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大商社の巨額減損(三菱商事、三井物産、丸紅など)   [企業経営]

今日は、大商社の巨額減損(三菱商事、三井物産、丸紅など) を取上げよう。

先ずは、3月31日付け日経ビジネスオンライン「巨額減損の三菱・三井、市場関係者から不満 資源バブル下の「高値づかみ」は正当化されるか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・三菱商事と三井物産が相次いで発表した巨額の減損損失の計上と、それに対する両社の説明について、株式市場関係者から不満が出ている。資源価格の下落が主因で、投資判断は正しかった――。その主張に投資家は疑問を投げかけている。
・三菱商事は3月24日、2016年3月期に資源・エネルギー分野を中心に4300億円の減損を計上し、1500億円の最終赤字に転落すると発表。従来予測の3000億円の黒字から大幅な下方修正で、財閥解体後の会社設立以来、初の赤字となる見通しだ。その前日には、三井物産が同じく資源・エネルギー分野を中心に2600億円の減損を計上し、700億円の赤字となる見通しを発表していた。三井物産も、初の赤字転落である。
・三菱商事が3月24日に開催した記者向けの説明会には、任期が残り1週間というタイミングで不名誉な発表をしなければならなくなった小林健社長(4月1日から会長)が出席。小林社長は、「投資判断は慎重にしてきた。しかし、資源価格の急激な下落でこのような事態になった。資源ビジネスは20~30年のレンジで見るビジネス。その中ではこうした時期もある」と発言。巨額減損の原因を作ったチリの銅山などへの投資判断に間違いはなかったと強調した。
・アナリスト向け説明会では、内野州馬CFO(最高財務責任者)が、次のように説明している。「(今回の減損を受けて)投資規律や投資判断のあり方は、何も変えない。その時点でベストな判断をした。減損は資源価格の前提が変わったのが原因だ」 投資判断や投資規律には問題はなく、巨額減損の原因はあくまでも市況の悪化という外部要因にある――。そうした主張に、国内外の証券アナリストはあきれた様子を隠さない。
・ある国内証券のアナリストは、「あれだけの減損を出したにもかかわらず、投資判断に間違いはなく、投資規律を厳しくすることも考えないという発言はありえない」と憤る。 また、別の国内証券アナリストは、「アンダーパフォームを続けていて投資をする資格のないファンドマネージャーが、『俺、まだ投資したい』と言っているようなものだ」という。外資証券のアナリストも「人事評価の仕組みを含めて、『買ったもの勝ち』のような資源投資のあり方を変えるべきだが、それができていない」と話す。
▽周囲を驚かせた高値での巨額出資だった
・今回の減損の中で、最も規模が大きかったのが、チリの銅事業だ。三菱商事は2011年11月、資源大手アングロアメリカンからチリの銅鉱山事業会社アングロ・アメリカン・スール(AAS)の株式24.5%を53.9億ドルで取得。中国をはじめとする新興国の高成長を背景とした資源バブルの最中だったとは言え、その取得価格の高さは、鉱山業界や金融業界の関係者の多くを驚かせた。
・当時、英フィナンシャル・タイムズは「ポートフォリを見直そうとしている資源会社は、国番号81(日本)をダイヤルすることから始めるべきだ」と皮肉ったほど、三菱商事を筆頭に大手総合商社の資源への投資熱は加熱していた。今回、三菱商事の4300億円の減損のうち2800億円分を、AASへの投資が占めている。
・実は、このチリの銅事業への投資は当初から、波乱含みだった。三菱商事がAASの株式を取得する直前の2011年10月、三井物産がチリ国営資源会社コデルコに対して、コデルコがAASの49%の株式を取得するための資金として、最大で67億5000万ドルを融資する契約を締結。そこには、コデルコがAASの株式を取得後、三井物産が最大で24.5%取得できる権利も含まれていた。 コデルコは歴史的経緯から、AASの株式の49%を取得できる権利を有しており、その権利を2012年1月に行使する計画だった。AASが保有する銅鉱山は、「チリの珠宝」とも呼ばれるほど銅鉱石の含有量が多くコスト競争力があるとされる。そのため、三井物産はコデルコと組むことでAASの権益獲得に動いていた。
