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ネットビジネス(その1)アマゾン「お坊さん便」 [社会]

やや難しいテーマが続いたので、今日は、目先を変えて、ネットビジネス(その1)アマゾン「お坊さん便」 を取上げよう。

先ずは、2月22日付け日経ビジネスオンライン「仏教会騒然のアマゾン「お坊さん便」 現役僧侶6人、覆面座談会で語った本音」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・葬儀の仲介などを手掛けるベンチャー「みんれび」(東京都新宿区)が昨年12月から、「僧侶の手配サービスチケット」をアマゾンで販売し始めた。その名もズバリ「お坊さん便」だ。
・お坊さん便は、寺や僧侶と接点がない都市部の人を主たるターゲットにしている。四十九日や一周忌、三回忌といった法要、墓回向、仏壇の魂抜きなどの際、いとも簡単に「供養が買える」のがメリットだ。決済(価格は3万5000円~、全国一律料金)はクレジットカードでできる。チケットを購入すれば、あとは決められた日時・場所(葬祭会場や墓地など)に手配された僧侶がやってきて、お経を唱えてもらうだけだ。
・お坊さん便自体は2013年から、同社のホームページなどで販売を始めてはいた。だが、アマゾンに出店した昨年末から注文が急増。同社は販売数を「アマゾンとの契約上、非公開」とするが、販売直後の1年間に比べて、2015年は7倍にも膨れ上がったとしている。 「問い合わせ数もうなぎ登り。2016年は1万2000件を見込んでいる。そのうち多くが受注に至っている」(同社)。
・寺院と檀家との関係性が希薄になりつつある昨今だ。ネットという手段を用いれば、布施の料金に頭を悩ます必要はないし、寺とコミュニケーションを取る必要もない。また葬送においても地域を巻き込んだ大規模な形態から家族葬、直葬といった簡素なものにシフトしている。お坊さん便は、現れるべくして現れたサービスと言える。
・同社は「お寺とつながりをもたない人は多くなる一方。しかし、供養したい心は残っている。そこをしっかりとケアしていくのが我々の役目」とその意義を語る。
▽ニセ僧侶の見破り方
・だが、心配なのは手配されてくる僧侶の質をどう担保するかだ。極端に言えば、「本物の僧侶」と「偽物の僧侶」をどこで判別するのか。
・宗教年鑑によれば、仏教系の包括宗教法人数は168もある。さらに宗派に属さない単立寺院は2500以上。仏教系新宗教なども含めれば数限りなく、僧侶の“見た目”も様々。僧侶(教師)養成課程はそれぞれの宗派によってまるで異なる。僧侶資格は国家試験ではないため、「まともな伝統仏教の僧侶資格を得たお坊さん」かどうか、判断が難しい。つまり、袈裟を着て、お経が唱えさえすれば、なりすましは可能だ。
・だが同社はその点、「心配は無用」という。同社に登録する僧侶は既に450人とかなりの数だ。だが登録対象の宗派を代表的な7宗(天台・真言・浄土・浄土真・曹洞・臨済・日蓮)に限定し、「審査」をしやすくしているという。また、自坊の所在なども調べて、複合的に判断する。
・「登録を希望するお坊さんには宗門が与えた資格免状を提示してもらう。数多くのお坊さんと接しているので7宗の免状の書式スタイルは分かっている。偽物を提示されてもすぐに分かる。また当社とのコミュニケーションを通じて、僧侶の資質がある程度判断できる」と話す。
・担当者は続ける。「大手教団に所属する和尚さんでも、エラそうな人はいる。法事をダブルブッキングしたり、急病で倒れて『行けない』なんてトラブルはあった。しかし、逆に別のお坊さんをすぐに手配できるのも多数の僧侶を抱えている当社の強み」としている。
▽僧侶がみんれびに登録する理由
・依頼主の多くは東京・大阪といった大都市圏。寺との付き合い方を知らない人は多い。しかし、同社によれば「困っているのは依頼主だけではない。お坊さんも困っている」という。どういうことか。
・実は今、寺族(寺院を運営する者)の「核家族化」が進んでいる。特に地方の寺院では、大都市圏に「出稼ぎ」に出る僧侶が多く見られる。 みんれびでは現在、登録待ちの僧侶も100人ほどおり、増える一方だと言う。同社はこの傾向について、「田舎から都会に出てきた僧侶が、布教する機会を増やしたいと考えている。これまでは、布教の場がなかった」と分析している。表向きはその通りだろう。
