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安倍政権のマスコミへのコントロール(その5)本日の首相記者会見テレビ放映の異様さ、高市氏の電波停止発、国連「表現の自由」特別報告者の舌峰 [メディア]

安倍政権のマスコミへのコントロールについては、4月5日に取上げたが、今日は、(その5)本日の首相記者会見テレビ放映の異様さ、高市氏の電波停止発、国連「表現の自由」特別報告者の舌峰 である。

先ずは、本日夕方の首相記者会見テレビ放映の異様さである。会見内容は、消費税増税の2年半延期を正式表明だけである。既に、新聞では観測記事で報道されていたため、内容自体には特段の目新しさはなかった。ところが、なんと全テレビ局が18時頃から一斉に、しかも民放でもコマーシャル抜きに30分程度放映するという、震災報道以来の異例の扱いである。首相記者会見の中継でこれだけの「厚遇」をしたのは、私が知る限り初めてではないだろうか。本件については、ネットではまだ目立った反応は出てないようだ。恐らく、首相官邸が頻繁にマスコミのトップを接待し、「意思疎通」を図ってきた「成果」が現れた結果なのかも知れない。こうした放映スタイルになった理由など、分析的な記事が後日出たら、改めて取上げるつもりである。

この問題を離れて、次に、池上彰氏が2月26日付け朝日新聞に寄稿した「(池上彰の新聞ななめ読み)高市氏の電波停止発言 権力は油断も隙もない」を紹介しよう。
・「総務省から停波命令が出ないように気をつけないとね」 テレビの現場では、こんな自虐的な言い方をする人が出てきました。 「なんだか上から無言のプレッシャーがかかってくるんですよね」 こういう言い方をする放送局の人もいます。
・高市早苗総務相の発言は、見事に効力を発揮しているようです。国が放送局に電波停止を命じることができる。まるで中国政府がやるようなことを平然と言ってのける大臣がいる。驚くべきことです。欧米の民主主義国なら、政権がひっくり返ってしまいかねない発言です。
・高市発言が最初に出たのは2月8日の衆議院予算委員会。これをいち早く大きく報じたのは朝日新聞でした。9日付朝刊の1面左肩に3段と、目立つ扱いです。この日の他の新聞朝刊は取り上げなかったり、それほど大きな扱いではなかったりで、朝日の好判断でしょう。この後、各紙も次第に高市発言に注目するようになります。
・朝日は1面で発言を報じた上で、4面の「焦点採録」で、具体的な答弁の内容を記載しています。読んでみましょう。 〈政治的な問題を扱う放送番組の編集にあたっては、不偏不党の立場から特定の政治的見解に偏ることなく番組全体としてバランスのとれたものであることと解釈してきた。その適合性は、一つの番組ではなく放送事業者の番組全体をみて判断する〉
・「特定の政治的見解に偏ることなく」「バランスのとれたもの」ということを判断するのは、誰か。総務相が判断するのです。総務相は政治家ですから、特定の政治的見解や信念を持っています。その人から見て「偏っている」と判断されたものは、本当に偏ったものなのか。疑義が出ます。
・しかも、電波停止の根拠になるのは放送法第4条。ここには、放送事業者に対して、「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」など4項目を守ることを求めています。
・ところが、その直前の第3条には、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と規定されています。つまり放送法は、権力からの干渉を排し、放送局の自由な活動を保障したものであり、第4条は、その際の努力目標を示したものに過ぎないというのが学界の定説です。
・番組編集の基本方針を定めた第4条を、権力が放送局に対して命令する根拠として使う。まことに権力とは油断も隙もないものです。だからこそ、放送法が作られたのに。
・安倍内閣としては、歴代の総務相も発言してきたことだと説明していますが、その点に関して朝日は10日付朝刊で、2007年の福田政権(自民党政権です)での増田寛也総務相の国会答弁を紹介しています。この中で増田総務相は電波停止命令について、「適用が可能だとは思う。ただ、行政処分は大変重たいので、国民生活に必要な情報の提供が行われなくなったり、表現の自由を制約したりする側面もあることから、極めて大きな社会的影響をもたらす。したがって、そうした点も慎重に判断してしかるべきだと考えている」と述べています。
・権力の行使は抑制的でなければならない。現行法制の下での妥当な判断でしょう。 しかし、政権が変わると、こういう方針が守られなくなってしまうということを、今回の高市発言は示しています。
・想像してみてください。今後、政権交代が行われ、反自民の政権が登場し、公正な報道をしようとしている放送局に対し、電波停止をちらつかせることになったら、どうするのか。自民党にとって、極めて憂慮すべき事態だとは思いませんか。そういうことが起きないようにするためにも、権力の行使には歯止めが必要なのです。
・こうした事態は、放送局の監督権限を総務省が持っているから。この際、アメリカの連邦通信委員会(FCC)のような独立した委員会が、国民の代表として監督するような仕組みが必要かも知れません。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12228246.html