・一方、三菱商事も、資源バブルを背景に金属資源のポートフォリオの拡充に動いていた。新興国需要の高まりに加えて、銅鉱石の含有量は世界的に減少する傾向にあり、鉱山の品質は世界的に低下。開発コストは中長期的に上昇し、銅価格が大きく下落する可能性は低いと見られていた。そうした状況で、アングロアメリカンからAASの権益を取得するチャンスが訪れた。
・三菱商事と三井物産という国内商社トップ2社が争奪戦を繰り広げる格好となり、「価格が釣り上がったことは否めない」(ある証券アナリスト)。実際、アングロアメリカンは2011年12月期の決算発表で、三菱商事によるAAS株式の24.5%に対する評価額が、複数の金融機関の評価額よりも大幅な高値で実現できたと説明している。
▽巨額投資“失敗”を契機に変われるか
・結局、コデルコの計画を阻む形でアングロアメリカンがAAS株式を三菱商事に売却したことに対し、コデルコはアングロアメリカンに反発。三菱商事と三井物産を巻き込む形で、チリの珠宝を巡るアングロアメリカンとコデルコの訴訟合戦に発展した。
・最終的に2012年8月、アングロアメリカンとコデルコは和解。その結果、三菱商事はAASの株式4.1%をアングロアメリカンに9億ドルで売却し、出資比率を20.4%に引き下げる一方、三井物産は9.5%の株式を21億ドルで取得した。三井物産も最終的に、三菱商事によるAASの評価額に沿った金額を支払うことになった。
・三井物産は当初の思惑ほど AASの株式を取得できなかったが、その時の投資で今回、三菱商事と同様に大きな減損に見舞われた。三井物産が実施する2600億円の減損のうち、最も大きく響いたのがAASへの投資で、減損額は約900億円に上る。
・三菱商事の小林健社長と同様に、三井物産の安永竜夫社長も強気の姿勢を崩さない。「赤字は大変遺憾だが、一過性の損失のほとんどはキャッシュを生み出し続けており、市場が回復すれば、大きな収益を上げていく」と強調した。
・ある証券アナリストは、「三菱商事も三井物産も、資源ビジネスは20年、30年の時間軸で見るべきものというが、そんなことを言ったら適正価格を無視して何でも買えてしまう」と、商社の資源ビジネスのあり方に根本的な疑問を投げかける。「長い期間をかけて投資を回収するもの」という前提に立てば、その間の減損などに対する責任の所在はあいまいになる。資源事業は市況に左右されるのが避けられないとはいえ、投資規律が緩んではいなかったか。
▽規模拡大へ、大型の投資案件の誘惑
・大手商社の資本規模が急速に拡大してきた中で、利益成長を求めるために、各社はここ数年、大型の投資案件を手がける傾向が強まっている。減損が相次いでいる資源分野以外でも、三菱商事は過去2年のうちにノルウェーのサーモン養殖会社に1500億円、シンガポールの農作物商社に1300億円を投じているほか、丸紅は2013年に米穀物メジャー・ガビロンに2700億円を投じ、伊藤忠商事は昨年、中国最大の国有企業CITICに6000億円を投じている。
・だが、こうした巨額投資は、歯車が狂えば今回のように巨額の損失を計上しなければならないリスクが大きい。2015年3月期には、住友商事が米シェールオイル事業などで3250億円の減損を発表している。こうしたリスクをコントロールしながら、資源・非資源事業の両方を手がける「総合商社」として、どのように企業価値を向上させていくのか。
・ある証券アナリストは、「投資をするなとは言わない。しかし、投資の基本は安く買うこと。高く買うのなら、誰にでもできる」と話す。優良資産を安く買うには、得意分野で培ってきたネットワークを最大限に活用するとともに、投資に対するリターンをこれまでに以上に厳格に評価する仕組みを導入することが欠かせない。
