 「不適切な会計・経理」を開示した企業は43件(2月9日まで) 最多記録を更新 単純ミスより「粉飾」の方が多く、全体の4割以上を占め、最多 大手企業の“確信犯”が急増 背景には、どうやら厳しいノルマ達成を求める経営側のプレッシャー強化 冨山和彦 東洋経済オンライン 不正会計への道は「善意」で舗装されている まじめな日本企業が陥る「本土決戦」思考 企業が不正を行うケース オーナー経営者が会社を私物化し暴走するパターン 社長をはじめ優秀な幹部社員たちが「まじめに」「仲間のためを思い」コツコツと不正を積み重ねるというのは、日本独特の病理 不正を見抜くことは社外取締役の責務ではない 不正会計への道は善意で舗装されている 日本的企業は極めて同質的な共同体 その内部においては「現状の共同体内の調和をできるだけ乱してはいけない」という暗黙の同調圧力が働く かつて企業全体の収益に非常に貢献した伝統事業 にメスを入れるということがたいへんなタブーになってしまうことだ 共同体内の不文律を乱す裏切り行為 結局、できるだけ「8月15日」を引き延ばそうとして、「次は沖縄で決戦だ」「本土で決戦だ」と、ジリジリと破滅の道を進むのだ こうした共同体内の調和を守ろうという行為は、悪意ではなく善意で行われている 極めて善意で、まじめに、共同体内の調和を守ろうとしているだけなのだ 日本の組織が構造的、あるいは歴史的に抱え続けている構造的欠陥 不正会計や粉飾決算は、実はある意味、「すりあわせ」なのである 不正会計は日本のお家芸の産物 郷原信郎 アメリカでの違法行為は個人的利益目的で単発的なムシのようなものだが 日本での違法行為は組織の利益目的で継続的・恒常的なカビのようなもの
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