第三に、4月22日付け日刊ゲンダイ「高市総務相も逃げた国連「表現の自由」特別報告者の舌峰」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・安倍政権にしたら「厄介者がやっと帰ってくれた」というところじゃないか――。日本における「表現の自由」を調査するため、国連人権理事会から“特別報告者”に任命されたデビッド・ケイ氏(47=米カリフォルニア大アーバイン校教授)が、1週間の滞在を終え、19日米国に帰国した。
・本来は昨年12月に来日するはずだったが、直前に日本政府が「来秋への延期」を要求。これに対し、「国連の調査を妨害するのか」という批判が世界中で高まり、今回、予定が前倒しされたという。
・ケイ氏は、19日帰国直前に外国特派員協会で会見。政府の“ドタキャン”の経緯について質問されると、こう説明した。 「昨年11月、日本の外務省から『予算編成作業があり十分な受け入れ態勢が取れない』と説明があった。本当の理由はそちら(日本のマスコミ)で政府に聞いて欲しい」
・ケイ氏は特定秘密保護法、放送法、記者クラブ制度の弊害などにも言及。 「事前調査した上で来日したが、実際にジャーナリストや官僚にヒアリングして、日本メディアの独立性についてむしろ懸念が強まった。特定秘密保護法は秘密の範囲が広過ぎる。情報を制限するとしても、もっと透明性の高い形ですべきだ。記者クラブ制度は、調査ジャーナリズムとメディアの独立性を制限しようとしている」
・ケイ氏の批判の矛先は安倍政権の閣僚にも向く。菅官房長官を名指しし、「自分の放送法の解釈に従わない番組があることを、オフレコ懇談で批判したと聞いた」と暴露。電波停止の可能性をチラつかせてテレビ局をドーカツしようとした高市総務相についても、「何度も会いたいと申し入れたが、国会会期中などを理由に断られた」と批判した。
▽「報道の自由度」は72位に下落
・会見を取材したジャーナリストの志葉玲氏はこう言う。 「ケイ氏が予定を前倒しして来日したのは、日本メディアの危機的現状を強く危惧しているからでしょう。どうしても参院選前に調査したかったのだと思います。『ジャーナリストのパスポートを没収しないように』と、外務省に提案したと言っていましたが、安倍政権になってからのメディア規制はひど過ぎます。ケイ氏から逃げ回り、説明責任を果たさなかった高市総務相はサイテーだと思いました」
・くしくも今日、非営利のジャーナリスト組織「国境なき記者団」の「報道の自由度」ランキングが発表された。 2010年、日本は過去最高の11位まで順位を上げたが、安倍政権になった途端に急落し、昨年は過去最低の61位。そして今年は72位と、さらに順位を下げた。当然か。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/179838

池上氏が指摘するように、福田政権下での増田総務相の判断は穏当だったのに、安部政権下の高市総務相になると、同じ総務相の発言とは思えないほどの豹変ぶりである。
国連「表現の自由」特別報告者の発言については、このブログの5月24日でも「報道の自由度(その2)のなかで取上げたが、今回の記事では、安部政権が今秋への延期を申し入れたが、『「国連の調査を妨害するのか」という批判が世界中で高まり、今回、予定が前倒しされたという』、と経緯が明らかになった。高市総務相は、自分の発言の正当性を国際的に主張できる自信があれば、正々堂々と面会に応じるべきと思うが、逃げたのは、そこまでの自信がなかったということなのだろう。
今夕の首相記者会見テレビ放映については、前述のように、まともな分析記事が出れば改めて取上げたい。
タグ:電波停止の可能性をチラつかせてテレビ局をドーカツしようとした高市総務相についても、「何度も会いたいと申し入れたが、国会会期中などを理由に断られた」と批判 「報道の自由度」は72位に下落 放送法第4条 特定秘密保護法は秘密の範囲が広過ぎる。情報を制限するとしても、もっと透明性の高い形ですべきだ 菅官房長官を名指しし、「自分の放送法の解釈に従わない番組があることを、オフレコ懇談で批判したと聞いた」と暴露 日本メディアの独立性についてむしろ懸念が強まった 記者クラブ制度は、調査ジャーナリズムとメディアの独立性を制限しようとしている 直前に日本政府が「来秋への延期」を要求 外国特派員協会で会見 「国連の調査を妨害するのか」という批判が世界中で高まり、今回、予定が前倒しされたという デビッド・ケイ氏 “特別報告者 国連人権理事会 第3条 総務相は政治家ですから、特定の政治的見解や信念を持っています。その人から見て「偏っている」と判断されたものは、本当に偏ったものなのか。疑義が出ます 池上彰 (その5)本日の首相記者会見テレビ放映の異様さ、高市氏の電波停止発、国連「表現の自由」特別報告者の舌峰 首相記者会見の中継でこれだけの「厚遇」をしたのは、私が知る限り初めて 安倍政権のマスコミへのコントロール 欧米の民主主義国なら、政権がひっくり返ってしまいかねない発言 (池上彰の新聞ななめ読み)高市氏の電波停止発言 権力は油断も隙もない 高市総務相も逃げた国連「表現の自由」特別報告者の舌峰 全テレビ局が18時頃から一斉に、しかも民放でもコマーシャル抜きに30分程度放映するという、震災報道以来の異例の扱い 日刊ゲンダイ 適用が可能だとは思う。ただ、行政処分は大変重たいので、国民生活に必要な情報の提供が行われなくなったり、表現の自由を制約したりする側面もあることから、極めて大きな社会的影響をもたらす。したがって、そうした点も慎重に判断してしかるべきだと考えている 首相記者会見テレビ放映 増田寛也総務相の国会答弁 朝日新聞 第4条は、その際の努力目標を示したものに過ぎないというのが学界の定説 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない
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