・折しも、三菱商事は今年4月から、生活産業グループCEOの垣内威彦常務が社長に就任し経営の舵を握る。垣内・次期社長の下で現在、新たな中期経営計画を策定中だ。三井物産も、今年4月から就任2年目となる安永社長の下で、資源価格が低迷する中でも成長をしていける事業構造への転換を目指す。 三菱も三井も、初の赤字転落という危機を契機に、過去のウミを出し切ることで再出発を切ることができるかどうか。株式市場からの厳しい声は、その覚悟を経営陣に問うている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/032900295/?P=1

次に、4月12日付け現代ビジネス「巨額赤字!三井物産と三菱商事を襲う「大異変」〜夏のボーナス「ゼロ」、年収も激減 名門商社「勝ち組」時代の終わり」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ともに就活生にはトップクラスの人気企業。年収も抜群で、世界を駆け巡る仕事の醍醐味もある。そんな勝ち組の象徴に、大異変が勃発。かつての「冬の時代」に逆戻りするという声も出てきて—。
▽老後の生活設計が……
・勝ち組商社の代表格・三菱商事が、目下の資源価格暴落のあおりを受けて、1500億円という巨額赤字に転落することが決定的となった。 連結赤字は創業来初めてとあって、普段はクールで冷静なエリート商社マンたちも大パニック。 これから自分たちの身になにが降りかかってくるのかという疑心暗鬼が社内に渦巻いている。
・「役員ルームからして、騒然としています」 三菱商事幹部が言う。 「今回の赤字転落の責任をとって、さっそく55人の全役員に対して夏のボーナスは不支給、つまり『ボーナスゼロ円』が決定したからです。常務役員であれば年間1000万円以上をもらっている人もいるし、副社長クラスなら2500万円以上。それが一気にゼロになるのだから、『老後の生活設計が崩れた』という嘆きが漏れ聞こえてくる」
・別の幹部社員も言う。 「赤字のけじめをつけるために小林健社長(現会長)は年収の半分を返上すると決めたのですが、同時に『資源関連』の役員も年収の3割を返上させられることになった。
・社内で話題になっているのは、『資源関連』の役員はどこまで含まれるのか。エネルギー事業グループCEO(最高経営責任者)を務めていた柳井準氏、金属グループCEOだった衣川潤氏の二人は間違いなく対象でしょうが、『それ以外はどこまでの役員が詰め腹を切らされるのか』『自分は対象になるのか』と戦々恐々としているわけです」 柳井氏、衣川氏の場合、年収から報酬カット額を単純計算すると約4500万円と巨額に及ぶ。もらった報酬はすでに使ってしまっている部分も少なくないだろうから、その巨額を急に「返せ!」というのは、役員たちの生活を脅かす「家計有事」となりかねない。
・「早く子会社に出ておけばよかったというぼやきも聞こえてきます。出向者は基本的に三菱商事の給料体系で働くのですが、子会社の役員に転じていた場合は子会社の役員報酬規定が適用される。 たとえば、このほどローソンの社長にうち出身の竹増貞信氏が抜擢されましたが、彼は今回の赤字決算の影響など関係なく、ローソン社長としての給料をもらえる。『本体での社長レースに早く見切りをつけて子会社に出るほうを選ぶべきだった』と、いまさらながら悔やんでいる人もいます」(前出・幹部社員)
▽年収も激減する
・社内の動揺が大きくなる中、3月末には社長が、「社員の給与はカットしない」とする旨のメッセージを社内に発信。 責任を取るのは役員なので、社員は動揺せずに職務に励むように促した形だが、「不安は払拭されていない」(中堅社員)。というのも、社員は基本給こそカットされないにしても、夏のボーナスについては「今後検討」。これがどこまで下がるかが見通せないのである。
