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日銀の異次元緩和政策(その15)マイナス金利7 27-28日の決定会合での追加緩和? [経済政策]

日銀の異次元緩和政策については、3月26日に取上げたが、今日は、(その15)マイナス金利7 27-28日の決定会合での追加緩和? である。

先ずは、4月22日付け闇株新聞「日銀の政策決定会合(4月27~28日)を警戒すべき  その2」を紹介しよう。
・本日は「パナマ文書」の近況を書くつもりだったのですが、昨日付け「同題記事」を書いた後に安倍首相が衆参同日選挙を見送ってしまったため、どう一連のニュアンスが変わるのかを改めて解説するために早めにアップすることにしました。
・「異次元・量的緩和」「マイナス金利」「消費増税」という日本経済にとっての「悪夢の3点セット」がさらに強化されてしまえば、大げさではなく日本経済が壊滅的な状況に陥ってしまうため、ここは声高に主張しなければならないと強く感じているからです。 「パナマ文書」の次の山場は5月上旬のはずなので、来週でも間に合います。
・さて衆参同日選挙(つまり衆議院の解散・総選挙)の見送りは、熊本地方を中心とした地域を襲った地震の影響が甚大であるからで、安倍首相としても当然の判断となります。
・問題は2017年4月に予定されている消費増税の実施を再延期するためには、衆参同日選挙を行い勝利して「国民の信任を得た」との大義名分が必要となることです。実際には国会で、民主党(当時)野田政権時に成立した消費増税関連法案を修正あるいは廃止してしまえば済む話ですが、旧大蔵省をはじめとする官僚組織で最重要のイベントであり、消費増税再延期に関して安倍首相は「少数派」なので簡単にそうならないからです。
・さらに問題は、この消費増税の実施を強行するために日銀の追加緩和(量的緩和の拡大とマイナス金利幅の拡大)が行われるはずであることです。これは頭脳明晰な黒田氏を含む旧大蔵官僚が、単純に追加緩和を行えば円安・株高となり日本経済が回復して消費増税の影響などなくなると考えているとも思いませんが、同じ状況だった(最終的には衆議院の解散・総選挙で延期されたものの2015年10月に予定されていた消費増税実施の約1年前である)2015年10月31日に唐突に追加緩和(量的緩和)に踏み切っています。
・つまり「悪夢の3点セット」が揃って強化されてしまう恐れが強いのですが、唯一消費増税を止められる可能性が(あくまでも可能性があるだけですが)衆参同日選挙であり、そこで少なくとも再延期となればアシストのための追加緩和も不必要となり「悪夢の3点セット」が強化される事態だけは避けられるからです。
・ここで「異次元・量的緩和」と「マイナス金利」の組み合わせで長短金利が劇的に低下したのですが、最大の問題はそれでも一向に資金需要が出ないことで、とうとう10年国債利回りまで大きくマイナスになってしまいました。これは日本では(極端なリスクを取らない限り)向こう10年間くらいの経済活動では利益が出ないことが改めて認識され、日本の潜在成長率がそれまでのゼロ近辺ではなく実際はマイナスだったことになります。
・そこへさらに追加緩和が行われ(つまり潜在成長率をさらに下落させ)、さらに消費増税が行われ、さらに黒田総裁が繰り返し主張する2%の物価上昇だけが実現してしまったら消費者の負担だけが増加し、日本経済をさらにスパイラル的に低迷させてしまいます。
・ここで衆参同日選挙が封印されてしまいました。消費増税実施を再延期させるためのデッドラインは本年7月頃なので、参議院選のあとから衆議院を解散させても意味がありません。 政権内部には、地震被害が長期化すれば消費増税延期論が強まり、わざわざ衆議院を解散させて増税の是非を国民に問う必要がないからという「恐ろしいほどの楽観論」があるようですが、全く逆です。
・消費増税を延期させる唯一の可能性だった衆参同日選挙が封印されてしまい、その可能性がほぼなくなってしまったと考えなければなりません。 旧大蔵省にとっては消費税率さえ引き上げてしまえば、あとは日本経済がどうなろうとも、税収が一時的に落ち込もうとも一切気にしません。それは経済政策の失敗であると時の政権に責任を押し付けてしまえばよいからで、旧大蔵省の省益(税収の確保)は未来永劫に維持できるからです。つまり熊本地方の地震で見事に「焼け太った」わけです。
・逆に言えば、旧大蔵省としても(現在の日銀は完全に旧大蔵省傘下です)4月27~28日の政策決定会合で急いで追加緩和に踏み切る必要も薄れたことになります。これだけ考えると少しは「ホッとできる」話となります。
・ただ今週に入ってからの日経平均は、追加緩和と消費増税延期への漠然とした期待でかなり上昇しており、円相場も1ドル=107円台から109円台半になっています。これは追加緩和が見送られれば多少はブレーキがかかるかもしれませんが、それで失望しているようでは「全体の構図」を見誤ります。
・いずれにしても今回の衆参同日選挙見送りで、日本経済がまた「崖っぷち」に近づいたことだけは確かです。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1709.html