・だが仏教界の実態は、もっと深刻だ。地方都市における寺院収入は年々下がり続けている。檀家の減少、墓の都市への改葬、地域経済の衰退などによって貧困にあえぐ寺院が増えている。例えば浄土真宗本願寺派が2009年に実施した調査では、村落にある寺院の60%以上が年収300万円以下だ。他宗でも似たり寄ったりの状況だ。
・この経済力では住職ひとりが食べていくのも精一杯だ。後継者は、自坊を継ぐまでどこかに働きに出なければならない。「出稼ぎ」の形態は様々だ。民間企業に就職するケースもあれば、大寺院や宗門に「勤務僧」として雇われるケースも多い。このお坊さん便に登録する僧侶たちが増えている背景に、「食えない僧侶」の存在がいることは間違いない。
・仏事の手段にこだわらない都会人と、貧困にあえぐ僧侶の両方のニーズが満たせるのがこのサービス。そう捉えれば、ウィン・ウィンのように思える。
▽仏教会が猛抗議
・がしかし、そうは問屋がおろさない。アマゾンでこのサービスが紹介されるや否や、仏教界が猛反発したのだ。仏教教団105団体が加盟する全日本仏教会(全日仏)は12月24日付けで理事長談話をホームページ上で公開した。
・「お布施を営利企業が定額表示することに(全日仏は)一貫して反対してきた。お布施は、サービスの対価ではない。同様に戒名も商品ではない。アマゾンのお坊さん便僧侶手配サービスの販売は、まさしく宗教行為をサービスとして商品にしているものであり、およそ諸外国の宗教事情をみても、このようなことを許している国はない」――。
・さらに、アマゾンに対し「世界的な規模で事業を展開するアマゾンの、宗教に対する姿勢に疑問と失望を禁じ得ない。しっかりと対応していきたい」と抗議した。
・みんれびでは「(全日仏の)反発は想定内。だが、いまのところ、うちには直接抗議はない。仮に抗議を受けても、このサービスを止める訳にはいかない」としている。
・仏教界が恐れるのは宗教行為が商業に飲まれてしまうことによる、組織の弱体化だ。特にサービスの対価として布施金額が明示されてしまうと、宗教行為が「サービス業」として既成事実化しかねない。 宗教とサービス業との垣根があいまいになれば、国は宗教法人に対する課税の論議へと舵を切る可能性がある。それでなくとも寺院の大部分は経済的に厳しく、例えば法人税や固定資産税などが導入されれば、死活問題だ。
▽現場の僧侶に意外な反応
・では現場の僧侶の意見はどうだろう。全国の30代~40代の若手僧侶6人に集まってもらい、お坊さん便の是非について意見交換する機会があった。結果、お坊さん便に「賛成」が2人、「どちらともいえない」が4人、明確に反対の立場を取った僧侶はゼロだった。その一部の発言を紹介しよう。
・「うちの寺は過疎地にある。地方に出ていった檀家を追いかけてつなぎ止める立場だ。ネットという手段でも、新たなつながりができればいいと思う。だがどこか寂しさ、空しさはある」(北海道在住の住職)
・「もはや菩提寺や墓は自分の代で守れなくなる、という人が多発している現実がある。お坊さん便のような受け皿が存在することはいいことだと思う。その点、新宗教はそうした受け皿を熱心につくって勢力を拡大してきた。一方で既存仏教は伝統にしばられ、"頼れない存在"になってきたのだと思う。我々も反省が必要だ」(大阪府在住の副住職)
・「時代の流れ、社会の要請があり、こうしたビジネスが受け入れられているのは事実。しかし、宗教行為が完全にビジネスに成り代ってしまうことには危惧を覚える」(東京都在住の副住職)
・「金額が提示されている段階で、それは完全にビジネスだということ。宗教行為とは言えない。そもそも経を読むだけが僧侶の役割ではなく、むしろ法を説き、心のケアに務めることのほうが大事。そうした本来の宗教行為がこのサービスで担保されているのか疑問」(東京都在住の副住職)
・「電車の網棚にワザと骨壺を置き忘れたりする時代だ。このサービスはもろ手を挙げて賛成する立場ではないが、ネットを通じてでも供養しようと思う人がいるのは、まだ救いだ」(長野県在住の副住職)
・現場の僧侶ですら、見解が分かれている。宗教行為の商業化についての是非を論じるのはとても難しいし、賛成と反対の立場が議論しても、お互い理解し合えるとも思えない。
・ひとつ言えることは、宗教行為が善であり、商業行為が悪であるという決めつけは危険だということ。その逆は、もっと危険かもしれない。 なぜ、このようなサービスが現代に登場したのか。翻れば、お坊さんを必要としていることの表れではないか。僧侶たちはこのシグナルを、敏感に察知し、人々に受け入れられるような体制づくりをしていかなければ、日本の仏教に未来はない。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/021200166/?P=1