・ベテラン社員は言う。 「うちのボーナスは約5割は役職などに応じて固定だが、残りの5割は『業績連動』。業績連動分は(1)会社、(2)部門、(3)個人の業績で査定されます。 今夏のボーナスについて見れば、(1)は会社全体が赤字なので全社員が期待できない。(1)がボーナス全体の2~3割を占めるので、2~3割のボーナスカットは濃厚。  (2)については、赤字の元凶である資源部門はゼロ査定があり得る。そのため、資源部門では、4~5割のボーナスカットを覚悟している人もいる」
・三菱商事といえば30代の課長クラスなら年収1000万円超、40代の部長クラスは年収2000万円超えも夢ではないという高給取りである。 しかし、その高収入は資源バブルで会社が潤っていた利益によって実現できたものである。 高いボーナスの「原資」だった資源事業が凋落したいま、ボーナスの大幅カットは必至。社員の「減収ぶり」は凄惨なものになりかねない。
・「大手商社の課長クラスだと月給が50万円、部長で80万円ぐらいが相場。課長クラスだとそこに500万~600万円のボーナスがついて年収が1000万円を超えていた。仮にそのボーナスが5割カットになったら、年収は800万~900万円になってしまう。これは大手製造業の課長クラスのレベルですが、極端に言えばそうなってもおかしくない」(企業の賃金制度に詳しいジャーナリストの溝上憲文氏)
・こうした三菱商事の動揺ぶりを横目に見ながら、同じように震え上がっているのが三井物産の社員たちである。 三井物産もここへきて、今年度決算が700億円の赤字見通しだと発表。年間通じて最終赤字になるのは創業来初のことで、三菱商事と同じく、「役員連中が肩を落としています」と幹部社員は言う。 「うちは取締役報酬について、当期純利益が赤字になった場合は、取締役のボーナスはゼロ円にすると決められています」
▽「膿」は出し切れたのか
・上の表は三井物産の主要役員の取締役報酬の「内情」を示したものである。会長、社長は4600万円、副社長は3300万円という超高額のボーナスをもらっていることがわかるが、今年はこれがゼロになる。 「飯島(彰己・現会長)さんは約1年半前に、都内で高級マンションを購入したばかりで、その際、1億円以上の抵当権を設定していたはず。ローン返済にはボーナスも当てにしていたでしょうから、『ゼロ』は痛すぎる」(前出・幹部社員)
・三井物産は社員の平均年収が1361万円の高給取りだが、大幅ボーナスカットは避けられそうにない。 別の幹部社員が言う。 「われわれのボーナスの仕組みは、三菱商事さんとほぼ同じ。仮に業績が赤字だから業績連動部分のボーナスがゼロとなれば、今夏は4割カットでもおかしくない。ボーナスの計算式は規定で決められているので、労組がいくら頑張っても覆らない。 ただ、うちの会社は赤字なのに株主配当は出すと言っている。労組はこのポイントを突いて、『配当を出すならば、社員のボーナスも出すべきだ』と交渉していくことになるでしょう」 
・両社ともに今決算で「膿」を出し切り、V字回復を目指したい構え。しかし、資源バブルが終焉したいま、先には茨の道が広がっている。 「'00年代前半の三菱商事の純利益は600億円程度だったのが、近年は3000億円、4000億円に膨れ上がった。この急成長は、中国経済の拡大とともに資源価格が上がるスーパーサイクルの波に乗れたのが大きい。そのサイクルが終わったいま、三菱商事も三井物産もこれまでのように稼ぐのは難しい。 特に資源一本足と言われる三井物産は、資源市況がさらに悪化して、開発案件の進捗が遅れて再び減損。最悪の場合、赤字というシナリオもあり得る」(QUICK企業価値研究所チーフストラテジストの堀内敏成氏)
・そもそも、総合商社は兆円単位の巨額な有利子負債を抱えながら、資産の大半は資源関連が占めるといういびつなビジネス構造を抱えてきた。 「つまり、資源価格が落ちれば一気に経営が暗転することはわかりきっていた。それなのに、三菱や三井というブランド名から、多くの人は『問題ない』と見て見ぬふりをしてきた。
