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ルネサス攻防戦と産業革新機構 [企業経営]

今日は、ルネサス攻防戦と産業革新機構 を取上げよう。

先ずは、5月22日付け産経新聞「【経済インサイド】買収王・永守重信氏にルネサスは渡さない! 産業革新機構がCEOに選んだのは永守氏と敵対するある人物だった」を紹介しよう。
・半導体大手ルネサスエレクトロニクスの社長兼最高経営責任者(CEO)に、カルソニックカンセイ前社長で日本電産前副社長を務めた呉文精氏が就任することが決まり、波紋を呼んでいる。ルネサスをめぐっては日本電産が買収に名乗りを上げていたが、呉氏は日本電産の永守重信会長兼社長と対立し同社を辞めた経緯があるためだ。異例のトップ人事は、ルネサス大株主の産業革新機構が、日本電産の買収に事実上「NO」を突きつけた格好だ。この背景には、経済産業省や自動車メーカーが、日本電産が自動運転のキーとなる半導体を握ることに警戒感を抱いているためとささやかれている。
・「この人事は少しやり過ぎではないか」-。 革新機構の志賀俊之会長兼最高経営責任者(CEO)が、永守氏と対立して退職した呉氏を6月からルネサスのトップに据える人事を決めたことに、電機大手の幹部はこう声を潜めて話す。
・経営危機に陥っていたルネサスは大規模なリストラを断行し、ようやく再建のめどが立ち、株式を一定期間売却できないロックアップ契約も昨年9月にようやく解除された。革新機構は株式売却を検討し、自動車向け部品を強化していた日本電産と交渉していた。
・しかし、業界関係者によると、経産省やトヨタ自動車、日産など自動車メーカーが日本電産による買収にストップをかけた。「ワンマン経営者の永守さんがルネサスを買収すれば、自動車メーカーへの影響力を強め、安定供給されなくなるリスクが生じかねない」(自動車メーカーの関係者)からだ。
・そして、今年に入り、日産出身でもある志賀氏が日本電産に買収の打診を直接断ったとされる。さらに志賀氏は今回、追い打ちをかけるように、永守氏と対立して退任した呉氏をトップに就任させた。 呉氏は日産系の部品メーカー、カルソニックカンセイの社長を経て、日本電産の副社長兼最高執行責任者(COO)を務めた人物だ。日本電産では永守氏の後継候補だったが、厳しい業績目標を達成できず、昨年9月末に辞任した。
・永守氏は昨年10月の決算会見で「けんか別れではない。新しい世界で成功してもらいたい」とエールを送ったものの、「実績がもっと上がっていたら、辞めていくことはなかった」と厳しい見方を示した。後継候補とされていた呉氏だが、昨年6月にはCOOも解かれるなど、プロ経営者の呼び声が高かった経歴が大きく傷ついた。
・そんな中、志賀氏は日本電産の意中の相手だったルネサスのトップに永守氏が実力不足の烙印を押した呉氏を据えることに、さまざまな憶測が広がっている。自動車メーカーの関係者は、「呉氏のトップ就任で日本電産の買収を諦めさせようとしている」と話す。
・革新機構は日本電産の買収提案を断ったものの、自動車向け部品事業を拡大したい永守氏はいまだにあきらめていないという。4月25日の決算会見でもルネサスについて「買う可能性はある」とアピールした。ルネサスのトップが呉氏になっても、構わないという永守氏のしぶとさを示し、まだ、一波乱も二波乱も起きそうな気配が漂う。
・一方、昨年9月のロックアップの解除以降、業績が回復したルネサスの経営はまたも迷走している。昨年12月には日本オラクル出身の遠藤隆雄氏が革新機構と経営戦略で対立し、わずか半年で辞任した。遠藤氏は独半導体大手インフィニオンテクノロジーズと提携する成長戦略を描いたが、国内企業への売却を検討している革新機構との溝が深まり、突如トップを辞任する事態に陥った。
・さらに海外ではオランダのNXPセミコンダクターズが米フリースケールセミコンダクタを約2兆円で買収するなど車載向け半導体の再編が勃発。この再編でルネサスは車載向け半導体首位から陥落した。
・ルネサスの経営が迷走している背景には、自動運転向けの半導体を開発する同社を経産省や自動車メーカーが自らコントロールできるところに置きたいとの考えがあるようだ。さらに、金融機関の関係者は「昨年、志賀さんが革新機構のトップになってから、国内企業の技術を守りたい経産省や出身母体でもある自動車メーカー寄りの考えが強くなっている」と指摘する声もある。
・鴻海精密工業と競ったシャープへの出資では、革新機構は白物家電が東芝、液晶パネルがジャパンディスプレイとの統合する案など国内企業同士の再編シナリオを描いた。だが、シャープへの買収提案では、海外企業を排除し、国内中心の再編を考えている革新機構の姿勢は国内外で大きな批判を浴びた。 自動車と異なり、電機は中国や韓国、台湾勢との競争で劣勢に立たされ、国内同士の再編は「時すでに遅し」という状況だ。特に家電など消費者向け商品は差別化が難しく、生産規模が大きい企業が勝者になる構図となっている。 液晶パネルや半導体はまだ国内メーカーの技術が優位とされるが、その差は確実に狭まっている。「ルネサスも内向きな経営を続ければ、規模が縮小した家電やパソコン事業の二の舞になる」(前述の金融機関の関係者)との声もある。
・ルネサスは海外企業との提携を検討していた遠藤氏が退任し、日本電産による買収の芽が小さくなった。現在は遠藤氏が携わった経営戦略のもとで事業を継続しているが、自動車出身の呉氏のトップ就任で、これまでの経営方針が大きく変わる可能性もある。
・いずれにしろ混乱していた半年の間に海外では大規模な再編が起き、ルネサスを取り巻く環境は以前にも増して厳しくなっている。6月からトップに就任する呉氏は生き残りをかけて、中長期の成長戦略を早期に描く必要がありそうだ。
http://www.sankei.com/premium/news/160517/prm1605170001-n1.html