次に、4月22日付けロイター「日銀:金融機関への貸し出しにもマイナス金利を検討-関係者」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽当座預金残高のマイナス金利を拡大する場合にセットで 金融機関への補助金との批判リスクもあり慎重に検討へ
・日本銀行は金融機関が資金を預ける当座預金の一部にマイナス金利を適用しているが、金融機関に対する貸し出しに対しても、マイナス金利の適用を検討する案が浮上している。
・日銀は成長基盤強化と貸し出し増加に向けた取り組みを支援するため、貸出支援基金を設けて金融機関に対して現在0%で資金供給を行っている。複数の関係者によると、今後、日銀当座預金の一部に適用している0.1%のマイナス金利(政策金利)を拡大する際は、市場金利のさらなる引き下げを狙って、貸出支援基金による貸出金利をマイナスにすることを検討する可能性がある。
・複数の関係者によると、これにより市場金利の一層の低下を促し、経済全体を押し上げる効果が見込まれる。一方で、マイナス金利での貸し出しは金融機関への補助金ではないかという批判を招くリスクがあるほか、金利全般の低下により収益悪化懸念が強まっている金融機関にとっては、企業から一段と低利での貸し出しを求められる可能性もあるため、日銀は導入の是非を慎重に検討する方針という。
・貸し出し増加を支援するための資金供給の残高は現在24.4兆円。日銀はこのほか、成長基盤強化を支援するための資金供給と被災地金融機関を支援するための資金供給を行っており、前者の残高が5.6兆円、後者は4212億円。
・午後の東京株式相場は上昇に転換。銀行株は急伸し、三菱UFJフィナンシャル・グループが一時8.2%高、三井住友フィナンシャルグループが同6.9%高、みずほフィナンシャルグループが同7.2%高などとなった。ドル・円相場も1ドル110円台を回復した。
▽追加緩和予想もマイナス金利拡大は困難か
・日銀は27、28日に金融政策決定会合を開く。エコノミスト41人を対象に15-21日実施した調査で、追加緩和予想が23人(56%)と、量的・質的緩和が導入された2013年4月3日会合以降では最も高くなった。手段については、マイナス金利に対する国民の不安感や、日銀の当座預金へのマイナス金利適用でコストを負担する金融機関の反発もあり、マイナス金利の拡大は困難との見方が強い。
・BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「今会合での追加緩和の有無とは別に、熊本地震を受けて、被災地の金融機関を対象に何らかの支援策が実施される可能性は高い」と指摘。具体的には「復興資金をマイナス金利で供給する、あるいは、実質的に同じことだが、復興資金をゼロ金利で貸し出し、それに見合う分の当座預金に対して0.1%の付利を与えるといった可能性が考えられる」という。 河野氏は「将来的には、被災地に限らず、貸し出し増加支援策として、こうした政策がとられる可能性もある」とみている。
・クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは「4月会合を現状維持とすることは困難であり、何らかの追加緩和措置の決定は不可避」と指摘。手段としては「量的緩和拡大の可能性は極めて低く、質的緩和(資産購入)拡大、マイナス金利引き下げが基本的なオプション」とした上で、「貸出支援基金オペの金利を0%からマイナス0.1%ないしマイナス0.2%に引き下げる措置と同時での決定」を予想する。
▽金融機関へのボーナス
・マイナス金利での貸し出しはいわば日銀による金融機関へのボーナス。こうした政策に関心が広がっている背景に欧州中央銀行(ECB)の決定がある。ECBは3月10日の理事会でマイナス金利を0.3%から0.4%に拡大。同時に、これによる銀行収益の圧迫懸念に配慮し、ベンチマーク対比で貸し出しを増やした銀行に、その程度に応じてECBからの貸し出しに最大マイナス0.4%まで金利を付与することを決めた。
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは8日付のリポートで、今会合で「マイナス金利のコストを負担している金融機関の軽減を狙った措置も検討されるかもれない」と指摘。「日銀も同様にマイナス金利ボーナスを付ければ、金融機関にとって政策金利残高に適用されるマイナス金利のコストを相殺できるオプションが生まれる」と指摘する。
・大和証券の永井靖敏チーフエコノミストは21日のリポートで、日銀としても「ゼロ回答という選択肢はなさそうだ。何もしないと、日銀の危機対応能力に対する疑念が浮上する」とみる。もっとも、追加緩和余地は乏しく、金利、量、質による追加緩和のハードルは依然高いとした上で、被災地支援や成長基盤強化、貸出支援基金の貸出金利を「マイナス圏に引き下げることもあり得る」と予想する。
▽貸出マイナス金利に懐疑論も
・一方、マイナス金利での貸し出しには懐疑論もある。ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは13日付のリポートで「市場では、日銀がECBに倣って一部マイナス金利が適用される貸出支援基金オペを導入するとの見方もあるようだ」とした上で、「意味のある政策とは思えない。日本での貸し出し需要の低迷は借り入れ需要にあることは明白だ。企業は金利が低ければ借りるわけではなかろう」としている。
・みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストも「補助金が出ると分かってしまえば、貸出金利自体がその分下がるので、結果的に銀行の収益基盤が痛むという流れは変わらない」と指摘。経済、物価に与える影響は「あまり大した効果はない。需要の問題であり、補助金をつけて金利を下げさせれば何とかなるというのは、発想として無理がある」としている。
・UBS証券の青木大樹シニアエコノミストは「そもそも企業の借り入れ意欲自体が弱い。企業が借り入れをしようとしなければ、銀行としても貸し出し先がない。経済への影響は限定的だろう」と指摘。日銀が単独で政策対応しても、成果を得るのは難しく、「補正予算や成長戦略といった形で需要を作る政策と組み合わせないと効果は出てこないだろう」としている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-22/O60OA16S972C01