・日本では商社の株価は割安だと言われてきたが、外国人投資家から見れば継続可能なビジネスではないとわかっていた。だから、彼らがもとから商社株に手を出してこなかっただけなんです」(ファイブスター投信投資顧問取締役運用部長の大木昌光氏)  名門商社が安穏と「勝ち組」で居続けられる時代は、もう終わった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48374

第三に、4月10日付け東洋経済オンライン「丸紅、身の丈を大幅に超えた投資路線を反省 またも資源で1200億円の大口損失」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・総合商社大手の丸紅は結局、2期連続で大口損失を計上することとなってしまった。チリの銅事業や豪州ロイヒル鉄鉱山プロジェクト、米国をはじめとした石油・ガス事業など、資源案件の減損700億円を中心に、合計1200億円の大口損失を計上。今2016年3月期の純利益計画は従来の1800億円から600億円に大幅な下方修正を迫られる。
・資源の最大需要国である中国経済の失速により、総合商社各社の15年度決算は総崩れの様相だ。長期にわたる資源価格の前提を引き下げたことに伴う将来収益性の低下で、簿価を切り下げる減損損失が相次ぎ発生した。
・住友商事が1700億円の減損を計上する見込みのほか、3月下旬には三菱商事と三井物産がそれぞれ4300億円、2600億円の減損を計上し初の連結最終赤字に転落することを発表したばかり。非資源事業に強みを持つ伊藤忠商事だけが高い利益水準を維持する見込みだが、同社も一部資源事業での損失処理が生ずることを示唆している。
▽5番手の焦り?非資源でも減損
・原因が資源価格の下落だけとも言い切れない。総合商社は2000年代前半からの商品市況の高騰と金融緩和を背景に、金属・エネルギー事業の資源アセットを競うように積み上げてきた。ある商社幹部は、「中には開発コストが高い資源権益への出資やプレミアムを相当支払った案件も少なくなく、各社とも特にこの5、6年間の投資案件で減損を計上しているのはその結果でもある」と話す。
・中でも、自己資本が最大手の三菱商事の3分の1以下で、総合商社5番手が定位置だった丸紅は積極的な投資姿勢を打ち出してきた。近年、業界全体がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いた余剰キャッシュ)の黒字化や株主還元の拡充を経営計画に掲げる中、丸紅はこうした施策を先送りにしその分を新規投融資にまわしてきた。
・ところが、同社最大の2700億円を投じて2013年に買収した米国・穀物メジャーのガビロンは買収後の業績が低迷し、前2015年3月期に500億円ののれん減損を計上。今2016年3月期も資源案件のほか、鉄道や電力など海外プラント案件で200億円の損失引当を積むなど、非資源事業でも果敢な新規投資が裏目に出ている。
・國分文也社長は4月18日の記者会見で、「資源価格が上がれば上がるほど、どうしても買いに対する圧力が出てくる。そこをどうコントロールしていくか。単純に資源価格が下がったからと総括する気はまったくなく、非資源も含めどこがポイントだったかを調査している」と反省の色を滲ませた。
・今年2月に策定した新中期経営計画「GC2018」では、今後3年間の新規投融資をフリー・キャッシュフローの黒字化を大前提に変更。「ノンコア事業からの撤退、戦略的売却による投資回収を促進してキャッシュフローの極大化をはかり、借入金の返済を優先してD/Eレシオ(有利子負債比率)の改善に最優先で取り組んでいきたい」(矢部延弘CFO)。
▽取らぬ狸の皮算用、プレミアムを払いすぎ
・銅や鉄鉱石などの戦略資産は長期で保有する一方、競争力の低い北海やメキシコ湾の石油・ガス権益からの撤退を視野に入れる。今後は丸紅が本来の強みを持つ電力、穀物、輸送機などの事業に経営資源を集中させる構えだ。
・丸紅に限らず総合商社は、「純粋な投資銀行とは異なり、事業投資の際には、長期間で周辺ビジネスのシナジーを大きく見込み、プレミアムを多く支払う。その分、投資規律が緩み、後に減損を計上しても当時の経営責任がどこにあったか曖昧になる例が絶えない」(商社セクター担当のクレジットアナリスト)との指摘は多い。