次に、ルネサスエレクトロニクスに関して基本的なことを、Wikipediaから見てみよう。同社は、「日本から世界に向けた半導体産業復興」を目指して、三菱電機および日立製作所から分社化していたルネサステクノロジと、NECから分社化していたNECエレクトロニクスの経営統合によって、2010年4月に設立。2011年3月の東日本大震災では、8工場が操業を停止。2012年12月、懸案となっていた財務基盤の抜本的強化について、産業革新機構・トヨタ自動車・日産自動車など9社を割当先とする総額1500億円の第三者割当増資を発表。増資実施後は産業革新機構が持株比率69.16%の筆頭株主となり、NEC・日立製作所・三菱電機の持株比率はいずれも6~9%に低下し主要株主でなくなった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%82%B9
株価は、発足直後には1295円程度になったこともあったが、その後は低迷、2013年3月には246円程度にまで下落、2015年5月29日には989円まで持ち直したが、現在は645円へと再び下落。
https://www.google.co.jp/webhp?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&gws_rd=ssl#hl=ja&q=%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%82%B9+%E6%A0%AA%E4%BE%A1

第三に、6月6日付け東洋経済オンライン「ルネサスが電産出身者を新社長に充てた意味 新社長と電産・永守氏の「複雑な関係」とは?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・買う可能性はある」──。日本電産の永守重信会長兼社長は、4月の決算説明会の場で、ルネサスエレクトロニクス買収への飽くなき意欲を見せた。 ルネサスは、世界トップの車載用マイコンをはじめ、自動車用半導体に強みを持つ。長らく赤字が続いていたが、数度にわたる大規模なリストラと円高一服の追い風もあり、直近2期の純益は800億円台の黒字を計上した。
・車載事業を成長分野と位置づける日本電産にとっては、またとない優良案件だが、買収の芽は「当面消えた」というのが業界内の見方だ。その理由は、ルネサスの人事。6月28日の株主総会で、同社の新社長に呉文精(くれぶんせい)氏が就くことになったからだ。
・呉氏は、2008年6月から日産自動車系部品メーカーのカルソニックカンセイで社長を務め、2013年6月には日本電産の副社長に招聘された。そこで呉氏は車載や家電分野を担当して成長させたものの、永守氏に求められた営業利益率15%の達成を果たせず、2015年9月に日本電産を退社。両者はいわば、たもとを分かった者同士なのだ。
▽産業革新機構の会長は日産・志賀氏
・なぜ、このタイミングで、呉氏に白羽の矢が立ったのか。そこには、ルネサスの株式69%を保有する官民ファンド・産業革新機構の意向が色濃く反映されている。 産業革新機構はルネサスが経営危機に陥った2013年、同社に出資してマジョリティを握る株主となった。そして現在の産業革新機構のトップは、2015年6月に会長に就任し、日産自動車の副会長でもある志賀俊之氏だ。
・志賀氏は自動車業界出身で、国内の自動車・自動車部品メーカーも株主かつ主要顧客であることから、ルネサスは自動車業界に配慮せざるをえない。それを象徴する出来事が、2015年暮れの12月25日に発表された、遠藤隆雄会長兼CEO(最高経営責任者、当時)の電撃辞任だ。 元日本オラクルCEOで、2015年6月にルネサスのトップに招かれた遠藤氏は、ドイツの半導体大手・インフィニオンテクノロジーズとの資本提携を進めようとしていた。この動きに対して、国内の自動車業界は、外資系企業への技術流出などを懸念して、難色を示した。
▽日本電産へ「お断り」の意思表示か
・結局、遠藤氏はわずか半年でルネサストップの座を降りることになり、生え抜きの鶴丸哲哉氏が暫定社長に就いた。その後任に呉氏を充てたのは、買収を持ちかける日本電産への“拒否回答”といえるかもしれない。 産業革新機構の元幹部は「ルネサスを買収したいという声は、2013年に産業革新機構が出資した当初から国内外で多くあった。日本電産もその一社」と明かす。
・日本電産は車載用モーターだけでなく、自動車制御分野への進出に意欲的だ。2014年3月には電子制御ユニットを手掛けるホンダエレシスを買収。これでルネサスも買収すれば、自動車制御の頭脳ともいえる、半導体を内製化することができるようになる。
・しかし自動車メーカーからすれば、下請け部品メーカーのルネサスが独立系の日本電産の下で競争力を増せば、価格交渉などで主導権を奪われる可能性もある。外資と同様、渡したくない相手であると考えられる。
・とはいえ、ルネサスも、孤高を貫いてばかりはいられない。半導体業界では国境をまたいだ業界再編が待ったなしで進行しているからだ。 2015年は、ルネサスの競合である蘭NXPセミコンダクターズが米フリースケール・セミコンダクタを買収し、自動車用半導体市場で世界シェア1位に躍り出た。かつて遠藤氏が資本提携を画策したインフィニオンも、米インターナショナル・レクティファイアーを買収している。
▽業界再編に取り残される
・これら2社に抜かれる形で、ルネサスは世界シェア3位へと転落した。今後は反転攻勢に向けた成長戦略の確立が急務だ。その手段として「買収されるのではなく、自ら買収を仕掛けたい」(柴田英利・ルネサス常務)という姿勢を見せている。
・一方で、産業革新機構は時限組織であり、保有株式の出口戦略も考えなければならない。産業革新機構は2013年に出資した際、5~7年は支える方針を示した。裏返せば2018年以降、株式を売る可能性があるということだ。 両者の間では市場での株売却も検討されているもよう。が、すべてを市場でさばくとなると、大幅な株価下落の要因にもなりかねない。 日本電産、産業革新機構、自動車業界の思惑が渦巻く。ルネサスはどこの手に落ちるのか。
http://toyokeizai.net/articles/-/121207