第三に、本日付けの日経新聞は「日銀追加緩和 揺れる判断 根強い円高圧力/政策効果見極め 今週決定会合、行内には見送り論」と題して、日銀内では導入したばかりのマイナス金利政策の効果を見極めたいとの声が多いが、今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果も踏まえ、追加緩和が必要かどうか最終判断 と報じた。

闇株新聞が2日連続で掲載した記事のうち、2日目の分を紹介した訳だが、執筆時点では、衆参同日選挙の見送りの示唆として、消費増税の予定通りの実施の可能性が高まり、追加緩和の必要性も薄らいだとの見立てである。旧大蔵省が熊本地震で「焼け太った」には笑ってしまった。
ロイターや日経新聞は、追加緩和については慎重なながら、実施される可能性にも触れた書きぶりである。
日銀より1日早く行われる米FOMCについては、「米利上げ見送りか」との観測も出ているが、当面の注目点といえよう。
タグ:日銀 異次元緩和政策 (その15)マイナス金利7 27-28日の決定会合での追加緩和? 闇株新聞 日銀の政策決定会合(4月27~28日)を警戒すべき  その2 異次元・量的緩和 マイナス金利 消費増税 悪夢の3点セット 衆参同日選挙 見送り 消費増税の実施を再延期するためには、衆参同日選挙を行い勝利して「国民の信任を得た」との大義名分が必要 消費増税の実施を強行するために日銀の追加緩和(量的緩和の拡大とマイナス金利幅の拡大)が行われるはずであることです 旧大蔵省にとっては消費税率さえ引き上げてしまえば、あとは日本経済がどうなろうとも、税収が一時的に落ち込もうとも一切気にしません 熊本地方の地震で見事に「焼け太った」わけです 追加緩和に踏み切る必要も薄れた 日本経済がまた「崖っぷち」に近づいた ロイター 日銀:金融機関への貸し出しにもマイナス金利を検討-関係者 金融機関に対する貸し出しに対しても、マイナス金利の適用を検討する案が浮上 貸出支援基金による貸出金利をマイナスにすることを検討する可能性 金融機関への補助金ではないかという批判を招くリスク 金融機関にとっては、企業から一段と低利での貸し出しを求められる可能性 日銀は導入の是非を慎重に検討 貸出マイナス金利に懐疑論も 日経新聞 日銀追加緩和 揺れる判断 根強い円高圧力/政策効果見極め 今週決定会合、行内には見送り論 米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果も踏まえ
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