・単純な資源・非資源の事業ポートフォリオの見直しだけではなく、投融資規準の見直しや経営責任の明確化に踏み込めなければ、商社の大口損失の歴史は繰り返されてしまうだろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/114845

大手商社5社の減損処理額は、2015年3月期が7000億円、2016年3月期は12300億円になるとのことだ(デロイトトーマツの商社セクター分析)。2014に各社が国際会計基準(IFRS)を導入した以上、かつてのような業績の安定性を重視した処理は不可能になり、市況変動の影響が如実に現れることは不可避になった。まして、三菱商事、三井物産のようにチリの銅事業で膨大なのれん代を計上していたとなれば、影響は甚大だ。
いまのところ、三菱商事、三井物産の両社は表向き強気を装っているが、第三の記事にあるように、「純粋な投資銀行とは異なり、事業投資の際には、長期間で周辺ビジネスのシナジーを大きく見込み、プレミアムを多く支払う。その分、投資規律が緩み、後に減損を計上しても当時の経営責任がどこにあったか曖昧になる例が絶えない」というのはやはり問題だろう。「投融資規準の見直しや経営責任の明確化に踏み込めなければ、商社の大口損失の歴史は繰り返されてしまうだろう」との指摘にあ全く同感だ。
明日、金曜日は更新を休むので、土曜日にご期待を!
タグ:大商社 巨額減損 三菱商事、三井物産、丸紅など 日経ビジネスオンライン 巨額減損の三菱・三井、市場関係者から不満 資源バブル下の「高値づかみ」は正当化されるか 三菱商事 三井物産 両社の説明について、株式市場関係者から不満 資源価格の下落が主因で、投資判断は正しかった 4300億円の減損 1500億円の最終赤字 2600億円の減損を計上し、700億円の赤字 資源ビジネスは20~30年のレンジで見るビジネス。その中ではこうした時期もある その時点でベストな判断をした。減損は資源価格の前提が変わったのが原因 周囲を驚かせた高値での巨額出資 チリの銅事業 アングロ・アメリカン・スール(AAS) 株式24.5%を53.9億ドルで取得 取得価格の高さは、鉱山業界や金融業界の関係者の多くを驚かせた チリの珠宝 銅鉱石の含有量が多くコスト競争力 三菱商事と三井物産という国内商社トップ2社が争奪戦 価格が釣り上がった 三菱商事はAASの株式4.1%をアングロアメリカンに9億ドルで売却し、出資比率を20.4%に引き下げる一方、三井物産は9.5%の株式を21億ドルで取得 20年、30年の時間軸で見るべきものというが、そんなことを言ったら適正価格を無視して何でも買えてしまう 規模拡大へ、大型の投資案件の誘惑 2015年3月期には、住友商事が米シェールオイル事業などで3250億円の減損 現代ビジネス 巨額赤字!三井物産と三菱商事を襲う「大異変」〜夏のボーナス「ゼロ 兆円単位の巨額な有利子負債 、資産の大半は資源関連 めるといういびつなビジネス構造 外国人投資家から見れば継続可能なビジネスではないとわかっていた。だから、彼らがもとから商社株に手を出してこなかっただけなんです 東洋経済オンライン 丸紅、身の丈を大幅に超えた投資路線を反省 またも資源で1200億円の大口損失 1200億円の大口損失 住友商事が1700億円の減損を計上する見込み 米国・穀物メジャーのガビロン 2015年3月期に500億円ののれん減損を計上 取らぬ狸の皮算用、プレミアムを払いすぎ 総合商社は、「純粋な投資銀行とは異なり、事業投資の際には、長期間で周辺ビジネスのシナジーを大きく見込み、プレミアムを多く支払う。その分、投資規律が緩み、後に減損を計上しても当時の経営責任がどこにあったか曖昧になる例が絶えない」 投融資規準の見直しや経営責任の明確化に踏み込めなければ、商社の大口損失の歴史は繰り返されてしまうだろう
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