次に、3月20日付け日刊ゲンダイ「謎が解明? “お坊さん便”でわかった仏教界の「格差地獄」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・法要を営む際に、「アマゾン」で申し込むと僧侶を派遣してくれる「みんれび」のサービス「お坊さん便」(3万5000円~)。全日本仏教会が「アマゾン」に対しサービス停止を要求して騒ぎになっているが、賛否両論飛び交う中で浮かび上がってきたのが、僧侶を取り巻く格差。袈裟の下に隠された世界は、悟りと無縁のサラリーマンにとって驚くことばかりで――。
・「仏教会」がアマゾンに中止を求めた理由は、「僧侶の宗教行為を定額の商品として販売することに大いなる疑問を感じる」というものだ。
・「仏教界には、お布施は“お気持ち”なので、定額で示すものではないという建前があります。“定額”として明示されると、法要儀式の商品化につながり、その料金を払えない人は法要を行えなくなる、という理屈なのです」 こう説明するのは、「お坊さん便」に派遣僧侶として登録している近畿地方のある住職。しかし実際には、葬儀や法要布施の額を寺側が示して要求するケースも少なくない。戒名も、ランクに応じて布施の額が変わるとされる。
・「お坊さん便に反発している僧侶の多くは、外車を乗り回しゴルフ三昧の、いわゆる“宗教貴族”。ごく一握りのエリートたちです。1回の法要で10万円、20万円という金額をふっかける彼らにしてみれば、お坊さん便の“3万5000円”のような安い金額を提示してくれるな、という感情もあるのです」(前出の住職)
▽収入が生活保護世帯並みの僧侶も
・これが本当なら、「払える分だけで結構なのに……」と反発しているわけではない。「もっと払ってもらわないと困る」とクレームをつけている格好になる。
・地域差はあるが、田舎の寺院では、法要1回あたり1万~2万円程度が相場。都会から引っ越してきた新しい信徒にこれを伝えると、「そんなに安いんですか!」と驚かれるという。その一方で、高額のお布施で潤う特権階級がいるのだから驚きである。
・地方ではお布施の相場が安い上に、人口減少で信徒も減って、どの寺も経営は苦しいという。 「後継者がいなくなった寺を引き受けて、5つの寺の住職を掛け持ちし、お堂の手入れや檀家回りに奔走している僧侶もいます。ところが、信徒の少ない寺ではいくら頑張っても収入にならない。過労死寸前なのに収入は生活保護世帯並みという僧侶もいます」(東北地方のある住職)
・そんな僧侶たちをさらに追い詰めているのが、宗派に納める上納金だ。 「檀家数や寺格などで金額が決まりますが、たとえばうちなら檀家が約40軒で上納金は年間50万円です。赤字の寺でも上納金は払わなければならず、宗派が貧乏な寺に金銭支援をすることは一切ありません。宗派に相談しても、宗教貴族がベンツで乗りつけて“う~ん、どうにもならないね”などと言って帰っていくだけです」(前出の近畿地方の住職) 格差というより、もはや搾取構造だ。
・「お坊さん便は、貧乏なお寺の僧侶の収入になるだけではなく、お寺と縁がなかった方に、きちんと法要を営み、教えを伝える機会になります。私の場合、同じ方から法要の依頼が来るようにもなりました。これも仏法を伝える一つの形ではないでしょうか」(同) 地方の僧侶にとって「お坊さん便」は、まさに“地獄に仏”なのだ。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/177680/1

サービスを提供している「みんれび」は、同社のホームページ(下記)のよれば、葬祭以外にも,歯科分野のサービスも手掛けているようだ。
http://www.minrevi.co.jp/
アマゾンでのページは下記。
http://www.amazon.co.jp/dp/B018HVTR2U
全日本仏教会の言い分ももっともな面もあるが、やはり「建前論」に過ぎず、個人の「本音」のニーズを巧みに汲み上げた「お坊さん便」に対しては、有効な手立てを欠いているようだ。しかも、背景に「宗教法人への課税問題」が隠れているとなれば、仏教会としては、「サービス業」ではないとの立場を貫くほかないだろう。
それにしても、“宗教貴族”がいる一方で、「収入が生活保護世帯並みの僧侶も」存在。「僧侶たちをさらに追い詰めているのが、宗派に納める上納金」とは、想像以上に厳しい世界のようだ。
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