「日本から世界に向けた半導体産業復興」を目指して設立されたルネサスが、経産省や自動車メーカーの身勝手な思惑で、「下請部品メーカー」に押しとどめられる様子は、哀れを通り越して、怒りすら覚える。遠藤元CEOが進めようとしていたドイツの半導体大手・インフィニオンテクノロジーズとの資本提携だけでなく、日本電産による買収まで拒否したようだ。後者の理由として、第一の記事で挙げている「安定供給されなくなるリスク」は、まるで「お笑い」だ。第三の記事が指摘するような、『自動車メーカーからすれば、下請け部品メーカーのルネサスが独立系の日本電産の下で競争力を増せば、価格交渉などで主導権を奪われる可能性もある。外資と同様、渡したくない相手であると考えられる』 がまさに本音であろう。
第一の記事にあるように、『「ルネサスも内向きな経営を続ければ、規模が縮小した家電やパソコン事業の二の舞になる」(前述の金融機関の関係者)』、ことは明らかである。経産省は産業育成という本来の役割に戻って、時には自動車メーカーに「苦い薬」を飲ませることも求められているのではなかろうか。
タグ:ルネサスエレクトロニクス ルネサス攻防戦 【経済インサイド】買収王・永守重信氏にルネサスは渡さない! 産業革新機構がCEOに選んだのは永守氏と敵対するある人物だった 産経新聞 半導体大手 産業革新機構 社長兼最高経営責任者(CEO) カルソニックカンセイ前社長 日本電産前副社長を務めた呉文精氏が就任 呉氏は日本電産の永守重信会長兼社長と対立し同社を辞めた経緯 ルネサス大株主の産業革新機構が、日本電産の買収に事実上「NO」を突きつけた格好 この人事は少しやり過ぎではないか 経営危機に陥っていたルネサス 大規模なリストラを断行 ようやく再建のめどが立ち ロックアップ契約も昨年9月にようやく解除 永守氏はいまだにあきらめていないという ルネサスの経営はまたも迷走している 日本オラクル出身の遠藤隆雄 独半導体大手インフィニオンテクノロジーズと提携する成長戦略 国内企業への売却を検討している革新機構との溝が深まり、突如トップを辞任 オランダのNXPセミコンダクターズ 米フリースケールセミコンダクタを約2兆円で買収 車載向け半導体の再編が勃発 ルネサスは車載向け半導体首位から陥落 同社を経産省や自動車メーカーが自らコントロールできるところに置きたいとの考えがあるようだ シャープへの出資 シャープへの買収提案では、海外企業を排除し、国内中心の再編を考えている革新機構の姿勢は国内外で大きな批判 ルネサスも内向きな経営を続ければ、規模が縮小した家電やパソコン事業の二の舞になる 前述の金融機関の関係者 2010年4月に設立 東洋経済オンライン ルネサスが電産出身者を新社長に充てた意味 新社長と電産・永守氏の「複雑な関係」とは? 国内の自動車業界は、外資系企業への技術流出などを懸念 遠藤氏はわずか半年でルネサストップの座を降りることになり 下請け部品メーカーのルネサスが独立系の日本電産の下で競争力を増せば、価格交渉などで主導権を奪われる可能性もある。外資と同様、渡したくない相手であると考えられる 業界再編に取り残される
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